TRIANGLE -12ページ目
深く落ちていく
心の片隅に蹲る
何時かの自分を
僕は通り過ぎていく
何も浮かべない
無表情の彼方を
夜が覆い隠す
どうしたって
呼吸は深く息衝く
その痛みは生の証で
胸の内側から
ずっと続く産声を
何度も殺し続けてきた
口から漏れ出した
憐れな悲しい嘘を
永遠に続く未来だと信じた
貴方の背中を追いかけて
僕は何も苦しくないと
目蓋を閉じて息を止める
そんな愛を胸に隠した
深く落ちていく
海の底は暗く寂しい
貴方の声は聞こえない
届かない筈の光は
闇を少しずつ覗いた
何処までも果てない
愛の形を僕は見つめた
失ったものなど
何一つありはしないと
痛みを伴う悼みを
僕は貴方へ捧げた
赤い花を手向けた
貴方のその先の未来を
きっと誰もが夢見た
それだけ良いのだと
何時かの自分が笑う
貴方が手を振る
胸に息衝く呼吸が
何時までも何時までも、
貴方まで続く様に。
正しさを選びとる
それが正義などと
語るだけ無駄な世迷言を
呼吸を求めて
鋭利な言葉を吐き出す
泣き出す子供を置いて
一足飛びに大人になる
残酷な世界ばかりが
浮き上がっては溶ける
その目蓋の裏に映る
滲んだ閃光を握り締めた
痛みは伴わない
夢の様な刃が
犠牲を積み上げていく
叩き上げた正義の盾が
その笑みを最後にしていく
塗り潰した感情の音を
どれだけ踏み躙り
それは残酷なのか
呼吸を望んだ願いを
例えその右手が
振り下ろしたのだとしても
それは正しさという
一つの答えを弾き出す
誰彼と分かりあえない
それだけが一つの選択だと
正義を折り曲げた花を手向けた
誰かの為の嘘を
自分の盾にして
戦うために開いた瞳が
いつしか映した懺悔を
標にしないように
ボロボロに破れた心の奥底を
君にあずけてしまって
誰かが突き立てた
墓標の前に立ち竦む
動けない僕の眼を
覗きこむ深淵が
悲しげに触れた
その背中には
羽なんて生えやしない
落ちていく一方で
仰ぎ見た世界は
何時だって残酷で
何の為に戦うのか
誰の為に戦うのか
その開いた瞳は
口は、胸は、心は、声は
何の為の救いになるのか
何の報いになるのか
最早意味をなさない盾に
必死にしがみ付いていたのか
理由を求めて差し出した
言い訳なんて焼き切れた
心が爛れて、咽び泣く
詰まり詰まった喉の奥で
不愉快な賛美が鳴り響く
やめてくれよ、
何も救われやしない
無意味で残酷な祝福を
少しずつ殺していく
盾の後ろで泣き続ける
僕の居場所は何時だって、
それでいいのか
例え話で離れた心を
僕らの口から出た音を
紛れもなく僕らが
折り畳んだ心の証
単純に終わらせた
雑然としている感情論で
僕らが間違っている事を
君は知っていたのだろうか
何一つ分かりあえないまま
僕だけが悪者のまま
君が向けた敵意を
僕が返した悪意を
捻じ曲げた善意を
押し潰した好意を
何時だって
僕らは蔑ろにする
それでいいのか
離れていった掌を
僕らは知らないまま
緩やかな速度で
引き摺っていく
振り払われた
その心の痛みですら
分かち合えない程の距離なら
僕らは一体何と戦う?
切り離されたのは
心が先か感情が先か
そんな事すら分からないで
僕が君に押し付けた
言葉の意味を
君は僕に返した
行為の意味を
嗚呼、馬鹿みたいに
綺麗なままの感情は
何時だって足をとる
まるで気付けと言わんばかりに
嗚呼、まるで、馬鹿だ。
それでもそれでいいと
そう言って笑ってくれよ
さようなら。
その言葉を並べて
ページを千切る
残渣などと
置いていかれた
呑み込めないほど
蟠る音の意味を
笑ってくれよと
君が笑えない
春の前に
さようなら。
ギザギザに残る
その不揃いさが
嫌に笑えるね、
一体、どうして、こうなのか
君が泣いたんだと
夢の向こうで
蹲った
夜の帳を
追い越して
闇に溶けていく
その言葉は
感情に塗れた
そう、感傷で
遠い、遠くに
その手元には
どれだけの
僕の声、が。
さようなら、
そうして投げ捨てた
本の中を。

