すっぴんマスター -12ページ目

すっぴんマスター

(※注:ゲーム攻略サイトではありません)書店員。読んだ小説などについて書いています。基本ネタバレしてますので注意。気になる点ありましたらコメントなどで指摘していただけるとうれしいです。

第117審/最悪の駆引④



仕事に向かうところの九条と烏丸を出雲が待ち伏せだ!
出雲は京極とお務めが入れ違いで、出所から会ってはいない。敬愛する京極が弁護してほしいと思っていたのが九条というわけだ。しかし九条も同時期に捕まっていた。すごいよなこのひとたち。

だが、出雲の用事はあいさつではない。腑に落ちないと。京極は、壬生が武器庫の武器を嵐山に渡して逮捕されたわけだが、その手際がよすぎる。悪知恵のはたらく弁護士が背後にいるんじゃないかと。どう思うか訊ねる出雲は、それほどこわい感じではない。むしろ刑事みたいだ。
九条は、ヤクザがよくいう勘繰りじゃないかと、なんでもなくかわす。それ以上出雲にできることはない。今回は、「こうして見張ってるぞ」というアピール、正しくあいさつだ。出雲はブラサンの毛並みをほめて去っていく。烏丸は九条の冷静さにじゃっかん引き気味である。

久我といる宇治が壬生に出雲について電話で警告する。売人と直接接触してまでして壬生の場所を探っていると。勘も鋭い。ふたりとも出雲のことをなめてはいない。たいへんな脅威と認識しているようだ。しかし、売人って、百井のことだよな。あのくだりってそういうことだっけ?

久我の運転する車を煽り運転で停車させるドジな輩。煽りっていうか、ぶつかりそうになった感じか。久我もちょっと焦っているが、ショボい輩が出てきたところで逆に冷静になってるのがおもしろい。見た目普通っぽいけど久我も悪党だからなあ。
車を蹴ってまでくる佐々木求馬という輩なのだが、久我は今ならまだ許すという。大サービスだとおもうが、急いでいるっぽい。
だが佐々木は引き下がらない。久我の言い方も挑発を含んでいる。佐々木は、伏見組の若頭がケツモチだと言ってイキがる。若頭って、京極かな? よくわかんないけど、ヤクザではないみたい。
久我はもちろんビビらない。久我自身が伏見組であり、知らない相手ということははるか格下ということだからだ。だから、彼らは、なにはともあれ「誰?」という反応をするのである。知らないというアピールがそのまま相手より上だという表明になるのだ。しかし、佐々木的には知っていて当然という感じだったらしい。こういう掛け合いが、ときどきわからない。日本もそれなりに広く東京は人が多い。ヤクザどうしならまだしも、半グレの、それも下っ端とかだと、「知らない」ってぜんぜんありえるよね。
そこに佐々木の連れが慌てて割って入る。あれは伏見組の久我だと。佐々木が知らないのは、アホだからだろう。
車内にいる宇治は、これから組長と食事なのだからと、早く終わらせるようにいう。久我は佐々木に膝蹴りをかまし、あとで事務所にくるようにいうのだった。

百井と曽我部がヤクの整理をしているホテルの部屋。洗面台の水があふれて曽我部が大騒ぎするのを醒めた目で百井がみている。ルームサービスを呼べるわけはない。中からは髪の毛がいっぱい出てくる。百井は、それを食えと曽我部にいう。馬鹿なんだからからだで覚えろと。なにを覚えさせようとしてるんだろう。曽我部は異様なサディストを引き寄せるなにかがあるのか…。
しかし百井に電話。久我にスタンガンでお仕置きされている佐々木からだ。伏見組の名前を出して恐喝してた佐々木に、久我は300万要求していて、それを、知り合いの百井に頼もうとしているのだ。百井は出雲の息がかかっている。これはややこしいことになりそうだ。

