としえじの金融経済徒然草

としえじの金融経済徒然草

20年超に亘ってファンドマネージャーとして金融の第一線から日本と日本企業を客観的に見てきた私「としえじ」が日本の在り方や政治金融経済について徒然と書いています。

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電子機器市場で三星が依然として入ってきていない市場がいくつかある。具体例を挙げると

デジタルカメラ

コピー機

複写機

ゲーム機

などである。

 

これらに共通するのは単品販売だけで完結しないことだ。デジタルカメラは交換レンズが必要だし、コピー機はカートリッジ、複写機は消耗品やメンテナンスが必要となる。

そして、いずれでもハード本体の収益性を低めにしてプラットフォームのスケールを追求し、消耗品やソフトで儲ける戦略になっている。

三星はデジタル製品のモノづくりは日本勢を圧倒したが、単品以外にビジネスモデル

サービス網や買収すれば時間を買える。

ハードを売ってじっくり回収するスタイルを苦手にしている可能性がある。

 

デジタルカメラでもコンパクトデジタルカメラは交換レンズが必要でないが、コンパクトデジタルカメラのブランド力は一眼レフのブランド力に引きずられるので、最上位カテゴリの一眼レフでシェアを持っていないのはネガティブだと判断したのだろう。

 

先日、三星はシャープに出資したが、真の狙いは同社の複写機事業であろう。あわよくば手に入れようとしているのかもしれない。ノウハウを盗まれないためにも、キャノン、リコー、京セラなどの競合はシャープの同事業を三星に渡さないように注視しておく必要がある。

 

三星はデジタルカメラに入れるか?2000年代前半に三星はデジタルカメラに参入しようとしたが、クローズのレンズフォーマットの交換レンズ資産が差別化やブランドの要になるという参入障壁の高さと、古くからのカメラメーカーとAVメーカーが入り乱れる過当競争の市場でレンズやプリズムなどの光学部品を自社で作る技術を持ち合わせていないといった理由で見合わせている。

 

では今はどうかというと参入しやすい環境になりつつあるのだ。

まず、レンズだがマイクロフォーサーズ陣営に入れば、自らのレンズ資産を一から築き上げることなくデジタル一眼レフを手掛けることができる。

また、コンパクトデジタルカメラのレンズは三星が得意なモジュール化が進んでいるので台湾メーカーなどもOEMで作れるようになっている。更に、OEMで圧倒的なシェアだった三洋がパナソニックに吸収されたことで旧三洋のデジタルカメラ技術者を引きぬくリバースエンジニアリングも手掛けやすいはずだし、難関であったプリズムについてもプリズムを使わないミラーレスタイプの普及が急速に進んでいる。こうして見ると、既に成熟して成長が止まっている同市場であるが、三星が今から参入してもおいしい市場だと思ったら参入する可能性は高いと思う。

 

これをプロテクトする為の日本企業の戦略を考えてみる。

まずはニコンやキャノンなどのオリジナルフォーマットのメーカーはハードよりレンズで儲ける仕組みにする。カメラ1台あたりの保有交換レンズは現在は2本程度のはずだが、これを大きくして交換レンズで儲け易くすべきだ。この為にはワイド、標準、望遠で焦点距離がきれいに繋がるようなラインナップを作るとか複数本所有のキャンペーンを強化すべきだろう。

そしてマイクロフォーサーズのシェア拡大をプロテクトする必要がある。

 

オープンフォーマットのマイクロフォーサーズは三星の参入を容易にするので日本の産業の為にはこのフォーマットに参画している企業のシェアは高めてほしくない。気の毒だがパナソニックとオリンパスがデジタルカメラビジネスで負けるように仕向ける必要がある。

 

どうしてもマイクロフォーサーズ内の日本企業も勝たせたいというのなら、付加価値をレンズに入れることだ。具体的にはレンズに手ぶれ防止機能やAF処理などのチップを入れるのだ。ニコンは廉価モデルでは違うレンズラインナップを用いているが、これをするとニコンユーザー間での便利度はなくなるが、カメラ本体で手ぶれ防止や高速AFなどの付加価値を盛り込めなくなったら、わざわざ参入するメリットはなくなるからだ。

 

以上を整理すると、三星が入ってきてもおかしくない状況になっているので、交換レンズのタイレシオを高めレンズで儲けるようにし、またレンズに付加価値を付けて投入することがマイクロフォーサーズ陣営も独自のレンズ規格のメーカーでも不可欠となろう。

