置いていく


薄紅の記憶と


散乱した部屋の中


誰かの呼ぶ声と


呆然と仰ぐ空と


一つ二つと並べた


整然とした心


虚ろに世界は笑う


きっとそれでいいと


意味のない言葉に


僕らはまた手を離す


失くしたモノばかりの


バラバラに散らばる此処で


千切れた声も


忘れた記憶も


過ちばかりの世界も


僕が此処に居る事も


全部が必然で


全部が現実なんだと


喉の奥で笑う


世界が終わりを告げた


飲み込めない言葉が


酷く胸に焼き付いて


脳裏に残る残像と


虚ろに覗いた本音の隙間


嫌いだよ、


たった一言で


傷口が愛された


気付かないふりで


また優しく爪を立てて


知らないでいてよ


そうすれば笑えるから


ほら、君のその双眸に、


細めた瞳の奥に、


握りしめた掌が見えるんだ


言葉数が少なくなって


また笑えるようにって


零した言葉にまた傷付いて


救われないのは


誰の心だったの?


焼け付く痛みと


爛れた声が


淡く甘く伸ばされる


嫌いでいてよ


そうすればまた


君を愛する事が出来るから


例えば明日を置いていくとして

僕は確かに笑えるのか

押し殺した感情と

泣き崩れた感情とが

不釣り合いに鈍く痛みを伴う

伝えたい事なんて

もう忘れてしまったよ

恥ずかしくて逸らしてしまった

大事な物は全部、

遠くへ置いてきたんだ


例えば今日を忘れたとして

僕は確かに今日を生きたのに

ぽっかり空いた穴が

希望を伴う絶望に

膝をついて涙を伝わせるんだ

死にたい程の

狂おしい程の

たくさんの感情が

一つ線を引いて

境界線の上

笑ってる気がした


例えば前だけを見つめたとして

何もなかったとしても

きっとそれはそれでいいんだ


それで、いいんだよ。


ねむい、


ねむい。


うつろにまたたく


今日が溺れる


呼吸音。


吐き出したことば


嘘のような空


かえらない。


かえれない。


あやふやになった


形がないのは


誰かの声と


ぼくの声と


思うだけの


かんたんな世界で


どうしたって


どうしたって


汚いままの世界で


明日を生きたって


今日を生きたって


息できないよ


泥のような


ゆめうつつで


またくり返して


ねむりにつく


コードがめくられる


魚のひとみを


のぞんだ


万華鏡のガラス


あいしてるよ


どうせまた同じなら


ねむる世界を


迎えにいこうか


ゆめの中で


しあわせであれるように


寂しくて飲み込んだ言葉

やるせなさと情けなさを

心の天秤にかけて、

落下していく


本当のところ

影が静かに追い付いて

僕を溶かした

消えた方が楽になるって

知ってた筈なのにね

伝える事は何もなくて

だけど言いたい事が

まだ喉に詰まってしまって

どうしようにも

泣きたくなるんだ


歩き出せないと

滲んだ世界に呟いて

片手に掴んでた筈の

君の体温が無くなって

緩やかに死んでいく

指先が掠めた

叫び出したい感情と

『さよなら』を告げた

目元を抑えて一言叫ぶ

どうしてか、

やっぱり泣きたくなるんだ


目一杯振り切った

感情相手に抑制なんてなくて

溢れだしたモノが全部

襲いかかる様に波打って

立ち止ったままの

掠れた声が千切れそうに

嘘くさい虚構を描いた


何も残さないよ

何も言わないよ

鉛みたいな心は

もう必要ないんだ


縺れた足と繋いだ手を

静かに天秤にかける

向こう岸の瞳は

瞬き一つ繰り返して

何も言わずに顔を歪めた


今日の僕が笑う様に

明日の僕が死んでいく

愛した日常が

いつしか僕の心を締め付けた

さよならだけが

優しい世界を思い描いて

吐き出した言葉が

正解だって言ってしまえば

きっと泣く事も忘れられるんだ


それは正解なんかじゃないのに、


正解なんかじゃなかったのに、