はい、変な人ー。
今更ながら、「インストール」を読んでみました。
こんばんは、渋谷です。
綿矢りささんが17歳で文藝賞を受賞した作品、「インストール」。
話題になってたから読んでたかなーと思いつつ、はっきり記憶になかったのでもう一度手に取ってみました。するとほぼ中身には記憶がなかった。でもびっくりすることに、登場人物の名前が今私が書いてる話とふたりもかぶってるのよね。
「雅」「唯」。あまりある名前じゃないのにふたつも同じ名前を使ってた。……ということは、私やっぱりこの作品昔読んだことあったのかなあ。
名前もかぶってるし背景も若干近いものがあるんです。むかーし昔に読んで、無意識に植えつけられてたのかも知れない。やべー……。こうやってパクリって発生していくんだろうか。まあ全然話の内容は違うから、気にしなくていっか。
というわけでもしかしたら再読だったかもしれない「インストール」、綿矢りささんのデビュー作ですが、いかにも綿矢りささんらしい作品でした。
主人公の朝子ちゃんは受験生。17歳です。予備校を掛け持ちしちゃうような真面目な子なんですが、自分のこの先の人生がすでに読めちゃってるような気がしてます。「みんなと同じ生活を送るのが嫌」なんですって。まあこれぐらいの年頃にはよく思うやつです。「私は他のみんなとは違う!私には特別な何かがあるんだー!」
そんなこと言いながらみんなと同じ格好しておんなじ音楽聴いて流行を押さえて生きていく愚かしさよ。一般的な女の子は口だけですが、朝子ちゃんは違います。友達の光一くんの進言に従ってホントに登校拒否児になっちゃいます。シングルで育ててくれてるお母さんの目を盗んで自室の家具をピアノまで捨てちゃうし。うーん、ロックだね!
部屋に鎮座していた壊れたパソコンも捨てちゃいます。マンションのごみ捨て場で運搬に疲れ切って寝っ転がっていると、とある少年に声をかけられます。かずよしくん、というこの小6の少年もかなりの曲者。朝子ちゃんからパソコンを譲り受け、自分でOSをインストールし(多分そういう事なのかな。自分で修理したと言うことでしたが)、そのパソコンを使ってエロチャットでひと儲けしようと企むのです……!
登校拒否の朝子ちゃんが午前の部、帰宅後のかずよしくんが午後の部を担って、「雅」という風俗嬢を名乗ってのエロチャットバイトが始まります。場所はかずよしくんちの押入れのなか。かずよしくんちは最近後妻さんが入って引っ越してきたばかりです。昼間は誰もいないかずよしくんちに合鍵で堂々と侵入して、処女朝子ちゃんはエロの世界に引き込まれていきます。
……17歳の性への興味やね。あっさりと書かれてますが、朝子ちゃんのパンツは濡れちゃっています。そうでありながら、「普通の大人になりたくない」朝子ちゃんは「だからってこんなことを求めていた訳じゃない」という気もします。かずよしくんは後妻さんの鮮やかなオレンジのブラを目にしながら生活をしている。どうしてかずよしくんがこんな妙なバイトをしようと企んだのか、分かっていくうちに朝子ちゃんの心にも変化が生まれてきます。
やがてお母さんにサボりがバレ、部屋の家財一式を捨てたこともバレた朝子ちゃん。
お母さんは「いじめにでもあってるの?」と訊いてくれます。それだけで多分気が済んじゃったんだよねえ。お母さんの気を引きたかった。お母さんも余裕がなくて朝子ちゃんのことを振り返ることができなかった。それに気付いて、もういいかという気になったのかなと思います。