株主資本に対する収益性であるROE1989年時点では10%を超えていたが、年々低下して直近では5%程度まで下がっている。米株のROEは平均で15%程度なので、バブルのピークでも日本株は低収益であったが、それを改善させることなく年々悪化させてしまっているのだ。失われた20年で趨勢的にグローバル水準からかい離した投資尺度の最たるものがROEで、あまりにもグローバルで低水準なのに業を煮やした企業年金連合会が、資本政策等について納得のいく説明が得られない場合、再任候補者に肯定的な判断はできない。」という「ROE8%ルール」を設定したくらいだ。そこで今回ははなぜROEが低下していったのかを考えてみる。


利益が増えているのにROEが低下しているのは、純資産が増加が顕著だからであろう。

 

法人企業統計によると資本金10億円以上の約5000)の昨年度の内部留保は総額267兆円と前年より1兆円増えている。そして、失われた20年の間に内部留保は実に168兆円も増えているのだ。失われた20年と言われながらも、大企業は資産に関しては十分蓄えられた20年になっており、直近の全上場企業の現金残高合計は100兆円を超えている。つまり失われた20年の間でも一株利益を拡大させた日本企業は、それ以上に内部留保を溜めこんだためROEは低下してしまった。意図した内部留保の蓄積がROEの低下をもたらしたのだ。

 

次にグローバルバリュエーションに逆行するROEの低下をもたらしている純資産が積み上っている理由について考えてみる。

 

考えられる要因をいくつか挙げると、

BIS規制対応のため銀行が資本を充実させた

2不良債権処理に苦しむ銀行の貸し渋り対策

3含み益経営ができなくなったことで資本を充実させる動き

4投資先が見当たらないので内部留保が蓄積した

 

まず、1については、時価総額に占める金融機関ウエイトはバブル期は3割以上もあった。この金融機関は不良債権処理をしてB/Sを毀損したが、不良債権問題がある程度片がつくとBIS規制に対応する為に自己資本の充実を図った。これが純資産を押し上げている要因も一つなのは間違いないが、これは2000年以降の動きであり、更に銀行は100兆もの手持ち現金を自ら持たないので、この理由である可能性は低い。

 

ではなぜ非金融機関が内部留保を溜めこんだか?この理由が24である。

まず2について考える。日銀の貸出態度DIの時系列を見ると1992-1994年と1997-2000年で「貸出態度が厳しい」が「厳しくない」を上回っているが他の期間では厳しいDIにはなっていない。実際に銀行が不良債権処理に苦しんでいる90年代でも国内銀行の貸出残高は増加基調であった。貸出残高が減少し始めたのは98年からであって、これは銀行のB/Sで貸出の代わりに国債などの安全資産が増加していることと思われるので、貸し渋りというよりBIS規制対策で資産内容を良化させている影響と言える。



また、典型的なバブル産業で土地神話崩壊の影響を最も受けた不動産業界向の融資が貸出残高に占めるウエイトは85年では8%程度だったが、その後緩やかに上昇して2000年には17%程度になっている。つまり資金ニーズのあるところには貸し出していた。従って貸出態度DIが急速に低下した1997年から数年はクレジットクランチが発生している可能性があるが、それ以外の期間では資金ニーズのある業種には十分な追い貸しがされているので、民間会社がクレジットクランチに備えて内部留保を厚くしたというのは無理がある。

 

従って事業会社の借入ニーズが低下したことの方が大きく、同期間に貸出先ウエイトが減少したのは製造業なので、製造業の借入意欲減退が貸出残高減少につながったと判断され、製造業の借入意欲が減少して内部留保が蓄積されていったということは、企業は借入返済をしてなおかつ投資余力もあるのに内部留保を蓄積させ投資に回さなかったと言える。

 

投資抑制の原因内部留保蓄積の理由は、企業へのアンケートなどによると、投資するものがないというのが最大の返答になっている。
例えば、2001年の日銀のマーケットレビューで資金需要が減少した理由を尋ねているが、その理由は大企業は設備投資減少、中小企業は設備投資減少と売上減少である。つまり、2000年時点でも依然として過剰な生産能力のストック調整をしていたのだ。そして、このストック調整をするほど過剰生産能力が続いていたので、投資が抑制され結果として内部留保が積み増されたのだ。

 

次回以降はストック調整に時間がかかった理由について考えていく。

バブル崩壊をきっかけにした低成長経済は失われた10年と言われたが、その後も日本経済は低迷を続けているので最近は失われた20年と言われだしている。戦後長らく高成長が続いていた日本は1990年からGDP1%ほどの低成長となり労働生産性の改善は遅れ、失業率は高止まりしたままだ。

 

