なんか世間が騒がしいですねー。
参院選ですねー。
こんにちは、渋谷です。
選挙ですよ選挙。
うちは必ず選挙には足を運ぶ家庭なんですね。文句を言うなら、現状を変えたいと思うなら選挙は必須です。選挙に行かない人には世の中に起こる理不尽に文句をつける資格はありません。なので毎回、不在者に行ってでも投票しているんですが。
今回は特に用事がないから当日に行ったんでいいやと思っていたんですね。けれど今朝になって、夫がまた片頭痛で倒れてしまっています。
まあね、夜までに行けばいいんだから。そう焦ることはないんですが、もし行けなかったら嫌だなあとすごく思ってしまうんですね。毎度の習慣を崩すのがすごく嫌なんです。「選挙には必ず行くのだ」という自分内での取り決めがあるので、それを裏切るのが嫌。だから、一人で行っちゃおうかなあとも思うんですが、それも夫がかわいそうな気がして。
早いとこ復活してもらって、一票投じてきたいもんです。その前に読書感想文。川上弘美さんの芥川賞受賞作、「蛇を踏む」です。
川上弘美さんという人は、純文学系の色んな賞の選考委員をされている方なんですね。だから、一回読んでみとかなくちゃと思ってたんです。で、この芥川賞受賞作の「蛇を踏む」。
この作品は短編集で、収録作が
蛇を踏む
消える
惜夜記
となっております。
まず表題作の「蛇を踏む」。文字通り、蛇を踏んじゃった女の人が主人公。踏んだ蛇はにょろにょろ消えていきましたが、家に帰ると中年女の姿になって家でご飯作って待っててくれるんです。「あ、こいつあの時の蛇じゃん」と思うんですが、なんとなく蛇女を拒絶することもできずに同居を始めちゃう主人公。蛇女は自らを「あなたのお母さんよ」と言ってはばかりません。
彼女の周りには、結構いるんですよ。蛇ふんじゃった人が。みんな蛇の化身が現実に食い込んできちゃって、なんだかうまくやっているんです。でも、誘われるんだって。「蛇の世界に来ない?」「こっちは暖かいわよ」
……とんでもねえっす。蛇の世界とか。死んでも行きたくねえっす。もちろん主人公も拒否します。だんだん蛇は本性を露わにしてきて殺し合いになる二人。狂気の世界です。結局締め合いながら蛇と主人公はどこかに流されていっちゃいます。……うん。あれだ。これはきっと「よく分からん」を楽しむ作品だ。はい、次は「消える」ですよ!
つぎはもっと訳分からん。「家族は5人であること」を強制される世界。主人公の女の子の家系は、なぜか家族がいつの間にか消えてしまう家系です。だからひとり消えたらひとり補充しなくちゃ。そんなわけで、よそからお嫁さんをもらってくることになるんですが、そのお嫁さんの家系は「縮んじゃう」家系。
謎の常識が支配する世界観の中で、兄の嫁として嫁いできた女性を軸に、常識では理解不能な世界が広がっていきます。これもあれです。「世界観を楽しむ」作品です。意味などありません(きっと)。はい次!
次の「惜夜記」は夜を惜しむ掌編集。夢の中のような突飛な掌編が多数収められています。言葉のリズムと情景が綺麗。でも、そこには何も意味などないのです(多分)。
これが分かりやすい「純文学」というジャンルのような気がします。「在り方」に芸術性を見出す。起承転結など必要ないのです。そうあるものをそうあるままに書いただけ。しかもその舞台に現代日本の常識など必要ない。純文学は自由。大衆文学は大衆のものですが、純文学って作家のためのものなのかも知れませんね。だって、読む人への気遣いなんかゼロだもん。
はっきり言って意味分からん!でも、「これもアリなんだ……」は理解したかな。今回ネットで調べてみて、「センセイの鞄」という作品が面白そうでした。これは読んでみたいと思います。とりあえず、踏んだ蛇が家でご飯作って待ってた話はよー分かりませんでした。まあ、理解して欲しいなどということは、川上さんは全然考えていないんだろうなとは思いますが。
さー昼ごはん食べて動かなきゃ。ではでは。
選挙に行くぞー!
やーっと読み終わったあ!
