恥辱とカタルシス -13ページ目

恥辱とカタルシス

作家志望、渋谷東子と申します。
よろしくお願いします。

例のアレ、出してきました。

 
こんばんは、渋谷です。
 
 
 
オール読物出してきたなりよ。短編。かっきり100枚。ウェブ応募も出来ましたが、ちゃんと届くのか不安だったから(ファイルの形式とか……機械オンチやから)、印刷してレターパックで送ってきました。
 
だってオール読物さんたら、ファイル形式の指定がないんよ。はっきり「これで送ってこい!」って言ってくれりゃいいのに、オンチは自由にやれと言われると不安になるのよ。そこでやはり信じられるのはアナログ。追跡も出来るしね。ちゃんと到着したようでございます。
 
まあ、送ったらもうあとは知りまへん。なるようになれやわな。今のお話に集中するだけ。で、今日も小説現代長編新人賞受賞作ですよ。今日のお話は2009年の受賞作、加藤元さんの「山姫抄」です。
 
 
 
この加藤元さん、お名前から男性かと思っていたら女性でした。しかも結構な美人。1973年生まれ、日大芸術学部を中退なさった後10以上の職種を経験されたのちにこの賞の受賞となったそうです。
 
おう……。若干の既視感。私も仕事を転々としてきた口なので、親近感が沸きますね。夜のお勤めもなさってたとか。……他人とは思えんな。いや、私なんかと一緒にしちゃ申し訳ないのですが。なんか人間のタイプが一緒なのかなという感じがします。一回一緒に飲んでみたいような、そんな感じですね。
 
で、この「山姫抄」。これっ!やっぱり私の好きな世界でした!ちょっと田中慎弥さんの世界観に通じるものがあるのよ。嫌いな人にはとことん嫌がられる作風かも知れないとも思いますが、私は好き!めっちゃ面白くて2時間ちょいでノンストップの読了となりました!
 
主人公は30代ホステス一花ちゃん。流れ流れて、今のお勤め先は片田舎のお婆ママがひとりで営むスナックです。そこに現れる暴力的な客が智顕。この男は花火職人で、二年前に失踪した妻を持つ妻帯者です。一花ちゃんは自己中心的で破滅的な智顕に口説かれ、あっさり山奥の家で同棲を始めちゃいます。ほらもう、この設定からして私の好きなやつやん。陰鬱な匂いしかしない。
 
智顕が住む家は、かつての妻姿子(しなこ)の実家です。姿子はお金持ちのお嬢様で、智顕の暴れん坊父ちゃんが事故を起こして姿子以外の家族を殺してしまったという過去があります。姿子自身もその事故が原因で、足に障害が残りました。そして家出して2年。智顕は一花ちゃんに言うんですね。「姿子は絶対に戻ってこん。お前はここにおりゃあええ」
 
一花ちゃんの方にもいろいろ事情がありまして、彼女は幼い頃から幻覚に苛まれ現実から逃げ回っています。打ち上げられた腐乱死体にたかってた蟹を見ちゃったものだから、それ以来彼女の現実の中にはちょこちょこ蟹の幻影が紛れ込んでくる。この蟹を見ちゃうと、一花ちゃんはすべてを放りだして逃げ出しちゃいます。だから日本各地のスナックを転々としてるんですね。脳みそ食べられちゃいそうな感じがするんだって。グロ。
 
それがあって智顕のもとに転がり込んだわけですが、この智顕、智顕の実家の林田家、その林田家が属する集落の絶望的な闇が一花ちゃんを取り込んでいく。これがもう大迫力!郷土史や地元に伝わる「山姫伝説」、そして智顕の父吾郎の悪辣振りが絡んで、一花ちゃんは脱出不可能な蟻地獄に落ちていくことになるんです。智顕と姿子の住んでいた家を建てる際、沼を埋め立てた時に出てきた白骨遺体というサスペンスもいい味付けになっていて、もう、ページをめくる手が止まらなかった。受賞作だというのに、本当に面白い作品でした。
 
 
 