バブル崩壊が直接のきっかけだがバブルの後始末であるバランスシート調整だけにしては長すぎる。失われた20年では何か起きていたか、なぜ起きたか、そしてそれはいつまで続くかをこれから考えてみる。

 

始めに証券アナリストやファンドマネージャーとしてバブルのピークから私が現場の第一線にいた株式市場を眺めてみることにする。

 

現在の上場企業数は3500社で時価総額は350兆円であるが、1989年の日経平均ピークの時の時価総額は600兆円であったのでピーク比で42%下落した水準である。

 

次に当時と今のバリュエーションを比べてみると、バブルのピークのバリュエーションはPER60倍でPBR5倍で配当利回は0.4%であった。これが現在はPER25倍、PBR1.3倍まで低下し配当利回は1.7%まで上昇した。


つまり、失われた20年を経てPERは約1/2.4になりPBRは約1/4になり配当利回は長期国債利回りを上回ったのだ。この間で一株当たりの当期利益EPS2倍程度に増え、上場企業合計の純資産は120兆円から270兆円に増加している(時価総額をPBRで除せば出てくる)ので、「一株利益や純資産は倍増したが、それにも関わらず株価は下がり続けた」のだ。

 

この結果、米国株のバリュエーションと比べた割高感はかなりなくなった。現在、S&P500PER15倍で過去20年の平均レベルである。

 

こうして見てみると、失われた20年の株価低迷はバブルで説明できない水準まで上がった株価がグローバル比較でバリュエーション調整であったと言えなくもない。

 

この間に株式所有者はどう変わったか見てみると、1989年の所有者別持ち株比率は金融法人が45%、事業法人が30%、個人20%、外人5%といったところだ。これが直近どうなっているかというと、金融法人が2割、事業法人3割弱、個人25%、外国人25%といったところなので、金融機関が大量に保有していた持合い株を解消し外国人が買う過程で株価が下がったと大雑把に言える。

 

外国人はグローバルの投資尺度を持っているので、グローバルのバリュエーションで見て変える程度になるまで株価が調整したのだ。

 

私が証券アナリストとして産業調査や上場企業調査を始めたバブルピークの頃に日本株のバリュエーションを正当化する説明(屁理屈)はだいたい以下のようなものであった。株主の7割は物言わぬ投資家である持ち合いなのでこれを除いたベースでバリュエーションを考えると言われていた。どういうことかと言うと、物言わぬ株主は議決権を行使しないので企業価値の算出には加えない。なので、持ち合いを除いたベースで一株当たりの価値は出すべきなので、EPSBPSは実質は3.3倍になるのだ。これを考慮するとPER60倍は20倍と考えられ、同じくPBR5倍は1.5倍になるのだから現在の株価(1989年のピーク)は十分正当化できる・・・。

 

当時聞いても随分無茶な理屈だなと思ったが、その後のバブル崩壊による企業体力の減退と時価会計導入の流れで持ち合いは解消されていき、20年かけて金融法人の持合いが解消されたら、確かに世界における日本の存在感を考えると割高とは思えない水準になった。

 

例えば、1989年の日本株の時価総額の世界シェアはなんと30%もあったが、現在は6%まで低下している。2011年の世界GDPにおける日本のGDPシェアが8%であることを考えると、株価は行き過ぎて下げてしまい現在急速に戻している最中であるが依然として割安に評価されている可能性がある。もちろん、依然としてPERは高いがこれは円安とリフレ政策で収益が戻れば是正されていくだろう。

 

ただ、失われた20年で起きたことはグローバルで比較できるバリュエーション調整だけではない。グローバルの投資尺度からかい離した指標もあるのだ。それはROEである。

 

次の記事では、なぜROEは低下したかを考えていく。

Galaxyの新しいスマートフォン端末S4の評判が良いようだ。薄くてきれいな画面で高速でコンデジ並みの高画素のデジタルカメラもついていて・・・。

し かし、私はスペックを見たときに、三星はかつて日本勢がはまった袋小路に入りつつあるようだと感じた。つまり、あれこれ盛り込み過ぎて洗練させ過ぎて独り よがりなスペックオリエンテッドで面白みの欠ける領域に入りつつあるのだ。三星の良さはシンプルな機能でグローバル展開し易かったことだが、翻訳や歩数計 などを盛り込みだしたし、クラウドのストレージを持たせたりしている。ある意味で「行き着いた製品」だ。


ここまで機能の詰まった究極に近い製品を世界のどれだけの人が必要とするかという点でスマートフォン市場は技術的に成熟した可能性がある。

 

