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翳した掌
その先に見えた
嘘ばかりの日常
会話も成り立たない
影踏みの世界と
逆さな月の瞳を
見えないふりして笑った
サイコロの目はいつも同じ
赤いソレを裏返して
イカサマを繰り返した
慣れればそんなもんで
不思議と違和感を忘れた
落下してきた意識も
ワザとらしいね、なんて
嘘をまた重ねて笑った
指の隙間から見えたのは
本当に嘘だったのか
実は事実だったんじゃ?
実は本音だったんじゃ?
今じゃ分からないけどね
別にいいんだけど
掌が触れた形に
今の僕が気付いてれば
時計の針を回して
あの日をもう一度繰り返して
ふざけていた君の時間を
木々の向こうから覗いた
本当の言葉なんて
すぐには出てこなくて
掌から零れ落ちた
サイコロはいつも同じ目で
それこそイカサマなんじゃないか?
なんて、
何を言っても同じなのさ
イマサラ、僕の言葉なんて
あの時の僕の全てが
今の僕なのだから
飛び越えた空の兎
一つの硝子玉は
君を赦してるのかな
淡い青色の瞳は
ビー玉みたいに
緩く細められた
横目でやり過ごす様に
視線を逸らせば
足元に落ちてるのは
誰の言葉なのか
大多数が「ハイ」なら
僕も流されてしまって
乳白色の雲を抱えて
笑えなくなった
それは少しずつ淀んで
鈍色に変わっていった
言葉には出来なくて
声にもならなかったけど、
恥ずかしくて
でも仕方なくて
紅色した瞳の奥で
触れた薄い皮膚の温度は
余りに脆くて
何の恐怖かも分からなくて
僕は悲しくて
訳が分からなくなった
「ハイ」と聞こえた
あの声は誰の声なのか
「イイエ」と呟いた
電車に掻き消えた声は
僕のだったのか
ただ黒帽子に隠れた
瞳の色はあの時か ら
ずっと変わってないよ
空の兎
鮮やかな色彩は
君の為の色である様に
思い出す事は
余りに簡単で
僕が考える事は
哀しい事だった
足取りを揃える事も
並べたそれは曖昧な
言葉の羅列と同じで
受け取り方一つで
すぐに崩れてしまう
虚無の城の様に見えた
砂の様に
するりと抜け出す
指の隙間から見えた
ぼけやた世界は
濁る視界を閉ざして
綺麗な物だけを映した
逃げてしまった心と
忘れてしまった声と
また覚える事を拒んで
誤魔化した世界が
僕を責めるから
もう一度、
この世界と向き合って
溢れたこの涙を無視して
今はただ自分と向き合う様に
夜を越える力が欲しかった
覗き見た物は
そんな綺麗な物じゃなかった
だけど確かな美しさを纏って
優しいのだけは分かった
忘れる事も苦ではなかった
だけど思い出したいと
そう思った
この意味のない言葉と
揃わなくなった足音に
謂れも無い苦しさを感じて
僕が行き着いた考えに
涙が溢れてきたから
また伸ばした掌が
君まで届いたら
思い出せるように
忘れた言葉も
声も心も
優しい温度で
揃えてみせるよ
もういちど、君まで。
開いた眼で
幼い熱を孕んだ
夢を見ている様な
優しい温度で
柔らかな掌を包んだ
「帰ろうか、」
茜色の坂道
振り返った横顔は
軽く頭を振って
振り払った思いは
どれだけの重さで
僕はその思いを
どれだけ汲み取れるのか
到底分からなかった
ただ怖いくらいに
君だけが愛しいと
口に出せるくらいには
恋しさを感じていた
目蓋の重さが
空気の冷たさに反して
確かな熱を伝えた
頬の温度を奪って
触れた指先の冷たさ
それが描くのは
君だけの心なのに
憎いくらいに美しくて
優しくて淡く溶ける
それが、息をした
優しく包む様に
抱擁された身体は
君の名前を零した
呼びかけた声は
淡白な世界を奪った
残ったのは
色鮮やかな世界だけ
仄暗い空を見上げて
君が薄く笑った
隣に在った筈の
微笑み遠くに見えて
レンズ越しの世界は
離れていった気がした
君が居ればいいと
そう思っていた
細く白い腕を掴んで
流した言葉も多いけど
淡く消えていった
泡沫さえも愛おしく
引き摺る様に
君を追いかけていった
レンズが映した
遠い世界の行方と
きらきら光る
鏤められた星屑が
僕の心を見透かす様に
この手を取って走り出した
あの日を許す様に
笑って君が腕を伸ばした
愛おしい、世界の話

