底に落ちた冷たさで

緩やかな終わりを

静かに眺める


それでよかったのだろう

君の掌の温度を

何時しか忘れた僕では

君の微笑みを

守る事は出来ない


救いはそればかりと

君の足跡ばかりを

追いかけては途切れる

呼吸の音は

未来には繋がらない

それを知ってなお

僕は諦めきれず

呪縛の糸を指先から零す


笑ってほしいと

願うことすらも

傲慢に振り翳された

力の在り方を騙る


その先に続いた

終わりの夢は

君を最後に埋めて

閉ざしたその瞳を

眺めるだけの世界を

僕は独り繰り返す


悲しみに満ちた意図に

僕は君を愛するだろう


それでも幸せだったと

世界の終わりを夢見る様に


目を開けど

その夢は覚めず

淀んだ温度の中で

密かな呼吸を繰り返す


瞬きの度に逃げていく

熱を在り処を丁寧に

胸の内に広げていく

傷痕は膿んだ絶望を

触れては爛れていく

その夢の後先を

追いかけた貴方の背を

僕は何度も手伸ばし

揺れた眼差しを

知らないふりした


褪めた世界に

足音を鳴らして

どれだけ辿って

僕は気付かないで

後ろ手に隠す

仮面の気持ちは

無機物な懺悔の証


もういい、と

笑うその奥を

冷めた瞳が見通す


何が、どれで、そうだとしても


貴方のその腕を

強く掴んで

引っ張りあげ

連れだしたなら

きっとこの夢は

醒めた腕の中で


繰り返す呼吸と

繰り返す瞬きと

どれだけの数を超えて

息を吐き出した


優しい言葉が

胸を擦り抜けていく

柔い日差しの下で

君の瞳を仰ぎ見る


まるで夢の様だった

並んだ木陰の縁

撥ねた水明りの畔

温かな掌が僕の手を取り

先を歩いていく


痛みを感じようと

寂しさは感じなかった

悲しみが胸に満ちようと

苦しみが胸に落ちる事はなかった

それがどれだけの幸せか


どれだけの事が

僕を巣食い、掬い、救い。

安らかに眠れど

その瞳に焼き付く夜の帳に

僕は忘れてかけていた

確かな熱を思い出した


優しさに眠る

その胸の内に問いかける

熱を孕んだ嘯きに

僕は気付かないふりで


日差しに目を細める

君の瞳の温度でさえ

微かに溶けていく

彩りの墓場に

離れていく言葉を選んだ


幸せに満ち足りた愛は

君に届ける手向けへと

振り返る必要も

先を見る必要も

ないのだと嘘吐いて

気付き目を伏せ笑う

それすらも哀へ近付く


それでよかったと

夢の様な日々を

歩んでいく幸せを

僕が君と在れる幸せを

ただ只管に願った。


その目蓋を伏せて

一つ二つと消えていく

言葉の色を

静かに追いかけて


埋もれては

くぐもって溶ける

微かな残滓でさえ

残してはくれないで


静寂に笑いかける

睫毛が静かに揺れて

その唇が震える頃に

優しさは芽生えるだろうから


思い出さなくていいよ

その潜めた瞳に映る

柔らかな闇も知ってる

孤独はその胸の奥で

君に寄り添って泣いてる

忘れてくれはしないよ

それはそれで正しく在ると

消えそうな吐息を呑んで

何も言えないままに

映した世界は

どんな色をしていた?


哀しいだけなら

きっとそれは寂しいから

永遠なんてありえないから

光が覗く朝までは

その温度だけが確かなもので


揺れ動く鼓動の痕に

僕は手を伸ばした

二人ぼっちに生きるより

どれだけ寂しいことか

分かってはいるんだよ

知ったつもりで

それでも良かったなんて

きっと濡れた瞳で見つめても

なんの意味もないけれど


優しい闇が包んでいく

静かな痛みを伴って

笑ってみせるさ

朝がくるまでは

僕が僕の為に

そうであろうと


きっとね、

またあした。



預けた胸の痛みを

僕は思い出せずに

遠ざかる背中と

冷えたままの指先に


泣いていたって

何も変わりはしないだろう

光を辿る夢の中で

隠れていても

足取りは重く引き摺る


揺らいだままの瞳も

歪んだままの視界も

何一つ世界を変えれずに

蟠ったままの感情を抱えた

その足を掴んだのは

一体誰の言葉だったか

忘れない様に仕舞った筈の

最初に口付けた音は

何処にも行けないままに


行方知れずになった

その言葉の先の意味を

傷付けないまま

僕は伝えられるだろうか

その痛みを共に並べて

指差した胸の中を

僕は「感傷」と名付けた


きっと許されも

思い出しもしないだろう

その胸に引っ提げたまま

向けた切っ先の意味も

その瞳が笑った理由も

何一つ分からないまま