更年期障害の症状、セルフケア、心の問題についてお話してきました。

 

 

心の問題の中で、子どもが成長し、進学・就職・結婚などで家庭を巣立っていったあと、多くの母親が感じやすい心の揺らぎがあります。
それは「空の巣症候群(Empty Nest Syndrome)」と呼ばれるものです。

 

今回は、「空の巣症候群(Empty Nest Syndrome)」について、もう少し詳しくお話していきますね。

 

 

 

「喪失感」「孤独感」「虚無感」「役割喪失感」…。


名前は少し仰々しいですが、医学的な病名ではなく、人生の移行期に自然に表れる心理的・情緒的な状態を指す言葉です。

 

 

 

 

そんな気持ちの正体

① 「母」という役割を終えた感覚

子どもが小さい頃から日常の大部分を「子育て」に捧げてきた方ほど、独立後に「自分の存在意義がなくなったような感覚」に襲われやすいといわれます。
特に専業主婦や家庭を優先してきた女性に多く見られる傾向です。

 

② 家族のかたちが変わる

家族は成長に応じて姿を変える“生きたシステム”。
子どもが巣立つと、夫婦二人の生活の再構築や、自分の時間の再編成が求められます。
それがうまくいかないと「空白」ばかりが強調されてしまうのです。

 

③ 人生の転換期と重なる

子どもの巣立ちは、親にとっても「人生の後半への入り口」。
更年期や親の介護、老いへの不安などが重なり、心が揺れやすい時期でもあります。

 

 

 

心理的にあらわれやすい症状

喪失感:「もうあの頃のようには戻れない…」という切なさ

 

  • 虚無感:「これから何をして生きればいいんだろう?」という迷い

  • 孤独感:家の中が静かすぎて、誰とも話さない日がある

  • 抑うつ感:気力が湧かない、涙が出る、やる気が出ない

  • 焦燥感:「何かしなきゃ」「でも何をしたらいいのか分からない」

 

 

乗り越えるためのヒント

① 「母」以外の自分を取り戻す

子育て中は「母親役」に全力を注いできた分、今こそ「一人の女性」「一人の人間」としての自分に光を当てるチャンスです。
長い間後回しにしてきた趣味や学び、夢に少しずつ再挑戦してみるのも良いですね。

 

② 同じ体験を分かち合う

同じような時期の女性同士で話してみると、「私だけじゃなかった」と安心できます。
カウンセリングやコミュニティ、おしゃべり会も大きな支えになります。

 

③ 親子関係の新しい形を楽しむ

巣立ちは「終わり」ではなく「変化」。
相談に乗ってくれる、人生を語り合える――大人同士の新しい関係が始まる人も少なくありません。

 

 

 

空の巣は「余白」

「空の巣症候群」は、ただの“空っぽ”ではありません。
見方を変えれば、それは「余白」や「スペース」。

これまで子育てに忙しくて忘れていた「本当の自分」と出会うための、静かな入り口なのです。

 

 

ハート子どもの巣立ちをどう受けとめていますか?
「寂しい」と思う気持ちも、「これから自由になれる」と感じる気持ちも、どちらも自然な心の反応です。


大切なのは、その余白をどう彩っていくか。

あなた自身の人生が、ここからまた新しい色で描かれていきますように。

 

 

 

 

 



野上徳子(のがみとくこ)
内科医・心理カウンセラー
1967年生まれ、岡山県育ち。現在、愛媛県松山市在住。

医師として30年診療に携わる中で、昔から‟病は氣から”というように病気の原因は氣(潜在意識)が大きく関わっていることに気付き、現在は、病気や生きづらさの中に生きる価値を見出し、本当の自分として命を輝かせて生きるサポートをしています。