恥辱とカタルシス -9ページ目

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

なんか世間が騒がしいですねー。

 
こんばんは、渋谷です。
 
 
 
こないだからなんか世間が様々な話題で騒がしいですね。選挙もですが。ジャニーズに京都アニメーションの火災に吉本。なんか、大事件がいっぺんに押し寄せてきた感じ。
 
京都アニメーションに関しては予測のつかない痛ましい事件でしたが、吉本とジャニーズに関しては、今まで伏せられてきたものが公になったみたいな感じですよね。しかもなぜ今のタイミング?みたいなとこで顕になる。こういうの、占星術的な要素があるのかなあなんて思ってしまう。ま、荒唐無稽と言えば荒唐無稽。でも、ないとは言えんと思うのよね。たぶん年末には「2019年は慣例が崩壊した年」とかいうんでしょう。
 
嘘が暴かれる年、パワハラが通用しなくなる年、とか。世の中がどんどんクリーンになっていくね。まあいいことなんでしょう。このままいくと、今年の後半には韓国との間柄はどうなってるんかね。そして世界はどうなっていくのか。
 
どうなっても、自分の心の庭を大切にすることが一番ですね。世間がどう騒いでも、私は変わらずに平静を保つ。惑わされず世の中に流されず日々を生きたいもんです。ちなみに選挙は応援していた候補者が当選!保守愛媛に革命が起こりました。
 
あとは小説を書くだけだ。本も読んだ。「海の仙人」が新たな感覚だった絲山秋子さん。
 
芥川賞を受賞された「沖で待つ」。面白かった!芥川賞の難解さがない、スッと入ってくるとても馴染みやすい作品でした。
 
 
 
この「沖で待つ」には2編の短編が収められています。
 
勤労感謝の日
沖で待つ
 
「勤労感謝の日」は何とも気持ちのいい快作!いや怪作か。私はこういうのが好きです。ブラックユーモア、際立つ力業って感じの作品。
 
主人公の恭子ちゃんは、バブル期に就職して力いっぱい働いて来た36歳。クソ上司がお父さんのお葬式で、なんとお母さんにセクハラをかましたものですからビール瓶でぶん殴ってしまい以来無職です。なんと清々しいキャラ設定でしょう。で、この恭子ちゃんが近所のおばちゃんに勧められてお見合いした相手がまたなんとも刺激的。38歳大企業勤務、けれど清潔感のないデブで、しかも大企業を鼻にかける人格崩壊者。
 
恭子ちゃんはお見合いを途中で抜け出して後輩と飲みに行っちゃいます。プライドを持って働いていた会社員時代。でもそのプライドだけを残したまま無職になったアラフォー女って何なんだろう。飲んでるうちに生理で汚れちゃうパンツ。なんだろね。でも、人生ってきっと「だめなら仕方ない」、そのあきらめと共に少しずつ歩いていくものなんじゃないか……。
 
勤労感謝の日に、不本意なお見合いをした女性のお話。ざっくり言えばそれだけなんですが、読ませるなあ絲山さん。私も人生を振り返り始めているアラフォーなので、身につまされると共に優しい空気感、素っ頓狂なキャラ設定に引き込まれた。面白い短編でした。
 
 
 
「沖で待つ」もいい。住宅設備メーカー……これは絲山さんも実際にお勤めされていたそうなんですが、多分リクシルみたいなところかね。ここに同期入社した及川さんと「太っちゃん」と呼ばれる牧原くんのお話。
 
同期の二人は同時に福岡に配属になった戦友です。戦友なので恋心なんかは全然介しません。ふたりは仕事上の関係を深め、やがて太っちゃんは会社の先輩と結婚し及川さんは埼玉に転勤になります。
 
数年後、東京に単身赴任になる太っちゃん。そこで久々に飲んだ二人は約束するのです。「お互いが死んだら、身内に見られる前にPCのハードディスクを壊すって約束をしよう。そこには確実に見られたくないものが入っているんだから」
 
……うん。せやな。PCとスマホは本当に人に見られたくありません。昔の人はこれが本棚だったのかも知れませんね。特にPC。私の頭の中身が全部入ってるんだもん。履歴を夫に見られたらと思うだけで震撼するわ。そうそう、こないだ私にスマホのおさがりをくれた夫なんか、ちっとも履歴消してないの。しかも使い方がよく分かってないから、あり得ないぐらいキャッシュが残ってるの。ちょっと見て「――……ああ」ってなって黙って全消ししたよー。もう、ほんとに夫の携帯なんて見るもんじゃない。
 
