としえじの金融経済徒然草 -3ページ目

としえじの金融経済徒然草

20年超に亘ってファンドマネージャーとして金融の第一線から日本と日本企業を客観的に見てきた私「としえじ」が日本の在り方や政治金融経済について徒然と書いています。

次にデメリットを日本の差別化戦略の為のトレードオフとして活用する方策を考えてみる。

Ⅰの活かし方:インフラ構築Know-Howの海外展開
ゼネコンは海外展開をしているが、道路やビルなどの箱物だけでなく電力量計、基地局、電気工事、防犯機器など海外強化すべきものはたくさんあるので海外拡販を国全体で取り組む。その為には日本独自の規格を変えグローバルに修正しそのまま海外に持っていけるようにする。

Ⅱの活かし方:メリットでも挙げたが港湾と空港を最強にする。その為には周辺用地のインフラ整備を最優先にすべきだ。海洋国家はオランダでも英国でもシンガポールでも同じ道を選んでいる。

また、Ⅰ、Ⅵも絡ませると超小型精密産業が出てくる。腕時計、カメラやかつてのソニー製品の様に日本は軽薄短小の割に値段が張る製品が理にかなっているのだ。

そして、Ⅳの高齢化社会も絡め、「完全自動化が無理で人手間かけないといけない」製品や産業を強化した方が良いだろう。具体的には軍事、医療機器、バイオ(iPSもそう)、航空宇宙、IT産業等である。軍事産業と言ってもミサイル本体を開発するのではなく、高エネルギーレーザー、最高精度の暗視センサー、巡航システムの制御系などで、立ち位置としてはイスラエルである(彼らは周辺が異教徒国に囲まれているので、陸でつながっていても日本に近い状況なのだ)。これは自衛隊装備品の何割以上を自国開発にするなど自国の仕事を増やし力つけさせ海外で勝負できるまで強化する。

最後のIT産業こそが日本のデメリットを消してくれる最強産業だと私は考える。インターネットは地理的な距離を解決してくれるし軽薄短小で重量スペース比較で付加価値が高い。

IT産業といっても開発請負やゲームではなく、世界で売れるコンピュータソフトのようなものである。日本は直ぐカスタムでシステムを組むが、海外に売れる産業にするにはパッケージ品にする必要がある。原発事故で明らかになったのは、ああいった重要設備のソフトウエアもイスラエル製が多かったことだ。これは一朝一夕でできるものではないので、まずは小学校からプログラミング言語を教科として取り入れる、ウイルス攻撃対策の為にハッカーを雇用する機関を作るなどの整備が必要だ。この分野を産業化するとネットばかりやっている引きこもりの活用にもつながるだろう。そう「ねらー」や引きこもりは日本の強みになるのだ。

ソフトウエア開発は分断できるので、難易度や秘匿度に応じて自宅勤務などでもできるので高齢者や女性の活用にもつながる。高齢者や女性にプログラミング言語を習得させ、システム開発の末端やデータ入力などの簡単作業を任せれば「現代版」内職になる。

現行のコンピュータ言語が難しいというのなら「なでしこ」などの日本語環境での言語を使うか、国家プロジェクトとして日本語で開発できるコンピュータ言語を開発しこれを国民全員に習得させる。

現行ではシステムを小さなモジュールにして、これを統合して全体を構築するようなことは非効率なので行われていないが、高齢者や女性の活用の為には国を挙げてこういった内職型IT産業を作るべきだと考える。

最後に日本語のネックだが、これをトレードオフにするには日本語環境で最も優位性を発揮するコンピュータ言語などを作らない限りは難しい。そもそも海洋国家や島国の国家はいつの時代でも複数言語話せるように国民を教育してきた。今までろくにやってなかったつけが国の競争力低下に出てしまったので、今後は徹底した語学教育を義務教育段階から取り入れ、高校無償化の適用を受けるにはTOEIC850点以上などの敷居を作るべきだろう。