究極に近いということは、今回S4が大ヒットしたらこの製品を数年で買い替える可能性が低くなるということだ。ストレージ機能も充実して競合製品の2倍も高速の製品を乗り変えさせるのは容易ではない。走り幅跳びのブブカは世界記録を小出しにしたことで選手寿命を長くしたが、今回の三星はこの反対に一気に究極を投入したことが、今後大きなリスクになってくる可能性が高い。

 

また、非常に高画質でとても大画面でとても高速にしたが、この自社の半導体と液晶の技術進化の方向性がボリュームゾーンの消費者のニーズなのかそこまで求めているのかという疑問も残る。

 

例えば、90年代携帯端末は薄型化軽量化競争をしていたが、70g以下になった時点で競争は終わってしまい、今は100g超の製品が主流になっている。それはあまり軽くすると使いにくいからで、軽くするくらいなら他に差別化できる機能を設ける方が有利だったからである。テレビで4Kが出たがそれで市場が活況にならないのも、そこまで必要としていないからだ。製品はコンテンツやプラットフォームに依存する。製品だけで勝手に進化すると日本勢が陥った独りよがりになってしまうだろう。

 

こう考えると、今回のGalaxy4Sは三星のできるところで最大限に進化させたが、5インチの大画面に意味があるかはOSや通信スピードに依存するまでにハードが行き過ぎたのと、優れ過ぎた製品を出したことで買い替えサイクルが遅くなる可能性がある。更には慢心のシグナルである独りよがりな機能盛り込み過ぎも出てきた。

 

買 い替えサイクルが長くなるかスマートフォン市場が製品的に成熟して同社のスマートフォン販売の伸びが止まった時点で、これまで強みだった傘下の半導体や液 晶事業とのシナジーが逆に働きだす。こうなったらかつての日本企業のように巨額の赤字を出すネガティブスパイラルに入ってしまうだろう。

 

かつての日本勢も最終製品がヒットしている時は半導体や液晶などのキーコンポーネントからの利益も潤沢に出たが、一旦最終製品が伸び悩むと自社のデバイス事業の稼働率の低下を招きそれが経営の足を引っ張った。

 

そ の際に言われていたことは、稼働率で収益性が大きく変わる事業の為の最終製品はヒットするかしないかで販売台数が大きく変わる製品にするのは危険だと言う こと。なので、シャープの液晶事業は採算が決して高くないのに安定的な中小型パネルのウエイトを引き上げる努力をしていた。

しかし、三星の半導体事業における自社スマートフォンウエイトは高く、スマートフォン用の高速プロセッサーのラインを転用できる他の製品開拓は難しいだろうし有機ELも同様だ。数が出るところを優先していたツケは大きい。

日本勢のモノマネにすぎなかった三星は今やデジタル製品の勝ち組になりこの世の春を謳歌している。そこで今回は三星の強みを紹介する一方で、三星の弱点を探し今後日本勢が取るべき挽回策を考えてみる。

 

まず、同社の強みをいくつか挙げる。

1 スピード

2 逆張り投資

3 ITで儲ける戦略が明確

4 デザイン重視

5 グローバル人材

6 半導体と液晶の優位性

7 徹底したリバースエンジニアリング

 

最初のスピードは意思決定のスピードだけでなく人材登用のスピードでもある。日本の総合電機や総合家電勢より圧倒的に速く決断されるので、環境変化への対応力に優れる。また、人や技術も一から育てるよりは必要な技術を持った人をはヘッドハンティングして不要になったら捨てるということをしている。硬直的な雇用をしている日本企業より人と技術開発ははるかに効率的かつスピーディなのだ。

 

次の逆張り投資はトップに依るところが大きく、合議制でリーダーシップに欠如していた日本企業が景気循環を経るに連れて競争力を失い負けていった大きな要因でもある。日本勢は好況時に追随型の投資をして不況時に減損やリストラをし続けたことでキャッシュを失っていったのだ。一方の三星は逆張りができるが、これはトップに決断力があるから可能になる。

 

最初の二つは要するにリーダーが優れているということだ。そして、このリーダーは創業家なので短期間でころころ変わらない。総理が毎年変わっている間に国力を失った日本を見れば判るように、優秀なマネジメントによる長期経営は会社の軸足をぶれなくさせる。半導体のようにミニマムロットが大きく一度に巨額の投資が必要な産業やデジタル製品のようにサイクルの変動が大きな産業はオーナー企業の方が適しているのではないだろうか?実際に日本のテクノロジー周辺産業で勝ち残っている企業は信越化学、東京エレクトロン、ファナック、キーエンスなどオーナー企業か優秀な経営者による長期政権が多い。