話それた。そんな約束をして別れた二人。遠くないある日、及川さんは太っちゃんが不慮の事故で死んだことを知ります。及川さんは太っちゃんの部屋に忍び込み本当にPCを破壊するのか。一体そのPCには、どんなデータが残されていたのか……。
 
一瞬ミステリーみたいになりますが、ホントに一瞬。やはり淡々と進んでいく及川さんの日常。太っちゃんは不意に及川さんが訪れたあの単身赴任先のアパートに霊となってまだ居座っていました。そこで太っちゃんから、及川さんの秘密をするっと咎める。同期だからこそできること。不思議な不思議な「同期」という関係。
 
親とも兄弟とも友達とも恋人とも違うんだよなー。もちろん先輩や後輩とも全然違う。面白いなあ。これはどこにも敵がいないお仕事小説ですね。日常にほんの少しのスパイスを振りかけて小説としてこんがり焼きあげたって感じ。いいなあ。こういう何気ないお話を、ぎゅっと読み物にする力が私も欲しい。
 
自分の悪い癖だと思うんですが、すぐに大事にしたくなっちゃうんですよね。小説書いてて。だって事件がないと面白くないじゃんって思っちゃう。でも大きな事件が起こらない話を、魅力的な時間に出来る筆にこそ力があるんでしょう。絲山秋子さん、好きです。他のも色々読んでみたいと思います。
 
そんなわけで今日はもうおしまい!小説現代の締め切りまで10日を切りました。推敲が十分にできない気がしてきて怖い。場合によっては、8月末締め切りの野性時代に送るべきかなあ。ちゃんと「出来上がり!」って納得できるのを送りたいのよ。どうしよう。まだ悩み中です。
 
一応野性時代の新人賞の受賞作も図書館で借りて来たので、次はそれを読んでみたいと思います。でも間に合えば小説現代に送りたいな、今日書いた分の見直しをして、早めに寝よう。
 
ではでは、おやすみなさい!

参院選ですねー。

 

こんにちは、渋谷です。

 

 

 

選挙ですよ選挙。

 

うちは必ず選挙には足を運ぶ家庭なんですね。文句を言うなら、現状を変えたいと思うなら選挙は必須です。選挙に行かない人には世の中に起こる理不尽に文句をつける資格はありません。なので毎回、不在者に行ってでも投票しているんですが。

 

今回は特に用事がないから当日に行ったんでいいやと思っていたんですね。けれど今朝になって、夫がまた片頭痛で倒れてしまっています。

 

まあね、夜までに行けばいいんだから。そう焦ることはないんですが、もし行けなかったら嫌だなあとすごく思ってしまうんですね。毎度の習慣を崩すのがすごく嫌なんです。「選挙には必ず行くのだ」という自分内での取り決めがあるので、それを裏切るのが嫌。だから、一人で行っちゃおうかなあとも思うんですが、それも夫がかわいそうな気がして。

 

早いとこ復活してもらって、一票投じてきたいもんです。その前に読書感想文。川上弘美さんの芥川賞受賞作、「蛇を踏む」です。

 

 

 

川上弘美さんという人は、純文学系の色んな賞の選考委員をされている方なんですね。だから、一回読んでみとかなくちゃと思ってたんです。で、この芥川賞受賞作の「蛇を踏む」。

 

この作品は短編集で、収録作が

 

蛇を踏む

消える

惜夜記

 

となっております。

 

まず表題作の「蛇を踏む」。文字通り、蛇を踏んじゃった女の人が主人公。踏んだ蛇はにょろにょろ消えていきましたが、家に帰ると中年女の姿になって家でご飯作って待っててくれるんです。「あ、こいつあの時の蛇じゃん」と思うんですが、なんとなく蛇女を拒絶することもできずに同居を始めちゃう主人公。蛇女は自らを「あなたのお母さんよ」と言ってはばかりません。

 

彼女の周りには、結構いるんですよ。蛇ふんじゃった人が。みんな蛇の化身が現実に食い込んできちゃって、なんだかうまくやっているんです。でも、誘われるんだって。「蛇の世界に来ない?」「こっちは暖かいわよ」

 

……とんでもねえっす。蛇の世界とか。死んでも行きたくねえっす。もちろん主人公も拒否します。だんだん蛇は本性を露わにしてきて殺し合いになる二人。狂気の世界です。結局締め合いながら蛇と主人公はどこかに流されていっちゃいます。……うん。あれだ。これはきっと「よく分からん」を楽しむ作品だ。はい、次は「消える」ですよ!