以上をまとめると、日本のデメリットを強みに変える為のトレードオフとなる策は、空港港湾を周辺拠点対比で競争力あるものにして人物金の集積地や通過拠点にする。
そして、産業は金融市場の強化の為に日本版シティや金融特区を作り、衛星打ち上げなど宇宙産業を強化する一方で軍事防衛周辺産業も本格的に育成する。依然として軽薄短小産業は注力すべきで、高いインフラコストに使われている産業は規格をグローバルにして海外展開を図るべきだ。

そして、孤立した国のデメリットを最も感じさせないインターネット産業のウエイトを更に高める為、引きこもりや「ねらー」を活用する仕組みを作る。例えば、公務員ハッカーにして他国のウイルス攻撃に備え、一方で世界で通用するウイルスセキュリティなどの技術開発も行えば良い。

さらに細切れでシステム作成作業に携われるような言語やシステム開発の仕組みを構築する、高齢者などハードの知識がなくても平易にこなせるプログラミング言語開発も国家プロジェクトで進める。

理想は日本語を知らないと解読できないプログラミング言語だ。これを開発できれば、日本語使いというデメリットが日本の強みになるだろう。

マイケルポーターの言うところの戦略の本質は、他社にはない独自性に優れたポ ジショニングであり、これを担保する「活動システム」の構築であり、そのために「トレードオフ」を受け入れることである。つまり差別化するために「何をや り、何をやらないのか」を選択することが重要となる。



言い変えると、何かを犠牲にすることで他の優位性を際立たせる。例えば、常連 客を大切にするのなら一見は犠牲にすべきだろう。旨い料理とリーズナブルな値段をウリにするのなら、接客数や回転率や店の立地を犠牲にしないといけない。 逆に立地の良さをウリにするのなら多少値段が高くても良いだろう。


この差別化戦略を日本という国単位で考えるとどうなるかを考えてみる。ただ、 国家の場合、戦略的にトレードオフをするというより、面積、立地、人口構成など不利な点が所与のものとして決まっているので、デメリットをトレードオフと して位置付け、これを活かす為の戦略を考えてみる。

 

まず日本国の客観的な特徴を挙げよう。

 

1 大陸と隔絶し四方が海に囲まれている 

2 世界で一番早く朝が来る

3 狭い国土 → 高付加価値、軽薄短小

4 地震や台風など自然災害が多い

5 四季があり海山のおかげで豊かな食材

6 国としての長く独立したユニークな歴史

7 水資源は豊富だが、鉄鉱石や原油などの一次資源は少ない

 

次に日本人の気質や人口構成をみると

8 集団秩序を持って几帳面な国民性 

9 マイノリティ言語である日本語使用で英語が得意でない国民が多い。

10 世界で最も進展した少子高齢化 

 

これらの特徴からまずは競争力上不利になるものを挙げる(意図して犠牲にするのではなく最初から背負っている不利な条件)

Ⅰ 高いインフラコスト(134):狭い国土に集積させるし対災害コストをかけるのでインフラコストが高い。

Ⅱ 他国の消費地から離れている(1

Ⅲ 自国のコンテンツを他国に展開する場合翻訳が必要(9

Ⅳ 単純労働をするという意味での生産人口は今後減少傾向

Ⅴ 資源、エネルギーを自国で賄えない(7

Ⅵ 広大な敷地が必要となる産業は不適切

 

特徴から来るメリット

A 衛星発射が容易(宇宙へのアクセス権)(1

B 海洋資源の活用(1)(EEZでは世界6位の面積)

C 世界で最も早く金融市場を開ける

D 港湾と空港でハブになりうる 

E 食、四季、歴史など観光資源は豊富

F 治安の良さ(9

 

メリットを活かすのは簡単だ。海洋宇宙産業の強化(衛星打ち上げ受託強化)、空と海のハブで人とモノを呼び込む、観光大国、メタンハイドレートなど海洋資源利用の先陣になるなどの事は日本が最優先に取り組むことだ。いずれも言われていることで新味はないだろうが、しかし、この当たり前のこともやってないのはもったいなさすぎる。


D~Fは意識して取り組まれているが、シンガポールや香港以上の金融市場育成は全く手付かずだし、海洋資源の利用も緒に就いたばかり。

また、ハブについてはスーパー中枢港湾構想が出ているが、日数やコストが依然としてシンガポールや釜山より高いのは問題だし、無駄に空港の数を増やすより成田は反対派敷地を完全収容して滑走路本数を増やし、成田と神戸は周辺区域を金融特区にするくらいの強化が必要だ。