読後、何が面白かったのかと冷静に考えてみると、まずは智顕のキャラクター。分かりやすいDV男です。まだ本性を現す前のDV男。あいつらってね、本性晒す前はものすごく魅力的なんです。なんていうか、男のフェロモンみたいなものが出てるんです。肉食獣の鋭さと言うか、力を持つ者の不遜さと言うか。遺伝子に訴えかけてくる何かを持ってるんです。まあちゃんとした人生を送ってる、優しい男性の方が間違いなくいい男なんですよ?でもなんかあの危うさに惹かれる女っているんですよ。一緒に破滅したい、みたいな妙な感情が湧いてきちゃう。自己愛が足りない女に多い現象かもしれません。ぶん殴られるって行為も、一種「私を求めてくれてる」って実感に繋がってたりするわけで。
 
そんな智顕に閉じ込められる、田舎の陰鬱さ。私は田舎出身なのでとてもリアルだったんですが、あそこには空がないみたいな感じがするんですね。いや、あるんですけど。車がなければ生きていけないド田舎で、移動手段を持たなかったら本当に自由がないんです。
 
都会では考えられないぐらい、近隣が親密だし。そこに馴染まないと他に生きる手段がないっていう切迫感。閉じ込められてるんですよね、要は。だから田舎に移住して、すぐに都会に出戻っちゃう人の気持ちが私には痛いほどわかるよ。田舎ほど猟奇殺人多かったりするしね。同化するか、排除されるか。それがすべてとは言いませんが、移住前に風土についてはよくよく調べておいた方がいいと思うよ!高知に下戸が移住すると大変なことになるしね!
 
そこに絡んでくる、地元のちょっと怖い伝承。神隠しって、本当に神が隠したんでしょうか。子供が突如消えるって今でもある話ですが、今なら小児性愛者が逮捕されたりします。当時はちゃんとした捜査なんて行われなかった。犯人が分かっていたとしても、どうせもう子供が死んでいるなら、同じ村から犯罪者を出すのは果たして得策なのか?
 
一花ちゃんは智顕にからめとられ、そしてその土地にからめとられてしまいます。姿子はどこへ行ったのか。そもそも本当に失踪なのか。DV男の本領を発揮し始めた智顕のそばで、一花ちゃんはこれからどうなってしまうのでしょうか……!
 
 
 
あー、面白かった。私の好きなやつ。私もこんなの書きたいよー。土地の伝承と一族の闇を絡めて、みたいなの。そこにDV男と殺人が絡んでくるなんて面白くないわけがないやんか。
 
改めて加藤元さん、好きかも。他のお話も読んでみよっと。このところ新人賞受賞作を読んでますが、やっぱり受賞作が面白い人はその先も活躍されてますね。まあ……まあまあまあ、みたいな人はその後の著作が見当たりません。しょうがないわね。実力の世界やもんね。
 
加藤さんにはすでに数冊の刊行があるようで。楽しみだわ。ツイッターもフォローしよっと。
 
というわけでもうすぐ今日が終わる!12時前にアップして寝よっ。
 
おやすみなさい!

うーん、なんかお久しぶり!

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

なんか本が読めなかったのねー。昼間は小説を書いているので、本を読むのは主に夕方から夜を充てているんですが。

 

なんか笑い話っつーか愚痴と言うか、夫と一悶着ありまして。下らないけど、「肉じゃが生煮え事件」。

 

夫の実家からもらったジャガイモで肉じゃがを作ったんですね。そしたらそれが生煮えで。私としては時間をかけて作ってますので、生煮える理由がないんです。でも確実に芋は生煮え。で、夫がひと言、「この肉じゃがはダメやなあ」――。

 

普段の私なら、「ほんとだね、ごめんね」で済ますんですが、ここ最近『中の私さん』を大切にしている私からすると、「こっちはちゃんとやってんねや。私の肉じゃがをくさすゆうことは私をくさすということか」という気持ち。要は、本気でイラっときたんです。こんな事は滅多とございません。イラっときた私は、ひく―い声で言いました。「ダメとか言わんでや」

 

するってーと夫の顔色が変わりましたよ。「いやっ、違うんよ。親父が、今年のジャガイモは出来が悪いって言ってたから、そういうことなのかなー……と……」

 