 

つぎはもっと訳分からん。「家族は5人であること」を強制される世界。主人公の女の子の家系は、なぜか家族がいつの間にか消えてしまう家系です。だからひとり消えたらひとり補充しなくちゃ。そんなわけで、よそからお嫁さんをもらってくることになるんですが、そのお嫁さんの家系は「縮んじゃう」家系。

 

謎の常識が支配する世界観の中で、兄の嫁として嫁いできた女性を軸に、常識では理解不能な世界が広がっていきます。これもあれです。「世界観を楽しむ」作品です。意味などありません(きっと)。はい次!

 

次の「惜夜記」は夜を惜しむ掌編集。夢の中のような突飛な掌編が多数収められています。言葉のリズムと情景が綺麗。でも、そこには何も意味などないのです(多分)。

 

 

 

これが分かりやすい「純文学」というジャンルのような気がします。「在り方」に芸術性を見出す。起承転結など必要ないのです。そうあるものをそうあるままに書いただけ。しかもその舞台に現代日本の常識など必要ない。純文学は自由。大衆文学は大衆のものですが、純文学って作家のためのものなのかも知れませんね。だって、読む人への気遣いなんかゼロだもん。

 

はっきり言って意味分からん!でも、「これもアリなんだ……」は理解したかな。今回ネットで調べてみて、「センセイの鞄」という作品が面白そうでした。これは読んでみたいと思います。とりあえず、踏んだ蛇が家でご飯作って待ってた話はよー分かりませんでした。まあ、理解して欲しいなどということは、川上さんは全然考えていないんだろうなとは思いますが。

 

さー昼ごはん食べて動かなきゃ。ではでは。

 

選挙に行くぞー!

やーっと読み終わったあ!

 
こんにちは、渋谷です。
 
 
 
やっと読み終わりましたよ。倉橋由美子さんの「聖少女」。題名からしてエロいですねー。こちらの作品、初出が昭和49年です。だから……45年前?
 
まあ古い作品です。でも、桜庭一樹さんがすごくオススメされてた作品なんですよね。「私の男」はこの「聖少女」にインスパイアされた作品なんだそうです。私、桜庭一樹さんの「私の男」はほんとーに大好きな作品なんですよね。ああいうのが書きたいと、すごくすごーく思ってたんです。
 
「私の男」っていうのは、簡単に言えば近親相姦のお話です。そんな関係になった親子が、殺人という罪でもがんじがらめになってお互いを吸い付くして疲弊していく物語。今私が書いてる話も近親相姦的なやつなんですよね。「私の男」を読む以前にもぎっちぎちの近親相姦を書いたっけな。
 
なんか好きなんですよね。近親相姦。現実に致したことはござんせんが。なんでか、と考えると、不倫どころでない究極のタブーなんですよね。なによりも「やっちゃいけない」こと。でも、自分と近い血に混ざりあいたいと考えるのは、自然なことなのではないかと思うのです。特に弱ってるときなんかさ。
 
もちろん、きったない親父が娘を無理やり犯す話なんかは大嫌いです。「義母の寝室」みたいなのも勘弁して下さい。物語の中の近親相姦、そこには美と不可抗力とインテリジェンスがなければならないのです。
 
 
 
この「聖少女」の主人公は未紀ちゃんという女の子です。彼女が「パパ」と呼ぶ、倍も年齢が離れた男性との日々が記されたノートがお話の軸。この未紀ちゃんて子がなかなか強烈でねー。今で言うゴスロリ黒魔術少女って感じでしょうか。
 
お母さんは手広く水商売を商っている女性です。お金に恵まれ、容姿に恵まれ、その上頭までいい未紀ちゃんは、高校生にして自分で猟奇的な雰囲気を売りにしたバーを経営しています。そのうち学校は中退しちゃって、パパを作ってデートしてみたり、女の子と裸ん坊でベッドでいちゃいちゃしちゃったりします。
 
