前回も紹介したWR155Rの出来が思った以上によかったので、最近はアレコレと調べたり動画を見ているが、わりと真剣に乗り換えを検討しようかなとも考えていたりする。もちろんXTZ125に飽きたとか嫌になったわけではないが、1台しかバイクを所有できない身としては、やはり下道しか使えない125ccでは色々と厳しい面もあったりする。WR155Rなら高速道路を使って渋滞を避け、遠出した先で見つけた林道やダートを楽しむことも可能になり、行動範囲もさらに広まるはず。

 

そこで今回は、WR155RとXTZ125がどう違うのか、画像や数値から考えてみることにしたのだった。

 

まずはWR155RとXTZ125の外観から

※画像はネットからの拾い物が多数です

 

 

 

外観は似ているようでもありそうでもないといった感じ。

デザインはWRの方が後発なだけあってか洗練されていると思う。

 

 

ただしヘッドライト廻りは形状こそ違うが、デザイン自体はよく似ていたりする。特にレンズなどはそのまま流用してるのかもしれない。ウィンカーはXTZ125とほぼ同等のようだ。

 

続いてスペック上の数字の違いなども見てみる

 

 

WR155R スペック

 

全長:2,145mm
全幅:840mm
全高:1,200mm
軸間距離:1,430mm
最低地上高:245mm
シート高:880mm
車重:134kg
エンジン形式:水冷4サイクルSOHC単気筒 VVA(可変バルブ機構)
ボア×ストローク:58.0×58.7mm
燃料供給方式:FI
排気量:155cc
最高出力:12.3 KW (16.7PS)/ 10,000 rpm
最大トルク:14.3 Nm(1.45kgf)/ 6,500 rpm
燃料タンク容量:8.1L
ブレーキ:前ディスク/後ディスク
タイヤサイズ:前2.75-21 後4.10-18

始動方式 セルスターター
変速機形式 常時噛合式6段/リターン式

 

 

XTZ125 スペック

 

全長:2,090mm
全幅:830mm
全高:1,115mm

軸間距離:1,340mm

最低地上高:260mm
シート高:840mm
車両重量:119kg
エンジン形式:空冷4サイクルSOHC単気筒
ボア X ストローク 54 x 54mm

燃料供給:キャブレター

総排気量:124 cm3
圧縮比:10.0:1
最高出力 7.1kW(9.6PS)/7800 rpm
最大トルク 9.9Nm(1.0kgf)/6000r/rpm
燃料タンク容量 10L
タイヤサイズ (F/R) 80-90 21M/C 48P / 110-80 18 M/C 58P
ブレーキ:前ディスク/後ドラム
始動方式 セル/キック
変速機形式 常時噛合式5段/リターン式

 

 

ざっと2台のスペックを見てみると、数値上では排気量や出力以外では似通っているが、若干WR155Rの方が大きめであるのが分かる。ただし明確に分かるほどの差ではないので、実際にはほとんど同じようなサイズであろう。

 

まず最初に注目したいのは最低地上高だが

 

WR155R:245mm

XTZ125:260mm

 

実はWR155RよりXTZ125の方がわずかに数字が上だったりする。しかしこれは画像を見る限り、WR155Rのリアサスペンションがリンク式のため、リンクが下に出っ張った分だけ数字が少なくなったと思われるので、エンジンと地面との距離は共に同程度と見ていいだろう。フルサイズのフロント21インチ、リア18インチの前後タイヤサイズも含め、WR155RとXTZ125の車体は、共にオフロードバイクとして要求される構成をきちんと満たしているのが分かる。

 

ここで各々のサスペンションを確認してみる

 

フロントサスペンション

 

 

どちらも正立フォークだが、WR155Rの方が明らかにフロントフォークが長い。これによってたっぷりとしたストロークを確保しており、大きなジャンプでも底突きを起こさないようになっている。WRが本格オフロードたる証のひとつだろう。XTZ125の方はそれなりのストロークなので、派手に荷重をかけたりすると底突きを起こしてしまうようだが、普通の林道やちょっとした悪路程度ならまったく問題はない。ストロークの深すぎるサスは、オンロードではかえって邪魔になってしまう部分もあり、XTZ125はオンオフ兼用のバイクであるという性質が見て取れる。もちろん、WR155Rはオンロードを走っても優秀らしいのだが。

 

続いてリアサスペンション

 

WR155R

 

 

WR155Rのリアサスは、XTZ125乗りが羨むリンク式である。サスペンションユニットは鮮やかなイエローのスプリングと、見覚えのある倒立ダンパーが組み合わされている。実物をちゃんと見たわけではないが、こちらもしっかりとしたストローク量が確保されているようで、ジャンプした車体をしっかりと支えて底突きせず、WR155Rの素晴らしい運動性を支えている。見る限りではシングルレートのスプリングが採用されているようで、どうやらこのサスはカヤバ製らしい(未確認)。シングルレートのスプリングはオフロード向きである。

 

続いてXTZ125のリアサス

 

 

こちらは当ブログでもお馴染み、スイングアームに直付けの倒立タイプ。WR155Rとの違いはスプリングの巻きが上下で違うダブルレートのスプリングであることなどだろう。ダブルレートのスプリングは主にオンロード向けと言われることもあり、やはりここでもXTZ125がオンオフ兼用の性格を持っていることが分かる。ただ、それが悪いという話ではなく、日常での軽快な乗り心地に寄与している部分でもあり、メンテナンスのしやすさや、リンク式特有の破損や汚れと無縁といった部分も鑑みるに、適材適所というべきか。当然、オフロードでの絶対的性能はWR155Rに敵わないだろう。ダンパーはXTZ125とWR155Rでほぼ同じようなものが使われているのも興味深いところ。

 

