TRIANGLE -8ページ目
指先を取って
口付けて
涙は枯れた
僕は立ち竦む
誰も知らない
何も知らない
きっと燃えてしまった
それだけのこと。
辿った道筋を
全部全部失くして
君と在ったことさえも
どこにも在りはしない
それでも幸せなのだと
言えるのならば
何も言えなくて
その優しい思いも
柔らかな眼差しも
何も言えなくて
君は凍てついて
その足を止める
僕の呪縛を
両手に握ったまま
歩いてごらんよ
君は先に行けるだろう、
どうして立ち止る
どうして笑わない
どうして泣いている
僕はこんなにも枯れているのに!
僕はこんなにも満ちているのに!
寂しいだけなら
必要なんてなかった
この心の行く末を
一緒に燃やしてしまいたかった
どうして満ち足りたこの世界を
君が、君がどうして否定する?
幸せだと言いたかった
君が先に行けるように
僕が先に逝けるように
それだけの幸せの在り処で。
忘れたとは思えない程
その熱量は僕の身体に残る
爪痕は静かに抱かれる
君のその両腕は
何の為の箍だったのか
今ではもう分からないまま
置いていかれた花束の
その香りの後先に
誰かの面影を見た
思い出せるかなんて
微かな朧に夢も見ないで
言えるわけがないだろう?
だって笑えもしないのに
その瞳に映る絶望を
僕の胸に残していく
傷痕は柔らかに眠る
赤く引き攣った口元を
乾いた眼窩に覗く
哀しいだけの世界をなぞる
その足音が遠ざかる明日と
忘れてしまった昨日と
一体どちらが残酷なのか
分かりはしないけれど
君の胸元に眠る花束を
僕が貰い受ける頃には
絶望が足を取るだろう
その枷の重みのまま
沈んでいってしまえたら
きっと笑えるだろうか
手向けられた哀願の所有を
二人で分けあえたときには。
嘘を吐いて笑う
その瞳の奥が歪む
私の瞳すらも滲んで
混ぜ合わせるたび汚く
淀んだ空気の呑み込んで
口端を引き攣らせて
置いていく足音を
見送るだなんて憎悪を
この胸に抱えてさ
「変えるから」なんて
他人任せな宣誓を掲げて
満ち欠けを繰り返す
月の真下よりも危うく
微かなほどの信頼もなく
笑えもしないだろう?
それが全ての答えて
嘘吐きを指差して
それが赦されると
傲慢な勘違いの契約で
そうして淀ん だ空気が
肺の中を満たしていく
黒い月が欠ける事なんて
今までだって一回もないだろう
そんな闇に溶け出した姿でさ
なんて滑稽なんだろか?
答えなんて持っていないのに
変えられない事を知っている
人々の群れの中で
間違い探しの弾き合いを眺め
願いだなんて嘘を重ねて
歪んだその瞳の海を
敵対と憎悪の狭間をたゆたう
奇怪なその言葉を
君だけは知っていたのに、
知っているのに。
目蓋を押し上げて
光の輪を覗く
暗い暗い海の底から
見上げる青空は
何処までも広く
限りなく高かった
この手は届かない
伸ばすだけ無駄な事は
最初から分かってた
選ばない言葉の端を
握りしめ離せずに
隣で触れる温度の形は
何時からか見失って
正しさの意味を忘れていった
その夢は未だ此処に在る
僕の存在意義を
その上に何度も重ねて
僕がそう、在りたい事を
君は笑いもせずに受け止め
そうして消えていった
揺らめいた炎の向こう側を
小さく覗き見た深淵を
僕は知ってしまったんだ
目蓋を透かしみた光に
言葉は浮かび上がった
呼吸を忘れた屍は
二度と笑えはしないと
そんな嘯きを零して
僕が離れたのか
君が離れたのか
それとも初めから
僕らは途切れていたのか
千切れてしまった糸の最初を
追いかける事なんて
僕には出来ないけれど
海の底から覗いた
光の束を君が差し出す
手向けた鮮やかな色彩に
君が笑っている事だけは
僕の瞳に今も焼き付いている。
目蓋を閉じる
左右で映し出す
鏡の法則を指で弾いて
『正しさ』を並べて語る
滑稽だなんて笑って
知らぬ存ぜぬを貫く
その割に鋭い視線で
笑えない程の痛みを
孕んでいるだなんて
何処かへ散らした
熱の様だなんて
ふざけていないで
指先一つで導いて
紅色を舐めて
広げた金色をなぞる
辿る血の痕も
淡く溶けてしまって
そんな風に笑って
あの人を忘れてしまって
あぁ、『正しさ』なんて
何一つ正しくないじゃないか!