そしてもうひとりの主人公がKと呼ばれる青年。彼もなかなかに突拍子もないキャラクターで、イケメン、高身長、頭が良くてニヒリスト。高校時代に悪友たちと強盗、誘拐、輪姦と悪の限りを尽くして退学処分になってます。大学時代は学生運動に参加し、今はアメリカへの渡航を前にしてビザが降りるのを待ってる状態です。賢過ぎて人生に飽き飽きしちゃってる美青年、て感じですかね。しかもお姉ちゃんのLとは近親相姦の間柄。Kが心から愛しているのはLひとりです。でもそこがねえ、姉ちゃんなもんだからうまくいくわけない。そんなこんなでKくんはどんどんひねくれてってしまうんです。
 
 
 
未紀ちゃんはある時、事故を起こして記憶をなくしてしまいます。同乗していたお母さんは死亡。未紀ちゃんはその昔ひょんなこと(いや、結構これも無茶苦茶な出会い方なんだけども)から知り合いになったKくんに自分が書いた例のノートを送るのです。記憶を失った未紀ちゃんは、Kくんに自分の記憶の発掘を依頼するのですが……。
 
うん、はっきり言ってね、二組の近親相姦のお話なんです。Kくんはお姉ちゃんと、未紀ちゃんはお父さんと。
 
なんでそんなことになっちゃうのかって話なんですね。解説を桜庭一樹さんが書かれてるんですが、「思春期の女の子の凡庸な母親への憎悪(これは、ああはなりたくない、って感覚なのかなーと私は思った)が、絶対者である父への思慕に変わり、肉体関係を結ぶことで俗物たちの頭の上を飛び越え偽の神を目指すのである」――的なことを書かれていました。うーん……そうかなあ。私はなんか違う気がする。
 
男の子がいつまでもお母さんのおっぱい触りながら寝たがるのと一緒じゃない? 自分が出来た素に還りたい、みたいな感覚。男の人だったらそれが子宮だったりおっぱいだったりするけど、女の場合はねえ……。まあそういう行為になっちゃうってことで。
 
これはあくまで子供側が親を求める時が前提の話ですけど。兄弟だったら同じ血の中に潜り込みたいって感覚なんじゃないかな。異物が少ない、自分に近い存在だから。まあ普通の神経してたらそんな話にはならないので、やはり生育環境に問題があったとか、何か大きな心の傷があって初めて発動するんじゃないかと思いますが。
 



で、お互い近親相姦にずっぷりハマっている未紀ちゃんとKが、それぞれの相手を失ったことで求めあい、ラストにはなんと結婚する話になるんです。

結婚……。こういう夢見がちカップルが一番してはいけない契約ごとです。ほんとにダメです。周りを不幸にしますから。こういうところからも、桜庭一樹さんが言われていた、「この作品は究極の少女小説」というところに深く納得してしまいました。読者の年齢層は「少女」に限りませんが。実際子供が読んで理解できるような内容ではありません。おそらく45年前だって、子供に向けて書かれたものではないと思う。

大人が読む、「少女小説」。甘くエロティックで、切なく痛々しい究極のホラ話。面白かったです。近親相姦ものとしても、エキセントリックな少女の物語としても、猟奇的な青年の物語としても面白かった。けどなんせ、とにかく読みづらかった!

文体が古く、思考をカタカナで表記してたり、比喩も複雑でめんどかった。最後まで慣れませんでした。

でも乗り越えて良かったこの作品。エッセンスを盗んで自分とこで使いたいと思います。というわけで。

良い週末をー!

いいですね。私は窪美澄さんが好きです。

 

こんばんは、実家から無事帰還した、渋谷です。

 

 

 

ええ……キャンプでね。テントのポールが折れてね、実家に避難していた三連休。色々あったんですよ。もともと実家は伏魔殿でね。それを乗り越え今日、夫と娘を送り出し、掃除洗濯して後は化粧もせずに書き続けた。幸せだった。やっぱり私は小説を書いている時間が一番幸せなようです。

 

書きながら、なんかゾーンみたいなのに入っていましたよ。今が何時で、ここがどこか分からなくなるような感覚。物語の中に入って出ることができなくなっていた。こんな時間を得ることができるなんて、本当に幸せだなあと思いました。どこかにいる神様に祈ってしまいたくなるような感覚です。