観光強化のためには、特定観光地だけでなく日本の里山や水源を守り、似たような無機質なビルや構造物は撤去しコンクリ堤防や川を覆う高速道路などは美観優先で改造すべきだと思う。他の国から人がやってくるせっかくの商品なんだから、もっと魅力的に磨き上げる必要がある。

こういったメリットは直ぐに国益につながるんだから最重要課題で取り組むべきだ。

(その2に続く)

日本が勝負している資本主義世界を一つの業界として考えた場合、マイケルポーターの5フォースで日本の置かれている環境がどう変化し、失われた競争力を回復するにはどうすればいいか説明されるか考えてみる。

まず製造業者としての日本の業界内での位置づけは、ハイエンドでクール、先端品、規格、プラットフォームも作れるのでこの市場の上位層のプレーヤーである。


自動車、電機、機械、鉄鋼、化学、繊維などの日本の主要産業での5フォースはこんな感じになるだろう。



1 新規参入業者 → 中国。もともと共産主義だったのが資本主義に転換。安い労働力と潜在的な市場の大きさから世界の工場としてモノづくりに携わるうちに力をつけ、日本製品とバッティングするようになった。




2 競争業者(従来からの直接競合)→ 西側先進国(米独)との競争条件は為替を除けば大きな変化はない。ただ、韓台が力をつけローエンドカテゴリから上がってきた。

 

 3 買い手(顧客) → 欧米先進国、アジア途上国に加え、東欧、ロシア、南アジアなど日本のカテゴリーを買える顧客層は広がっている。




4 供給業者  → 二次産業主体の日本に対し、資源産業は集約が進み買い手より強大になったので売り手優位になっている。


5 代替品(間接競合)→ 日本の主力産業が他国の別の産業に置き換わるような技術革新は起きていない。

こうして見ると、5つのフォースの中では顧客層の広がりのみがプラスで、代替品は出ていないが、後の3つは競争環境は厳しくなっている。


つまり、新規参入と既存の低価格プレーヤーが日本の居た上位層に上がってきたことでプレーヤー数は増えてしまった。そして、
供給業者はより強大になったので収益を享受しにくくなった。

新規参入とローエンドプレーヤーの上位カテゴリー入りで競合数が増えた以上、元の競争環境には戻らないが、よりハイエンドに行ってもボリュームが取れないのでスケールメリットが効かない。

更に始末の悪いことにこの新規参入者はタチが悪くバリューデストロイヤ(価格破壊者)である。こういうプレーヤーが一匹でもいるとその市場は儲からなくなる。例えば、せっかくの成長市場だった太陽電池が日独米のプレーヤーが破綻する位に儲からなくなってしまったのは、ひとえに収益性無視の中国勢の参入に寄るところが大きい。この価格破壊者は自らも死んで結局ペンペン草も生えない荒地となってしまうまで無意味なことをする。

以上の5フォースの変化に対し、次にマイケルポーター流に解決策を考えてみる。


1この市場(産業)を捨て違う市場(産業)に行くか、2同一産業内で新規参入組が構造的に弱く従来プレーヤーで独占されていてかつ日本も弱かった市場に入る供給のフォースを改善させるか、3違う市場のユニークなモノを組み合わせ不可欠にし単品業者をプロテクトするか、4
供給フォースを改善させることである。


1は国家規模だと業態転換が容易でないので非現実的なので無視する。判り易い4から説明する。新日鐵とBHPの鉄鉱石チャンピオン交渉がなくなったしまったので判るように、山元が集約してしまったので高値を飲まざるを得なくなった。購買条件を改善させるには、少なくとも新規参入組の主力企業より規模の大きい会社にするしかない。つまり、日本には家電は2社程度で良いし、鉄鋼メーカーや化学メーカーも2-3社で良いのだ。そこまで合従連衡をして購買条件を改善させる。


2は半導体におけるロジック(MPU)やハイエンドサーバー、ルーター、スパコン、通信インフラなどのように、従来の米独仏英クラスの競合が依然として高いシェアを持っているところに切りこんでいく。敵も収益を重視する市場だが、既得権を奪うのは難しい。なので、現実的には3が望ましいだろう。


