足るを知る
足るを知る 捨てるが勝ちで 俺を知る
断捨離だなんてとっくのうちに終わったさ。
五十を過ぎたら身辺整理を趣味にしてきたからね。
あとは流れるように生きる。
笑いたい時に笑い、泣きたい時に泣き、酒を食らいたい時にはたっぷりといく。
周りがはしゃいでいようが、どこかで噂されようが、
同じ空の下、たいして変わりゃあしねぇってことよ。
断捨離だなんてとっくのうちに終わったさ。
五十を過ぎたら身辺整理を趣味にしてきたからね。
あとは流れるように生きる。
笑いたい時に笑い、泣きたい時に泣き、酒を食らいたい時にはたっぷりといく。
周りがはしゃいでいようが、どこかで噂されようが、
同じ空の下、たいして変わりゃあしねぇってことよ。
老いたなら
老いたなら 清く正しく 大人しく
歳をとるとタチが悪くなる年寄りにはなりたくない。
そのために「3ない運動」を始めた。
それは「安宅の関」の
「会わない」「食べない」「買わない」。
どうだ、やれるか。
やろうじゃない、要はじっとしていればいい。
歳をとるとタチが悪くなる年寄りにはなりたくない。
そのために「3ない運動」を始めた。
それは「安宅の関」の
「会わない」「食べない」「買わない」。
どうだ、やれるか。
やろうじゃない、要はじっとしていればいい。
本との気持ち78
「居酒屋兆治」山口 瞳
(新潮文庫・420円)
最近テレビの「居酒屋放浪記」をよく観る。上京しては宿泊のホテルから程近い放映された居酒屋に立ち寄ってくる。たいていの店には番組案内人の吉田類が写ったポスターが貼られていて、そちらの壁の方を時折見やりながらちびりちびりと楽しんでくる。
そんな昨今、本書を古本で見つけ再読した。
小説は、親友の婚家で火事を起こして家出したきり帰れないでいる女のさよが兆治の店に現れ、求婚してくれなかった昔のことを詰じって店を飛び出した夕暮れに、兆治が彼女を追いかけて行くところから始まる。兆治は上司と折が合わず会社を辞めて開いた店を茂子という女とやっている。しかし、消えてしまった女さよのことが忘れられない。店の立退きで仕事がなくなる悩みも抱えていた。そんなある日、馴染み客で店の土地を世話してくれた岩下が、さよはキャバレーで働いているらしいと呟いた。
客同士の喧嘩の仲裁や気の収まらない客との諍いが絶えない稼業の中、兆治は常連客とのやり取りに時折慰められた。北島という常連客が「今日はうまく酔えた」と喜んで帰った晩、「あきらめは天辺の禿のみならず」とか「すべからく人生も世の中もそうであってほしい」とか話した客の言葉を兆治は妙に身にしみて聞いた。また会社の苦い思い出を噛み締めながら、恨んだはずの昔を取り繕うよりも今を凌いで生きる方が俺らしいと無心になって包丁を研ぐ下りなども実に印象的であった。一方、若い教え子と結婚した校長の話や、向かいのスナックの「ママと寝た」とわざわざ言う客の話など酒場での他愛ない話も人生観をしみじみと感じさせる。そうしたストーリーの溜めがよく効いている。やがて「人が人を思うことは誰にも止められない」というテーマを象徴する切ないラストがやってくる。
小説の舞台は中央線国立駅近くの「文蔵」という居酒屋という。またその右斜め向かいには「若草」のモデルらしき「静佳」という店も実際にあったという。淡々と語られながらも、心の襞に触れてくるような小説の機微に富んだ会話はこたえられない魅力がある。やはり原作の小説の方がいいのは間違いなかったという気持ちは今も変わらない。
居酒屋兆治 (新潮文庫)/山口 瞳

¥420
Amazon.co.jp
(新潮文庫・420円)
最近テレビの「居酒屋放浪記」をよく観る。上京しては宿泊のホテルから程近い放映された居酒屋に立ち寄ってくる。たいていの店には番組案内人の吉田類が写ったポスターが貼られていて、そちらの壁の方を時折見やりながらちびりちびりと楽しんでくる。
そんな昨今、本書を古本で見つけ再読した。
小説は、親友の婚家で火事を起こして家出したきり帰れないでいる女のさよが兆治の店に現れ、求婚してくれなかった昔のことを詰じって店を飛び出した夕暮れに、兆治が彼女を追いかけて行くところから始まる。兆治は上司と折が合わず会社を辞めて開いた店を茂子という女とやっている。しかし、消えてしまった女さよのことが忘れられない。店の立退きで仕事がなくなる悩みも抱えていた。そんなある日、馴染み客で店の土地を世話してくれた岩下が、さよはキャバレーで働いているらしいと呟いた。
客同士の喧嘩の仲裁や気の収まらない客との諍いが絶えない稼業の中、兆治は常連客とのやり取りに時折慰められた。北島という常連客が「今日はうまく酔えた」と喜んで帰った晩、「あきらめは天辺の禿のみならず」とか「すべからく人生も世の中もそうであってほしい」とか話した客の言葉を兆治は妙に身にしみて聞いた。また会社の苦い思い出を噛み締めながら、恨んだはずの昔を取り繕うよりも今を凌いで生きる方が俺らしいと無心になって包丁を研ぐ下りなども実に印象的であった。一方、若い教え子と結婚した校長の話や、向かいのスナックの「ママと寝た」とわざわざ言う客の話など酒場での他愛ない話も人生観をしみじみと感じさせる。そうしたストーリーの溜めがよく効いている。やがて「人が人を思うことは誰にも止められない」というテーマを象徴する切ないラストがやってくる。
小説の舞台は中央線国立駅近くの「文蔵」という居酒屋という。またその右斜め向かいには「若草」のモデルらしき「静佳」という店も実際にあったという。淡々と語られながらも、心の襞に触れてくるような小説の機微に富んだ会話はこたえられない魅力がある。やはり原作の小説の方がいいのは間違いなかったという気持ちは今も変わらない。
居酒屋兆治 (新潮文庫)/山口 瞳

¥420
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