 

この分なら、なんとか今月末までに書きあげることができるかも知れない。それがこの先の新たな時間に繋がっていますように。そう思いながら夕方を迎え、読んだのが大好きな窪美澄さんの「さよなら、ニルヴァーナ」。……良かった。おそらくあまり世間には受け入れられない物語かなと思いはしましたが、私の好きな窪さん節全開の作品で、面白くて、これまたゾーンに入って夢中になってしまった……。

 

 

 

テーマは神戸の酒鬼薔薇事件です。前回の塩田武士さんの「罪の声」はグリコ森永事件でした。なんか続いてますね。グリコ森永の方はあまり記憶にないんですが、私酒鬼薔薇の方はよく覚えてるんだよなあ。私が高校生の頃だった。その頃に自分より年下の中学生がそんな恐ろしい事件を起こすだなんて。震撼したことを、よく覚えています。

 

この作品の中では、犯人の少年の事件に至るまでの経緯が詳細に描かれています。でも、「罪の声」とは違い、あくまでモチーフですね。あの事件の実際と、今回の窪さんの「さよなら、ニルヴァーナ」はだいぶ中身が違っています。まずあの犯人がすっごい美少年として描かれてるから……ないない。私、彼の顔写真がフォーカスか何かに掲載された時にTSUTAYAで働いてて、生で見たんですよね。美少年では絶対にない。「日本人の典型の顔」とでも言いますか。まあ今はネットで簡単に見えますが、あの時はTSUTAYAに張り切って出勤したからね!「酒鬼薔薇顔出しー!」っていって。

 

だからまあ不謹慎ですが、日本中が本当に巻き込まれた事件だったんです。その事件を、当事者の少年と、被害者の母親、少年を信奉する少女、少年に心惹かれる小説家志望の女性、の四人の視点で描いていきます。これがね、もう、窪ワールド満開で本当に止まらなかった!発売当初は賛否両論巻き起こした作品ではないかと思いますが、今時を越え、私は本当に面白かったと思いました。窪さんという人は、私にめっちゃ衝撃を与えてくれるんだよなあ。

 

窪さんの世界観というのは、必ず女の本音の目線で物語を拓かれていきます。もちろん男の子の視点が入ることもありますが、基本は女。そして、その女たちが肉欲を隠さない。この作品の主たる主人公、小説家を目指す今日子も有り余る肉欲を抱えて小説家への道を歩んでいます。けれどどれだけ頑張っても新人賞を受賞することが出来ない。もう十年以上努力を重ねていますがいつまでたっても芽が出ない。そして彼女は東京に疲れ実家に帰ります。そこは少年Aが世に放たれ住んでいると言われる街。

 

実家で母親や妹一家の小間使いをすることに疲れた今日子の視点は、やがて少年Aの現在に向いていきます。ネットに出てくるAの端正な佇まい。今日子は、少年Aに恋をしてしまうのですね。

 

別軸で語られる、親の愛に飢えた莢(さや)という少女と、少年Aに娘を殺された「なっちゃん」という50代の女性。ふたりは偶然の出会いから心を通わせ、少年Aの現在へと歩みを進めていきます。三人の女が少年Aを求め、探している。そして少年Aの過去が語られます。彼がどうしてそんな犯罪を犯す悪魔になってしまったのか。7歳の女の子の首を絞め、首を切断し頭部を往来に残したことに、一体どんな意味があったのだろうか……!

 

 

 

うーん。当時を知っていた人間には、かなり手に汗握る物語です。怖いです。人間ってこうやって壊れていくんだなってはっきりと分かります。それは少年Aもそうですが、彼を取り巻く女達にも言えます。少年Aを求めるあまり、女たちは道を踏み外してしまいます。これがいやーな読後感を生んでいます。まあ……分からんでもない。実際に被害者があった事件をモチーフにしているからね。それでこのラストは納得しない人の方が多いと思う。

 

結局少年は罪を償ったのか、自分の神への信仰を押し通したのか。「人間の中身を見たい」と言った彼は、本当の「人間の中身」がその内面にあると気付けたのか。今日子はそれを描けたのか。何も分かりません。全てが混沌として作品は終わります。でも私はいいと思うのよね。窪さんはきっとこの作品で「在り方」を書こうとしたのだろうから。「何かを追い求め続ける人」の「その時の在り方」を書こうとした気がするから。

