やーっと読み終わったあ!
こんにちは、渋谷です。
やっと読み終わりましたよ。倉橋由美子さんの「聖少女」。題名からしてエロいですねー。こちらの作品、初出が昭和49年です。だから……45年前?
まあ古い作品です。でも、桜庭一樹さんがすごくオススメされてた作品なんですよね。「私の男」はこの「聖少女」にインスパイアされた作品なんだそうです。私、桜庭一樹さんの「私の男」はほんとーに大好きな作品なんですよね。ああいうのが書きたいと、すごくすごーく思ってたんです。
「私の男」っていうのは、簡単に言えば近親相姦のお話です。そんな関係になった親子が、殺人という罪でもがんじがらめになってお互いを吸い付くして疲弊していく物語。今私が書いてる話も近親相姦的なやつなんですよね。「私の男」を読む以前にもぎっちぎちの近親相姦を書いたっけな。
なんか好きなんですよね。近親相姦。現実に致したことはござんせんが。なんでか、と考えると、不倫どころでない究極のタブーなんですよね。なによりも「やっちゃいけない」こと。でも、自分と近い血に混ざりあいたいと考えるのは、自然なことなのではないかと思うのです。特に弱ってるときなんかさ。
もちろん、きったない親父が娘を無理やり犯す話なんかは大嫌いです。「義母の寝室」みたいなのも勘弁して下さい。物語の中の近親相姦、そこには美と不可抗力とインテリジェンスがなければならないのです。
この「聖少女」の主人公は未紀ちゃんという女の子です。彼女が「パパ」と呼ぶ、倍も年齢が離れた男性との日々が記されたノートがお話の軸。この未紀ちゃんて子がなかなか強烈でねー。今で言うゴスロリ黒魔術少女って感じでしょうか。
お母さんは手広く水商売を商っている女性です。お金に恵まれ、容姿に恵まれ、その上頭までいい未紀ちゃんは、高校生にして自分で猟奇的な雰囲気を売りにしたバーを経営しています。そのうち学校は中退しちゃって、パパを作ってデートしてみたり、女の子と裸ん坊でベッドでいちゃいちゃしちゃったりします。
そしてもうひとりの主人公がKと呼ばれる青年。彼もなかなかに突拍子もないキャラクターで、イケメン、高身長、頭が良くてニヒリスト。高校時代に悪友たちと強盗、誘拐、輪姦と悪の限りを尽くして退学処分になってます。大学時代は学生運動に参加し、今はアメリカへの渡航を前にしてビザが降りるのを待ってる状態です。賢過ぎて人生に飽き飽きしちゃってる美青年、て感じですかね。しかもお姉ちゃんのLとは近親相姦の間柄。Kが心から愛しているのはLひとりです。でもそこがねえ、姉ちゃんなもんだからうまくいくわけない。そんなこんなでKくんはどんどんひねくれてってしまうんです。
未紀ちゃんはある時、事故を起こして記憶をなくしてしまいます。同乗していたお母さんは死亡。未紀ちゃんはその昔ひょんなこと(いや、結構これも無茶苦茶な出会い方なんだけども)から知り合いになったKくんに自分が書いた例のノートを送るのです。記憶を失った未紀ちゃんは、Kくんに自分の記憶の発掘を依頼するのですが……。
うん、はっきり言ってね、二組の近親相姦のお話なんです。Kくんはお姉ちゃんと、未紀ちゃんはお父さんと。
なんでそんなことになっちゃうのかって話なんですね。解説を桜庭一樹さんが書かれてるんですが、「思春期の女の子の凡庸な母親への憎悪(これは、ああはなりたくない、って感覚なのかなーと私は思った)が、絶対者である父への思慕に変わり、肉体関係を結ぶことで俗物たちの頭の上を飛び越え偽の神を目指すのである」――的なことを書かれていました。うーん……そうかなあ。私はなんか違う気がする。
男の子がいつまでもお母さんのおっぱい触りながら寝たがるのと一緒じゃない? 自分が出来た素に還りたい、みたいな感覚。男の人だったらそれが子宮だったりおっぱいだったりするけど、女の場合はねえ……。まあそういう行為になっちゃうってことで。
これはあくまで子供側が親を求める時が前提の話ですけど。兄弟だったら同じ血の中に潜り込みたいって感覚なんじゃないかな。異物が少ない、自分に近い存在だから。まあ普通の神経してたらそんな話にはならないので、やはり生育環境に問題があったとか、何か大きな心の傷があって初めて発動するんじゃないかと思いますが。
で、お互い近親相姦にずっぷりハマっている未紀ちゃんとKが、それぞれの相手を失ったことで求めあい、ラストにはなんと結婚する話になるんです。
結婚……。こういう夢見がちカップルが一番してはいけない契約ごとです。ほんとにダメです。周りを不幸にしますから。こういうところからも、桜庭一樹さんが言われていた、「この作品は究極の少女小説」というところに深く納得してしまいました。読者の年齢層は「少女」に限りませんが。実際子供が読んで理解できるような内容ではありません。おそらく45年前だって、子供に向けて書かれたものではないと思う。
大人が読む、「少女小説」。甘くエロティックで、切なく痛々しい究極のホラ話。面白かったです。近親相姦ものとしても、エキセントリックな少女の物語としても、猟奇的な青年の物語としても面白かった。けどなんせ、とにかく読みづらかった!
文体が古く、思考をカタカナで表記してたり、比喩も複雑でめんどかった。最後まで慣れませんでした。
でも乗り越えて良かったこの作品。エッセンスを盗んで自分とこで使いたいと思います。というわけで。
良い週末をー!