顧問CFO川井隆史のブログ -90ページ目

ハインリッヒの法則と医療事故




医療事故について新聞などに掲載される回数が多くなっている気が


します。これは今まで隠蔽されていたものが明らかにされるように


なったのか数自体が実際に増えているのかは私はわかりません。


ただ、群馬大の腹腔鏡手術にあるように医師個人の責任のように


語られるのは違和感を覚えます。医師の立場に立てば、非常に


スキルが必要な難しい手術を激務の合間を縫って行って多くの


患者の命を救っているのにその中で少しでも誤れば社会的・民事


的に糾弾され、下手をすると刑事罰を科されるのでは気の毒で


しょう(群馬大のケースは死亡数が多すぎるかもしれませんが)。



 基本的には医師の独立性が重視されすぎて、下手をすると手術


のプロセス自体ブラックボックス化していることでしょう。そして、人間


はミスをするものだという発想がなく、ミスをすると、とかく個人の責任


追及に走ってしまうところです。組織的対応というのは基本的に人間


はミスをするものなので常にどうしたらミスを減らせるかを考えます。


よくハインリッヒの法則(1つの事故の裏側には29の軽微な事故があり


300の異常がある)がいわれますが、軽微な事故や異常な事態の段


階で組織としてとらえ、対策を立てていたら事故の可能性は大幅に


小さくなると思われます。医師にとっては自分の専門分野に他人が


くちばしを突っ込むのは不愉快だと思いますがそれが組織という


ものです。ただ、目的は処罰や監視ではなく、プロセスの改善


です。医療は人の命を救う尊い行為だとは思いますが、基本的に


はさまざまなプロセスからなり、それ自体はブラックボックス化させ


ずに常に検証改善されていかなければならないということだと


思われます。

ETC設置で3000億円削減 -検証する





以下の産経新聞の記事を参照していただければよいかと思われ


ますが、要するにETCではない現金専用レーンを廃止すれば3000億


円の節約ができるのでETCではない車の料金を値上げする方向とい


うのが国土交通省の狙いと思われます。私は、その方向性にはおお


むね賛同するのですがその根拠としての数字の使い方があまり正


確でない気がして、あまりいい気分がしません。


 今高速道路でまだ4割が現金レーンだそうですが、それがなくな


れば現金を扱う機器の設置費がなくなり建設費が1,700億円程度


安くなり、今現金回収にかかっている人件費786億円がある程度


削減されるようです。不思議なのは現金回収していた人々を全員


解雇しても足し算で2500億円(1700+786)に届きません。また、現金


回収の機器はもう設置してしまってその設置費用は負担が終わっ


ています。会計上の概念ですと埋没原価(サンクコスト)です。した


がって、ETC機器に交換しても削減ではなくETC機器の設置費


が新たに加わるだけです。好意に解釈すると現金回収の機器


が老朽化して交換するのでしたら確かにETC機器のほうが現金回


収の機器よりも安くて良いかもしれません。


 要するに単純に読むと「現金回収窓口をなくしてETCにすると


3000億円削減できる」だから「現金車を値上げしよう」です。実際に


は3000億円削減のためには現金機器の老朽化の交換にともなう


ある程度長い期間が必要です。なんとなく「3000円削減」が正確な


数字の裏付けもないまま独り歩きして、現金車の値上げやまだ


使える現金回収の窓口を廃止してETCへの転換に図るのでし


たら邪な数字の使い方と思われます。よく役所が行う常とう手段


ですよね。


 単なる利用者の視点でしたらETC窓口が増えたほうが有り難い


ですし、自分もETCしか利用しないので現金車が値上げになって


も自分の懐は痛みませんから賛成なわけですが・・・・



全自動車ETC化で人件費など3000億円減 国交省、不公平感解消へ試算

産経新聞

 高速道路を通行するすべての自動車が自動料金収受システム(ETC)を搭載した場合、現金専用レーンの建設費や人件費などのコストを3千億円前後削減できるとの試算を、国土交通省がまとめたことが11日、分かった。国交省は来年度にも首都圏の高速道路で、ETCを搭載しない「現金車」を対象に通行料金を値上げする方向で検討中で、将来的には搭載の義務化も視野に入れている。わずか1割の現金車がもたらす「不公平感」を数値化することで、そうした施策への理解を得たい考えだ。
試算は東日本、中日本、西日本、本州四国連絡、首都、阪神の6つの高速道路について行った。6高速の料金所には計6937本のレーンがあるが、このうち4割近く(2560本)を占める現金車専用レーンがなくなった場合、現金を扱う機器の設置費などがなくなり、レーンの建設費は4320億円から4割減の2750億円にまで下がることが判明した。
また、現金車に対応するための人件費は昨年度、計786億円に上った。現金車がなくなればこの人件費も数百億円程度削減される見通しで、レーン建設費と合わせて3千億円前後のコスト削減効果が見込まれる計算だ。
現在、高速道路を利用する車の9割がETCを搭載しているものの、残り1割の現金車にはETC車の5倍ものコストがかかっている。国交省は「今回の試算が、現金車が負担すべきコストまでETC車が負担している現状の理解の一助になれば」(道路局)と話している。

東芝と工事進行基準ー不可解な先送り

東芝問題が新聞紙面や株式市場をにぎわしています。数か月前、


東芝不適正会計問題が小さくニュースに載ったころ機関投資家や、


ヘッジファンドなどの知人から問い合わせを受けました。その際、


大手弁護士事務所と大手監査法人を第三者委員会に選定している


ことからなんとなく組織ぐるみの可能性が高く、問題は大きくなる


可能性大と申し上げていましたがその通りになり、感謝のメールを


いただきました。


さて、日経の記事で「工事進行基準で損失先送り」と書かれていま


した。工事進行基準とはたとえば以下のような感じです。3年後完成


の80億円の工事で当初費用が60億かかると見積もっていて、1年目


費用が30億かかったとしたら、2分の1(30億÷60億)工事が完了した


と見積もって、売上40億(90億÷2)と費用30億を認識するもの


です。この設例で実は工事費用が90億かかることがわかったも


のの隠蔽していたとしましょう。2年目は費用を先送りして20億に


とどめてると2年目は売上26.7億で費用は20億です。しかし3年目は


工事が完成してしまうのでかかった費用は全部認識しなくてはいけ


ないので売上13.3億、費用40億で一気に損が露見します。要する


に永遠に損失を先送りすることはできません。


ではどうすればよいか、一つの想像として費用の付け替えがありま


す。この工事の費用を他のまだ進行中の工事に付け替えてしまい


ます。するとこの工事でいう20億余分にかかった費用は他の始まっ


たばかりの工事などに振り替えられるわけです。当然このような


行為が常態化すると雪だるまのように損失は膨らんできます。


ただ、内部統制などで工事進行基準で費用の付け替えができない


ような仕組みはできているはずですし、監査で付け替えができな


い仕組みであることはテストされているはずです。東芝が会社ぐる


みで監査法人を欺く仕組みを作ったのか(本気で組織ぐるみでやら


れたら多分監査法人は見抜けません)、監査がずさんだったたか


どちらかでしょう。東芝は日本を代表する素晴らしい会社だと思っ


ていましたし、監査法人が叩かれるのは同業者として気持ちがよく


ないし、どちらも見たくない結末です。