とんばうの眼に天皇陵皇后陵

 

「雲の峰」2023年11月号青葉集掲載。

蜻蛉は8月から既に飛んでいるが、秋の季語とされている。好きな季題で、昔からよく詠んでいる。この句もそのひとつ。2018年7月、亡父が参加したJRハイキング、「奈良朝の御陵を巡る」コース。JR平城山駅から始まり、元正天皇陵、元明天皇陵、奈良少年刑務所、鴻池運動公園、光明皇后陵、奈良女子大、興福寺を経て、JR奈良駅に至るコース。このコースを辿ってみた。コース後半、光明皇后陵の隣に、聖武天皇佐保山南陵が並んでいた。京都伏見の明治天皇伏見桃山陵と同じような配置。そこに蜻蛉が飛び交っており、一匹がちょうど天皇陵と皇后陵の間を飛んでいた。彼らの大きな複眼には、ふたつの御陵がどんな風に映っているのか。そんな事を考えて詠んだ句。

調べてみると、蜻蛉の複眼は約1万から3万個あり、その視野は約270度。上下左右前後、あらゆる角度が見えているという。そして個眼それぞれに役目があり、上部は遠くに、下部は近くにピントを合わせ、どんな餌も逃さないようにしているという。生きるために進化した複眼。一度その広い視野を体験したいものだ。一つの事に集中しすぎると、周りが見えなくなるのが私の悪い癖。全体を見なければいけない場面では致命的だ。私も蜻蛉を見習わなければいけない。

 

↓コチラも併せてご覧ください♪↓

コダマヒデキ~音楽と俳句の部屋~

 

俳句を始めませんか?

俳句結社「雲の峰」

 

 

人気ブログランキングでフォロー

元句:はたはたの風に誘はれ発ちにけり

推敲後:風に誘はれはたはた発ちにけり

 

「雲の峰」2023年10月号青葉集掲載。

8月後半、よくバッタの句を詠む。休みの日によく歩く散歩道。田畑が広がる道に風が吹き抜ける。それを待っていたかのように、バッタがあちこちで飛び跳ねる。まだまだ残暑が続く季節ではあるが、こうしてバッタの飛ぶ様子を見ると、暑い中にも秋を感じる。確実に季節が変わっていく事を、ビジュアルで感じて詠んだ句。

今回は、「雲の峰」朝妻主宰の校正が入っての掲載。以前も触れたが、「の」の使い方が正しいか否か。文法的に正しく使われているかが、句の出来を左右する。歳時記の例句などを見ると、上五を「の」で締めくくっている句が多い。私は今まで、どちらかと言うと「少し弱めの切れ字」というイメージで「の」を使用していたが、「の」は基本的に格助詞、連体助詞。通常後ろに動詞は付かない。そこで「はたはた」を中七に持って行って、「の」を削除したのが校正後の句。字足らずではあるが、文法的には正しく、句の出来も見違えるものになっている。学生時代、あまり文法を重要視してこなかったが、短い日本語で端的に情景を思い浮かべさせる文学作品だからこそ、基礎をしっかり踏まえて作りたい。

 

↓コチラも併せてご覧ください♪↓

コダマヒデキ~音楽と俳句の部屋~

 

俳句を始めませんか?

俳句結社「雲の峰」

 

 

人気ブログランキングでフォロー

きちきちの草より出でて草の色

 

「方円」2010年10月号雑詠掲載。

「きちきち」とは言わずと知れたバッタの事。中でもショウリョウバッタは跳ぶときに「キチキチ」と羽根を鳴らす事から、こう呼ばれている。さらに草の色と同化しており、草むらにいると羽音がするばかりで、どこから出てきてどこへ飛んでゆくのかわからない時がある。この句はそんな様子を詠んだもの。バッタの跳ぶ音がそこここで聞こえ、突然目の前に飛び出しても、直前まで見えない時がある。そんな驚きも、本格的な秋を迎えようとしているからこそだ。そんな感慨を詠んだ句。