かずよしくんにも、「あんたは子供なんだからお母さんに甘えなよ」的な言葉を投げかけ、朝子ちゃんは再び登校することを決意します。なにも変わらないけれど、自分の力でなにかを変えなければならないと気付いた。そんな感じでしょうか。青春、青春やねえ……。
まあはっきり言えば、青臭い青春の記録です。誰しもこの年頃には考えるようなことです。この朝子ちゃんはちょっとだけ素直な子なので、自分に湧いた疑念を見ないふりをせず、ちゃんと試してみたんですね。自分という存在は愛されているのか、本当に価値があるのか。
そんなこと、わからないまま大人になる人が大半だと思いますが。「自分の価値」とか「自分には愛される理由があるのか」なんて大人になったって分からない。分からないままみんな悩んでるんだよね。一度日常も家財も捨て去って本気の「自分探し」をやってみた朝子ちゃんはなかなかの強者だと思う。でも、これきっと今の綿矢さんが書いたら、こんなきれいにまとまったラストにはならないんだろうなあ。
だって一度スカトロの世界まで知ってしまった17歳処女が、普通の青春に戻れるはずがない。特に朝子ちゃんは無鉄砲。エロチャットから足を洗って同い年とノーマル初体験とかそんな清いことをするはずない。さあ、その先はどうなるのやら……。
そんな訳で、面白かったんですが少し物足りなかった「インストール」。でもこのお話を、主人公朝子ちゃんと同い年の綿矢さんが書いただなんて本当に驚きです。
生まれながらの作家、なんでしょうね。きっとこの時点で風俗もエロチャットもスカトロも身近にはなかっただろう17歳の綿矢さん、知識からこれを書いたのだとしたらすごいと思う。意外に色々物知りだったという可能性もありますが。
にしたって17歳でこれだけのものが書けるってすごいなあ。天才、というのはこういう方のことを言うんでしょうね。
という訳で、綿矢さんはこの先も読んでいきたいと思います。面白かった!
ではではまたー。
キャンプいきませんでした。
こんばんは、渋谷です。
なんかキャンプいきませんでした。土曜日の夜に雨が降るって天気予報が言うし、寒いし。
夫が「焚火したい」って言ってたんですけどね。ありがたいことに断念してくれた模様。良かった。冬キャンプ、流行ってるなんて言いますが経験者からするとなんも面白くないぜ?ひたすら寒いし。水冷たいし。霜降りるし。
お金払ってお湯が出る電源サイト付きのところに行くならありですが、だったらホテルで泊まったほうが良いのですよ。男のロマンはなかなか女には通用しません。ま、4月になったらありですけどね。
というわけで本を読みました。米澤穂信さんの「満願」。結構時間がかかっちゃった。ミステリー気分ではなかったのですが、でもやっぱり面白かった!こういう「珠玉の名作」みたいな冠言葉がつく作品は、こっちの気分なんかぶっ飛ばして圧倒してくれるものなんですね。
「満願」は山本周五郎賞受賞の短編集です。あとなんか「何とかのミステリーがすごい!」みたいなのを三冠で獲ってます。収録作が
夜警
死人宿
柘榴
万灯
関守
満願
となっております。
どれも、面白い。短い、淡々とした文章の中に「……えっ⁉」が潜んでいます。短編集を読んで、こうまですべての作品の完成度が高い本って私はあんまり知らないです。全部のお話が本当に面白かった。でもなんか読むのに時間かかったんだけどね。やはり気分の問題か。そんな中で、私が特に面白いと思ったのが「柘榴」と「関守」です。
