何も思わないで


何も知らないで


僕らしいを継ぎはぎで


色々ひっつけたまま


「僕」を静かに隠して


奥底から覗く


僕の心は見ないふり


だから君も見ないでよ


今日も明日も明後日も


僕は消えていくから


息を殺して


目を閉じて


膝を抱えたまま


僕は呼吸を締め出す


そんな世界で


お人形の様な瞳で


僕は世界を望んでいるだなんて


そんな嘘吐けないよ


本当の話だって


そんなもんだろう?


僕らしいだなんて


きっとそれも嘘なんだ


引き裂いた腕の中で

もがいて足掻いて

ただ只管に傷付いて

それでも笑う貴方を

私は静かに見ていた


その傷を抱くには

どれだけの強さがあれば

良かったのだろうと

何度も何度も思って

私は私を殺していく


たったの一度も触れずに

突き放した心が

何もかもを失くした痛みに

耐えきれずに泣いてしまうから


信じる事は容易く

また、裏切る事も容易い

一人で生きていく事も

ある時は正しく容易く

そして何よりも辛く苦しい事を

私は知っていた

それは知ってる痛みだった


この腕の中で夢を見て

貴方が泣いてくれる事を

私は夢見続けて

きっと愛し続けるのだろうと

溢れ出た心を掬って

遠くの海原へ手離す

それで良かった


どれだけの強さと

弱さを選んだとしても

私はもう此処へは戻らない


愛し続ける為の強さは

優しく丁寧に手折るから


何も知らない様に

一人夢見る事

揺られた吊り革の奥

窓に映る顔は

殺した感情が見付からないと

泣いている子供の顔で


不明確な輪郭と

曖昧なままの言葉と

あやふやになっていく

凍えた心を置いて


走り出したバスを背に

僕は何を知ってるのか

それすらも知らないで

何処にも行けないで

恥ずかしいままに顔を隠して

探していた筈の感情も

夢を見ていた筈の夢で


落ちていく理想が

君と二人で逃げ出す為に

錆付いた釦の様に

開かなくなってしまって


寄り添う二人に

静かに手を振って

一人此処に置いていこう

揺られた吊り革の奥

悲しいだけの景色を通る


バスは何処へでも行こうか

外した釦は夢の中で


手繰り寄せて

覗き見た隙間から

彼が笑っている


嗚呼、またそうかと

伏せた目蓋から

滲む視界の果て

僕が泣いている


掌から転がって

触れては腐り落ちる

言葉の端で

君は静かに指差した


千切れた糸を

僕は一人抱えて

笑えない顔で

歪に感情を表す


「哭いたって

何一つ変わらないだろう、」


冷たく頬濡らす

救いの無い意図は

散らかしたままの感情で


隙間から覗いている

その瞳の奥は

誰も笑えないまま


君が笑う。


僕が笑う。


一つ雫を

指で弾いて


弾き出した言葉

震えた指先は

何を掴む訳でもなく


離れた掌

冷たく広がる

水面に瞳を転がす


遠く感じた声と

淡い水色は

遥かに零した

両手の隙間から

何も見えないふりして

透き通った青は

酷く綺麗に

僕の首を絞めていった


足元に浸る

絶望は色を失って

まるで無色の嘘が

僕の喉を潰して


波も立たず

落ちていく僕が

綺麗に澄んだ

青の言葉を

指先は幽かに触れる


痛みは感じない

瞳は乾いたまま

何も伝えずに

静かに悲しんで


沈んでいく墓標は

悲しみを帯びた

彩色の箱庭と

咲き誇る残酷な花束に

優しく彩られながら


溺れた僕の呼吸を

奪い尽くして青に還す