それから夫は私の顔色を見ること甚だし。夜もあれこれ話しかけてくるので本が読めん。無理くり徳光さんのバス旅とか見せられて。私はもともとテレビはあまり好きじゃないんですが、肉じゃがの余韻でなんか鑑賞せざるを得なかった。怒るってエネルギーいるんだねえ。事後処理もめんどくさい。やっぱり怒ってもろくなことないなあ。でもなんか、あの時は本気でイラっときた。止まらなかった。

 

そんなこんなでやっと一冊。今回はなぜか芥川賞。図書館にぽんとあったのよね。上田岳弘さんの「ニムロッド」です。

 

 

 

仮想通貨をモチーフにしたお話です。ビットコイン。暴落してたのがまた持ち直してきたらしいですね。もてはやされてた時に、仕組みが分かんなくて調べた覚えがあります。だって分からんじゃん。目の前にモノがないのに価値があるって。せめて株式みたいに評価する対象があるんなら話は分かるけど、それすらもないって。

 

要は「ビットコインというものの存在を認めて、それに価値があるとして売買する人」たちの売買記録(需要と供給)で価値が成り立ってる通貨らしいんですよね。……合ってます?違うかな。なんかそういうことなんだろうと理解したんですが。

 

主人公の中本哲史君は、IT系の会社に勤める30代の男の子。ナカモトサトシ。サトシ・ナカモト。それはビットコインの創始者と同姓同名なんだそう。そのせいか彼は保守整備がメインの職場にいるにもかかわらず、社長に「ビットコインの採掘」を業務として与えられます。

 

なんかビットコインって、取引の明文化で価値が成り立ってる通貨だから、その明文化に寄与したパソコンにビットコインをお給料みたいな形で分けてくれるんだって。要は、ビットコインを配ってビットコインの存在を証明させるべく人々(=PC)に働かせるってことらしく、まあこの仕組みを作って一旦起動し始めれば、かってにどんどこ発展していくということらしい。なんか難しいですが、「ビットコインすげえ!ほしいほしい!」と盛り上がる人がいるうちは価値が上がり続ける通貨なんだってさ。空虚だねえ。昭和なおばはんはやっぱり金とかのがいい気がする。あんまりにも実体がなさすぎる。

 

で、サトシ君は会社の使ってないPCでビットコインの採掘を始めます。月収30万。ビジネスとしては微妙なラインです。彼には紀子ちゃんという株でごっそり儲けちゃう有能な彼女と、「ニムロッド」と名乗るかつて作家志望だった同業の先輩がいまして、この三人でもじょもじょとやりあうのがこの話の本筋。でもこれ、なかなかに難解で難しい話なんですよねえ……。

 

 

 

小説とは、だって。人間の活動を明文化して、初めて市井の民の人生はあったものとされる。うん……まあね。分からんでもない。私がいつも思うのは「片付いてない部屋」。例えば鋏がいる時に、片付いてない部屋だと鋏を見つけることができない。ということは、その部屋にはいくつ鋏があっても「鋏はない」という状態と同じなんですね。鋏がいるんなら鋏をいつでも使える状態にしておかなければならない。じゃなきゃあるはずの鋏もないと一緒。ビットコインも、結局はそういうことなのかなあ。

 

求められて初めてその物質は物質として意味を成す。求められてなければ存在価値なんかないのですね。これは人間の存在価値にも言えることなんではないでしょうか。誰かに求められて初めて自分という人間は存在する。いつも言いますが、セックスってそういう意味でも重要なんだと思う。動物として一番わかりやすく求めあう行為がセックスですから。そこに自分の存在価値を求めてしまう人間っているんですよ。だから変な男についてっちゃう女の子もいるわけでねえ。私はそういう話を書きたいなとよく思うんですよ。ものの存在ってすごく不確かなものですものねえ。

 

ニムロッドはナカモト君に、「ダメな飛行機シリーズ」なる連作のメールを送ってきます。使えない飛行機、これも存在価値のない物体ってことですね。貫かれているのは存在の不確かさなのかな。最終的に、ナカモト君はニムロッドとも紀子ちゃんとも連絡を絶ってしまいます。紀子ちゃんなんか自殺予告までしたのに追っかけないナカモト君。ニムロッドはどうも「サトシ・ナカモト」の中の人らしかったんですが、その辺りから現実と未来が混同したみたいなお話になってきて、なにがなんだか分かんなーい……。