3は新たな敵が弱いキーワードを前面に出すか、新たな市場と組み合わせこれをデファクトにすることである。

例えば、中国の自動車が他国で売れないのは製品不良が死に直結するからで、建機や産機でも依然として先進国が優位性を持つのは価格以上に耐久性や信頼性が要求されるからである。一方、AVやPC、半導体は壊れても大事故にならないので安かろう悪かろう勢が跋扈した。


AVやPCでこの競争環境を変えるには、安全性が要求されるところも巻き込む製品にするか、敵が得意でない分野も機能に加えた製品を創出し、それをデファクトにすることだ。


例えば、コンデジだけだったら早晩アジア勢に負けていたが、過去のフィルム交換レンズ資産の優位性を活かせるデジタル一眼レフを主体にしたことで日本のカメラメーカーの優位性は続いたし、カートリッジの優劣が画質を決めるようにしてハードで儲けず排他的な消耗品で儲けるビジネスモデルにしたプリンターなどのように新規参入連中が得意じゃないものも加えるのだ。


この戦略をTVや携帯、半導体で実効するとしたら、私なら以下のようにする。

TVや携帯で無線ネットワークをベースにした家庭内電気製品のコントローラ的機能を持たせこれをデファクトにさせる(最初は儲けなくても良い。徹底的なマーケティングでデファクトにもっていく)。

徐々に進められているスマート家電を速やかに行う。TVを家庭内の機器の全てを操作できるスマート家電化にし安全性の重要性を高める。携帯に心臓ペースメーカーのコントローラーにするとか、役所手続きの全てを端末できるようにするなど。


人の安全性やセキュリティを加える製品自体はニッチになってしまうが、ここまで浸食された以上、このニッチと思われる世界をなんとしてもデファクトにすることが、日本勢に残された数少ないフォースを改善させる方策だと思う。


ただし、注意すべき点がある。今度は手助けしないこと、だ。つまり、今後新しい技術や製品が出せても中国や韓国には技術を出さないことが必須である。

製品だけでなくキーコンポーネント、素材、製造装置も含め、産業に関わる全てのプレーヤーが敵に塩を送ることがないようにすることが不可欠となる。



もともと日本の住んでいる市場のフォースを悪く変えたのは日本自身なのだ。

もともと中国はココム規制があり、最先端技術供与が禁止されてきた。半導体でも2世代以上遅れた工場を展開したり製品輸出自体が規制されていたが、この10年でかなり緩くなっている。韓台だって、日本と製品カテゴリーを住み分けるといって韓台の企業に技術を教えたのは日立であり住化でありシャープであり芝メカなのだ。

二度と同じことをしてはいけない。



10年美味しい思いができる戦略市場の製品の開発製造Know-Howは国家機密として外に出してはいけない。


現地企業に技術を教えないと受注できない案件なら見送る。ブラックボックスを作れないのなら他の市場を当たれ、そういうことだ。


昨日の記事で日銀が紙幣を刷っても通貨発行益は出ないと書いた。では、なぜ通貨発行益(シニョリッジ)という言葉があるのかについて簡単に説明しておく。

日本でこの通貨発行益を得ようとするのなら、日銀が紙幣を発行するのではなく、財務省が「○○記念金貨」「〇〇金貨」を発行すれば良いのだ。。。

要するに、日銀は国債買いオペで市中に紙幣を巻くが、これはあむまでも資産購入が反対勘定となる負債なので益は出ない。
しかし財務省が金やら何かを買って、貨幣同等物の製造コストをかけた以上の金額を刻印して販売すれば、その差額は通貨発行益になる。

この違いは日銀か政府かということだ。

中銀は兌換紙幣の流れでしか紙幣を発行できない。紙幣流通が増えるということは、日銀のB/Sが肥大化するということで、P/Lから莫大な発行益が出てくることにはならない。