 

とにかく、混沌を混沌として書いたこの作品。これが窪美澄だなって思う。答えなんか用意しないぜ!すっきりなんかさせてやるものか!だって実際の人生だってすっきりなんかすることの方が少ないだろが!一人称の小説では、「そこにそれがあった」と読者に思わせてなんぼなんですって。今日子の言葉ですが。確かにそうだなって思う。読者におもねらないのが窪美澄。四者四様の壊れっぷりに魅了されました。私もこんなん書きたい。色々な目線を入れてひとつの事象を観察して、その後に全部ぶち壊すようなエネルギーしかないような作品が書きたい。

 

……でも、ぶっちゃけまともに人生を生きてるような常識のある方には、この作品はお勧めしないかも。非常識、不適切の塊だから。それでもいいという方、どうぞご一読を。読んで損したとは思わないはず。何かを盗まれ何かを突っ込まれるような感覚が残ります。これだから窪美澄さん、好きだわあ。

 

 

 

あっ、明日になってるやーん!やばい、もう寝な。

 

というわけで、おやすみなさい!

神様というのはいるようで……。

こんばんは、渋谷です。



さて三連休中日ですね。キャンプに出ていたはずの我が家。結論から言うとたった今私、実家の布団でごろごろしています。なんでか、と申しますと。

キャンプ場についてテントを張っていましたら、突然『ぼきっ』……。ポールが折れたんですよ。買ってからまだ10回も張ってないテント。そのアルミ製のポールが折れちまったんだからもうどーしょーもない。仕方なく撤収し、近所の私の実家に転がり込んだというわけです。

まあ、「なんで野営やねん」と呟く私の声を、神様が聞き漏らさず願いを叶えてくれた、というところでしょうか。夫はとてつもなくがっかりしていましたが、私は屋根の下で眠れて良かったです。まあ、ちっとも落ち着く実家ではないんですけどねー。雨の中のキャンプよりゃまだマシ。本も読めたし。ということで、塩田武士さんの『罪の声』を読了することができました!



パソコンでなくスマホからの投稿なので、今日はちょっと簡潔に。

前回も書きましたが、『グリコ森永事件』をテーマにしたお話なんですね。あの未解決事件を、「もしかしたら、真実はこうだったのでは?」という視点で、犯人たちの動機から丁寧になぞった作品です。事件の名称こそ『ギン萬事件』と変更されていますが、内容はほぼ実際の事件だそう。私はこの事件、はっきりと記憶にあるわけではないんです。でも、手に汗握りました。

新聞記者の阿久津が、ロンドンや名古屋、東京、愛媛、岡山とあちこちを駆け回って30年以上前のあの事件の真相に少しずつにじり寄っていく物語です。犯人の脅迫に利用された、当時幼児だった俊也も素人ではありますが、別の線から事件の真相に迫っていきます。この2方向からの調査内容を、両方読者である我々は知っているわけなんですよね。で、終盤になってふたりは出会い、情報が合わさることによって、とうとう事件の全貌が明らかになるのです。



でもね、この作品、ただのノンフィクションじゃなくて、しっかり小説なんですね。もちろん取り扱ってるのが未解決事件ですから、想像の上で書かれたものなんですが。それ以上にちゃんと読者に読ませる力がある。

俊也と同じように犯人グループに利用された子どもたちの、その後の不幸な人生。理不尽な境遇に甘んじるしかなかった彼らの人生をしっかり追って、そして最後にはきちんと救いを用意しています。事件に関わった登場人物はかなりな人数になるのですが、それらの人たちも書き飛ばすことなく丁寧に描写しているので、物語に厚みがある。ラストはちょっと泣いた。前半はなかなかに読み進めるのが大変だったけど、頑張って完走して本当に良かったと思える読後感でした。



こりゃ、映画になっても話題になるだろうなあ。映画館で見たい、とまでは言いませんが、DVDは借りるだろうな。大人の鑑賞に耐える、考えさせられる作品に仕上がるんじゃないかと思います。面白かったです。さあ、明日は帰るぞ。

早く帰って猫に会いたいです。そして小説書きたい。もう寝よう。

というわけで、おやすみなさい!