「柘榴」は美しい母と中学生の二人の姉妹が主人公。夫はイケメンじゃないものの、妙な魅力で女を虜にしてきた男です。飄々としていて、なんか人好きがするようないわゆる人たらし。母親は自身の父親の反対を押し切り、この男とデキ婚してしまいます。それで生まれた娘二人は母に似てとても美人。けれど夫はろくに家に寄り付きもせず、たまに現れ金をせびっていくようなほんと駄目な男です。
でも生来の人たらしを邪険にできず、結婚生活はだらだらと続きます。娘二人が中学生になってやっと離婚しようと思い立つ母親。親権は当然自分のものになるはずだと思っていたのに、夫も主張をしてきます。生活力のない夫。調停に持ち込んでも勝てるはずでした。なのに、結果的に親権を手にしたのは、夫。
美しい娘二人が策略を巡らせ、父親とともにいることを選んだのですね。互いの背を真鍮の靴ベラでしばき合い「おかーさんにやられましたー」とか言い出すんだよ。……なんだと?私も母の立場なのでざわつきます。女を殺し、必死でふたりの娘を育ててきたお母さんなのに。
なんだってそんな話になったのかというと、娘二人の姉の方がなんとたまにしか会わないおとーちゃんを男として見ちゃってたんですね。おかーさんからおとーさんを奪った。おとーさんも娘を女として見てる。そして姉は自分に似て美しく、けれど自分にないはかなさを持った妹に真鍮の靴ベラで一生消えない傷を背負わせ、「これでもうこの子の美しさを恐れる必要はない」……みたいににんまりとするのです。
……こわっ‼いやいやいやいや、こわっ‼
エロスと狂気美って感じですかねえ。私の大好物です。それが美しく流れるような文章で描かれます。「柘榴」って題もいい。姉は父親と二人っきりでこっそり山へ柘榴を獲りに出かけるのですね。そこで柘榴をもいで食べ、よごれた姉の唇を父親の舌が拭う。……エロっ。
現実にあるとするとなんとも胸糞悪い話ですが、とても綺麗でぞくぞくするような短編でした。対して「関守」はサスペンス風味の都市伝説ミステリー。これも面白かった!
コンビニに置いてる「本当にぞっとする都市伝説」みたいなムックを出版するため、記事を依頼されたライターの男性が主人公。事故が多い峠を取材に出かけます。そこの頂上にあるドライブインに車を止め、たった一人で店を切り盛りする老婆に話を聞いたのが運のツキ。
そこでは4度の事故、5人の死者が出ていました。「都市伝説なんて眉唾ものに決まってるじゃーん」とたかをくくっていたライターくん。ですが店主のおばあちゃんに詳しい話を取材していくうちに、知ってはいけなかった峠の真実に触れてしまい、後戻りすることができなくなってしまうのです……!
このお話はもうホラーですね。「薄暗いドライブインで独り語りする老婆」ってだけで怖いのに、話が核心に近づいていくだに余計こっちを怖がらせるような仕掛けが施されているんですよ。もー怖いわっ。私「ほんとにあった怖い話」みたいなマンガ好きなんですけど(主に寺尾玲子さんですね)それに近い怖さがありました。文章でこうまで人を怖がらせれるって、すごいなあ。
そのほかのお話もとても面白かったです。表題作の「満願」には読みごたえがあったし、「万灯」はまさかの自業自得にびっくりしました。ちょっと考えつかないラストで、驚かされた。すごくエンターテイメントな1冊でした。
米澤穂信さんと言えば「氷菓」という作品がデビュー作で、この作品が高い評価を受けたとネットなどでお見かけしていました。「氷菓」も読んでみたいと思います。楽しみ。読んでみたい本があるってとても楽しいことですね。
さあ、明日からは図書館で入手してきた本を読みたいと思います。色々借りたんだ。小説も書きながら。
じくじく頑張りましょう。ではまたー。
インフル地獄、とうとう脱出です……!
