空手に関わる思い出話です

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


私が空手に始めて出合ったのは社会人になってからです。仕事を始めて体力無さを痛感した私は、空手の稽古を見学する機会にめぐまれ、すっかり魅了されてしまい、押しかけ入会をしたわけです。そんなむちゃくちゃな私を快く受け入れてくださった先輩方。年齢は30代から40代の方々で皆さんプロのミュージシャンです。


長髪、金髪、モヒカンで、いかつい顔の方々でしたのでサラリーマンじゃないって事はわかっていましたが、芸能関係のお仕事をされているとは伺うまで知りませんでした。おっかない外見の自分達にに恐れることなく近づいてきた奇妙なちびっこに、先輩方も始めはコネを狙っての接触か!と身構えたようです。


先輩方も色々な事情があり格闘技を始めたようですが、楽器を演奏するお仕事を続けながら、空手の有段者になるのは大変だったことと思います。年齢は私よりだいぶ上の方々でしたが、お仕事柄なのか世間知らずのところが多々あり、時には少年のように無邪気で純粋な一面も。無茶で恐ろしい一面もありましたが。。。


私が入会して一年がたつ頃には、特に宣伝をしたわけではないのですが、紹介や私のように飛び込みで入会してくる方もいたりして、私を含め10名位の道場生が稽古をしていたと思います。私の稽古を見て入ってきてくれた女の子もいて、うれしかったです。皆初心者でしたので稽古日以外でも集まってわからないところを復習したり研究したり、仲間の存在は本当に貴重でした。


道場生は全員社会人でそれぞれお仕事が忙しく、時間を作るのは難しかったのですが、毎年12月のクリスマス近くにはクリスマスパーティを開くのが恒例行事でした。予算を決めて各自用意したプレゼントを交換したり、果てしなくエンドレスで飲み続けたり、今では楽しい思い出です。


スタジオを借りてスタートした空手稽古でしたが、短い期間ですが専用道場を持てることになり正式に空手道場としてスタートできることになりました。その年のクリスマス、道場開きをかねて道場でパーティーを開きました。道場にシートをひいて車座になって座ります。みんな楽しそうです。


「あったかいものたべたーい。」

先輩のリクエストに答えるべく、女性陣でなべの準備。自宅からカセットコンロを持ち寄って土鍋も3個用意しました。


「うどんたべたぁーい。」

急いでスーパーに買出しです。


「春菊いれないでぇー」

酔っ払ってるくせにうるさいんです。はいはい入れませんよと言いながらこっそり入れます。


普段いくら飲んでもぐでんぐでんにはならない先輩方ですが、その日は”ホーム”な感覚があったからでしょうか、珍しくろれつが回らず巻き舌になってきています。ごろごろと横になるメンバーも出てきて、酔っ払って赤ベコのような顔色の先輩がサンドバックにとび蹴りをしていたり、違う場所では酔っ払い同士の関節技の稽古が始まっています。お酒を飲めないのは私1人です。先輩が蹴り倒した酒瓶を急いで片付け、雑巾をもって飛び回ります。そうこうするうちに仕事が終わった道場生が差し入れをもって駆けつけました。


かわえび。。


調理してーと渡された差し入れは生の川海老でした。


どーすんのこれ!、生の川海老を調理したことはありません、と言うか見るのもはじめてかも。ほかの女性メンバーも酔っ払っていて助けを求められません。ええーっ!


川海老の入った発砲スチロールを持ったまま立ち尽くしていると。両眉をそり落としたおっかない顔のO先輩が、「土鍋、油。」寝転んでいた身体を起こしてつぶやきました。いそいで土鍋を洗い、カセットコンロにセットします。油を注いでどうやら素揚げにするようです。


O先輩の色黒の顔は、酔っ払ってこげ茶色です。さっきまで酔拳みたいになっていたけれど大丈夫でしょうか、油の中にダイビングしないか、ひやひやして見守ります。油があったまってきたようです、するとO先輩が身体をおこして立ひざ姿になりました。気がつくと長い髪はきちんと後ろで縛られています。


「油はねるから離れときなさい。」

「はい!」


見事な手際でおいしそうな川海老の素揚げが出来上がっていきます。酔っ払っているのにさっさと調理をするO先輩の後姿はごっついお母さんのようです。出来上がったところをすぐに塩を振ってみんなでいただきました。揚げたての川海老は本当においしかったです。


川海老は沢山あったので、O先輩はずっと揚げ続けてくださいました。何年も前の事ですが、毎年クリスマスが近づくとおいしかった川海老と、両膝をぴったりつけた立膝で調理していたO先輩の後姿を思い出します。

月曜日は太鼓の練習日です。いつものように仕事帰りに直行します。

今朝からググッと冷え込んで、午後から雨の予報も出てます。練習が終わった後は汗びっしょりなので、風邪をひかないよう特に注意しなくてはいけません。ベリーショートの髪の毛の先から汗が滴り落ちるので、頭にタオルを巻いて帰る事もあります。大工さん見習いのようになってしまいますが、仕方ありません。