釣り堀にいる出雲のところに井出という手下がやってくる。久我のスマホを調べた際、出雲はこっそり追跡アプリをいれていて、その結果を井出が出雲に送ったところだ。
さらに、もらったことになっている宇治の車に、出雲はGPSと盗聴器を仕込む。ダミーのものをわかりやすくしかけるという周到さだ。これを宇治に返す。宇治も当然しかけを疑う。そこでダミーを発見させて安心させ、それ以上探させないというわけだ。
九条もあやしい。出雲は九条に探偵をつけるようにいうのだった。



つづく


出雲がただの残虐ヤクザではないのは最初から明らかだったが、思った以上にキレものだ。もう嵐山と区別つかなくなってきた。
あげた車が戻ってくるのだから、宇治なら必ずしかけを疑ってくる。だが出雲は、疑われることもこみで二重にしかけをしてくるのである。宇治ならそれも見抜きそうだが、そうすると三重も考えられることになるから、結局廃車にすることになるかもしれない。

宇治はまだいいが、問題は久我だろう。久我は壬生とは会っていないので、追跡アプリでバレることはないかもしれない。しかし今回彼は佐々木をしめている。これは百井の連れで、百井は出雲の息がかかっているのだ。まあ、ヤクザとして誤っているわけではないので、それでどうということはないかもしれないが、もめそうではあるし、そういうところからほころびも生まれてきそう。ただ、久我が積極的に伏見組としてあのようにふるまうというのは、真実を隠すためとか、また宇治への恩とかいうことを考えても、ちょっと意外な感じはする。


出雲は人望の男だ。どことなく、暗躍する感じからは豹堂的なぶぶんも見受けられるが、多くの人から慕われているという点で決定的に異なる。きっとお務めもヤクザ的自己犠牲だったんだろう。そういう人物が、兄貴分のためにみずから縦横無尽に動き回る。「兄貴分のために」というところが、それじたいでいかにも出雲らしいぶぶんであり、しかもそれを強化するものだ。これが生きるのがヤクザ的文脈である。出雲が出雲として評価される世界、ひとを殺していながらその後始末を部下に喜んでさせることのできる世界、それが出雲の属する世界だ。これを出雲は、彼自身の行動と、それに伴う周囲からの好意によって再生産するのである。これは壬生の現実主義にはなかったちからだ。これは物語のちからに近い。そこにほんらいない、義に基づく人工的な秩序を、金でもちからでも物理法則でもないルールにしたがいながら増幅させていくのである。公理を打ち立てて問答をくりかえし、あらたな規律を生み出す宗教の相似形と言ってもいいかもしれない。

だが、この規律も、実は法律という、一般に合意形成のされた正統的物語に基づいてもいる。道路交通法を知らない宇宙人は赤信号の意味を解さないのである。法のないところに義はないのだ。ヤクザは、法律や警察が現れることではじめて存在可能になる。アルカポネの台頭は禁酒法とセットなのだ。とりわけヤクザの基本理念たる「義」は、正しさを実現する思想である。しかし、じっさいには、正しさはその以前からあり、それを律するルールも存在している。「義」は、“にもかかわらず”、正しさが実現しない世界ではじめて姿をみせる。ただの正義と義のちがいはそこにある。義は正義や法秩序の副産物なのだ。そうであるからこそ、出雲も九条相手には慎重になるのだ。


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第38話/似たもの同士



ジャック・ハンマー対花山薫というドリームマッチが決まった!