渋谷ですー。
やっとうちの子外に出られるようになりました。とは言え今日も幼稚園はお休み。夕方から習い事にだけ行きました。ひと時ですが私はやっとひとりの時間。久々のウォーキング、楽しかったあ。(私はウォーキング魔なのです)
図書館にもやっと行けました。行ったら「この本タダでもって帰っていいですよ」市をやっていた。図書館も本棚に限りがありますもんね、時々そうやって古い蔵書を市民にもってけドロボーしてくれるんです。そしたら今回、コバルト文庫の本が大量流出しててさ。
私、中学ぐらいの頃コバルトにハマってたのよねえ。知ってる作家さんの本が無料配布されているのを見て切なくなってしまった。昔は「コバルトでデビューできるなんて、すごい‼」と憧れまくった方たちです。決してその方たちがもう作家として機能していないというわけでなく、その本がもうあまり動かなくて本棚からあぶれてしまったというだけなんでしょうが、切ないよう。夢を叶えた先にも物語があるのね。「兵どもが夢のあと」だわ。
でもそのあと本棚眺めてたら立原透夜さんの全集みたいなの見つけた。ちょうど私がコバルト読んでた頃にデビューされた立原さん。今は大学で中国語の教員をなさりながら作家活動を続けてるんですって。すごいですね。ああ、私が大好きだった若木未生さんはどこに行ったんだ。兵どもが……ああ。
さてそんな話になったし、せっかくなので私の読書遍歴の話などしてみましょう。最近お気に入りのサイトがWEB本の雑誌。その中に作家の読書道というコラムがあるんです。いろんな作家さんの読書遍歴が披露されていてとても面白い。
いま米澤穂信さんの「満願」を読んでるんですが、これが夫の本棚からなんとなく持ってきたやつでねえ。もちろん面白いんだけど自分から情熱持って読み始めたわけじゃないから微妙に読み進まんのよ。やっぱ私、ミステリーミステリーしたミステリー、あんまり盛り上がらん。
だから今日は自分語りに逃げてみたいと思います。本大好きだった子供時代、一番最初の記憶はやっぱり、「ねずみくんのチョッキ」なんだよなあ……。
絵を描かれてた上野紀子さんが亡くなったんですってね。それで思い出した「ねずみくんのチョッキ」。お母さんが編んでくれたねずみくんの素敵な赤いチョッキ。友達の動物たちが「ちょっと着させておくれよー」と言ってくるので貸してあげる優しいねずみくん。
でもあひる、さる、アシカとお友達はどんどん大きくなっていきます。最後には象。ねずみくんのチョッキは伸びてビロビロ。かわいそうなねずみくん。と思いきや、とっても優しいラストが待っているんです。
懐かしいねえ。小1になった時点でまったく文字が読めなかった私はスタートがここです。そこから小学校時代は多分人生で一番本を読んだ。ホームズ、ルパン、ポアロの洋物子供向けミステリー、江戸川乱歩、横溝正史、あ、私ミステリー好きなんやん。それから「モモ」とか「ネバーエンディングストーリー」……ミヒャエルエンデか。「ナルニア国」もねえ。正しい子供の読書の図ですね。
あと4年生の時に担任になった若い男の先生が自費で教室に本を買ってくれてね、それが図書室にないようなやつだったのでむさぼるように読んだ。青い鳥文庫とかポプラ社文庫やね。なんかあのハンディサイズの軽い内容の本は図書室になかった。ズッコケシリーズも図書室になくてこの先生が買いそろえてくれてた。私は読まなかったけど。
それと実家が恐ろしいくらいの田舎なもんだから、毎年正月明けには「本の移動販売」っていうのが学校に来てたのね。体育館にどばーっと本が並ぶ。そこで出会ったブライトンの「おちゃめなふたご」シリーズにはホントにハマったなあ。
イギリスの寄宿学校を舞台にした児童文学なんですね。パットとイザベルという双子が主人公で、個性豊かな学友たちと喧嘩したり、いたずらしたり人として正しく生きるとはどういうことかと悩んだり。夜中に寮を抜け出してみんなで「真夜中のパーティー」したりするんだぜ。憧れた。アニメにもなったそうなんですが、私は見てないの。見たかったなあ。
ブライトンはほかのシリーズも好きだった。でも「おちゃめなふたご」は別格。3冊だけですが大人になってからまた買い求めた。「若草物語」も「赤毛のアン」シリーズも大人になってから買いなおした。「大草原の小さな家」ももう一度読みたい。私もしかして、結構乙女チック?
