TRIANGLE -68ページ目
ホームの向こう側
雨音が遮る視界
カンカン、と鳴り落ちる
遮断機に置いてきた
その手を振って
見送るベンチの上
握りしめた掌も
誰もいない無人の駅
全て忘れてしまえば
投げ出す事も怖くはなくて
フェンスが揺れる
雨の匂いは
嗅覚を鈍くして
また笑えないよ、
分かってるくせにさ
引っかかりを覚えたまま
手を伸ばすことだけは
出来やしないんだ
それが答えだと言う様に
過ぎていく時間の見送った
電車の塗装は
静かに剥がれていく
雨に晒されたまま
傘の中に入らないって
そう言って泣き出す君も
同じ様なものなのにね、
錆付いたレールの上
知らないふりして
そこに立つ君も
夢の様な世界で
二人手を繋ぐ事を夢見て
まだ、言えないよ。
投げ出す事も、
逃げ出す事も、
本当は怖くて出来やしない
それでもホームの向こう側
ベンチに腰掛けた君は
擦れ違う電車の窓から
手を伸ばすんだ。
優しい声だけ
迎えに行こうか。
僕の世界は
何時も此処に在るよと
そんな嘘を吐いてまで
君はその手を伸ばして
僕が振り払ったなら
きっと泣きそうに笑いながら
その手を力なく落として
また振り出しに還るんだ
零れてばかりの言葉
伝えたい事は
何一つ伝えられない癖に
弱虫、なんて
どれだけ口にしたって
言えやしないんだ
胸の中に仕舞ってばかり
街の間を擦り抜ける様にして
君は、また笑うから
また言えなくなってしまうよ
動けないまま
立ち竦む僕の背は
何時だって立ち止ったまま
そんな優しさなら
必要ないんだよ、なんて
転げてしまうから
言わないでいてよ
お願いだからさ、
今のままでいたいと
そう言っては嘘を吐いて
この胸が張り裂けそうなほど
言えないんだ
知ってるよ。
分かってる癖に、
君はまた笑うんだ
僕は弱虫のまま
伝えられない事を
君のせいにして
優しい声が
其処にあるんだよって
君がそう言うから。
僕は、優しさだけを迎えに行くんだ。
忘れていいよ。
何時か忘れてしまうなら
昔も未来も
何一つ変わりはしないから
笑ってる君も
泣いてる君も
全部今だけのもので
思い出せないから
また僕は繰り返して
歯を見せながら笑う
この夜は幼いながら
丁寧な歌を紡いで
此処に還るんだ。
ぱらぱらと不規則に
打ち付ける雨の音も
迎えに来てくれたんだ
そう言ってまた君は
その手に力を込めて
歪みそうになる顔を
俯かせながら
天秤にかけるんだ
「それは、きっとそう。」
昔の事なんだって
笑ってそう言って
流れたはずの雲も
撫ぜて過ぎたはずの風も
キラキラと鏤めながら
悲しくはないんだ。
だけどそれは理由にならなくて
それなら別にいいんだ
また恋を語るには
あまりに幼い僕は
また忘れてしまうだろうから
私は祈ろう。
続かぬ言葉は
其処で止まったまま
瞳から零れ出た
夢にも似た
何時かの感情に
隠す事を諦めた
私は、祈ろう。
何度でも
そう呟いては
力を込めて
食い込んだ爪痕は
神という名に
血の跡を残して
私は、
届かないまま
墜落しては悲しく
貴方は知らないであろう
悲劇の序章は
何時の間にか
幕が上がり
舞台の上で笑う
私は独りいるのだ。
溢れ出した感情
追いかけた
雲の隙間
何時かの夢も
何年も後に目が覚めて
朝の緩やかな時間に
君を忘れるんだ
幸せだと、悲しげに呟いて
笑えなくなるその日まで
目を合わせられなくて
小さく噛み千切った
言葉の端々を繋げて
どうしようもなく
寂しさだけが募って
歩くたびに離れていく
踏み締めたアスファルトは
音を鳴らして忘れた
何もない日々は
何時だってそうさ。
忘れてしまえば
誰だって楽になれる
溢れ出した感情
追いかけるのは
もう止めようか
此処にいる理由は
特別じゃないんだ。
笑えなくなるその日が
何時か近い未来
僕の元へやってきて、
そうしたら僕はようやく
最後の笑みを浮かべて
その手を取るんだ。

