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【闘い続く 9・17から4年】(中)北朝鮮制裁

 ■あくまで望む「拉致解決」

 「切なくなりますよね。ここまでくると」。横田めぐみさん=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(70)はそう漏らす。

 米下院公聴会での証言やブッシュ大統領と面会した4月の訪米で、早紀江さんは疲労からか右肩の腱を悪くした。肩から腕にかけて痛みが走る。手を背中に回すこともできない。週2回、通院し痛みを和らげる注射をうつ生活が続いている。

 昨年末に体調を崩し、一時は危険な状態に陥った被害者家族会の代表で、めぐみさんの父、滋さん(73)も体調はほぼ回復したが、ある数値だけはいまだに正常値に戻らない。それでも、夫妻は全国各地に足を運び、講演や集会を繰り返す。

 「私たちはもう心底疲れ果てておりますが、子供たちが助けを求めている間はどんなことがあっても倒れることはできません」

 早紀江さんの言葉に力が入る。どこの会場でも相変わらず、空席を見つけるのが難しいぐらい関心は高い。

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 平成16年12月24日。めぐみさんの「遺骨」が偽物だったことに加え、それまでに北朝鮮側が提示してきた「死亡」とする8人と、「入国は確認できない」とした2人に関する調査結果に対し、政府が「客観的な証拠は皆無。調査と呼べるものではない」との見解を発表した。それ以降、北朝鮮との交渉は実質止まっている。政府が北朝鮮側に圧力をかける動きもまったくみられなかった。

 政府見解発表の際、細田博之官房長官(当時)が「誠意ある対応がなければ、厳しい対応を取らざるを得ない」と制裁発動をにおわせたにもかかわらずだ。

 外務省や内閣府など9府省庁の局長以上の幹部による「拉致問題専門幹事会」も官房長官発言の直後に1回開かれたきり、約1年間、休眠状態になっていた。政府の「言行不一致」が続いていたといっていい。

 「拉致は解決済み」と開き直る北朝鮮に対し、何の対抗策も示せない政府。被害者家族は首相官邸近くで座り込みを実施するなど抗議行動をしたこともあった。

 だが、昨年10月に安倍晋三官房長官が就任して以降、流れが変わる。専門幹事会は今年1月、宮内庁を除く全府省庁を含めた組織に拡大され「拉致問題特命チーム」となった。月1~3回ペースで会合が開かれ、特命チームの下には「法執行班」と「情報収集チーム」が置かれた。水面下で「制裁」に向けた動きが本格化したのだった。

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 被害者家族らが要望していた制裁は、北朝鮮が今年7月、ミサイルを発射したことで現実に動き出した。北朝鮮の貨客船「万景峰92」の6カ月入港禁止、北朝鮮の国会にあたる最高人民会議の代議員を務める在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)幹部6人の北朝鮮への自由往来禁止…。9項目の制裁措置が決まった。

 ミサイル発射当日からすぐさま制裁措置が取られたことは、拉致問題に対する北朝鮮の不誠実な対応に対して、日本としての意思表示を検討していたことがベースにあったからにほかならない。

 制裁発動について安倍長官は「拉致問題で誠意ある対応を示してこなかった上、ミサイル発射という事態に至った」と、あえて「拉致問題」という言葉に付言した。

 さらに、政府は今月中に北朝鮮のミサイル・大量破壊兵器の開発との関係が疑われる団体・個人の銀行口座を実質上、凍結する金融制裁に踏み切る方針を固めている。

 米国と足並みをそろえた制裁の流れ。「次の政権が来年1月に万景峰号の入港禁止を延長するかは大きなポイントだ」。被害者家族らはそう口をそろえる。家族らは新内閣が「制裁には拉致問題が含まれる」と明言することを切に望んでいる。

(09/18 10:53)
Sankei Web > 社会 > 【闘い続く 9・17から4年】(中)北朝鮮制裁(09/18 10:53)

新内閣に拉致問題担当相、安倍氏が設置を表明

 安倍官房長官は18日夜の日本テレビの番組で、次期首相に就任した場合、26日発足の新内閣に、北朝鮮による日本人拉致問題の担当相を置く意向を示した。

 安倍氏は、「(拉致問題の)交渉は外相が行うべきで、外交は二元化してはならないが、拉致問題は外交交渉だけではなく、救出とか、いろいろな対応も考えなければならない。被害者の家族のケアもある。拉致問題について全体的に考え、担当する人がいてもいいと思う」と語った。

 内閣府設置法は、重要政策について、首相の判断で「特命相」を置けるとしている。閣僚に「国民スポーツ担当」など「担当事項」を割り当てる方法もある。

 安倍氏は、2002年9月の小泉首相の初訪朝に官房副長官として同行するなど、拉致問題の解決に積極的に取り組んでいる。

(2006年9月18日22時48分 読売新聞)
新内閣に拉致問題担当相、安倍氏が設置を表明 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