いいですね。私は窪美澄さんが好きです。
こんばんは、実家から無事帰還した、渋谷です。
ええ……キャンプでね。テントのポールが折れてね、実家に避難していた三連休。色々あったんですよ。もともと実家は伏魔殿でね。それを乗り越え今日、夫と娘を送り出し、掃除洗濯して後は化粧もせずに書き続けた。幸せだった。やっぱり私は小説を書いている時間が一番幸せなようです。
書きながら、なんかゾーンみたいなのに入っていましたよ。今が何時で、ここがどこか分からなくなるような感覚。物語の中に入って出ることができなくなっていた。こんな時間を得ることができるなんて、本当に幸せだなあと思いました。どこかにいる神様に祈ってしまいたくなるような感覚です。
この分なら、なんとか今月末までに書きあげることができるかも知れない。それがこの先の新たな時間に繋がっていますように。そう思いながら夕方を迎え、読んだのが大好きな窪美澄さんの「さよなら、ニルヴァーナ」。……良かった。おそらくあまり世間には受け入れられない物語かなと思いはしましたが、私の好きな窪さん節全開の作品で、面白くて、これまたゾーンに入って夢中になってしまった……。
テーマは神戸の酒鬼薔薇事件です。前回の塩田武士さんの「罪の声」はグリコ森永事件でした。なんか続いてますね。グリコ森永の方はあまり記憶にないんですが、私酒鬼薔薇の方はよく覚えてるんだよなあ。私が高校生の頃だった。その頃に自分より年下の中学生がそんな恐ろしい事件を起こすだなんて。震撼したことを、よく覚えています。
この作品の中では、犯人の少年の事件に至るまでの経緯が詳細に描かれています。でも、「罪の声」とは違い、あくまでモチーフですね。あの事件の実際と、今回の窪さんの「さよなら、ニルヴァーナ」はだいぶ中身が違っています。まずあの犯人がすっごい美少年として描かれてるから……ないない。私、彼の顔写真がフォーカスか何かに掲載された時にTSUTAYAで働いてて、生で見たんですよね。美少年では絶対にない。「日本人の典型の顔」とでも言いますか。まあ今はネットで簡単に見えますが、あの時はTSUTAYAに張り切って出勤したからね!「酒鬼薔薇顔出しー!」っていって。
だからまあ不謹慎ですが、日本中が本当に巻き込まれた事件だったんです。その事件を、当事者の少年と、被害者の母親、少年を信奉する少女、少年に心惹かれる小説家志望の女性、の四人の視点で描いていきます。これがね、もう、窪ワールド満開で本当に止まらなかった!発売当初は賛否両論巻き起こした作品ではないかと思いますが、今時を越え、私は本当に面白かったと思いました。窪さんという人は、私にめっちゃ衝撃を与えてくれるんだよなあ。
窪さんの世界観というのは、必ず女の本音の目線で物語を拓かれていきます。もちろん男の子の視点が入ることもありますが、基本は女。そして、その女たちが肉欲を隠さない。この作品の主たる主人公、小説家を目指す今日子も有り余る肉欲を抱えて小説家への道を歩んでいます。けれどどれだけ頑張っても新人賞を受賞することが出来ない。もう十年以上努力を重ねていますがいつまでたっても芽が出ない。そして彼女は東京に疲れ実家に帰ります。そこは少年Aが世に放たれ住んでいると言われる街。
実家で母親や妹一家の小間使いをすることに疲れた今日子の視点は、やがて少年Aの現在に向いていきます。ネットに出てくるAの端正な佇まい。今日子は、少年Aに恋をしてしまうのですね。
別軸で語られる、親の愛に飢えた莢(さや)という少女と、少年Aに娘を殺された「なっちゃん」という50代の女性。ふたりは偶然の出会いから心を通わせ、少年Aの現在へと歩みを進めていきます。三人の女が少年Aを求め、探している。そして少年Aの過去が語られます。彼がどうしてそんな犯罪を犯す悪魔になってしまったのか。7歳の女の子の首を絞め、首を切断し頭部を往来に残したことに、一体どんな意味があったのだろうか……!
うーん。当時を知っていた人間には、かなり手に汗握る物語です。怖いです。人間ってこうやって壊れていくんだなってはっきりと分かります。それは少年Aもそうですが、彼を取り巻く女達にも言えます。少年Aを求めるあまり、女たちは道を踏み外してしまいます。これがいやーな読後感を生んでいます。まあ……分からんでもない。実際に被害者があった事件をモチーフにしているからね。それでこのラストは納得しない人の方が多いと思う。
結局少年は罪を償ったのか、自分の神への信仰を押し通したのか。「人間の中身を見たい」と言った彼は、本当の「人間の中身」がその内面にあると気付けたのか。今日子はそれを描けたのか。何も分かりません。全てが混沌として作品は終わります。でも私はいいと思うのよね。窪さんはきっとこの作品で「在り方」を書こうとしたのだろうから。「何かを追い求め続ける人」の「その時の在り方」を書こうとした気がするから。
とにかく、混沌を混沌として書いたこの作品。これが窪美澄だなって思う。答えなんか用意しないぜ!すっきりなんかさせてやるものか!だって実際の人生だってすっきりなんかすることの方が少ないだろが!一人称の小説では、「そこにそれがあった」と読者に思わせてなんぼなんですって。今日子の言葉ですが。確かにそうだなって思う。読者におもねらないのが窪美澄。四者四様の壊れっぷりに魅了されました。私もこんなん書きたい。色々な目線を入れてひとつの事象を観察して、その後に全部ぶち壊すようなエネルギーしかないような作品が書きたい。
……でも、ぶっちゃけまともに人生を生きてるような常識のある方には、この作品はお勧めしないかも。非常識、不適切の塊だから。それでもいいという方、どうぞご一読を。読んで損したとは思わないはず。何かを盗まれ何かを突っ込まれるような感覚が残ります。これだから窪美澄さん、好きだわあ。
あっ、明日になってるやーん!やばい、もう寝な。
というわけで、おやすみなさい!