本との気持ち12
連作短編小説集「恋肌」 桜木紫乃 著
(角川書店・1575円)
文芸評論家のIさんが「絶賛‼」と帯に書いている。Iさんとは数えるほどしかお会いできていないが、お若い時から大人を身に付けた紳士という印象がある。しかも、どこかストイックな雰囲気をまとっていて近寄りがたさもあり、こちらから言葉を掛けることがはばかれてならないのだが、この「絶賛‼」をさっそく味わってみたく手にした。
すると、男女の情交の場面では読み物小説を超えた文学的な表現が光っていた。とくに『プリズム』の男女二人が死体を岸壁から投げ捨てる差し迫った感情の渦にまみれるクライマックスは圧巻であった。『フィナーレ』では「もう何も考えたくなかった。思考を捨てた体が熱を持ち始める。膨らんだ熱の塊が逃げ場を求めて走り出した。」というぐあいだ。読んでいてしきりと興味が先立ち吟味を軽んじた妄想が走った。『根無草』では、母が間男とセックスしているところをのぞき見した日に初潮を迎えたという女性作家ならでは筆致にもひどく驚いた。
しかし残念かな、表題作の『恋肌』というタイトルは軽く馴染めなかった。中国では「愛人」は恋する人の意味であるように、漢字の意味のニュアンスが日本語とは少し違うということが、ままある。「恋肌」がそうであっても「ウォアイニィ」か、初出時の「波に咲く」のままでも良かったのではないか。
とは言うものの、この久々の官能ものは煩悩を捨てきれない還暦の身には少し刺激的すぎたか。それにしても流石である。Iさんの「絶賛‼」した瑞々しさには感服した。
恋肌/桜木 紫乃

¥1,575
Amazon.co.jp
(角川書店・1575円)
文芸評論家のIさんが「絶賛‼」と帯に書いている。Iさんとは数えるほどしかお会いできていないが、お若い時から大人を身に付けた紳士という印象がある。しかも、どこかストイックな雰囲気をまとっていて近寄りがたさもあり、こちらから言葉を掛けることがはばかれてならないのだが、この「絶賛‼」をさっそく味わってみたく手にした。
すると、男女の情交の場面では読み物小説を超えた文学的な表現が光っていた。とくに『プリズム』の男女二人が死体を岸壁から投げ捨てる差し迫った感情の渦にまみれるクライマックスは圧巻であった。『フィナーレ』では「もう何も考えたくなかった。思考を捨てた体が熱を持ち始める。膨らんだ熱の塊が逃げ場を求めて走り出した。」というぐあいだ。読んでいてしきりと興味が先立ち吟味を軽んじた妄想が走った。『根無草』では、母が間男とセックスしているところをのぞき見した日に初潮を迎えたという女性作家ならでは筆致にもひどく驚いた。
しかし残念かな、表題作の『恋肌』というタイトルは軽く馴染めなかった。中国では「愛人」は恋する人の意味であるように、漢字の意味のニュアンスが日本語とは少し違うということが、ままある。「恋肌」がそうであっても「ウォアイニィ」か、初出時の「波に咲く」のままでも良かったのではないか。
とは言うものの、この久々の官能ものは煩悩を捨てきれない還暦の身には少し刺激的すぎたか。それにしても流石である。Iさんの「絶賛‼」した瑞々しさには感服した。
恋肌/桜木 紫乃

¥1,575
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本との気持ち11
「思考の整理学」外山滋比古 著
(ちくま文庫・546円)
「人間にはグライダー能力と飛行機能力がある」と、のっけから面白い。
学校は教わるところでグライダー人間をつくり、グライダーにエンジンを付けると、新しい社会や世界へ飛翔する飛行機人間がつくられる。学校で教わっても、それを応用したり深めたりできなければグライダー人間のままで終わってしまう。そこで、なぜなのかと疑問を持つことでエンジンを手に入れ進歩できる。その思考法を解いたのがこの本だ。
著者には愉快な習慣がある。まず朝食を抜く。なぜなら、朝は頭の能率がよいからだ。午前中に仕事をし、お昼に朝食とかねて昼食をとる。その後昼寝をしてもう一度朝を迎える。一日に二度の「自分だけの朝」を迎え、能率が倍加するというわけ。
つまり昼寝をすることで、思考を生み出す元を寝かせて発酵させる。この「昇華させる」というのは寝かせるだけでなく、細部を省いて関連づけ要約する整理力もはたらく。うまくいけば、質的な変化ももたらされまったく新しい発見ができる。それには、捨てて明確化する勇気が必要。
読んでいて頭が良くなりそうな錯覚は悪い気分ではなかった。やはり、かつては50万部、今も月に10万部ずつ売れているというスキル本のバイブルであることは変わらない。
思考の整理学 (ちくま文庫)/外山 滋比古