そうそう、最近本棚の整理してたら子供時代から持ち越してた「10歳シリーズ」発見しちゃったわよ。沢井いづみさんの「10歳シリーズ」のなかの、「レミ10歳、わたしのおうちはフルーツパーラー」。沢井いづみさんも好きだったなあ。「レミ」は子供にすすめておいた。その辺で印象に残ってるのと言えば「こうかん日記で魔法をかけて」も忘れられん。やっぱり私、乙女チックな子だったのね笑。
小学校中学年からは何と言っても「花井愛子」の時代が到来する笑。ねえゆかさん。旋風が吹き荒れましたよね?
お年玉は講談社にすべて献上していたと言っても過言ではない。ピンクの表紙が本棚に並んだ。恋愛小説ブームの到来。図書館で検索したけど、もう講談社X文庫はおいてなかったよ。
一冊だけ手元にあるんですけどね。「銀色のボーイ」。読み返して感慨ひとしお。いやあ、面白かったなあ。
そして中学に進むとコバルトブームがやってくる。若木未生、桑原水菜、前田珠子。その間に瀬戸内晴美、筒井康隆、なぜかビートたけし。変な子供。3年生になると純文学ブームが到来します。中二病の一種でしょうか、「純文学読んでるあたし、かっこよくね?」と思っちゃった。
太宰治、坂口安吾、田山花袋、三島由紀夫、夏目漱石、谷崎潤一郎。川端康成は一冊も読んだことない。一番合ったのは太宰治でしたかね。「なんかこの人、かっこいい!」って思っちゃったのよね。
そのまま高校いって文芸部に入っちゃいます。でも一人暮らしだったのであっという間に生活が荒れて本読むどころじゃなくなっちゃいましたが。それでも筒井康隆とビートたけしはなぜか読み続けてた。なんかあの反骨精神が良かったのかね。逆に今筒井先生はなぜか読もうと思いません。思春期の反抗心にぴったり合ったんだろうな。そしてなし崩しに卒業すると、島田荘司の時代がやってくるのです……!
なんやゆーて(訳注・何と言っても)あのおっさんかっこよかったんよね。見た目が。そしてもちろん作品も抜群に面白かった。「占星術殺人事件」「異邦の騎士」それに続く御手洗潔シリーズにドはまりしました。いまだに私が紅茶飲みなのもクラシックやジャズを聴くのも御手洗潔の影響。そんな素養は一切ない田舎娘にとって、島田荘司と御手洗潔は憧れの的でした。なんかだんだんオタクっぽくなってって妙になってから、離れたけど。(だって御手洗さんと石岡君のやおいを島田さんが容認するような雰囲気があったのよ。絶対いや!)
でも私が勧めたもんだからうちの夫も島田さんにハマって、御手洗シリーズとりあえず全巻揃ってはいるのよね。気が向いたら読もう。ちなみにうちの夫はバイク大好きみたいな青春を送って、本なんか一冊も読まない人だったんですよ。私の影響でいまやどっぷりミステリー好き。で、その私が夫の本棚からミステリーを拝借している。人生って、分かんないもんです。
そのあとは京極夏彦、有栖川有栖、乙一なんかを読みましたかね。海外ミステリーにハマったのもこのころシドニイシェルダン、スティーブンキング。その辺でもう人生のミステリー許容量はいっぱいになってしまいました。人が死ぬのがしんどくなったんです。そのあたりからは実生活が忙しくなって(荒れて、ともいう)本が読めなかった。読んでも実用書ばっかりでしたね。自己啓発本とかもよく読んだ。何者かになりたかったんでしょうねえ。
間に林真理子さんは読んでいた記憶があります。やっぱり根本的に私この方好きなんだと思う。あとは話題になった本を暇つぶしに読んでいた感じです。エッセイが多かったかなあ。読みやすいから。さくらももこさんとかねえ。そうそう、エロ本読んでたのもこのあたりだ。エロ本っていうとアレですが、官能小説。
ただわかりやすいエロ本は琴線に触れませんが、煮詰められた官能小説はええね。もうどんなん読んだか忘れましたが。団鬼六とかか笑?古本屋で堂々と買ってましたね。捨て方に困った覚えがあるな。まあ燃えるゴミに混ぜて出してましたっけ。