さらに続けてシート高とシートそのものについても。

 

WR155R シート高:880mm

XTZ125 シート高:840mm

 

数字の上ではWR155Rの方が4センチほど高い。とはいえこれは大差というほどの違いではないので、WR155Rはそこまで足付きが凶悪というわけでもないようだ。ただしXTZ125はサスの沈み込みもあって、足付きに関しては数値以上に良く、取り回しはしやすい方だと思う。

 

シートの形状も見てみる

 

WR155R

 

 

XTZ125

 

 

WR155Rはやはりというか、スポーツのためのシートという感じで薄く、乗車した人のコメントによれば、シートは硬いと皆が回答している。一方のXTZはクッションが厚くて柔らかめ、座面がフラットで幅が広く、座って長時間運転するのに向いた形状である。WR155Rで遠出をしたいなら、ガラスのケツを持つ自分のような人間には、ゲルザブ等の緩和アイテムは必須かもしれない。

 

続いてフレームを確認してみる。

 

WR155Rのフレームはセミダブルクレードル

 

 

セロー250などにも採用されるようなスチールの丸パイプフレームだが、堅牢な作りである。兄貴分のWR250Rなどは軽量かつ頑強なアルミフレームを採用しているが、それはWR250Rの強烈なパワーあってのもの。フレームはガチガチに固めれば良いものでもなく、最近のヤマハは大排気量車でもあえてスチールの丸パイプフレームを採用していたりと、上手く材質を使い分けている。もちろん競技用モデルのようなコストをかけられなかった事情もあるだろうが、動画で見る限りでも、このフレームに不足はないだろう。

 

XTZ125

 

 

こちらはダイヤモンドフレームと呼ばれる方式で、エンジンもフレームの一部として固定している。自転車が大きくなったような形状ではあるが、その分シンプルで耐久性も高く、車体を軽量に作れるメリットがある。ちなみに重量は

 

WR155R 重量:134kg

XTZ125  重量:119kg

 

重量差は15kgほどで、134kgはセロー250とほぼ同じ重さである。重量に違いがありそうな部分はフロントサスペンションとエンジン、フレームといった部分などで、サイズや形式の違いによってWR155Rの重量はやや増加しているものの、取り回しに関してそれほど影響は無いと思われる。

 

そしていよいよ、最大の違いとなるエンジンについて

 

WR155R

 

 

水冷4バルブSOHC単気筒VVA(可変バルブ機構)の新型エンジン。

N-MAXなどにも採用されたブルーコアエンジンであり、バイクの特性に応じてチューニングが可能であるのが特徴のひとつだとされていたが、それは間違いなかったらしい。他にもアジアで発売されているXSR155に採用されたりと、勢いのあるエンジンだ。水冷4バルブというだけでXTZ125のエンジンとは一線を画しているが、このエンジンはさらに可変バルブ機構を持ち、低回転から高回転までスムーズに吹け上がってパワーを取り出すことができる。さらに燃費も46km/L程度と高燃費で、まさに新世代のエンジンである。

 

特徴であるVVAについては、実に良く出来た装置である。

ごく単純に言えば低回転と高回転で吸気側のカムが切り替わり、全域にわたって最適な吸気タイミングでバルブを動かせるという仕組みなのだけど、それを小型のエンジンに採用できたのが大きい。このVVAやオフセットシリンダーといった新技術の採用によって出力は20%ほど増すとのことで、155ccの排気量なら180ccエンジン相当のパワーを発揮できることになる。通常、4サイクルエンジンをハイパワー、高回転化しようとすると、カムシャフトを2本備えたDOHCエンジンとなるのだが、そうなると部品点数もサイズも重量も増え、その分だけコストも増加する。よって価格帯の低い小排気量の4サイクル単気筒エンジンには、コストやスペース、重量の問題などでなかなかハイパワー高回転型のエンジンは採用されにくかったのだが、VVAはカムが1本のSOHCでありながら、ごくシンプルな機構でこの問題をクリアしており、非常に優れたデバイスだと自分は思うのである。WR155Rが大ジャンプを決める加速も、この優秀なエンジンの賜物なのだ。

 

一方でXTZ125に搭載されているのは、昔ながらのキャブレターに空冷2バルブ単気筒エンジン。

 

 

排気量、給排気バルブの数を見てもパワーが控えめなのは明らかだが、このエンジンは決してただのつまらない実用エンジンなどではない。登場から15年以上も生産され続け、様々な車種に搭載された実績から分かるように、空冷単気筒125ccエンジンの中でもよく回り、オンロードの上り坂でも失速しないパワーを発揮する。絶対的な性能は新型であるWR155Rのエンジンには到底及ばず、オフロードに持ち込んで傾斜が急な斜面だとか、タイヤを取られる深い砂地などに進んでしまえば、さすがに力不足を感じることもあるのだが、それ以外の不整地ならば、ゆっくりであっても確実に走破できる粘り強さと、シンプルであるがゆえに無茶をしても壊れにくいタフネスを持ち合わせている。こちらは日々の足、つまりツールとしての過酷な使用に耐える頑健さと、素直な扱いやすさが自慢の名機なのだ。

 

XTZ125には、急かさない大らかさと付き合いやすさがある。すでに大型バイクや複数のバイクを所持していて、近所の足代わりや気楽に下道を流して走り、たまに林道やダートで遊ぶ程度であれば、まだこちらを選ぶ理由は十分にある。オフロード走行やバイク整備の基本を学ぶ教材としても向いていると思う。

 

WR155Rもまた、初心者でもとっつきやすいパワー特性や扱いやすさを備えているらしいので、今後の人柱(失礼)からの報告や動画を楽しみにしつつ、お金を貯めてじっくり検討していきたい。

 

 

そんなわけで今回はここまで