綺麗なものだけを

見出せるように

僕だけの形を

殺してみた


綺麗に見えたけど

凡庸で平凡なソレは

綺麗でもなんでもなかった

問題ない、そう言えれば

きっと綺麗なだけの

無機質に変わってしまう


泣きそうになりながら

触れてみたソレは

冷たいただのもので

何も残らなかった

それが無駄になった

僕のものじゃなくなった

意味なんて、ない

理由すらないのに

存在証明すらも赦されない

僕がこの手で殺した


僕の心は 救われなかった


「きたない、」


気付いた、僕の心は

それだけだったのに。


「あ、」


それは綺麗なソレは

僕の心に宿ったはずの

小さな、感情。


掬わなくちゃ

拾わなくちゃ

僕が認めなきゃ

赦さなきゃ

僕の心は

ソレだけだから


足音鳴らして嘯いた

誰かの休日に翳す

電子音の交錯にも

クラクションが邪魔をして

遮る様に君の前に立った

折れ曲がったガードレールと

アスファルトに飛び散った

感情の束に口を開いた


阿呆みたいな表情ぶら下げて

不規則な足音を蹴飛ばしす

踏み切った足の裏が跳ね返す

その地面の固さに伝える


ヘッドホンの中から聞こえる

鼓膜を震わせた音波の意味を

君が語る嘘みたいな言葉の羅列

時計の規則性の壊す様に

その針を人差し指で左に傾けた


馬鹿だなぁ。


その一言が突き刺した

情けない風に眉毛を下げて

片手を伸ばして理由を取り上げる

僕が零した言葉の中身すら

君が望んだ日常には無駄なモノ

だから僕はその身体を押し返すんだ


電波の波の上に立っている

君はベットの上で笑っていた


少しだけ苦しくて

少しだけ哀しい

ただそれだけの事に

嫌に泣きそうになる

どれかの選択肢で

誰かの意思が殺されて

首を絞めつけられる

気道が細く震えて

吐き出されたものは

意味を持たない呼吸だった


屍の様に倒れ込む

受け止めるものは何もない

ただ無感情に無感動を装う

装飾された言葉に

愛想笑いが醜く歪んで映る

瞳の奥の方で

硝子玉がごろりと動いた




「楽しいね」


「嬉しいね」


「好きだよ」


「好き、」




少しだけ、泣きたくなった




どうして僕は素直に云えない

癒えない心の分だけ

拭えない不快感さえも

慈しむ事も

出来ない癖に。


失った言葉の数だけ

選べない事が増えた

言い訳が口の中で暴れる

それでも伝えられない

意味を履き違えた言葉

僕はまた君を失う


重ねた視界の中で

逸らした世界が眩んだ

僕が見えないモノは

僕が目を逸らしたモノで

僕が望んだモノは

僕が選べないモノになった

それは矛盾に繋がる

僕の心の不安定な感覚

不釣り合いなほどに

大きく抱え込んだ不安に

きっと揺さぶられてしまうから


本当に隠れてしまったモノは

いったいなんだったのか

僕が理解出来ていたのは

全体の何割なんだろう

君を知ることが出来るのは、

何時になるんだろう


それは僕なのか?

君は失ったのか?

君は其処にいた

僕は此処にいた

誰も触れていない

言葉で突き放したのは、誰だ?

選べないと選ばない

そんな嘘をついたのは、誰だ?


誰だった?

失ったのは、誰だった?

それは本当に、失ったのか?

目を開いて其処にいるのは、

あの日の君、で。

嗚呼、ようやく

ようやく言葉の意味を呑み込めた

失った、君の姿を。


ぼくは。




――みつけた。


馬鹿みたいな顔した標識が

信号機に乗り移って

騙す様に右左振り切る

遮断機の向こうの危険色

僕の伸ばした掌と

過ぎていく電車が交錯して

届かない距離分の後悔と

伴わない感情が煩わしかった


追い付かない音だけが

鼓膜震わす誰かの悲鳴

それが君の身体を貫けば

落ちていく膝と力を失う身体

視界が霞むのは

きっと乱反射したから

太陽と目があった瞬間に

信号機と歩道の間で踊ってる

蝉の声が飽和して爆発した


蝉時雨を肩に受けて

君が揺らした半袖から垂れる

日に焼けた細い腕が折れ曲がって

僕の瞳を奪い去って笑ってる

どうしても終わらない夏の日が

体温を奪っていってる気がして

誰かが叫んだ劈く様な声と

甲高い金属音が同じ様な世界で

酷く重たい重力に従う

思考回路の伝染、感染、発症

デリートされない行動と発言に

振り回されてる君の世界と

落下していく僕の人生が

空回ったメビウスの輪の中で

嘲笑ってる気がしてたんだ


もう其処に置いてきた

鞄に詰め込んでいたのは

落書きされた教科書と

どうでもいい様なプリントだけで

標識という指標を蹴飛ばして

信号機の下で嗤ってる

蝉の眩んだような声に立ち止って

君が当たり前の常識を語るんだ


動かない足を振り上げて

泣き出しそうな表情の裏で

伸びた腕が振り下ろされた

そうして今日が終わって

明日がやってきて

同じ様に同じ人を繰り返す

笑っている標識と

意識を失った信号機が

連続回転、落下速度上昇中


全部此処で終わり!