メイプルリーフでもウィーンでも金貨はたいがいゴールド地金よりプレミアムが付いている。日本政府が金貨発行を行うようにすれば通貨発行益が出てくるだろう。

しかし、現実にはゴールドを使っての貨幣発行は厳しい。その理由は、日本政府は米政府によって金保有を制限されてきたからだ。

ニクソンショック後の75年にG7に先立って蔵相会議が開かれたが、ここで日本は当時の金保有量以上の金を保有してはいけないと約束させられているはずだ。

その理由は不明だが、その後日本の外貨準備の9割以上が米債になっていることからも、米債の引き受け手としての位置づけにしようとしたのかもしれない。

金本位制廃止以降ドルが基軸であり続けるには、米一国の必要以上のドルを刷って世界にばらまくということなので、紙幣発行の反対勘定の米債の発行も過剰である必要がある。この引き受けてにすべく日本の金保有が制限されていたのかもしれない。

そして、その状態はいまだに続いているので、政府発行の通貨は限定的になり(臨時の記念硬貨くらいで、継続的には無理)、故に通貨発行益も期待できないということになる。

消費税増税に反対する政党や政治家、消費者団体は、弱者に負担を強いずに「大企業の法人税を増税すれば良い」というがはたしてこれはアリなのか?

まず、日本の法人税は世界的に見ても高すぎる。西側先進国やアジア競合国の実効税率20%前後であるのに対して、日本の法人税は40%近いのだ。既に十分高い税率なのにこれ以上税率を引き上げるとどうなる?
当然だが、グローバルで戦っている大企業は日本から脱出するだろう。なので法人税は増えない。

過去20年に亘り法人税の減税を邪魔する連中がいたが、これは結局、中小企業、そして国民にもマイナスの影響が出ていることを理解しているだろうか?

中小企業庁が中小企業の取引構造の現状と中小企業の位置づけを詳しく調べているが、サンプルで取った製造業14万社の中で上場企業は773社、残りは一次下請け(4万社)、2次下請(3万社)と続く多重構造で食物連鎖を構築している。そして、大企業の食物連鎖に属さない独立型企業は6万社程度しかない。つまり、製造業の6割以上は何らかの形で大企業と取引をしているのだ。
因みに独立型の6万社の多くは食品、衣料など自社の名前で仕事ができる内需型企業である(地場の食品メーカーや民芸品や郷土品を思い浮かべれば良い)。

更にこの14万社には36万社の仕入れ先が存在する。このサンプルは420万社くらいの日本にある会社の中では比較的大きな部類なので、大企業を食物連鎖の頂点とする企業群に属している企業や従業員数はかなりの数になるのだ。

要するに、大企業が日本の製造業の代表としてグローバルで戦っているのが現状なのだ。

こういった中で、大企業の競争力をなくすことは中小企業の仕事を奪い雇用を無くす行為に等しい。

なので、消費税増税はしないで儲けている大企業からの増税をと叫んでいる連中は、耳障りの良いことを言っているが、実は日本経済の破壊行為をしているのと同じなのだ。

こういった大企業の競争力を殺ぐ政府を過去20年に亘ってやってきたので、日本の中小企業も疲弊してしまったのだ。

もちろん、減税しても海外に雇用を持って行かれては意味がないので、グローバルと同じ程度の減税を受ける条件として、一定以上の国内雇用者増や生産の一定以上を国内拠点にするなどの条件を設ければ良い。

一見利益を出しているところから税金を分捕るのは簡単だが、それがめぐりめぐって自分の身に降りかかることを良く理解しておくべきだ。
政権発足以降の安倍政権は前回の反省を活かしうまくやっていると思う。政権発足後も支持率が上昇するのは近年にない事態だ。そこで、安倍政権の現在までの評価点と今後の課題について簡単に述べてみる。

まず、安部政権に対する評価点は、景気回復への期待感を有権者に持たせた事と弱腰外交の修正の2点である。 衆議院の解散後ほぼ一貫して日本株は上昇し円高が急速に修正されたのは、市場がアベノミクスの実現性を意識したからである。また、衆院選で自民が圧勝したのは「有権者がアベノミクスや日銀法改正自体を評価した」のではなく、「アベノミクスによって景気が回復するかも」と有権者が期待した為である。長期のデフレに苦しられ景気停滞で自信を喪失していた国民に景気が良くなるかもと期待させた事は評価できる。