こう書いてみると、やっぱり私が一番本を読んだのって子供の頃なんですね。大人になってからは根をつめて本を読んだ記憶がない。漫画も大人になってからはほとんど読んでないなあ。漫画の話も今度したい。なかよし派だった私、三年ぐらい前にそのころの連載作品をずらっと百冊近く大人買いしちゃったのよ。
「なないろマジック」とか「指輪物語」とか「おもちゃ箱革命」とか。少コミも好きで特に小越なつえファンだったなあ。「泣き虫学らん娘」、全巻買ったった笑
私の理想の男は今でも卓見悦郎くんです。あんな男にべったべたに愛される人生が理想だ。今でもちょこちょこ読み返してしまう。あんな青春、送りたかったなあ。あと「絶愛」「BRONZE」にハマったのも今ではいい思い出だ。なのにBLは苦手という……。人間って不思議ですねえ。
と、いうわけで特に主張もなく自分の話をしてみました。明日からはキャンプに行くのでまた本は読めません。小説はだいぶ進みましたがどんどんバイオレンスになっていくので初期からちょこちょこ書き直しをしています。完成したら、読んでねっ(私信)。
あーよく書いた。さーのんびりお酒でも飲もっ。
ではまた―。
これはもう、書かずには寝られ―ん!
こんばんは、渋谷です。
朝井リョウさんの「何者」を読んだよ。直木賞受賞作。いやー、なんせ今子供がインフルエンザ真っ最中なんです。もう熱は下がったんだけどね。
図書館で借りた本全部読んじゃって、困ったなーと思ってたの。子供ほったらかして図書館だの本屋だのに行くわけにはいきませんから。だから夫の本棚を漁ろうと思ったんですが、夫の蔵書はほぼミステリーのみ。違うんだよなー、という感じ。
眺めてるうちに朝井リョウさんの「何者」を見つけた。これってたしか「桐島が部活をやめたんですけど」だか何だかいう人のやつだよなと思ってググってみた。すると「何者」は直木賞受賞作だという。
林真理子信奉者の私としては、直木賞受賞作を読まぬわけにはいかん。というわけで読んでみた。やっべえ、ちょー面白かったあ……!
そもそも私、朝井リョウさんは「桐島、部活やめるってよ」の印象しかなくて、しかも映画でしか見たことなくて、しかもその映画がつまんなくて、途中で寝入ったって記憶しかないんですよね。開始30分ぐらいで寝て、エンディングの高島優さん?の曲で目覚め、「最後の最後までなんやねーん!」という感想を持った記憶しかない。こう言ってしまっては申し訳ないんですが、何が面白いのかさっぱり理解できなかった。元々私は映画が苦手なタイプなんですが。エンディング曲も悪夢の残像みたいな印象しかなかった。朝井リョウ、謎でしかない、と思っていた。
やっぱり私のような見識の狭い人間は、「桐島、部活やめるってよ」も小説で読んでみるべきだったのかもしれません。そう思うほどに面白かった「何者」。今現在私が思う「はあ?」を見事に解き明かしてくれる作品だったんです。
主人公の拓人くんは就活生。ルームメイトの光太郎くん、光太郎くんの元カノ瑞月さん、瑞月さんの友達理香さん、その彼氏隆良くんの5人が主要登場人物。5人は就活を駆け抜けていく同志としてちょこちょこ集まります。拓人くんと光太郎くんが住む部屋の一階下に、理香さんと隆良君が住んでるんですね。みんなで飲み会なんかしながら情報交換したり。今どきっぽくSNSでつながってみたり。
私、就活ってしたことがないんですね。だからそういう世界を知らないんだけど、いわゆる目で見える断罪をされる世界なんだなというのがよくわかりました。自分がいかにへりくだってすり寄っていっても、不採用のひと言で己を否定をされてしまう。厳しいですね。決してそれは人格否定ではないはずですが、傷ついてしまう気持ちはよくわかります。22歳でそういう壁にぶち当たるって辛いんだろうな。
登場人物たちは、そういった思いをSNSにぶちまけていきます。けれどそれは、他者の目を気にして取り繕ったもの。
本音は裏垢で出るんですね。そのお互いに可視化できるアカウントと裏垢の間に、背筋がぞくっとする違和感が潜んでいるのです……!