オーナー会社であると良くも悪くも独裁に走り、三洋のようになるケースもあるが、三星はリーダーが優れていることで、景気循環の度に強くなっていった。

 

3番目の儲ける戦略は当たり前と思うかもしれないが、日本企業は良い技術や製品を投入すれば利益が付いてくるという発想で、これを投入してどうやって儲けてやろうかという戦略に乏しい。なので機能を盛り込み過ぎ過剰品質になってしまう。

 

4番目のデザイン重視は日本企業が劣後している訳ではない。ただ、世界中から1000人以上のデザイナーをかき集めてスペックよりデザイン優先にしたのは、安かろう悪かろうのイメージが強かった韓国製品のブランドイメージを高めることになった。

 

5番目のグローバル人材はグローバルでの人材登用と幹部の語学力である。幹部クラスの語学力を比較すると日本のテクノロジー企業は圧倒的に負けている。デジタル製品になると部品さえ買ってくれば新興国企業でもハイエンドの製品を作れるようになるのだ。世界中から安いモジュールをかき集め、世界中に大量に売る為には語学力は不可欠である。必要な人材を金で買って用済みになったら首にする戦略は必ずつけが回って来るが、マイナー言語国がグローバルでモノを売るためには語学力は必須である。

 

6番目の液晶と半導体の優位性は、もともとは日本勢のお家芸であった「強いキーコンポーネントを社内に抱え込むことで最終製品の競争力を高める戦略」をいまだに維持していることである。例えば、パナソニックが圧倒的にヒットしたP201を出せたのは松下電子部品の多層基板ALIVH、九州松下の高速な電子部品実装ロボットがあったからだし、シャープのAQUOSが一時期トップブランドだったのは自社の液晶パネルのお陰だ。こうしたことから、デジタル化の初期は「総合による強み」で日本勢が圧倒的に有利と言われていた。実際に有利であったのに優位性が失われたのは先ほども書いたが、スピードの欠如や投資タイミングのミスでキャッシュアウトが続き経営体力がなくなっていったからである。適切なタイミングで優先順位をしっかりつけた投資をしていれば、今でも十分に競争力を持っていただけに実に惜しかった。

 

最後のリバースエンジニアリングは聞きなれない言葉だが、競合の製品を買ってきてこれを分解して中の部品などを研究して自社製品に活かすということだ。三星はこの分解が非常に熱心で、液晶TVでも携帯でも日本製品やiPhone を徹底的に調べ上げている。リバースエンジニアリングはコピーと違って違法ではないが、Appleとの訴訟問題を見れば判るように意匠性の高い製品の場合はリバースして違う製品にしたつもりでも問題になる可能性がある。三星のリバースエンジニアリングの特徴は分解して設計図を書く際に、ライバル製品との棲み分けをする為の特定機能の加減をするのがうまかった。

つまり、ある競合製品をベンチマークにして、これより上位製品にする場合はこの機能を加え、下位製品にしてスケールを狙う場合はこの機能を省くといったベンチマーク戦略をしっかり取った上で、効率的な製造ができるようにした。これはコンセプトや技術から製品を作り込む日本企業のやり方とは全く異なる。


以上の強みを見てみると、オーナー企業など経営のガバナンスは変えることができないが、他の点では日本のハイテク企業が挽回できる余地は十分にあると考える。次は三星の死角を書くことにする。
一本調子で上げてきたのでこのところ上値が重い株式市場だが、決して割高ではないしましてバブルでは絶対にない。
先日、ネット証券4社共同主催の投資説明会に数千人が来たと報道されていたし、四季報が直ぐに売り切れになるのはバブル期以来と言われているが、長かったデフレが終わったための資金が動き始めた初春の段階だ。

3月の個人投資家の売買比率はまだ3割程度だし、短期間に上がりすぎと言っている人が実に多い。こういうときは日柄調整をすれば再度上がり始めるものだ。

相場が過熱し、異常になるときは顕著な事態が起きる。

まずは、正当化する新指標が出てくる。バブル期はトービンのQが出てきた。
99年のネットバブルのときは各社のネット事業の売上だけを必死に抜き出していた。今はそんなものはない。

あとは、なんちゃって関連銘柄がたくさん出てくる。バブル期は電力株や電鉄株が含み資産関連になっていた。電力会社の送電線や発電所を埋めると広大な事業不動産になると真剣に言われたものだし、ネットバブルのときはセブンイレブンがネット通販をやると言っただけでネット関連になったりしていた。

今はここまでのこじつけはない。

警戒する人が多いのは相場が健全な証拠である。

欧州や中国がリスクファクターだが、押し目は拾いたい。