また、中国艦のレーザー照射における政府対応後も支持率が上昇したように、有権者は民主党政権下での領土問題に対する弱腰姿勢や事なかれ主義に怒りを覚えている。安部政権は現在までのところ中韓に対し毅然とした対応をしており、これは弱腰外交の是正として評価できる。

つまり、衆院選での自民圧勝やその後の支持率上昇から判ることは、有権者の関心は乱立した「にわか政党」の争点であった原発等エネルギー政策や消費税増税ではなく外交と景気回復にあったと考えられ、安倍政権はこの有権者の関心を今のところ失点無くこなしている点で評価できる。

次に安倍政権の課題を3点挙げる。 まず外交だが、近隣諸国の更なる挑発行為に迅速に対応し国民を失望させない為には憲法9条の改正が不可欠になってくるが、護憲・媚中韓の公明党と引き続き連立を組んだことが毅然とした外交の持続性に対する足かせ要因となりうる。

2点目の経済政策であるが、これまでの株価上昇と為替の円安修正は「新日銀総裁による大胆な金融緩和」によるデフレ脱却の期待感だけで起きた。しかし、現行日銀法では誰が総裁になっても今後の金融政策が限定的なので、日銀法及び財政法5条の速やかな改正が課題となる。これまで期待が大きかっただけに金融政策の自由度拡大にもたついた場合の失望が大きくなるリスクがある。更に、これ以上の国債格下げを避けるため財政政策も限定的とならざるを得ないので、如何に具体的かつ即効性のある成長戦略を打ち出せるかが安部政権の今後の課題となってくる。

現時点では3本の矢の要となる成長戦略がまだ明らかになっていないが、2010年に自民党成長戦略特命委員会がまとめた成長戦略である「フェニックス戦略」や「成長のための24の個別政策プラン」を見る限りでは、次世代エネルギー等の新分野や世界から人や企業を呼び込む為のインフラ作りに重点的に予算投入することになっている。その一方で、本年度予算では従来型公共事業の延長である国土強靭化も打ち出しているので、党内の既得権益受益者を納得させながら財政の制約の中でメリハリをつけて成長戦略の為の予算を重点的に配分して行く事が大きな課題となる。

3点目の課題は、現時点では安部政権は社会保障、教育福祉、エネルギー政策などについてほとんど手付かずとなっている(少なくともそう判断されている)点である。有権者の関心が外交や経済以外に向いた場合、一気に支持率が低下しし政権持が困難になる可能性があるため、これらの分野でも速やかな成果を挙げることが課題である。

さきほど日銀券について説明したが、紙幣を刷っても利益にならないのなら日銀は何で利益を出しているのかについてここでは書いてみる。

昨年度の日銀のB/S、P/Lから主要勘定を見てみると
B/S
資産 139兆   負債 139兆
国債 87兆   日銀券 80兆

P/L
収入 8725億
 国債利子 6199億
費用 1916億
 通貨発行コスト 500億
利益 5366億

日銀は政府出資が過半の特別法人だが、少数株主も居る。しかし、配当は少額で、ほとんどの利益は非課税で国庫に入る。
国債利子と年限別残高からざっくり計算されるデュレーションは9年超なので、日銀は10年国債を買ってその利子で経費を賄い通貨を発行しているのだ。つまり、日銀は「国債利子から人件費と通貨発行コストを引いて、余った剰余金を国庫に戻す」機関ということになる。
日銀が剰余金を溜めこんでも基本は国庫に帰る。少数株主は特別剰余金でしか回収できなく、しかも100年以上前の出資額のみだからだ。

要するに、日銀は国債の利子で運営する紙幣発行機関。紙幣発行残高の増加は国債発行残高の増加に見合うから国債が急増しようが減ろうが安定してスプレッドが抜ける。日銀自体が過度な経費をかけない限り、国が支払った利子は国に帰る。

これを知ると非常に面白い示唆が得られる。
1 長期金利が上昇した場合、新発国債の利回りも上昇するが、日銀が保有する限りは政府の利払い負担は大きくならない。財政悪化で金利上昇局面は日銀の保有比率を増やせば国債利払い費の増加は問題にならないのではないか?

