TRIANGLE -29ページ目
目元に引き落とすゴーグル
灰色の視界を青で埋め尽くす
何も知らないでいい
雑居の大群の隙間を縫って
倒れる虚像の悲しみに触れる
絶望の合間を覗いて
誰が救われた?
それは酷く綺麗な
空の高さを選んだ
幽かに見開いた瞳は
鈍色の鏡に映される
それはまるで悲しみと一緒で
痛みも辛さも
何一つ知らなければ
優しさで殺す様な真似
する必要なんてなかった
苦しみが後をひいて
両手に残された
曖昧な感情は
きっと寂しいだけの
雑踏の群集心理
嗚呼、その瞳を踏み付ける
どれほどの痛みなものか
誰だって選ばないのに
その腕を伸ばした先で
ゴーグルに映した
空の青さは何処まで遥かに?
溶かした残酷な空の嘘に
飛べもしない背中の羽で
ヘッドフォンが外れたままの
首元に草臥れた証と
美しいだけの世界の
残酷な有り様で
傷付ける事を厭わないで
「少年は虚構の空に色をつける」
冷たく映る
水の中で
浮かび上がる呼吸
泡沫に涙を預けて
濡れたままの足で
貴方を追いかけて
裸足のままだとしても
忘れてしまう前に
貴方が居なくなる前に
その手を掴んで
離さなくてもいいように
温もりを辿って
優しさは落ちていく
その胸の奥で
零さない様にって
小さな両手で
言葉を抱えて
足を水につけて
貴方を一人待つ事も
もういつの頃か
当たり前になって
波紋が水面を揺らして
貴方の顔を思い出せなくても
例えばの話で
貴方が居なくなっても
確かに思いだせるように
確かに貴方を愛した事を
忘れてしまわないように
燦々と煌めく
光を眼に焼き付けて
誰よりも愛しましたと
小さく嘘を吐いた
覚えていますか
そんな言葉に耳を塞いで
君が笑う声に
心を小さく突き刺して
喜びは爛れそうな頬に
忘れてしまった痛みを残した
放っておかれた心が
僕の横に立ち竦んで
ノック一つせず
掻き乱す様に爪を立てた
何も知らないだろう、
この煌めく光の一束も
思い出す事は出来ないというのに
君の手を取り走り出す
何も知りはないだろう
影を残す事もなく
愛を語る事もなく
小さく二人の姿を映して
散らばった光の中で
息絶える様に泣き出した。
何を選んで
何を捨てるか
誰を選んで
誰を棄てるか
天秤を眺めて
少しずつ終わりに近付く
足早に過ぎていく人々
背中を丸めて口を押さえる
何を知っているのか
何を見ているのか
何を分かっているのか
丁寧に振り解いた
情報はその手を汚して
嘘ばかりを祭り上げていく
誰の罪だってか
誰の罰だってか
なんのための言葉だと
その頭に突き付けて
死んでいく瞳を
焼き付けてやろうか
救えもしない
自由も殺された
ならどうすればいい
悩むくらいなら
その手を伸ばす事くらい
簡単な事だろう
誰かを選んで
その罰を擦り付けて
助かったその嘘を
みんなで分けあいましょう
苦しむのは
何時だって同じなのだから
崩れたガラクタの下で
死んだままの身体を
投げ出してしまって。
もしもこれが
答えの見出せない最後なら
僕は何の後悔もせず
生きていく事が出来るだろうか
君が笑っている
僕も笑って
誰もが皆指差す
その先が幸福なら
ぬるま湯に浸かった様に
僕はその瞳を濡らして
頬を伝う雫を
きっと見ないふりをした
それでいいのかと
問いかける声は
遠くに追いやって
知っているんだろう、
夢は温かく
まるで理想の様で
笑ってほしいと
願っているだけなのに
さようならの言葉を
心で折り曲げて
消えてしまう前に
足を踏み出そうか
それが絶望だとして
僕が選ぶべき道が
そこにあるのだとしたら
もしもこれが
答えの出ない旅路なら
僕は幸せだと言い切れるのだろうか
分からないけれど
それでもいいのかもしれない。