 

 

 

まあ……芥川賞だから。

 

芥川賞作家の三田誠広さんがコラムでおっしゃっていたんですが、平野啓一郎さんの芥川賞受賞作「日蝕」について、「結局選考委員たちもなにがなんだかわかってなかったんだよねえ。でもなんか文体綺麗だし。何かありそうな感じの話だし。勢いで流されたって言うか」みたいな。「これは違うって言ったらやべえみたいな感じがあって、恐怖感があったんじゃないんですかね」みたいなお話をされてて、それってきっとあるんだろうなあ、と思ったんですよ。だって人間が話し合って決める賞だし。それぞれ活躍されてる作家さんが選ぶんだしねえ。だからすかっと面白い!みたいな作品じゃないこともあるんでしょう。

 

でも、言いたいことは何となく分かったよ。ダメな飛行機とかビットコインとか、完成系に近づいた人間が一つに溶け合うとか、いろいろありましたが結局は存在価値を探す話だったのではないかと。私はそう思ったけど、違うかなあ。違うかも。なんかありそうな匂いは確かにしましたけど。すかっとしたかは分かんない。「あとは自分で考えてね」な感じだったのかも知れんね。答えはそれぞれが見つければいいのかも。

 

いま小説現代に送る、いわばエンタメのお話を書いてるんですが、この後は純文学の短編を書こうと思ってるのよ。しかーしこんなんは書けんね。芸術って難しい。私は即物的な人間なのでね。うん。まあできることを淡々とやっていきましょうか。

 

というわけでまたとにかく小説を書きましょう。出来ることを一つ一つやっていけば、いつの間にか大きな山に登れているそうです。大きな山を見るより、目の前の階段を見ることが大切なのだそう。そうですね。一個一個やっていきたいと思います。

 

ではっ、寝るだに!

 

おやすみなさいー!

ちょっと復活した。

 
こんばんは、渋谷です。
 
 
 
昨日はヘタれてたけどちょっと復活しましたよ。天気かね。昨日は大雨で今日は晴れでした。夫の父親を父の日参りし、昼はスシローで夜はステーキ(安い肉)でした。あー、やっと父の日が終わったぞ。
 
実家の父親には大分の焼酎詰め合わせを送っときました。喜んでおった、と母から電話あり。まー良かった良かった。
 
おもてなしをしない、という選択肢を選べないタイプなのよねー。これがストレスでヘタれていたのか。大したことはしてませんが、無事に1日が終わり脱力しています。あー良かった。次はお中元か。ひとつひとつ、こなしていきたいと思います。で!夜は本読んだ。面白くて一気読み。
 
相変わらず、小説現代長編新人賞。2017年の奨励賞受賞作の小原周子さんの「新宿ナイチンゲール」です。これは面白ーい!弱さと欲望を抱えて足掻く主人公が、いきいきと描かれた私の大好きな世界でした!
 
 
 
小原周子さんは、1969年生まれで現役のナースでらっしゃる方です。2000年から小説を書き始め、この2017年の「新宿ナイチンゲール」でとうとう賞を射止められたのだそう。
 
すごいですねー。看護師という、激務をこなしながら17年も小説を書き続けるなんて。私の叔母が看護師だったのですが、ストレスがひどくしょっちゅう旅行にでかけていました。行き先は主に外国。一番いいのはインドだと言ってました。なぜなら、「ケータイがつながらないから」。
 
ケータイがつながると、昼夜問わず電話が鳴るんですって。叔母は救急医療に長く携わっていたそうです。顔は私とそっくりだったけど、私と違って強い人だったんだよなあ。だから私、看護師さんには無条件で白旗をあげてしまうんです。看護師さんをしながら、小説を書き続けて賞をとる。すごい。小原さん、すごいです。
 
で、この「新宿ナイチンゲール」です。「新宿のナイチンゲール」なんていうんだから、夜の街で働く弱き者たちを助ける看護師さんなのかな、とか思って読み始めたんです。思うでしょ?だってナイチンゲールだし。
 
