顧問CFO川井隆史のブログ -88ページ目

サントリーは上場すべきか?



日経新聞などでサントリー上場の話が出ていました。多分一つの


選択肢として上場を検討したのは事実でしょう。確かに新聞がいう


ように有利子負債(平たくいうと借金)は約1兆6千万程度になり、


昨年末で自己資本比率は19.4%まで落ち込みました。規模的に


非常に似通っているキリンが自己資本比率が昨年12月末で37.2%


で有利子負債は8000億とざっとサントリーの2分の1です。要する


に借金が多いので財務的安定性を欠く、したがって上場して株式


で資金調達を行って財務的安定性を向上させようというのが趣旨


かと思われます。


確かに格付けはムーデースでBa2でキリンのA3に対し2段階下


になり、今後の資金調達で高い金利を要求される可能性は高く


なります。しかし、営業キャッシュフローは約1600億円程度あり、


ざっくり10年で返済できるレベルであり、多少冒険ではありまし


たが無理な借り入れというレベルではない思われます。


  一方、サントリーの企業理念ともいえる「やってみなはれ」


といった思い切った意思決定のできる体制が、今は創業者グループ


が90%程度を保有していることでかなり機能しているかもしません。


外部の株主資本が入ってくれば高配当を要求されたり、結局ROE


をよくするために自社株買いをしなければならないなど様々な要素


がはいってくると思われます。ROEもジムビームの買収費用で


昨年こそは4.7%まで低下しましたがおおむね10%近くを確保し


ており業績もキリンよりも良好と言えると思われます。上場のメ


リットの一つともいえる知名度や信頼性の向上なども全然問題


ないわけですから正直言ってどちらかというとデメリットの方が




多い気がしますがいかがでしょうか

役員報酬 -株式の活用をするにはどうするか?




以前武田の外国人CFOが他社に引き抜かれてしまった話をしました。


一つとしてはやはり報酬が欧米に比べて低い点があることは確かで


しょう。そして低い理由としては比較的思い切って支払いができる


業績連動部分の部分が低いことがあるかもしれません。


日本取締役会協会の調査によると日本のCEOの報酬体系は固定


が64%年次成績連動20%中長期業績連動16%でした。米国など


では中長期も含めた業績連動部分が70%ですから大きく異なり


ます。


今朝の日経新聞では政府が株式での報酬を促すために会社法


の新たな解釈指針を作るようです。基本的な考えは業績連動部分


を増やし、グローバルに対抗できる報酬体系にしようということ


です。要旨は「パーフォーマンスシェア」と呼ばれる方法で中長期


の業績目標の達成度合いに応じて株式を交付する仕組みのよう


です。大まかにいうと最初に金銭で報酬を受け取る権利を役員


に与えた直後その権利と引き換えに譲渡制限株式を渡します。


業績達成度合いについて譲渡制限を解除していくわけです。ま


たは業績達成度合いに応じて金銭で報酬する権利と引き換えに


株式を発行して付与する方法のようです。


おおまかな方向性は賛成ですが懸念点はあります。一つは法人


税法34条の「役員給与の損金不算入」で原則法人税法上定期


同額、事前確定、利益連動以外の役員給与は損金不算入です。


利益連動の要件も非常に厳しく税務リスクがあり、非常に業績に


応じて支給する際の妨げになっています。(自分は法人税法34条


は日本の活力をそぐ悪税法と個人的に思っています)この株式活


用の仕組みが損金不算入になったり、税務リスクがあるのであれ


ば企業はとても導入はできません。


個人の所得税法も不明で下手をすると金銭で報酬を受けとる権利


をもらった時点で役員は給与として税金を払わなくてはなりません。


そして、株式を受け取って譲渡した際、利益が出ていればさらに


20%の譲渡所得税(+復興所得税)、値下がりしてもこの損は


他の所得とは通算できないと元気が出ない税制です。少なくとも、


税制上の整備ができないとこの制度は全く普及しないでしょう。



もう一つはガバナンスの欠如です。東芝で見られたように日本


に名だたる企業でさえ、あの体たらくですから役員報酬などは


お手盛りの可能性があります。少なくとも独立外部取締役で


構成される報酬委員会での決議が必須でしょう。有価証券報


告書の開示にしても1億円以上の報酬の開示はされていま


すが、今後はもう少し定型のフォーマットで報酬システムなど


も詳しい開示が必要かと思います。



随分ネガティブなコメントとなってしまいましたが、政府はひとつ



ひとつハードルを越えて是非がんばって欲しいと思っています。

東芝の報告書を読んで -雑感

東芝の今回の不適切会計についての報告書を読みました。


300ページ以上にわたる非常に長いものであり、拾い読みである


ので多少理解が粗い可能性はありますのでそこはご容赦ください。


全般を通して感じたことは2つです。東芝の経営陣の上場企業とし


て正しい会計報告義務認識の完全な欠如とダメな米国企業のよ


うな短期的業績至上主義(数字合わせ主義)の全社にわたる浸透


です。報告書を見るとトップの関与がうかがわせるものもあります


が事業単位であうんの呼吸で行っていた不正もあり、全社的に


感覚がマヒして数字を上げるためには会計操作も辞さない社風


が浸透していたことがわかります。私が勤めていた米国企業も


2年続けて目標を達成できないとその事業の責任者・関係者は


かなりの確率で首または降格されるような厳しいプレッシャー


にさらされていましたが、会計操作は厳禁とされていました。


したがって、厳しい利益要求=会計不正というのは短絡的な


見方と思われます。社長をはじめとした経営陣が「何をやって


もいいから利益は出せ」といったコンプライアンスなき利益


追求が根本原因と思われます。



不正の中身ですが、工事進行基準についえは原価の付け替え


のような悪質な不正はなかったように見えますが、損失が生じて


いることが判明しても、組織ぐるみで隠ぺいするようなことが


常態化していたことがうかがわれます。監査法人ともめていた


案件も少なからずあったようです。もともと、この見積原価の


部分に関しては経理・監査部の関与やコントロールがあまり


働いておらず、内部統制に問題があったということは明白に思え


ます。監査法人がJSOXでテストをした際になぜ発見できなかっ


たかは正直言って疑問です。


パソコン部門においては部品支給をするベンダー先に対し、


外注品完成時に売上原価のマイナスをする(パソコンの原価を


減らして利益を計上)不思議な会計処理を取っており、これだと


外注品完成で在庫していると自動的に利益が上がるという


会計を取っていました。これも部門利益が期末時に大きく変動


するくらいのインパクトがあったにもかかわらず監査法人が何も


手を打っていないのは疑問です。その他の部門でも費用の繰り


延べやリベートの未計上などが常態化しておりかなり荒廃した


文化がうかがわれます。


ただ、たとえばかつてエンロンがおこなったSPCを用いた不正


のように綿密な計画性のある不正ではなく、場当たり的に行っ


ていたということ確かでしょう。それをもって、新聞等では悪質


性は薄いとしているようですがなんとなく場当たり的だったら


不正は許されるのかという点は疑問です。何はともあれ東芝


のような素晴らしいところもたくさんあるはずな会社には非常に


残念な内容だと思います。