顧問CFO川井隆史のブログ -101ページ目

挑戦できない日本の大企業 -日立元会長川村氏の私の履歴書を読んで




今、日立の元会長であった川村氏が日本経済新聞で「私の履歴書」


を連載しています。川村氏は一時期は衰退への道をひた走っていた


知人曰く「役所のような会社」であった日立を立て直した方で尊敬


する経営者の一人です。


ただ、今朝日経の私の履歴書を読んで「失われた20年」における


日本の大企業の停滞の理由の一つを感じました。話は、川村氏を


中心に日立として初めて発電機を自主技術、自主設計で開発、


納入する話です。それまで日立はGEの技術に頼っていました。


川村氏を中心に設計したのですが不具合があり、立ち上げ


苦労された話です。最終的には立ち上がりましたが川村氏は


始末書を書かされ、ボーナスはゼロになったようです。


私の以前担当していた企業でもあったのですが、社長は「挑戦」


とはっぱをかけるのですが、その会社では超結果主義で失敗す


れば即降格でした。当然新しいことをやれば成功よりも失敗の


確率は高くなります。失敗した際罰せられるようでしたら当然


普通の人は現状維持でうまくいっていることに乗っかることしか


考えません。


このケースで、初めて自主製作・自主設計でやれば不具合が


生じるのは避けられないことでこのケースのように挑戦して罰


せられるのではどんどん挑戦する人は減ってくるわけです。


あくまで想像ですが川村氏が名利に恬淡とされていたという


こともありますが、周りの人々は「よくやった」とフォローしたの


ではないでしょうか。


80年代くらいまでは日本の大企業でも人間関係の信頼がな


んとなくあり、表面的には罰しても後で面倒見てくれるような


ところがあった様な気がします。つまり挑戦して失敗した場合、


表面的には罰するけれど後できちんとフォローしてくれるような


阿吽の呼吸がありました。


しかし、90年代から低成長の時代になると「後でフォロー」や


「阿吽の呼吸」など人間関係の信頼が通用しなくなってきました。


そこで成果主義だけ入れれば(たいていの企業では成果評価


ではなく単なる結果評価主義でした)だれも新しいことに挑戦し


なくなるわけです。


80年代から働き始めた私は多分この川村氏の逸話を理解できる


最後の世代で今の若い人は理解できず「自分だったらこんな会


社は辞めてやる!」と思うのではないでしょうか?

東芝の不適切会計問題について

東芝が昨夜過去に工事原価の見積もりが過小でそのため工事


損失引当が500億程度不足していたという発表をしました。この件


については何人から以前コメントを求められた記憶があります。





普通に考えると工事は完成して顧客に引き渡しが終わった時点


で売上、原価を両建てで計上します(工事完成基準)。しかし3年


もかかる工事で完成まで売上げも費用も計上しないのでは情報


不足なので工事の進捗にしたがって売上、原価を計上するという


のが工事進行基準です。


  具体的にどうするのかというと、受注価格とそれに伴う原価は事


前にある程度わかっているはずなので、それを各期に割り振って


いきます。 たとえば3年かかる150億のプラントで原価が90億だった


します。1年目30億費用がかかったとすると約3分の1進捗してい


るわけですから(30億÷90億)売上50億(150 x 1÷3)で原価30億な


わけです。一方で2年目工事部材の値上がり等で原価が180億か


かることがわかり2年目90億原価がかかったとすると、(90億+


30億)÷180億で進捗は3分の2ですので売上は50億(150x2÷3


-50)です。3期目は残りですので売上50億(150-50-50)で原価


は60億(180-30-90)です。3期目損失が10億出ることは確実な


のでこの部分は工事損失引当金を見積もらねばなりません。


 このように確かに当初の見積もりが環境の変化によって変


わり損失が出ることはあるのですがこれ自体は仕方ないことで


「不適切会計」ではありません。ただ、3つの社内カンパニーで


立て続けに見積もりが間違っているという事態が起こっている


のは不可解です。あまり憶測はよくないと思うのですが第三者


委員会が入っていることからも組織ぐるみで意図的に損失を


先送りしていた疑いは濃いと思われます

シャープ資本減資 -資本金1億円断念

今朝の新聞でシャープが資本金1億円まで減資する案を断念し


、5億円までの減資にとどめるという記事が新聞に載っていました。


資本金1億円以下であると税制上中小企業扱いになり様々な優


遇措置が受けられることを意図したと思われます。ただ、各方面


から実質的には中小企業ではないのに中小企業としての恩典を


えようとするのは脱法行為ではないかという意見があったのでは


ないかと推察されます。



 

この恩典で大きいのは外形標準課税の部分と欠損金の繰越控


除の部分でしょう。外形標準課税と呼ばれる部分では付加価値割


といわれる報酬給与と純家賃、純支払利子の合計の一定割合と


資本金等の一定割合に事業税が課税される部分です。


(以下正確な金額ではないので参考までにしてください)



ざっくりですが2014年の有価券報告書で給与等と支払利息を


抜き出すと約500億で(雇用安定控除額ないとすると)税率


1.008%で約5億(本来は製造原価の労務費も加わるのでもう


少し多い)資本金割が約1205億で税率0.42%でこれも5億、


合わせて10億です。一般的に少額とはいえませんが、シャ


ープのような大企業からすると少額でしょう


  もう少し大きなインパクトは欠損金の繰越控除で今年度


から所得の65%までに制限され、2年後は50%までしか使え


ません。しかし、中小企業だと100%使えます。正確な税務上


の欠損金の金額はわかりませんが、少なく見積もっても1000


億程度はあると思いますので、例えば将来200億の所得が


あった際、中小企業だと法人税の所得割の部分はゼロですが


50%だとざっくり概算で、200億 x50% x32%(実効税率)32


億税金を払わなくてはなりません。ただ、これも9年の間に


この50%部分も勘案して欠損を一掃するだけの利益を上げ


れば結果は一緒になります。


 以上よりうける利益に比べて社会的ダメージの方が大きい


と判断したのでしょう。心情的には理解できますが、ちょっと


無理スジではなかったかなと思います。


 加えて、このように正式なプレスリリースではないことが、


決算発表前に漏れてしまうことは情報管理としていただ


けない話ではあります。