僕の胸に落ちる

この言葉を表すなら

どんな感情が正しいだろうか


悲しいのか

淋しいのか

はたまた妬ましいのか

悔しいのか

羨ましいのか


どれが一番近くて

正当なんだろうか


キラキラしてるような

そんな日常に落ちた

一つの感情が

こんなにも僕の胸を

震わせるものだとは

思ってもいなかった


貴方が貴方であるが故の

その言葉一つ一つに

意味を持たせるなら

僕はきっと嬉しいだろう

僕を僕として見てくれる

そんな幸せを触れ合せて


きっと誰もが無意識の

沢山の幸せを手繰り合わせた

僕がその上に乗っかって

心の内で涙を流したなんて

誰一人知りはしないだろうけど


そんな溢れ出しそうな程の

感情を両手一杯に抱えて


笑ってしまうね、

きっと泣き出しそうな程

恥ずかしい事なんてさ

何一つないんだよ

幸せなら、


僕の胸を焦がした感情は

きっとどれもが正しく

僕の事を表すだろう


そんな、幸せなんだ。

幸せで、幸せで、

正しく僕が生きているが故の、

そんな幸せ、だ。


引き出す言葉に

ありふれた愛を


戸惑いに膨らんだ

その胸の内を

小さな灯で照らして

笑いながら手を振る

待ちぼうけされた

冬の空の下で

真っ赤な頬を思い出した


冷えた指先の

本音を忘れてしまって

温もりを足がかりにして

分かりやすい思いを

少しの言葉にかえたんだ


鈍くなった思いの丈は

誰にも分からないだろう?

合わせた掌の温度も

ささくれた爪先の形も

思い詰めた心の内も

何一つ言葉に出来ない

僕の口先だって同じさ


そんな僕らの愛を

誰にも見られない様に

それでも伝えたい思いを


僕は、きっと歌うのさ


今も胸の内に残っている

柔らかく差し続ける棘と

何度も繰り返した問答に

笑えない嘘は哀しく

真直ぐに見えないのは

何時だって僕が疾しく

薄汚い感情に溺れているから


地獄の愛なんてものは

きっと焼け爛れる程の熱量

僕の瞳に映る人々は

どこまでも美しいのに

僕だけが継ぎはぎだらけで


どれだけ薄く呼吸を繰り返して

罪人の様な愛し方と

贖罪と咎の間で俯いても

誰も見向きやしないのだろう


それは赦しではなく

貴方が僕の胸を押しのけて

その遠くに覗いてみせた

誰彼の嘘なんだろう?


それならいっそ刺し殺した

僕の嘘ごと呑み込んでしまって

縋り付く様な甘えをも殺して

一人で生きていく足を

その力だけを与えてくれよ


貴方が赦した罪の在り処を

僕だけが知っている罰の在り処を

それが例え、僕を映した

ただの媒体なんだとしても。


二人歩く夜明け空

立ち竦む僕の前を

軽やかに君は駆けていく


夢の後先は

何時も誰も知らないままだ


気付かないのは

淡く溶けていく感情に

慣れた筈の忘れたふりが

何時しか辛くなってしまったから


どうしたって差し伸ばす

君の温かな掌が

遠ざかる背中に寄せられた

大した意味も持たず

僕の心を殺していった


結局君のせいにしてまで

僕は何度も嘘を吐いて

やっぱり笑えないよ

君の足音が止むまで


夢の後先を考えた

何時も誰も知らないままで


夢の続きを考えた

何時も誰も、知らないままで


君の足跡を辿るだけの

きっと怒られてしまうだろうね

それでもいいから僕は

君の跡を辿って


夜明けの空に滲んで

浮かび上がる空の色

もう優しい嘘は吐かないでくれと

君は笑って言うから


もう忘れてしまったよ。


その夢の先まで

君と二人で行けたら

鮮やかに揺れ動く

この心まで抱きしめてよ


耳に残る砂嵐

零れ落ちる時計の音

一秒毎に崩れていく


この心をどう表せばいい?

僕は正しいだろうって


違うでしょう!


鏡の裏で笑う君には

何一つ伝わりはしない

それでも握りしめた

ナイフを突き付けて

笑うのは誰なんだって


足を取られてまで

嘘を吐いたのは誰で

僕が選んだ捨て駒は

壊れていく砂の城の中

その人差し指が刺すのは

痛みを食べ尽くして

見ないふりを続けた子供と


この胸の内だなんて

誰も見向きもしない癖に!


僕の心は正しいのさ

正しさを表してみせる

鏡の中で笑う君には

何一つ知らせやしない


それでいいだろう?


それでいいだろう!