試合場を去ろうとする花山をつかまえて、刃牙がこのファイトの意義を語る。流儀を問わないジャックと流儀を重んじる花山の思想対決、宗教戦争だと。

しかし花山はこれを否定する。流儀にこだわらない、それはこだわり、流儀だろうと。刃牙は笑い、美意識対決だと言い換える。花山はそれについてはわからないという。たぶん「美」の語感がむずがゆいのだろう。


後日、光成の家に鎬紅葉がきていて、魚にえさをやりながら会談。なんで紅葉なのかな。元祖美形だからか…。

ともかく、ジャックのようなまねは紅葉にはできない。「だって カッコわるいんですもン」と、くちにするのがどこかはばかられてきたファイターの本音を、紅葉があっさり言う。なるほど、このノリは紅葉ならではかもしれない。バキ死刑囚篇からバキワールドに入ったぼくとしては、紅葉はいつでも「むかしの(すごかった)キャラ」という感じで、いまいちつかみきれていなかったが、少し好きになった。


噛みつきは人間が手にする最初の武器。しかも強力である。本能的に行使される幼児の噛みつきは大人に悲鳴をあげさせる。問題は、カッコ悪いということだけ。なぜカッコ悪いか。いまの説明にあらわれているように、幼児がつかうものだからだ。大人が、無礼とされるタメ口のほうがほんとうは伝わりやすいのに、社会生活上必須とされる常識しぐさでゴテゴテにデコった丁寧語で、取引や接客をわかりにくくしているようなものだ。


このファイトをどうみるかと光成が訊ねる。正反対のようだが、徹底のありかたは類似している、と紅葉。似てるのである。



ジャックの自宅。親子喧嘩のときにも描かれたとおもうが、相変わらず貧乏っぽい。というか、たぶん食事とクスリに全財産使っている感じなのだろう。しかし、彼はいったいどうやってお金を稼いでいるのか?母からの仕送りかなあ。猪狩が面倒見てるっぽいので、ケインみたいな覆面巨大レスラーとかやってそうでもあるけど、もうこれだけでかいと覆面の意味もないし、有名になりすぎちゃうだろうし、こんな生活にはならないかもしれない。


家には花山から贈り物が届いている。木崎の名刺をみて、花山組を「花山薫(あいつ)ノ会社…??」と言っているのがかわいい。

なかみは炙ったレバ刺し2キロ。花山からの差し入れとのこと。

味付けをし、口に入れるなり、溶けてしまう。肉がいいのか調理がいいのかわからないが、たぶんすごい高いやつなんだろう。ジャックは揚げ物のあいだにキャベツをさしこんでくちのなかをリフレッシュさせるみたいにクスリを咀嚼しつつ、あまりのことに脂汗をかきながら、肉を飲んでいく。生まれて初めての、歯を使わない食事なのだった。





つづく



ヤクザ的な精神攻撃なのだろうか…。噛みつきもいいが、噛みつかないありよう=エエカッコしいも悪くないよ…みたいな。

そういえば勇次郎もジャックに、たまにはやわらかいものも…みたいなことを言っていた。

なんというのか、ジャックの生きかたは、勇次郎や花山からみても、なによりまず「キツそう」なんだろう。噛みつき云々、強いんだ云々以前にちょっと心配しちゃうんじゃないかな。わかった、わかったから、でも今日はちょっと、チートデイってことで、やわらかいお肉食べよ…みたいなことかもしれない。


いずれにせよ、ジャックが今回体験したのは、風情もなにもあったものではない噛みつきの露骨さが中和されたエエカッコしいの世界である。花山は、ああいう人間だから、ジャックのこだわりを否定しはしないだろう。では、どのようにこの思想対決は行われるのか。相手の説を否定せず、批判せず、解体せず、どのようにたたかうか。このレバ刺しが花山なりの回答(の予習)なのだ。つまり、「こっちも悪くないよ」

ということなのだ。このアプローチなら相手を否定せずに対立できる。

ただ、それだけではいけない。うますぎるレバ刺しに象徴される「こっち」に属することがどういう強さにつながるのかを、花山はファイトで伝えなければならないのである。

紅葉のいうように、ふたりはその徹底ぶりにおいてよく似ている。ジャックは、こだわらないことによって「噛みつき」という、ある種見捨てられた技術を発掘し、じぶんのものにした。そこにはこだわりは生じている。花山も、どんなファイトでもやりかたを変えない。ただ、やれるところまでじぶんを滅し、持って生まれたものとしての「花山薫」を殺し、迷いのない純白の攻撃そのものになる。たたかいにはいろいろな状況がある。相手のタイプも千差万別である。しかし、花山は、まずおのれとたたかわないことには開始することもできない。ファイトスタイルにこだわるという点で、ふたりはよく似ているわけである。

