見送る灯

僕は一つ、

大人になった


悲しみが

過っていく

僕は

ソレを横目で見て

ふいと逸らした

気付かなければ

頬を掠めたソレは

生々しい温度を持って

僕を迎えた


「遠いよ、」


気付いて、

声をあげた

細めた視線は

灰を置いていった

白く濁る

視界の隅で

膝を抱えて

君は幼い僕の

手を引き連れた


縺れた足は

忘れてしまった

きっと今日も

君を忘れて生きる

紅色が反射する

鏡の向こうで

君が笑った、

そんな気がしたけど


ほら、

人差し指に乗る

君は思い出せるかい?

遠いよ。

その一言に

思わず涙が溢れて

違うよ、

それは本当だよ

僕は

君を

知っている


あの時の明かりは

夜に紛れて

もう一度、と

呟いた声に消えた

掠れた喉の奥で

潰れた言葉も

君が溢れた

灯りに還って


僕は大人になった

君を置いて

大人に、なった


日が沈んで

影が伸びた

僕の後ろ脚で

君の影を踏む

逃げないで、

そう言いたかったのに

踏み越えた先で見えたのは

ただの悲しい世界だった


ディスプレイ越し

君は向こう岸を渡る

思い出せないのは

出しそこねた切符のせい

遮断機に阻まれて

蹈鞴を踏んでる間。

君は見えなくなった


そうして点々と光る

信号機の中で

歩いている

二人ぼっちの嘘


ビルの奥から差し込んだ

西日が反射する

忘れてしまったのは

本当に僕だったの?


踏み越えた先じゃ

君に逢えないよ

気付いてしまったら

もう戻れないのに

片足脱げた靴が

宙で逆さに泣いてる

僕はきっと、

君だけが思い出になる

ディスプレイにしか

君はもう残ってないのに


僕は君の影を追い越した

もう前に、君はいない


痛い

痛い。

何が?

声が

届かない

擦る

腹ん中

ぐるぐる回る

意味のない

言葉の羅列

どうせ、

どうせ。

きっと、

きっと

そうだ。


苦しい

辛い

どれが

どうして。

僕は

吐き出す

一つの棘が

君を突き刺す

笑った

顔の裏

歪んで

君を

引き裂く


止めてよ

溢れ出る

赤いのが

僕の罪で

横に

一閃、

腹ん中

飛び出る

本音が

おぞましくて

戦々恐々、

それは

言葉の果て

君が求めた

言葉の裏。


だから、

伸ばしてよ

腹ん中、

嚥下した

言葉を

転がして、

痛い

痛いよ、

黒い黒い

ソレを

引き摺り回す

混ぜ合わせた

本当のところ、

君は笑ってた


だからさ、

どうせ

きっと

そうだって、

そう言って

笑ってしまえよ。


苦しくなった

悲しくなった

止まりそうな呼吸は

手のひらで抑えた


過呼吸みたいに

不規則な震動

映り出した孤独と

絶望をひた隠して

見えてる様で

目蓋覆っている

哀を君に渡して


知ってるなんて

安い言葉で買って

今は覚えていない

切実な願いを殺した

夢を見たかったのに

気付けば怪我ばかり

嘘吐きは僕なのに

君という感情を

失うことに慣れてしまった


それは××?

いいえ、××。


最後の瞬間なら

きっと笑える

苦しくても

此処から踏み出せる

落ちていく時くらい

空で包んで

君が見失った

僕への言葉で導いて


此処に居るよ?

ずっと、今までもこれからも

だから閉じたんだ

痛みも、苦しみも、悲しみも

きっと忘れられるから


コンテニューは

もうないよ。


嘯いた


遠くへと

飛ばす

紙飛行機

濡れた葉に

ぶつかる

僕は、

落ちていく。


嘘吐いた


近いはずなのに

君が遠いよ

失ったのは

君の影

振り向いても

ただ青いだけ


心の隙間は

誰の為ですか


口にした疑問

消えてった

空気は

淡いまま


傷付いた


気付いて。

僕は何度も

膝を擦り剥いて

君を、

君へ

届けたい

言葉が

あったんだよ、


だから、ねぇ。

淡いだけの

世界の中で

君の影を

僕は知った

言葉の意味を

求めた場所を

面影を

望んだんだ


僕は、


遥か。


君を、


知ってたよ。