早めに着こうと急いだのですが、結局練習が始まる19時ぎりぎりになってしまいました。小雨が降る中、急いで準備をします。

「よろしくお願いしまっす!」
「はい!よろしく。練習してきた?」
「。。バッチリです!」

ウソをつきました。

「ウソ言ってもダメよ!すぐわかるからね!」

ウソはすぐばれました。

空手の稽古で筋肉痛がすごい事になっていて、太鼓の自主トレは全然していませんでした。筋肉痛などお構い無しで太鼓練習スタートです。

今日は前回注意されている腕の上げ方を意識して打ち込んでみます。今回も文化センターの音楽室をお借りしているのですが、前回は置いていなかった大きな姿見が2枚設置されています。これはすごく嬉しいです!基礎練習の時鏡の前で腕の上がり具合を確認する事が出来ました。

太鼓の打ち込みは空手の突き蹴りに良く似ています。チカラを抜いて素早い動き、インパクトの時の握り、腰を使ってためる、気は伝える対象よりさらに遠くまで届かせる、など共通の部分は多いです。気を出す部分で言えば、太鼓は元気、やる気、弱気、など相手にダイレクトに伝わってしまいます。相手=観客な訳ですから、形ばかりの振りや、大きな音で叩くだけではいけない訳です。

休憩無しで練習は続きます。疲れてくると、腕が上がらなくなるので、身体が揺れてきます。さらに、つま先が上がってしまうと「釘で床に打ち付けるよ!」と叱られます。

疲れてからが練習だから、と先生は言います。もう色々と注意されすぎて何が何だか分からなくなってきていますし、疲れもMAXですが、テンションはなぜかどんどん上がってきます。課題曲を何回も何回も何回も回数が分からないくらい叩きました。奇声を発したような気もしましたが、覚えていません。

ようやくストップの声がかかって今日の練習は終了しました。ふと手を見るとマメが潰れて真っ赤になっています。叩いている時はぜんぜん気がつきませんでしたが痛みが急にきました。

「気はすごく出ていいんだけど、技術が最悪。」

先生に言われました。

「今度までに掛け声なおしてきて。」

今日の宿題は
「変な掛け声をなおす事。」です。

。。。前途多難です。


土曜日の夜は空手の稽古です。スタートは19時ですが、18時30分頃には皆さんストレッチを始めています。私も早く参加したいのですが、仕事がある為ぎりぎりになってしまいます。

フライング気味に仕事を終え、夕食は更衣室で着替えながらおにぎりを。。会社の同僚もそんな私の様子は見慣れているので驚きません。会社のある東京駅は土日になると、キャスター付きバックを持った人であふれかえります。人混みをすり抜け、バックを飛び越えながら電車に飛び乗ります。

道場としてお借りしている福祉会館までの住宅街を、小走りで急ぎながら焦る気持ちを鎮めるように呼吸をします。一喜一憂の感情が激しくすぐに舞い上がってしまう性格なので、興奮したまま稽古をすると、必要以上に疲れてしまい発熱してしまうのです。知恵熱みたいなものでしょうか。アラフォーですけど。ふふっ。

身支度を整え道場に入ると、今日は8人程出席しています。女子部も私を入れて3名、休まず続けています。いいぞ女子部!

31歳主婦のYさん。小さいお子さんが二人いるそうですが、週に一回の稽古の時は旦那さんが面倒をみてくれているそうです。それから22歳のMちゃん。お父さんは芦原会館の茶帯を締めていらっしゃいます。Mちゃんは難聴というハンデがありますが、集中力が素晴らしく、基本稽古の動きなど非常に正確で美しいです。Mちゃんとお父さんは普段仲良しですが、二人の組手はドメスティックな組手。。なんだそうです。

今日も柔軟体操から基本、移動の流れで稽古が進みます。こちらの道場でお世話になってから3回目の稽古です。しばらくブランクがあって再開した空手ですから、前回、前々回は動きを思い出しながらの稽古でした。今日はノビやキレを意識してじっくり取り組もうと思い稽古しました。

・突きの加速がない
・引き手が遅い
・重心がぶれる
・疲れちゃう

キリがないくらい反省点があります。筋力が落ちているからでしょうか突きも蹴りもビシッと決まらない感じがします。前に空手をしていた時はスタジオを借りていましたので、壁一面は大きな鏡でした。稽古中疲れてきた姿も、組手の時の間合いも客観的にみる事が出来たので、鏡はとても便利でした。残念ながら今の場所には鏡が無いので、自宅に帰ってから復習するしかありません。

来年から組手稽古も時間を増やしていくとのこと。私としてはもう少し基本を見直したいところなのですが。。今のままではきっとハチャメチャな組手になってしまいます、初心にかえって自宅特訓をしないとダメですね。やばいです。