そう考えると、ジャックの思想も花山らと同一平面で考えることができる。存在しないようにおもえる虚数が、複素化することで代数的にとらえることができるようになるのと似ているだろうか。「ファイターはみんなエエカッコしい」という視点がけっこうラディカルなぶん、ジャックが過剰に異端に見えてしまう面があったが、この解釈なら、刃牙のいうように美意識対決として同時に観察することができるだろう。そしてそれを花山は、相手を否定するものではなく、「こっちも悪くない」という主張でスタートさせたのである。





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第116審/最悪の駆引③



前回は掲載を見落としてしまった。ごめんなさい。

今週はウシジマくんのカラー版電子書籍のお知らせと、例の原画展詳細についてのニュースもあるぞ!東京は3月21日から。ちいかわのナガノ先生とのコラボが山椒みたいに効いている。





本編では出雲と宇治が遭遇したところだ。

前回全財産を聞かれていたが、宇治はすなおに答えたみたい。しかし飯は先輩の出雲がおごると。

高そうな食事を済ませ、店に気を使う身振りをとりつつ、出雲は宇治を誘って外でタバコを吸う。宇治は吸わないがライターはヤクザのたしなみとして持っていたらしく、出雲のタバコに火をつける。


おつとめ中の京極について語られる。京極は読書が好きらしい。なにか本を送りたいがじぶんは読まない(読めない)からわからない、何がいいか?という出雲のはなしだ。司馬遼太郎や菊池寛などの歴史ものが好きだったはずと。司馬はともかく、菊池寛とか、渋いなあ。それからHUNTER×HUNTERの続きを気長に待ってるとも。ある意味、そのへんはふつうの人間なわけである。

続けて、山城弁護士が看守から聞いたとして、部屋では横にならず正面をまっすぐ見たままずっと座っているそうだ。だらだらしないようにじぶんを律しているのだ。

また、ベテランの山城ですら怖くなるときがあるという。焦点があっていないような、ビー玉みたいに異様に澄んだ、ひとを殺したことがある人間の目だ。いちおう山城は、「人を殺めた人間の目と似てる」と慎重な言い方をしている。


出雲は率直に壬生の居場所を宇治にたずねる。宇治は知らないというが、ふたりが同郷であることはすでにバレているようだ。だがそこまで確信があるというふうでもなさそう。ただ嘘はすぐ捲れるとだけ脅しをかける。で、ついでに車ももらうと。先週してたはなしだな。あと、もしこのまま出雲が帰るのなら、結局食事代は宇治が出すことになりそう。


百井という謎の売人とつるんでいる曽我部。百井は砕いた氷砂糖に潤滑油をかけて苦くしている。バカなガキに売るんだと。覚醒剤以外、こういうふうにいろいろ試して遊んで売ってるそうだ。曽我部は、結局はまたこんな状況になってることに動揺しているっぽいが、百井は殴ってきたりはしないからまだそんなにやりにくくはなさそう。ただ、ぜんぶ曽我部に押し付けて逃げそうな雰囲気はある。



九条は烏丸と公園にきてブラサンの散歩だ。楽しい時間を終えて、さあ仕事するかというところを待ち受けていたのは出雲である。



つづく




壬生と宇治が同郷であることをすでに知っていたり、九条を訪れたり、出雲はめちゃくちゃ仕事が早いな。そして、京極をはめたのが誰なのか本気でつきとめようとしているのがよくわかる。


京極は、壬生が、嵐山と取引をして、預かっていた武器を提出したことで捕まっている。いつもならここで九条出陣となる。ところが、これも壬生のわかりにくいはからいで、犬飼への逃亡示唆ということで、九条は告発され、カンモクパイで出てこれたものの、肝心なときにいないという状況になってしまった。こういう流れであってるかな?山城はどういう経緯で出てきたんだっけな。

