TRIANGLE -9ページ目
君の背中を見ている
僕の瞳に映るのは
何時だって哀しい事だ
まるで離れていく様に
その手を離す様に
笑えなくなるんだと
笑いながら零す
感情なんて失くして
いっそ全てを壊せば
許される様な気がしたんだ
どれだけの痛みを堪えて
この胸を掻き毟ったって
何一つ変わらないと
その口が嘯くのを
ただ静かに見つめた
そうだろうね、
君は何一つ変わらないさ
僕が握りしめた
この掌から擦り抜けたのは
いつも僕の心だけだ
優しい言葉の数だけ
僕は哀しい言葉を知っている
幸せの数だけの
痛みを知っている
そういう事なんだ
それほどまでに残酷で
柔らかな温度に滲んだ
約束は痛い程苦しくて
触れた小指の感覚分
僕は涙を枯らしていった
君の背中が遠ざかる
そんな夢の端で
手を伸ばして
食卓に広げた
皿を前にして
涙を零す訳でもなく
只々哀しいと
目を伏せた
白く拉げた
花束を踏み躙り
その丘を越えていく
遠くに見えた
曇天の雲が
僕の頭上を覆って
溶けていく涙の痕なんて
興味もないけど
掠れて消えた声も
何もない日常も
全部明日へと
越えていく丘の上で
誰かが笑っている
途切れそうな鼓動も
霞んでしまった視界も
置いていった心も
縺れそうな足に隠して
顔の見えない誰かが
静かにこちらを指差して
終わっていく事を
知らないと笑い
それでもなお
僕は此処で生きている
それはさよならなのか
それは哀しいのか
折れた茎を足元に
多くを犠牲にしたとしても
きっと、僕は。
春のその先を二人歩く影に
笑うことなく理想を重ねた
眩しいばかりの明かりを
その両手に抱えて
光は遠くはないだろう
何時だって近くにあると
伸びていく飛行機雲を追って
青く広がるコントラストに
手を離すことなく
どちらでもないんだと
分かれ道の前に立ち竦んだ
拒みはしない様にと
握った掌の温度を分けて
柔らかな季節の下で
君が笑える様に
理想が現実となる世界を
花束が君の瞳で笑う未来を
掬う様に呼吸をする
静寂に広がる瞬きと
白く虚ろな輪郭に
幸せの形を探していた
踏み付けた空の色は
滲み歪んで
それでも忘れない様にと
何度も何度も
胸の内に描いた
あやふやに溶けていく
頬に映る火花の花束に
どれだけの優しさを
望んで投げ捨てて
分かりあえないと
嘆きすらも呑み込み
涙を流せど
他人事の情緒に
幸せなど見付からず
見渡した白い虚無は
胸に満ちていく
残酷なまでの嘘を
知っていた筈なのに
巣食う為の呼吸を
何度と繰り返し
息衝き芽吹く花の名を
誰も知りはしないのに
静かなだけの世界に
羨望と切望を織り交ぜ
生死を問いかける様に
寂しさを手向けた
温かな温度を
知らないままに
救う為の掌は
傷付き噤んだ
引き締めた唇の端は
痛みを伴って
眼が孕む熱量を
何時から忘れていた
温度を忘れた世界ばかり
この双眸に広がって
色彩に身を埋める
そんな夢を語らって
幸せの合間を駆け抜ける
舞い上がる花弁に口付けて
温度が指先に伝わる
そんな夢の続きを、夢見て。
大切にしたいと
抱きしめた腕は
何時からか愛玩を慈しみ
摩り替わった愛情の果てを
見失ってしまった
誰も見てはいない
誰も聞いてはいない
全ての最果ての行方を
拾い集めては壊して
枯れてしまうだけの言葉なら
最初から必要なかったのに
罪悪の積み木を崩して
美しいだけのハリボテが
少しずつ歪んでいく
どれが正しかったなんて
最初から一つしかないのに
腕の中で死んでいく
哀願の骸を抱き締めて
優しいだけの世界に
別れを告げる
落ちていく天秤と
既に失われた均衡に
泣き笑いにも似た
懺悔を向けた
草臥れた心の先で
夢見た理想郷を殺める
千切れ折れた心は
きっと今は夢を見ない
全てが終わって
最愛を閉じ込めた感情が
何時か昇華出来る様に
貴方を愛した事を
全て愛せる様に
最愛に、捧げる。