【闘い続く 9・17から4年】DNA鑑定 北の“決定打”封じ込める

 北朝鮮の金正日総書記が日本人拉致を認め謝罪した日朝首脳会談から、きょうで4年を迎える。あの日は、横田めぐみさん=拉致当時(13)=ら8人を「死亡」とし、被害者家族らを慟哭(どうこく)させた日であり、北朝鮮が拉致問題を終息させるため大いなる謀略を仕掛け始めた日でもあった。

 首脳会談の11日後の平成14年9月28日。日本政府調査団は、めぐみさんら8人が「死亡した」という客観的な証拠を求めるため、平壌を訪れた。北朝鮮側は8人のうち6人の「墓」は洪水などで流され、「遺骨」は残っていないと説明。だが、松木薫さん=同(26)=については、「本人のものと思われる骨」を提示した。めぐみさんについても「病院を通じて探している」と含みをもたせた。

 北朝鮮側は当初から、拉致被害者の象徴的な存在であるめぐみさんに焦点を絞っていた。めぐみさんの問題が終息すれば、対北批判で盛りあがる日本世論を沈静化させることができると踏んだからだ。

 北朝鮮側が松木さんの「遺骨」だけを調査団に渡してきたのも、めぐみさん問題につながっていたことが今になって浮かびあがる。

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 「遺骨」は「死亡」を裏付ける客観的な証拠だ。別人のものなら死亡の根拠は無くなるが、本人のものならもちろん、「判定不可能」でも北朝鮮側の説明を覆すことにはならない。

 松木さんの「遺骨」は2度にわたって焼かれ、さらにハンマーのようなもので粉々に割られていた。「DNA鑑定は困難」とされたが、あごの骨の一部が残っており、歯根の長さから「60歳代の女性」のものと確認された。骨の部位が明確だったことがポイントだった。政府は骨格鑑定による結果を公表、北朝鮮側は反応することなく沈黙を続けた。

 「松木さんの偽遺骨は、めぐみさんの遺骨問題の予行演習だったのかもな」。最近になって、政府関係者はこんな言葉を口にした。

 松木さんの偽遺骨をはじめ、北朝鮮側の「死亡」とする説明と、帰国した拉致被害者らの証言などが大きく食い違っていたことから、日本の世論はさらに沸騰した。そのたびに説明を二転三転させた北朝鮮側の対応に被害者家族らは「生存」の確信を深めていった。

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 こうした日本国内の反応に、北朝鮮側が動き始めた。16年11月、「探している」としていた、めぐみさんの「遺骨」について、元夫で韓国人被害者の金英男さん(48)が「骨つぼ」に保管していたとし、日本側に提供してきたのだ。

 粉々になっていた上、松木さんのケースと同様にDNA鑑定を難しくさせるためか、通常の火葬時よりかなり高温の1200度の火で焼かれていた。今度はあごの骨の破片も残っていなかった。

 だが、政府は約1カ月をかけてDNA鑑定を実施した。その結果、「別人2人の骨を混ぜたもの」と明確に確認した。

 「松木さんのとき、政府が公表したのは骨格鑑定の結果だけだった。でも実際はDNA鑑定も実施され、松木さんとは別の複数の骨が混ざっていたことを確認していたんだよ」

 ある公安関係者はそう打ち明ける。だが、北朝鮮側にはこの事実は伝えなかったのだ。北朝鮮側がいずれ他の被害者の「遺骨」を提示してくることを想定し、DNA鑑定のことを伏せていたとの見方もある。

 この関係者は「向こう(北朝鮮側)は、日本の能力ではDNA鑑定ができないと判断したのかもしれない。だから万を持して、めぐみさんの偽遺骨を出してきたんじゃないか」と分析する。

 「危なかった。あのとき『判定不可能』とされたら、めぐみちゃんが『死亡した』というイメージが広がっていたと思う」。めぐみさんの母、早紀江さん(70)はそう振り返る。

 “決定打”を失った北朝鮮側は「日本の鑑定結果は信じられない」とし、「拉致は解決済み」と交渉の扉を1年半にわたり閉ざしている。

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 ■救出活動「前進していない」 横田夫妻が講演 政府の対応批判

 横田めぐみさんの父で拉致被害者家族会代表の横田滋さん(73)と妻の早紀江さんが16日、群馬県渋川市で講演した。滋さんは、北朝鮮が拉致を認め謝罪した平成14年9月の日朝首脳会談から17日で4年を迎えるのを前に、死亡したとされる被害者8人の救出活動が「一歩も前進していない」と述べ、政府の対応を批判した。

 ただ、大量破壊兵器の開発との関係が疑われる団体・個人に対し、政府が金融制裁を実施する方針を固めたことを、「北朝鮮は恐れているようで、いい方向に向かっている」と評価した。

 早紀江さんは、自民党総裁選に触れ、「拉致問題を解決しようという魂を持った人が次の首相になってほしい」と、当選が有力視されている安倍晋三官房長官への期待感を示した。

【2006/09/17 東京朝刊から】

(09/17 15:09)
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