ともかく、出雲の立ち位置からはどう見えるかということがここでは重要となる。壬生にとって九条の告発は、京極に九条を利用させないようにするとともに、じぶんと九条がもはや絶交関係だということを示す強い手だった。じっさい、ふつうはそうとらえるだろう。だが出雲はどうだろう。できすぎていないだろうか。京極的には、壬生に攻められるとともに、みずからを守る最強の盾としての九条も、壬生に奪われたことになるのである。

これは、九条は徹底的に受け身でいられたことだったし、じっさい壬生から真意を聞くまではピリついてもいた。だから、背後の事情、つまり壬生の戦略について知らないを通すことは可能だろう。壬生の戦略としても、攻めつつ盾も奪うということは、利にかなっているわけで、不自然さはない。壬生と宇治の関係も九条は知らない。出雲としても、たんに近くにいたものとしてなにか知らないか聞きにきただけなんだろう。そして、九条は壬生と会ってはいるわけである。


出雲は、久我の連れを殺したときのように、必要に応じて想像を絶する残虐さを発揮するぶぶんはあるが、基本的には面倒見のいいヤクザである。ただその面倒見のよさは、先天的な優しさとかによるものではなくて、あくまでヤクザ的身振りを出ない。今回の食事では、タバコはダメだろうなとわかっていながら、いちおう聞いて、わかっているという相槌をいったんはさんだうえで外に出ている。なにもいわずに「味に影響するから」とただひとりで考えて外に出るより効果は大きい。このひとは、ヤクザだけど、こちらに気を使って外に出てくれたと、あの大将は感じただろう。前回の愛人っぽい女に対してもそうだ。急に靴を奪い、それを盃ににしてダメにするという行為には暴力性があるし、端的に迷惑である。しかし、非公式とはいえ「盃を交わす」という行為に使ったことからは、女の靴、また女に対してある聖性のようなものを認めている、という読み取りが可能である。しかもそのあと大金を与えて靴を買うようにもしていた。女は、「盃を交わす」という重要な祭事にじぶんの靴なんかを使ってくれたと、迷惑を被っている側でありながら感じたことだろう。


このようなヤクザ的身振りに出雲は包まれている。ひとは、ほんらいただの迷惑行為にすぎない出雲のふるまいを、「面倒見のいいヤクザだ」と読み換えてしまう。だから出雲はモテるし人望がある。久我の連れや闇バイトを処分させたときも、ずいぶん舎弟らを労っていた。しかし、そもそもは、彼がひとを殺そうとしなければ済んだことなのである。出雲は、ヤクザとしてのふるまいを人望で覆い隠すことで、まるで最初から迷惑行為・犯罪行為などなかったかのようにひとびとの認知をコントロールするのである。

これは、モテ出雲とは逆にもおもえる残虐パートにもいえる。果たして、久我の連れは、あんな殺しかたをされる必要はあったのだろうか。あれは、過不足なしに見せしめだったわけである。そしてそれさえも、京極への気持ちと部下へのねぎらいの気持ちを畳みかけることで、透明にしてしまうのだ。


もちろん、彼の京極を慕う気持ちはほんものだろう。しかし、人望という点では出雲のほうがうえかもしれず、もっといえば、あの過剰な京極ラブ描写からして、彼は「京極を慕う」という身振りさえ、じしんの人望の糧にしているようでもあるのだ。彼にはそんなつもりはないかもしれない。だが、出所してすぐ、京極のかえしだけを考えているかのようにふるまうさまからは、あざとさも見え隠れするわけである。近くにいるものには見えないあざとさだ。遠くから見ていても、以上のようには感じないという読者も多いだろう。しかし彼がその京極をいちばんに考えるという身振りによって人望を獲得していることはおそらくまちがいないのである。