ところがどっこい、主人公のひまりちゃんたらネットカフェ難民なんですね。看護師の資格は持っていますが、病院で勤務することなく、派遣の看護師として糊口をしのいでいます。派遣の看護師、所謂家政婦さんの看護師バージョン、とでも申しましょうか。年齢は29歳。同じく根無し草のミュージシャン志望男、宗一とずるずるとネットカフェ生活を続けています。
 
 
 
この宗一がいいキャラなの!働かないわ女にだらしないわミュージシャンとして才能ないわ、その上ひまりちゃんにおんぶにだっこで奢らせるわライブのチケット50枚買わせるわ、クズですよクズ!私こういう男が出てくる話だーい好き!だってこういう男って現実にホントにいるんですよ!ちゃんと生きてる人たちが眉をひそめて見なかった振りをするこういう人種、ちゃんと描いてくれる作品大好きです!その上宗一くんはドM!ひまりちゃんに鞭で叩かせまくるくせに、自分がいっちゃったら後は知らんぷりですぐ寝ちゃう!わークズ!そしてそんな宗一と離れられないひまりちゃんも大馬鹿です!
 
でもひまりちゃん、派遣先の患者さんとはちゃんと向き合うんですね。出来れば口がきけない寝たきりの患者さんのところに派遣してもらって、テキトーに仕事を済ませて豪邸探検としけこみたいと考えているひまりちゃん。でも、派遣の看護師を依頼してくる顧客たちにはそれぞれ事情があるんです。
 
「自分は親をちゃんと介護している」と思いたいがために、施設には預けず手元に引き受けるけれど、実際親の介護は嫁に丸投げのモラハラ男とか。ギャンブル三昧で家庭を顧みなかった父親が半身不随になり、自宅で介護をせざるを得なくなったけれど、自分は自分で女に子供産ませちゃった高校生とか。もちろん終わりの見えない介護生活に疲れ、自分の時間を確保するために、ひまりちゃんたち出張看護師さんの手を借りるご家族もおられます。でも患者さんのほうも一筋縄にはいかないのよねえ。ひまりちゃんをメイド扱いするおじーさんとか。果てはデリヘル扱いする半身不随のお兄さんとか。
 
誰もが疲れ切っている現場なんですね。でもひまりちゃんは真摯に頑張ります。だってお金が欲しいんだもん。自分の中にある恐れから逃げ回っているひまりちゃん。弱い彼女が切ることのできない彼氏、宗一もまたクソバカです。メジャーデビューさせてやるやる詐欺に引っ掛かり、なんとひまりちゃんを保証人に300万の借金作ってトンずらです!さあ、どうするひまりちゃん……!
 
 
 
この作品、人間の弱さをえげつないほど見せつけてくれる作品でした。登場人物、みんなが闇を抱えていて弱くて、でもプライドだけは捨てきれない。それって人間の本質なんじゃないかなあ。えらそうなことは誰にでも言えますが、一皮むくと人間って結構ちっちゃい。ちっちゃい犬ほどよく吠える。ネット見てても思うわ。よー吠えよるなー、今日も世の中平和やなーて。あ、私もやな。
 
介護が必要な局面に立って、介護者も被介護者も今まで繕ってきたうわべを剥がされたことに気付く。気付くけど、もうどうにもできないんですね。どうにもできなくなってひまりちゃんたち訪問看護師さんに助けを求める。でもひまりちゃん自身も自分と向き合わざるを得ない事態へと追い込まれる。何ともスリリングな展開!そしてラストは、想像以上の混迷、そして闇。
 
いやー、尾を引く読後感でした。面白かった!こんなに面白いお話、書く人が17年もアマチュアだったなんて信じられない。もちろん小原さんには責任あるお仕事がありますし、作家を目指して生きてこられた方というわけではないのかなと思います。多忙な日々の中で折を見て小説を書いてこられたんでしょうね。現役の看護師さんだからこその視点で、リアリティもたっぷり。そして救いのないクズたちの世界まで何とも鮮やかに描き出されていました。ああー、楽しかった。
 
他の作品も出されたら読んでみたいな。感覚の合う方の作品を読むのはやっぱり楽しいです。どんなに他人の評価が高くても、世界が違う作品って響いてこないんですよね。この小原さんという方は窪美澄さん的と言うか、もっと内角を抉り込んでくるというか、私は大好物な方だわ。
 
さあ、明日からまた小説を書きまくりましょう!ここまで内角を抉れるかは分かりませんが、私なりに言いたいことはいっぱいあるので。それを小説にしましょう。そうしようそうしよう。
 
というわけで寝るなり。ではでは。
 
おやすみなさいー!

