腕一杯に思い出を抱えて

差し出す最後の果実に

訳もなく泣きたくなって


小さな約束も

廃れた笑い声も

掠れてしまった背表紙に

溢れた涙が静かに伝って


一人ぼっちで語る

破れてしまった思い出に

忘れてしまった記憶が

少しだけノックをして。


変わり始めた季節の中で

君の笑顔だけが

今も思い出せなくて

溢れだしたままに放って

放物線に溶けていった

君が投げ出した言葉も全部

語るには僕はあまりにも

忘れすぎてしまった


幸せな季節が過ぎて

きっとこうして僕らは大人になる。


幸せを忘れながら

幸せに埋もれて。


夢の様な夢を、

駆けた足音を辿る

悲しい二人ぼっちを

君は覚えてるか?


忘れられた残響

夢の残照と

熱を孕んだ嘘を

君の瞳に映して

静かに揺らめいた

その先で笑う誰かの姿を


走って、

走って。

爪をたてた

灰色のフィルムで

君が両手に抱えた

心を思い出せるか?


まるで褪せた様に

君の声を辿った

夏の温度が頬を撫ぜる


まだ、終わっちゃいないだろう?


夢の様な現実を

君は覚えているだろうか。

消えてしまっても

やっぱりダメだったって

笑う君の横顔を

僕は鮮明に覚えてるのに


鮮やかな茜が

記憶の端で揺れた

嗚呼、覚えているか


夢の様な世界で、君は。


何も聞こえない様に

緩やかに嚥下して

咀嚼する満月の夜

左手に掴んだ

フォークで涙を拾って


見ないふり、

優しいだけの声に

この心は離れて

目蓋に焼き付いた

言葉を二人眺め

立ち竦んでしまえば

きっと、分かりはしないさ


穏やかに変わる

色彩に溺れて

瞬いては忘れる

君の瞳に泳ぐ

星屑の魚に笑った


きっと飲み込んでしまえば

誰も言えなくなるさ、

寂しいだけの二人は

隣に孤独を置いてしまえば

移ろう夢の中で

終わってしまう物語を


君の明日を願いながら

僕は君を忘れる

夜の淵に腰かけて


またなぞろうか、

消えてしまう夜の月を。


また明日。


さようなら。


それっきりの

世界の果て


電車のドアに消えた

君の声みたいに

まるで、最初から

なかったみたいだ。


希望論の様な

意味のない言葉を

理由をつけて

一つ二つ並べた


さようなら。


さようなら。


遮断機の向こうで

君が手を振る

伸びた爪が、

僕を裏切った様で


また明日。


それっきり。


呼吸をする事すら

苦しくなるんだ


揺れ動く電車の

終点に僕の姿はなくて

枯れてしまった落ち葉は

踏まれてしまうんだ


嗚呼、ほら。

街が朝日に溶けていく

もう何も見えない事も

忘れてしまう事も


きっと何一つ知らなくていい

詰まった喉の奥で

笑えない冗談だって

笑ってしまえばいいさ。


さようなら。


たった、それだけで。


そこに救いはあるの?

夢にまで描いて

手を伸ばした先は

誰かに愚かだって

笑われたって


僕は君になりたかった

ただそれだけの願いで

僕の心を殺して

憧れが強く染み付いた

その瞳を瞬かせて

誰かの憧憬を殺めた


まるで幻想みたいに

口を開く事を恐れてさ


その手を振り払った

君の表情は今でも霞んだまま

選べない様にって

僕は部屋の隅で膝を抱えて


こんな僕の事を

君は只管に望んで

静かに感情を淘汰した

その先の舞台じゃ

何一つ感情を選べないんだ


君が笑うその笑顔は

本物の君の感情なの?

僕が選んだ世界は

こんなにも残酷で

苦しいだけなのに、


嗚呼、眩しい限りの

君の笑顔は遠い。