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第115審/最悪の駆引②



不覚…。前回掲載時に次回10号掲載と書かれていたため、特に本誌を確認せずにいて、8号掲載の第115審を見落としていました…。やばい、刃牙もあるし一気にたいへんになってしまった。ざっとで…。


久我の連れが主犯で京極宅に侵入した、たぶん闇バイトの連中の死体を処分した若い衆が陸に戻ってきたところだ。出雲は彼らをねぎらい、あとで合流するようにいう。

その出雲がクラブで酒を飲む前には、百井という売人と、なんと曽我部がいる。どういう経緯かわからないが、出雲が酒に誘うくらいだから、百井もそうとうキレものなんだろう。

その前に描かれた九条、烏丸、薬師前のやりとりで、出所したはいいが心配されていた曽我部だが、薬師前の予感通り、百井はやたら堂々としているが、曽我部はビビりまくりだ。


京極が出てくるまで面倒をみてやるということなので、ひょっとすると百井はもともと京極のもとで働いていたのかもしれない。出雲はそばにいた嬢に靴をぬがせ、それを盃にして酒を飲み合う。盃を交わしたな、と出雲は確認するが…。こんなことで、ヤクザです、ってなるのかな?


いきなり靴を汚された女は、大金を渡されて、喜んで出雲とともに裸足で帰宅するのだった。


別の日、約束通り出雲は戻ってきた宇治と合流する。久我は宇治の側に立っている。

宇治はめちゃくちゃに稼いでいる。兄貴分よりいい車乗ったらだめだろと軽くいわれ、差し上げますと、宇治も軽くいうのだった。



つづく



やれやれ…。まさか読み飛ばしてるとは…。車にかんしてこういうやりとりがあったのね。次話であっさり出雲が車持ってくからびっくりしちゃったよ。


ウシジマくんでも、舎弟が兄貴分を強く慕い、命をかける姿はたくさん描かれてきたが、出雲はその系譜、しかもそうとうな強者だ。あの女の靴を盃にすりくだりからは、唐突で暴力的ながらいちおう、彼女を神聖な存在として扱っている感じがみえる。曽我部のスニーカーで盃を交わさないよねということだ。なんだろうね、モテそう。








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第37話/血


ピクル戦を終えたジャックだが、時間をおかずに光成と連れ立ってやってきた花山とバチバチだ!

花山も指を鳴らしているし、至近距離でにらみあう状況である、これは試合成立だろうとジャックはいうが、光成は「黙らっしゃい」という。こんなふうに行き当たりばったりで決まる小さい立ち合いではないと。ふたりのレベルを考慮した発言ではあるが、なんか最近光成はえらそうだな。まあ、「いまここではちょっと」ということなんだろうけど…。基本的には当人たちの勝手じゃないかな。

ジャックは、ピクルにズタズタにされた腹を示しつつ、こういう場合は負傷している側、ハンデのある側に決定権があるということをいう。ジャックに問題がないなら問題がないはず。
しかし花山は、血が出てるという。唐突すぎてちょっと笑っちゃった。顔面爆発したことあるひとが言ってるのがおもしろい。血が苦手だと。もちろん、言葉のままの意味ではない。ジャックがいうように、彼は負傷している。花山は、だからこそたたかうことはできないのである。

目の前で煙玉が爆破しても気づかない男である、そういう、言葉の裏みたいなことを読むのはジャックは苦手だし、だいたい根本的なものの考え方がちがいすぎて、ジャックには花山の考えはわからない。「血が苦手」と、そのまま受け取って、なんかへんなキャラになっちゃってる。

しばらく面白がってみていた光成がやっと説明する。まさしくジャックは手負いである、その傷がふさがるころ、この男はジャックの前に現れる、しかも、血が苦手なのも治っているだろうと。手負いだからやらないんだと説明したかたちだ。