いやー、しんどい。

 

こんばんは、渋谷です。

 

 

 

しんどい。なんといってもしんどいのですよ。まあホルモンバランスってやつですかね。年々しんどくなっていきます。

 

更年期障害が出始めてるのかも知れませんね。まだ年齢的には早いはずなんですが、子宮は二回手術(一回は帝王切開)してるしねー。なんかその影響があるのか。最近月の周期で暑くてたまらなかったり。何もかもめんどくなったり。今日はめんどいの方。朝一に家事を済ませて、あとはだらけてやったぜ!昼ご飯も晩ご飯も見かねた夫が作ってくれたぜ!申し訳ないけどいいのです。いいことにするのです。

 

最近、自分甘やかしキャンペーン中なんですね。「私さん」とおっしゃる、私の中にいるいわゆる「中の人」を喜ばせてあげることに重点を置いて毎日を過ごしています。何をしてあげれば喜ぶかと言えば、眠らせてあげて本を読ませてあげると喜びます。そして何より小説を書かせてあげると喜びます。嫌がるのは人づきあい。今まで張り切って我慢をしてきたので、ちょっと「私さん」にのんびりさせてあげるのです。

 

だから辛い物を食べたり酒を飲んだりをするのも大切ですね。嫌ですが筋トレだけは続けています。プランクですが。スクワットは足が太くなるので止めました。骨盤歪んでる人はスクワットで変な筋肉がつくんだって。

 

とにかくだらけていますよ、というだけの話でした。だらけさせてくれる夫に感謝。早いとこ小説を仕事にしたいもんです。頑張るぞ。というわけで。

 

今日も小説現代長編新人賞受賞作です。吉森大祐さんの「幕末ダウンタウン」。2017年度の受賞作。吉森大祐さんは1968年生まれ。慶応大学文学部卒です。

 

時代小説はあんまり好みではないのですが、受賞作だったので読んでみました。これが意外や意外。面白かったー!まあ好みはあるかなと思いましたが、好きな人は好きだと思う!純粋に時代小説が好きな方は……いかがでしょう、という作品でした。

 

 

 

主人公は播磨出身の播磨精次郎直胤。大坂で賭場の用心棒をしていた男です。そのころは濱田精次郎と名乗っていました。一旗揚げようと京都にやってきて新選組に潜り込みます。そんな精次郎くんが京都で久しぶりに再会したのが、大坂時代に馴染みなった噺家の桂文枝。

 

この文枝は「わしの名は将来何代も受け継がれていく大名跡になるでー!せやからわしに奢っとけ奢っとけ」とうそぶくまったくのクズ人間。芸人としての腕はありますが、借金のかたに演目をとられ、大坂を追われて京都に逃げてきた破天荒な人間です。うん……、文枝さん、今でもなかなかの破天荒ぶりやわね。

 

新選組の下っ端であれこれ頑張る精次郎くんですが、なかなか手柄は上げられません。そんな時文枝に「四条の寄席に不穏分子が現れないとも限りまへん。芸人の振りして潜り込んで手柄あげてみたらどうでっか?」とけしかけられ、なんだか成り行きで「芸人・濱田」の出来上がりです。

 

そしてその寄席には伊予松山出身の芸妓、松茂登も漫談家として上がっていました。読み方は「まつもと」。……うーん、なんか色々わかってきますね。はまだ、まつもと。大政奉還などの時代の荒波にもまれながら、あほちゃいまんねんパーでんねん、だのガキの使いやあらへんで、だのごっつええ感じ、だの言いながら、はまだとまつもとはえげれす語で言うところの「マンザイ・コンビ 桂ダウンタウン」として舞台で生きていくと決めるのです。

 

 

 

