見送る灯

僕は一つ、

大人になった


悲しみが

過っていく

僕は

ソレを横目で見て

ふいと逸らした

気付かなければ

頬を掠めたソレは

生々しい温度を持って

僕を迎えた


「遠いよ、」


気付いて、

声をあげた

細めた視線は

灰を置いていった

白く濁る

視界の隅で

膝を抱えて

君は幼い僕の

手を引き連れた


縺れた足は

忘れてしまった

きっと今日も

君を忘れて生きる

紅色が反射する

鏡の向こうで

君が笑った、

そんな気がしたけど


ほら、

人差し指に乗る

君は思い出せるかい?

遠いよ。

その一言に

思わず涙が溢れて

違うよ、

それは本当だよ

僕は

君を

知っている


あの時の明かりは

夜に紛れて

もう一度、と

呟いた声に消えた

掠れた喉の奥で

潰れた言葉も

君が溢れた

灯りに還って


僕は大人になった

君を置いて

大人に、なった