そうして花山は去っていく。ジャックは理解したのかなんなのか、とにかく戸惑っているが、それよりも、観客の盛り上がりかたに驚いている感じだ。なににこんなに喜んでいるのかと。これは、「エエカッコしい」と「観客」の接触点にはじめてジャックが気づいた瞬間かもしれない。ジャックじしん、歓声を求めはするが、いわば「観客の求めるもの」には無知なわけである。これについては、いかに花山がカッコいいかを実況が説明している。

通路で花山を待っていたのは、いつのまにか客席から去っていた刃牙だ。そして、流儀を問わないジャックと流儀にこだわる花山の対決は、もはや宗教戦争だと煽るのだった。

つづく


いかにも花山らしい、花山ならそうするだろうなという流れだ。

負傷にかんするとらえかたのちがいも対照的である。ジャックは一般論を述べているようでもあるが、ハンデのあるほうに決定権があると考える。その点については、実は花山はなんとも言っていない。というか、決定権がどうとかというはなしをしていない。ただ血が苦手だから、要するにいまはやりたくないなあということだけを言っているのである。ひとつには、相手が負傷しているからこそやりたくない、ということだ。そんな卑怯な喧嘩を花山が望むわけはない。もうひとつは、彼自身の問題、負い目をつくりたくないということだ。柴千春によれば、負い目をのなさが勝ちを呼ぶわけだから、これは結局勝ちたいからかというはなしになるが、そういうことでもないだろう。あくまで美学的に、そんな喧嘩はしたくない、みたいなところとおもわれる。
花山は、強さを授かって生まれた、生まれつきの強者である。体格はむろんのこと、鍛錬で身につくものでもない、人間離れした瞬発力が生むあの破格の握力である。暴力が日常にあるヤクザという出自もそうかもしれない。そういうものは、鍛えてはいけない。準備してはいけない。その思想はやがて、アファーマティブ・アクション的に、相手に多少の有利を与えるという方向に生長していった。準備しない、つまりいつでもゼロでなければいけない、という思想から、さらに、自身をいちど引き算しなければ気が済まないところに発展していったのだ。ふつうに考えると、この思想は強さに結びつかない。勝ちのチャンスを見逃し、武術の基本ともいえるところから逸脱する、闘争合理性からは離れたものだからだ。しかし花山の場合はそうではない。むしろそれが勝ちにつながっていく。「エエカッコしい」側の論理を考える際には、花山ほど極端なふるまいは、それがなぜ強さに結びつくのかということの参考になるかもしれない。なぜ、スペック戦のように、最初にもらえるだけ攻撃をもらうような非合理的強さの引き算が、むしろ強さにつながるのか。おそらく、いっさいの迷いがなくなるからである。引き算は、やがて彼を滅する。濁りのない、漂白された存在にする。このあたりは、以下の記事でくわしく書いている。






花山は自己を滅する。相手の攻撃を通じて、花山を花山たらしめるもの、授かったものをすべて殺す。そのとき、武蔵がいうように、彼は仏のような存在になる。彼の動作からはいっさいの「花山薫」が消え去る。主語があり、述語がある、人間の行為状況から、主語が消え去る。そうして、彼はついに述語そのもの、攻撃そのものになって相手を打ち砕くのである。



それでも、あの場でジャックがどうしてもやりたいとなったら、花山は受けるだろう。それが、決定権そのものについて彼が言及しない理由だ。ただ花山は、美学的にこんなファイトはいやだなあ…と言っているだけなのだ。とすると、ジャックは今回、花山の美学に押し負けたことになる。だからこそのあの困惑なのだろう。そもそもジャックは、押し負けるもなにも、なにが起きてるのかわかっていないようだった。こうみると彼は明らかに人間としては未成熟で、こんなところにも差が出るのだなという感じがする。おもえば本部の老獪さを前にちからを出しきれない感じがそれだった。内面的には幼児のようなピクルもそうだ。ピクルが刃牙や武蔵と戦ったときにあらわになったあの、なんというか力量以前の差が、花山戦では露呈してしまうかもしれない。




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