¥546
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(ちくま文庫・546円)
「人間にはグライダー能力と飛行機能力がある」と、のっけから面白い。
学校は教わるところでグライダー人間をつくり、グライダーにエンジンを付けると、新しい社会や世界へ飛翔する飛行機人間がつくられる。学校で教わっても、それを応用したり深めたりできなければグライダー人間のままで終わってしまう。そこで、なぜなのかと疑問を持つことでエンジンを手に入れ進歩できる。その思考法を解いたのがこの本だ。
著者には愉快な習慣がある。まず朝食を抜く。なぜなら、朝は頭の能率がよいからだ。午前中に仕事をし、お昼に朝食とかねて昼食をとる。その後昼寝をしてもう一度朝を迎える。一日に二度の「自分だけの朝」を迎え、能率が倍加するというわけ。
つまり昼寝をすることで、思考を生み出す元を寝かせて発酵させる。この「昇華させる」というのは寝かせるだけでなく、細部を省いて関連づけ要約する整理力もはたらく。うまくいけば、質的な変化ももたらされまったく新しい発見ができる。それには、捨てて明確化する勇気が必要。
読んでいて頭が良くなりそうな錯覚は悪い気分ではなかった。やはり、かつては50万部、今も月に10万部ずつ売れているというスキル本のバイブルであることは変わらない。
思考の整理学 (ちくま文庫)/外山 滋比古

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本との気持ち10
「デジタル一眼」上達講座 田中希美男 著
(アスキー新書・980円)
オールカラーの新書版。真っ白いページで重要事項もゴシック体になっていて読みやすく、洗練された編集だ。本の手触り感も気持ちよい。
そんなわけと、デジタルになったカメラの勉強を一から見直すつもりで購入した。編集者なのに今頃になってと言われそうだが、詳しい解説書よりも、いつも入門編の本こそ有り難いものはない、というのが僕の考え方。とうに知っていることがほとんどでも、書き手の持論に思わず納得してしまうこともある。
そこで、いつも全自動のオートでよいというわけではないので、デジタルでも絞りや露出を使って撮るとオート以上に的確に撮れるのが楽しい。デジタルといえども三脚は欠かせないし、露出補正・ISO感度・ホワイトバランスはデジタルカメラの操作の三種の神器だ。夕暮れや夜景ではホワイトバランスが決めてとなる。あとはRAWで撮ることだけが実践の課題に残るくらいか。
高級な一眼レフもいいけれど、ミドルクラスが一番仕事がしやすい。ニコンでいえばD5000あたりではないだろうか。一緒にカメラバッグにしのばせておきたい一冊だ。
カラー版 基本がわかる!写真がうまくなる!「デジタル一眼」上達講座 (アスキー新書 75)/田中 希美男

¥980
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(アスキー新書・980円)
オールカラーの新書版。真っ白いページで重要事項もゴシック体になっていて読みやすく、洗練された編集だ。本の手触り感も気持ちよい。
そんなわけと、デジタルになったカメラの勉強を一から見直すつもりで購入した。編集者なのに今頃になってと言われそうだが、詳しい解説書よりも、いつも入門編の本こそ有り難いものはない、というのが僕の考え方。とうに知っていることがほとんどでも、書き手の持論に思わず納得してしまうこともある。
そこで、いつも全自動のオートでよいというわけではないので、デジタルでも絞りや露出を使って撮るとオート以上に的確に撮れるのが楽しい。デジタルといえども三脚は欠かせないし、露出補正・ISO感度・ホワイトバランスはデジタルカメラの操作の三種の神器だ。夕暮れや夜景ではホワイトバランスが決めてとなる。あとはRAWで撮ることだけが実践の課題に残るくらいか。
高級な一眼レフもいいけれど、ミドルクラスが一番仕事がしやすい。ニコンでいえばD5000あたりではないだろうか。一緒にカメラバッグにしのばせておきたい一冊だ。
カラー版 基本がわかる!写真がうまくなる!「デジタル一眼」上達講座 (アスキー新書 75)/田中 希美男

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