2 日銀の引受禁止の意味合い。現在は日銀法で国債引受は禁止されていて、市中からの買取のみであるが、買取でも引受でも日銀が持っている以上は経費を除いた利子は国に帰るので一見すると本質的な差はない。違いは唯一、引受は新発国債で買うので簿価と利率が確定する。現行の市中消化の場合は、長期金利上昇時はそれに見合った利回りで購入するが、それはディスカウントされた国債価格と低いクーポンの総和であるので、償還までの間は日銀のスプレッドは悪化する。
つまり、アベノミクスの失敗で長期金利が上昇する時は、日銀は引受した方が経営の安定化につながる可能性がある。

景気回復のため日銀は紙幣を大量に刷って国民に配れということを言う経済評論家が居たが、このB/SとP/Lと収益の仕組みを見ると、日銀券だけ刷りまくることが不可能だと判るだろう。仮に刷っても、国債発行も増えるので結果国民の負担になる。言いかえると、日銀が現金をばらまくということは、国民一人一人が10年返済のローンを組んで現金を得る行為に等しいということだ。



因みにFRBはどうなっているかについて簡単に説明する?米政府はFRBの株を1株も持っていない。つまり純然たる民間企業である。なのでこの利益は日銀と違って全額株主に渡るがそれは非課税である。要するに、FRBと米政府の関係は、米政府が利付l国債を民間企業に差出し、民間企業は国債額面と同じ額の「利子の付かない」小口化された紙幣を米政府に渡し、利子分を丸々民間企業の利益とする関係だ。米政府が発行した利札の付いた国債から利札を取って米政府に帰しているのだ。発行手数料5%のてら銭を取られて予算を組む米政府の首が回らなくなるのはある意味当然と言える。

自民党の議員が財政赤字削減のアイデアとして紙幣を大量に刷って通貨発行差益を充てろと言っているようだ。日銀券1万円の発行コストはたしか22円程度な ので、1万円刷れば9978円の差益が出ると思っているようだが、政府でなく日銀が紙幣を発行している以上そんなものは出ません。その説明をちょっとしま しょう。

日銀のB/Sを見ると直ぐ判るが、紙幣は負債に計上されている。負債を増やしても差益なんぞ出ないから発行差益は出ない。では、なぜ紙幣は負債なのか?

それは金本位制の名残だからだ。もともと紙幣の位置づけは金(以下ゴールド)との引きかえ保証書だったのだ。

ニクソンショックで金本位制が廃止となり通貨の裏付けがなくなった以降、絶対的な外部基準が無いので通貨同士の相対価値で動くようになった。つまり相対価値は流動性供給で変化するのだ。


言いかえると、依然としてB/Sの負債に計上される紙幣は、「マネタリーコン トロールで紙幣の価値を保護してくれるだろう」と言う日銀に対する信認で(相対)価値が決まっている。つまり紙幣価値の裏付けは中央銀行の政策なので、金 本位制以降の紙幣とは、中銀本位制(国債)といっても良いかもしれない。

因みにニクソンショック以降、各国が必死に通貨コントロール競争をしてきて、その結果、1ドル360円だった日本円は90円台まで上昇しているが、ニクソンショックを基準にしてゴールド以上に価値を上げた通貨は世界に存在しない。



ニクソンショック前の交換レートは1トロイオンス(31g35ドルだった。今、ゴールド価格は1600ドル弱なので
、ドルは対ゴールドで45分の1まで下落、大幅に切りあがった気がしていた日本円ですら、対ゴールドでは10分の1以下になっている。裏付けとなる資産がなくなったので、各国の紙幣は程度の差こそあれゴールド対比では大幅に減価しているのだ。

当時の日銀券発行残高が7兆円程度だったのが今は80兆円程度。つまり10倍に紙幣が増えたので、対ゴールドの価値が10分の1になった(価値が希釈した)。需要供給を考えると当然のことだ。
 


ゴールドの裏付けがなくなったと言っても負債である以上、反対勘定の資産は存在する。今、日銀のB/Sの負債が紙幣なら、反対勘定のほとんどは国債である。つまり日銀が紙幣を増やすには国債(なんらかの資産)を買う必要があるのだ。


