膝を抱える

瞑った目蓋の下

淡く光を透る

夢の様な世界

肌を少しだけ焼き殺す

思い出せないと

声に出して

また嘘吐いて

優しい愛に飢えて

言葉を失った


それでいい、って

そう笑った声も

だいじょうぶ、って

そう泣いた声も

雨が沁み込んだ夜に

置いてかれた僕の

望んだ言葉ばかり

そんな世界が

立ちあがるだけの力も

笑いかけるだけの思いも

優しさが滲んだ声も

そうして欲しいだけの

願望の様に思えた


掻き集めた欠片

心の隙間の一つ

誰にでもあるものを

両手一杯に集めた

逃げてばかりの心が

軋む様に泣き声をあげた

塞いでいたい声も

優しくない声も

傷口に口付けた


雨の中じゃ何一つ見えない

本当の世界を生きたいと

深く望んだ蒼穹に落ちていく

灰混じりの嘘吐きが

膝を折り曲げて

抱きしめる。

『それでいいよ、

君は、それでいいんだよ』

声が、

聞こえた気がした。


愛された。気がした。


祈りを請う様に

虚ろな瞳を瞬かせて

夢の世界に落ちる

此処は楽園、

君の姿が歪んで消えた

泡沫の音に

身体を静かに震わせた


「秘密にしようか、

これからは二人ぼっちだ。」


笑えない心で

泣けない感情で

蹲る僕は

きっと悲しいんだと思う

目蓋を伏せて

二人だけの幸せを願う


「きっと、そうだよ。」


笑った顔は

塗り潰された黒の奥

世界の果てで

笑っているのなら

それでもいいかもしれない

だけど、僕は、君を


帰ってこない

返ってこない

還ってこない

全て愛した

全て愛した

明日君の明日が

もう何処にもない


「きっと、二人ぼっちだ。」


祈りを壊して

明日だけを望んだのに


呆れかえった

壇上の上で泣き喚く

子供たちの瞳は

何時までも綺麗なままで

淀んだ世界を覗く

望遠鏡はレンズ割り捨てて

何度だって繰り返した


全部全部言い訳包めて

斜めに構えた言葉は

隠して正当化していく


口を閉ざしたって

正義を盾に矛を突き立てて

保身に走るのは

いつもの自分たちで

賽の目は変わらない

僕らだけだって

知ってるくせに


弾圧された痛みと

狂おしい程の悼みと

その頬に与えられた傷みと

助けてと右手を振り翳して

傷付ける事を厭わない

ただの自己満足の偽善と

耳を塞いで知ってる事

一つ二つとまた隠して


その音すらも

知らなかったって

上辺だけの建前で

それなら愛してと

また自分勝手な自己愛と

利己的なエゴを

与える事もしないくせに


殺したって

生かしたって

変わらないなら

何一つ意味無くて

だけど結局僕らは

自分の為に生きて

自分の為に愛して

自分の愛をいつまでも語る


それだけの自己愛を

安売りして満足するんだって

知ってるのに繰り返すんだ


疲れた様な目で

紫煙に紛れる私怨

足元に咲いた花は

枯れ木に溺れる

開いた眼も

虚無を迎えて

誰かの愛を甘受する


約束と安い愛を

その胸元に咲かせた紅色も

首筋の嘘も

全部が殺したい程愛おしい、

なんて。


言う訳ないでしょう?


耐えきれないなら

その両の手を離せばいい

十の指先で

流るるこの血潮を止めればいい

動かなくなる瞬間に

この双眸を抉ればいい

それが愛だと言うのなら

返すものなど何一つない

脈打つこの身体も

指先に込めた力で殺めて


誰かの為に

持ち合わせた愛と

確執を放り投げて

向こう側

硝子に映った

色彩の檻で

呼吸を静かに殺した


飛んでいく様に

幸せを乗せた

紙飛行機は

墜落する

幸せを望む様に

蹂躙された願いと

踏みつけられた祈り

雑踏に紛れた本音も

耳を塞いで

聞こえなければ良かった


本当は知りたくて

本当は望みたくて

本当は願いたかった

組み合わせた両手も

冷たくなった指先も

振り払われた腕の中で

懐柔された心も

静かに置いていって


綺麗な物だけが

本当を映すわけなくて

色彩の刃も

罪も罰も零して


呼ばれた気がした。

雑踏の中で

殺された日常に