うん、ざっくりになっちゃうんですが、所謂コメディですね。ちょっとした青春もので人情もので、でも時代小説や新選組を期待して読むと肩透かしかも。ラストのオチは、「まつもと、はまだ、アウト~」ですから。年末のあれやね。吉森さんはダウンタウンが好きなんでしょうか。

 

しんどくて頭を使いたくなかった今日にはぴったりの作品でした。さらっと読めてくすっと面白かった。時代小説好きでなくても楽しめる作品でした。まあ「この作品に影響を受けて作家を目指しました!」という人は少ないような作品かも知れませんが、でもこういう箸休め的な小説って絶対世の中に必要ですよね。

 

あーとにかく今日はなんかだめです。もう寝よう。こういう日は失言に注意。明日は回復してたらいいな。

 

というわけで、おやすみなさい!

野球は分からんね。

 
こんばんは、渋谷です。
 
 
 
今日も今日とて受賞作を読む読む。小説現代長編新人賞。今日は2012年の奨励賞をとってデビューした朝倉宏景さん。1984年生まれ、東京学芸大学卒だそうです。
 
2018年に風が吹いたり、花が散ったり」という作品で第24回島清恋愛文学賞を受賞されているそうです。これはブラインドマラソンをテーマにした作品だそうで。スポーツをテーマに書かれることが多い方のようですね。今回読んだ「白球アフロ」は高校野球がテーマです。
 
しかしねー、もうこれは私が悪いんですけど。
 
野球のルール、全然分からーん!
 
こないだの「盤上のアルファ」は将棋がテーマでしたが、将棋は私、多少分かるんですね。だからまあ、面白く読めたんですが。
 
ファンブルもダブルスチールも私の辞書にはないんですよね。その度にいちいち調べなくちゃならない。なんか野球を知ってる人ならすぐ思い至る暗黙の了解、みたいなのも散りばめられてるんですが意味が分かんない。だからはっきり言って、私この作品をほとんど理解できてないと思います。
 
 
 
主人公は瀬山くん、高校2年生。野球部員です。なんとなーく野球部に入って、なんとなーく野球をしてる空気が読める男の子です。
 
そんな瀬山くんのクラスに転校してきたのが、クリスくんという黒人の男の子。アメリカ人と日本人のハーフです。クリスくんは野球部に入部しますが、アメリカンな野球をやってきたクリスくんには日本の野球が理解出来ません。
 
そんなクリスくんに日本風の野球を教える役割を任されたのが瀬山くん。空気が読める瀬山くんは口八丁で丸め込んで、先輩に反発するクリスくんを大人しくさせます。犠牲バントとかアメリカ人には理解できないんだって。まあ、そういうもんかもね。
 
野球部のキャプテンは、熱くて上下関係に厳しい岡崎先輩。岡崎先輩はクリスくんの自由奔放ぶりが許せず、ふたりはがっつんがっつんぶつかり合い、間に挟まれた瀬山くんはキリキリ舞いです。
 
 
 
結局、瀬山くんとクリスくんの成長物語なんですね。クリスくんのお父さんはイラクで亡くなった軍人さん。それを知った瀬山くんは事無かれ主義で生きてきた自分を恥ずかしく思い、クリスくんは瀬山くんの思いをぶつけられ、日本風の友情の育み方を覚える。
 
うん、まあいい話なんです。お話のラスト、公式戦に立ち向かう瀬山くんたち。一度はバラバラになったチームがひとつになって、ハラハラドキドキの試合の一部始終が描かれます。
 
だからね、野球がわかる人には、きっと感動のラストなんです。でも、私にはいまいち伝わってこんもんで、なんだかぼーんやりとお話が終わっちゃったのよねえ……。
 
 
 
まあ、人間って、それぞれ守備範囲がありますからねえ……。野球が好きなひとはかなりの割合でいますから、響く人は多いと思います。確実に将棋よりは多いよな。
 
たまたま私が野球に興味がないから、いまいち分からなかったんですが、出来の良い作品なんだろうと思います。野球好きな方、青春小説が好きな方にオススメします。
 
そんな感じで明日からお休みだわね。父の日かあ……。色々、色々やな。めんど……いやいやいや、嘘よ。さあ、父の日を祝いましょか!
 
というわけで、またっ!