読書感想文52 米澤穂信 満願 | 恥辱とカタルシス

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

キャンプいきませんでした。

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

なんかキャンプいきませんでした。土曜日の夜に雨が降るって天気予報が言うし、寒いし。

 

夫が「焚火したい」って言ってたんですけどね。ありがたいことに断念してくれた模様。良かった。冬キャンプ、流行ってるなんて言いますが経験者からするとなんも面白くないぜ?ひたすら寒いし。水冷たいし。霜降りるし。

 

お金払ってお湯が出る電源サイト付きのところに行くならありですが、だったらホテルで泊まったほうが良いのですよ。男のロマンはなかなか女には通用しません。ま、4月になったらありですけどね。

 

というわけで本を読みました。米澤穂信さんの「満願」。結構時間がかかっちゃった。ミステリー気分ではなかったのですが、でもやっぱり面白かった!こういう「珠玉の名作」みたいな冠言葉がつく作品は、こっちの気分なんかぶっ飛ばして圧倒してくれるものなんですね。

 

 

 

「満願」は山本周五郎賞受賞の短編集です。あとなんか「何とかのミステリーがすごい!」みたいなのを三冠で獲ってます。収録作が

 

夜警

死人宿

柘榴

万灯

関守

満願

 

となっております。

 

どれも、面白い。短い、淡々とした文章の中に「……えっ⁉」が潜んでいます。短編集を読んで、こうまですべての作品の完成度が高い本って私はあんまり知らないです。全部のお話が本当に面白かった。でもなんか読むのに時間かかったんだけどね。やはり気分の問題か。そんな中で、私が特に面白いと思ったのが「柘榴」と「関守」です。

 

「柘榴」は美しい母と中学生の二人の姉妹が主人公。夫はイケメンじゃないものの、妙な魅力で女を虜にしてきた男です。飄々としていて、なんか人好きがするようないわゆる人たらし。母親は自身の父親の反対を押し切り、この男とデキ婚してしまいます。それで生まれた娘二人は母に似てとても美人。けれど夫はろくに家に寄り付きもせず、たまに現れ金をせびっていくようなほんと駄目な男です。

 

でも生来の人たらしを邪険にできず、結婚生活はだらだらと続きます。娘二人が中学生になってやっと離婚しようと思い立つ母親。親権は当然自分のものになるはずだと思っていたのに、夫も主張をしてきます。生活力のない夫。調停に持ち込んでも勝てるはずでした。なのに、結果的に親権を手にしたのは、夫。

 

美しい娘二人が策略を巡らせ、父親とともにいることを選んだのですね。互いの背を真鍮の靴ベラでしばき合い「おかーさんにやられましたー」とか言い出すんだよ。……なんだと?私も母の立場なのでざわつきます。女を殺し、必死でふたりの娘を育ててきたお母さんなのに。

 

なんだってそんな話になったのかというと、娘二人の姉の方がなんとたまにしか会わないおとーちゃんを男として見ちゃってたんですね。おかーさんからおとーさんを奪った。おとーさんも娘を女として見てる。そして姉は自分に似て美しく、けれど自分にないはかなさを持った妹に真鍮の靴ベラで一生消えない傷を背負わせ、「これでもうこの子の美しさを恐れる必要はない」……みたいににんまりとするのです。

 

……こわっ‼いやいやいやいや、こわっ‼

 

エロスと狂気美って感じですかねえ。私の大好物です。それが美しく流れるような文章で描かれます。「柘榴」って題もいい。姉は父親と二人っきりでこっそり山へ柘榴を獲りに出かけるのですね。そこで柘榴をもいで食べ、よごれた姉の唇を父親の舌が拭う。……エロっ。

 

現実にあるとするとなんとも胸糞悪い話ですが、とても綺麗でぞくぞくするような短編でした。対して「関守」はサスペンス風味の都市伝説ミステリー。これも面白かった!

 

コンビニに置いてる「本当にぞっとする都市伝説」みたいなムックを出版するため、記事を依頼されたライターの男性が主人公。事故が多い峠を取材に出かけます。そこの頂上にあるドライブインに車を止め、たった一人で店を切り盛りする老婆に話を聞いたのが運のツキ。

 

そこでは4度の事故、5人の死者が出ていました。「都市伝説なんて眉唾ものに決まってるじゃーん」とたかをくくっていたライターくん。ですが店主のおばあちゃんに詳しい話を取材していくうちに、知ってはいけなかった峠の真実に触れてしまい、後戻りすることができなくなってしまうのです……!

 

このお話はもうホラーですね。「薄暗いドライブインで独り語りする老婆」ってだけで怖いのに、話が核心に近づいていくだに余計こっちを怖がらせるような仕掛けが施されているんですよ。もー怖いわっ。私「ほんとにあった怖い話」みたいなマンガ好きなんですけど(主に寺尾玲子さんですね)それに近い怖さがありました。文章でこうまで人を怖がらせれるって、すごいなあ。

 

 

 

そのほかのお話もとても面白かったです。表題作の「満願」には読みごたえがあったし、「万灯」はまさかの自業自得にびっくりしました。ちょっと考えつかないラストで、驚かされた。すごくエンターテイメントな1冊でした。

 

米澤穂信さんと言えば「氷菓」という作品がデビュー作で、この作品が高い評価を受けたとネットなどでお見かけしていました。「氷菓」も読んでみたいと思います。楽しみ。読んでみたい本があるってとても楽しいことですね。

 

さあ、明日からは図書館で入手してきた本を読みたいと思います。色々借りたんだ。小説も書きながら。

 

じくじく頑張りましょう。ではまたー。