だ からと言って、円紙幣は国債の引きかえはできない。ここがドルとの決定的な違いである。US$はFederalReserveNotesと言うが、これは 要するに「小口化されたアメリカ国債」である(ノーツなので)。この差は、FRBと日銀が実は全然違う組織体だからであるが、それはまた別の機会に書くこ とにする。


以前、日銀発行量以上の国債 を保有してはいけないという日銀券ルールなるものがあったが、これは紙幣の性格を巧妙にはぐらかしているものだと思う。だって、日銀券は負債なのだから、 資産の裏付けがあって発行される。紙幣(負債)が国債(資産)より大幅に増えるのあおかしいではないか?常似同程度の量なのだ。


どこの国もそうだが、経済規模が大きくなり市中の紙幣流通量が増えるに連れて、反対勘定である資産(自国国債)が増えるのは当然の流れである。


今、インフレターゲットを設け、日銀券を大量に刷すと言っているのは、言いかえると「市中から国債を大量に買う」と言っているということだ。政府と独立した中央銀行がマネーを刷ると言うのはそういうことだ。


そうすると、次のような疑問が沸くだろう。財政健全化をして国債残高が減ったら日銀券流通量も減り金融が滞るのか?

他 国の中銀はゴールドを資産に組み入れていき、それが通貨の相対的価値の上昇に寄与してくだろう。しかし、日本は政治的にゴールドの保有を制限されてきたの だ。ゴールド保有増が認められない場合、外貨準備同様に米債を入れるのだろう。尤も、インフレターゲット設定ボルカールール適用で邦銀は国債保有を減らす 必要があるので当面は好きなだけ国債を買うことができると思うが。

インフレにするからと言ってバブルにならないというのは先の記事で書いたが、ではなぜ今インフレターゲットを設けインフレにしようとしているのかについて書いてみる。

まずは公式から。

実質金利=名目金利―期待インフレ率


なので、名目金利がゼロ金利であっても予想インフレ率がマイナスであれば実質金利が高くなってしまう。今はデフレ気分がまん延しているので期待インフレ率もマイナスなので、名目ゼロ金利でも自然利子率より実質金利が高い状況だから、不況下でも金融引き締め効果が出ていたのだ。これがクルーグマンの言う流動性の罠である(ここで自然利子率とは投資と貯蓄を均衡させて物価を安定させる実質金利である)。

この状態の問題は、金利引き下げの金融政策が効かなくなることだ。これを打破するには自然利子率を引き上げる(日本を再び成長する国にする)か実質金利を引き下げるしかない。

名目金利がこれ以上下がらない中で実質金利を下げるためにはマイナスだった予想インフレ率をプラスにするしかない。

これがアベノミクスの目指すところだ。

期 待インフレ率はその名の通り「期待」である。衆院解散後、安倍さんが日銀法改正でインフレ2%と言っただけでまだ何もしていなかったにも関わらず、たった 4カ月9000円前半だった株価が12000円にになったのは、この「期待」インフレ率がプラスになったからだ。みんながインフレになると思えば実質金利 が下がるのだ。

もちろん、いつまでも何もしなければ期待は失望に変わるので、手を打たなければいけない。ちなみに、2002年から日銀はマネタリーベースを増やしたが市中に出回る金(マネーストック)は増えなかった。
現在、いくらマネーを供給しても資金需要が名目ゼロ金利時点で飽和しているので投資は増えないくらいに深刻なデフレ環境なので、マネーの供給だけでは不十分で、自然利子率も引き上げる必要がある。

自然利子率がマイナスなのは、景気の先行きが悪いのでIS曲線が下がっているためだ。景気の先行きをポジティブにすれば自然利子率はプラス浮上する。こればかりは金融政策ではコントロールできないので、法人税引下げや財政政策で自然利子率をコントロールする。


つまり、インフレターゲットをプラスにするというのは大変なことだ。今は期待だけで実質金利が下がった状況だが、今後はマネタリーベースを大幅に増やすと同時に自然利子率を引き上げる為の成長戦略を描いていかないといけない。

ここまでやらないとインフレにならないという環境では、バブルの再燃の可能性は低いというのが私の印象である。