読書感想文134 絲山秋子 沖で待つ | 恥辱とカタルシス

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作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

なんか世間が騒がしいですねー。

 
こんばんは、渋谷です。
 
 
 
こないだからなんか世間が様々な話題で騒がしいですね。選挙もですが。ジャニーズに京都アニメーションの火災に吉本。なんか、大事件がいっぺんに押し寄せてきた感じ。
 
京都アニメーションに関しては予測のつかない痛ましい事件でしたが、吉本とジャニーズに関しては、今まで伏せられてきたものが公になったみたいな感じですよね。しかもなぜ今のタイミング?みたいなとこで顕になる。こういうの、占星術的な要素があるのかなあなんて思ってしまう。ま、荒唐無稽と言えば荒唐無稽。でも、ないとは言えんと思うのよね。たぶん年末には「2019年は慣例が崩壊した年」とかいうんでしょう。
 
嘘が暴かれる年、パワハラが通用しなくなる年、とか。世の中がどんどんクリーンになっていくね。まあいいことなんでしょう。このままいくと、今年の後半には韓国との間柄はどうなってるんかね。そして世界はどうなっていくのか。
 
どうなっても、自分の心の庭を大切にすることが一番ですね。世間がどう騒いでも、私は変わらずに平静を保つ。惑わされず世の中に流されず日々を生きたいもんです。ちなみに選挙は応援していた候補者が当選!保守愛媛に革命が起こりました。
 
あとは小説を書くだけだ。本も読んだ。「海の仙人」が新たな感覚だった絲山秋子さん。
 
芥川賞を受賞された「沖で待つ」。面白かった!芥川賞の難解さがない、スッと入ってくるとても馴染みやすい作品でした。
 
 
 
この「沖で待つ」には2編の短編が収められています。
 
勤労感謝の日
沖で待つ
 
「勤労感謝の日」は何とも気持ちのいい快作!いや怪作か。私はこういうのが好きです。ブラックユーモア、際立つ力業って感じの作品。
 
主人公の恭子ちゃんは、バブル期に就職して力いっぱい働いて来た36歳。クソ上司がお父さんのお葬式で、なんとお母さんにセクハラをかましたものですからビール瓶でぶん殴ってしまい以来無職です。なんと清々しいキャラ設定でしょう。で、この恭子ちゃんが近所のおばちゃんに勧められてお見合いした相手がまたなんとも刺激的。38歳大企業勤務、けれど清潔感のないデブで、しかも大企業を鼻にかける人格崩壊者。
 
恭子ちゃんはお見合いを途中で抜け出して後輩と飲みに行っちゃいます。プライドを持って働いていた会社員時代。でもそのプライドだけを残したまま無職になったアラフォー女って何なんだろう。飲んでるうちに生理で汚れちゃうパンツ。なんだろね。でも、人生ってきっと「だめなら仕方ない」、そのあきらめと共に少しずつ歩いていくものなんじゃないか……。
 
勤労感謝の日に、不本意なお見合いをした女性のお話。ざっくり言えばそれだけなんですが、読ませるなあ絲山さん。私も人生を振り返り始めているアラフォーなので、身につまされると共に優しい空気感、素っ頓狂なキャラ設定に引き込まれた。面白い短編でした。
 
 
 
「沖で待つ」もいい。住宅設備メーカー……これは絲山さんも実際にお勤めされていたそうなんですが、多分リクシルみたいなところかね。ここに同期入社した及川さんと「太っちゃん」と呼ばれる牧原くんのお話。
 
同期の二人は同時に福岡に配属になった戦友です。戦友なので恋心なんかは全然介しません。ふたりは仕事上の関係を深め、やがて太っちゃんは会社の先輩と結婚し及川さんは埼玉に転勤になります。
 
数年後、東京に単身赴任になる太っちゃん。そこで久々に飲んだ二人は約束するのです。「お互いが死んだら、身内に見られる前にPCのハードディスクを壊すって約束をしよう。そこには確実に見られたくないものが入っているんだから」
 
……うん。せやな。PCとスマホは本当に人に見られたくありません。昔の人はこれが本棚だったのかも知れませんね。特にPC。私の頭の中身が全部入ってるんだもん。履歴を夫に見られたらと思うだけで震撼するわ。そうそう、こないだ私にスマホのおさがりをくれた夫なんか、ちっとも履歴消してないの。しかも使い方がよく分かってないから、あり得ないぐらいキャッシュが残ってるの。ちょっと見て「――……ああ」ってなって黙って全消ししたよー。もう、ほんとに夫の携帯なんて見るもんじゃない。
 
話それた。そんな約束をして別れた二人。遠くないある日、及川さんは太っちゃんが不慮の事故で死んだことを知ります。及川さんは太っちゃんの部屋に忍び込み本当にPCを破壊するのか。一体そのPCには、どんなデータが残されていたのか……。
 
一瞬ミステリーみたいになりますが、ホントに一瞬。やはり淡々と進んでいく及川さんの日常。太っちゃんは不意に及川さんが訪れたあの単身赴任先のアパートに霊となってまだ居座っていました。そこで太っちゃんから、及川さんの秘密をするっと咎める。同期だからこそできること。不思議な不思議な「同期」という関係。
 
親とも兄弟とも友達とも恋人とも違うんだよなー。もちろん先輩や後輩とも全然違う。面白いなあ。これはどこにも敵がいないお仕事小説ですね。日常にほんの少しのスパイスを振りかけて小説としてこんがり焼きあげたって感じ。いいなあ。こういう何気ないお話を、ぎゅっと読み物にする力が私も欲しい。
 
自分の悪い癖だと思うんですが、すぐに大事にしたくなっちゃうんですよね。小説書いてて。だって事件がないと面白くないじゃんって思っちゃう。でも大きな事件が起こらない話を、魅力的な時間に出来る筆にこそ力があるんでしょう。絲山秋子さん、好きです。他のも色々読んでみたいと思います。
 
そんなわけで今日はもうおしまい!小説現代の締め切りまで10日を切りました。推敲が十分にできない気がしてきて怖い。場合によっては、8月末締め切りの野性時代に送るべきかなあ。ちゃんと「出来上がり!」って納得できるのを送りたいのよ。どうしよう。まだ悩み中です。
 
一応野性時代の新人賞の受賞作も図書館で借りて来たので、次はそれを読んでみたいと思います。でも間に合えば小説現代に送りたいな、今日書いた分の見直しをして、早めに寝よう。
 
ではでは、おやすみなさい!