私ね、ついこの間ここでも書いたんですが、ほんとあのSNSというものが難しくて。難しいって何なんだって話なんですが、理解しがたくて。
でも、面白いって言うのはよくわかるんです。自分が興味ある事柄の最新情報を手に入れるには、こんなに便利なツールってない。受信する側としてはとても面白い。でも、発信する側に立った時、あれって何なんだろう、と思うんです。
「私」という人間に、まわりに周知徹底ししてもらわなければいけないような重要事項、あったかしら?
私のこんな些末事、いちいち世の中に知らしめる必要性、あるのかしら?
そう思うと何にも発信することなんてない。主人公の拓人くんも、「成しえていないものを声高に叫ぶことに何の意味がある?」と考える青年なんです。就活の様子をつぶさにアップしてく仲間を俯瞰して。「出来上がったものにこそ意味があるじゃないか。中途半端に努力の痕跡だけ叫んでなんになる?」
わかるわかるよ拓人くん。「途中だから完成するために応援して!」とか「頑張ってる私を見て!」とか、なんか痛いなって思っていた。すごくうなづける思想でした。でも、後半で拓人くんは虚飾に彩られたような女の子、理香ちゃんにこう言われ気付くのです。ざっくりいうと、ですが。
「必死な姿をさらすこともできないあんたは何をなしえてるって言うの」
「高いところから俯瞰で見下ろして採点して、それで自分の手の中に何が残るって言うの!」
「私たちは何者になんかなれない、自分にしかなれない!」
……ううう、うん。
まあ……そうやな。
そういわれてみれば、そうやな。
そっか、SNSで一生懸命叫んでる人たちって、何か得ようと力を振り絞ってる状態なのか。
その先で臨むものを得ようと、頑張ってる状態なのか。
私ね、なんかほんとにこの拓人くんという主人公と同じような思考を持っていたんですね。「出来てないことを夢みたいに語るのかっこ悪い」「不完全な自分の日常をさらすことに何の意味があるんだ」ぐらいに思ってました。
まあ「作家になりたいなりたい」は言いますが、別になれないなんて思ってないからね。私はなれると思ってるから。でもそのために「これやりました!」「あれやりました!」は言わない。と言うか言えない。だって作家になれてない今はそれってものすごく中途半端な努力だもん。かっこ悪いなと思っていた。でも、恥ずかしいね。私、間違ってました。
「出来上がってる自分」になる必要はないんだね。途中でいいんだ。途中の自分を、「みてみて!」ってアピールしてもいいんだ。
このお話はこれだけがテーマじゃなく、色々含蓄を含んだお話でした。でも、今の私にリンクしていた部分ばっかりがクローズアップされてしまった。他の部分も、とても面白かったです。
とくにお友達の光太郎くんの描写は面白かったなあ。こういう子、いる。憎めないお調子者で底が知れない男。でも描写が難しい。すごく魅力的でした。女の子たちもギラギラしていて、すてきだったな。
朝井リョウさん、「桐島、部活やめるってよ」もちゃんと読んでみたいと思います。なんたってすばる新人賞受賞作だ。読まぬわけにはいくまい。読まねばなるまい。とても面白い作家さんですね。「それを言いたかったんだけど、言葉が見つからなかったの!」を教えてくれそうな方です。面白かった!
また今日も面白い本に出会いました。あー良かった。じゃあ寝よう。
ではまたー。