8月25日、第74回関西吹奏楽コンクール 職場一般の部を無事終える。私は中1から吹奏楽を始めて、以来40年コンクールに携わり続けた。社会人バンドに入ってから30年。その間、トロンボーンパートの中で、私の音だけが飛び抜けて聞こえてしまうという現象が長く続いた。トロンボーンはハモる楽器にも拘らず、そんな状態だった。これでは全体の音が乱れてしまう。草むらの中に、茶色いバッタがいるようなもの。最近やっと、周りの音と混ざり合うとは何ぞやという事が、少しずつ分かって来た。今回の実況録音を改めて聞くと、昔と比べてサウンドが格段に良くなった。それは「個を殺す」のではなく、「65人で支え合う」という事。大編成の醍醐味でもある。今回も一歩及ばず銀賞。それでも、個人として、バンドとして大いに成長したのではないかと思う。支えて下さった皆様に、心より御礼申し上げます。

 

↓コチラも併せてご覧ください♪↓

コダマヒデキ~音楽と俳句の部屋~

 

俳句を始めませんか?

俳句結社「雲の峰」

 

 

人気ブログランキングでフォロー

校庭の喧騒止みてつくつくし

 

「雲の峰」2023年10月号青葉集掲載。

「つくつくし」とはツクツクボウシの事。この鳴き声が聞こえたら、ああもうすぐ夏休みが終わるんだなと思う学生さんも多いのではないだろうか。母校の中学校付近を散歩していたら、部活の練習中。威勢のいい掛け声が響いている。夕方になると校庭は静まり返り、ツクツクボウシの鳴き声だけがこだまする。今年もこうして夏休みが終わり、本格的な秋がスタートする。感慨にふけりながら、見えた風景、聞こえた声をシンプルに詠んだ句。

京都国際高校の皆さん、夏の甲子園初優勝おめでとうございます。私は生まれてこの方、京都勢の準優勝を4回見たが、今回の初優勝は素直に嬉しかった。激闘にさぞお疲れの事でしょう。どうか暫くはゆっくりとした静かな時間を過ごして下さい。私たちも、二日後に関西吹奏楽コンクール職場一般の部を迎える。若者に負けず、ベストを尽くしたい。

 

↓コチラも併せてご覧ください♪↓

コダマヒデキ~音楽と俳句の部屋~

 

俳句を始めませんか?

俳句結社「雲の峰」

 

 

人気ブログランキングでフォロー

椿の実閑谷校の赤瓦

 

「方円」2016年10月号円象集掲載。

椿の実は秋の季語。肉厚で艶があり、熟すると開いて2、3個の種が現れる。種を絞って巣履き油を取り、化粧品などに利用する。閑谷校とは、岡山藩主池田光政が1670年に建てた、日本で初めての庶民のための学校で、赤い屋根瓦が特徴的な講堂が特に知られている。2016年、家族で岡山県備前市を訪問。詳しくは覚えていないが、恐らく備中松山城を訪れた際、その道すがら訪れたと思われる。赤瓦の荘厳な建物の周辺には椿が実を付けており、椿独特の艶を見せてくれた。講堂に目をやると、赤瓦が整然と屋根に並んでいる。その色と艶のコントラストに惹かれて詠んだ句。

両親が亡くなってから、宿泊を伴う遠出を一度もしていない。何となく、長期間家を空ける事に抵抗があって、最近は日帰りで済む程度の場所しか訪れていない。時間があれば、そろそろ遠出の計画も立てたいところだ。私は毎朝律儀に仏壇にお仏飯を供えてから出かけている。その習慣を、泊りのために欠かしたくないという、変なこだわりがあるのも事実。自分の行きたいところへ羽根を伸ばしに行くと言えば、仏様もお許し下さるだろうか。

 

↓コチラも併せてご覧ください♪↓

コダマヒデキ~音楽と俳句の部屋~

 

俳句を始めませんか?

俳句結社「雲の峰」

 

 

人気ブログランキングでフォロー