失われた20年で何が起きて何がどう変わったか?(なぜROEが低下したか) | としえじの金融経済徒然草

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20年超に亘ってファンドマネージャーとして金融の第一線から日本と日本企業を客観的に見てきた私「としえじ」が日本の在り方や政治金融経済について徒然と書いています。

株主資本に対する収益性であるROE1989年時点では10%を超えていたが、年々低下して直近では5%程度まで下がっている。米株のROEは平均で15%程度なので、バブルのピークでも日本株は低収益であったが、それを改善させることなく年々悪化させてしまっているのだ。失われた20年で趨勢的にグローバル水準からかい離した投資尺度の最たるものがROEで、あまりにもグローバルで低水準なのに業を煮やした企業年金連合会が、資本政策等について納得のいく説明が得られない場合、再任候補者に肯定的な判断はできない。」という「ROE8%ルール」を設定したくらいだ。そこで今回ははなぜROEが低下していったのかを考えてみる。


利益が増えているのにROEが低下しているのは、純資産が増加が顕著だからであろう。

 

法人企業統計によると資本金10億円以上の約5000)の昨年度の内部留保は総額267兆円と前年より1兆円増えている。そして、失われた20年の間に内部留保は実に168兆円も増えているのだ。失われた20年と言われながらも、大企業は資産に関しては十分蓄えられた20年になっており、直近の全上場企業の現金残高合計は100兆円を超えている。つまり失われた20年の間でも一株利益を拡大させた日本企業は、それ以上に内部留保を溜めこんだためROEは低下してしまった。意図した内部留保の蓄積がROEの低下をもたらしたのだ。

 

次にグローバルバリュエーションに逆行するROEの低下をもたらしている純資産が積み上っている理由について考えてみる。

 

考えられる要因をいくつか挙げると、

BIS規制対応のため銀行が資本を充実させた

2不良債権処理に苦しむ銀行の貸し渋り対策

3含み益経営ができなくなったことで資本を充実させる動き

4投資先が見当たらないので内部留保が蓄積した

 

まず、1については、時価総額に占める金融機関ウエイトはバブル期は3割以上もあった。この金融機関は不良債権処理をしてB/Sを毀損したが、不良債権問題がある程度片がつくとBIS規制に対応する為に自己資本の充実を図った。これが純資産を押し上げている要因も一つなのは間違いないが、これは2000年以降の動きであり、更に銀行は100兆もの手持ち現金を自ら持たないので、この理由である可能性は低い。

 

ではなぜ非金融機関が内部留保を溜めこんだか?この理由が24である。

まず2について考える。日銀の貸出態度DIの時系列を見ると1992-1994年と1997-2000年で「貸出態度が厳しい」が「厳しくない」を上回っているが他の期間では厳しいDIにはなっていない。実際に銀行が不良債権処理に苦しんでいる90年代でも国内銀行の貸出残高は増加基調であった。貸出残高が減少し始めたのは98年からであって、これは銀行のB/Sで貸出の代わりに国債などの安全資産が増加していることと思われるので、貸し渋りというよりBIS規制対策で資産内容を良化させている影響と言える。



また、典型的なバブル産業で土地神話崩壊の影響を最も受けた不動産業界向の融資が貸出残高に占めるウエイトは85年では8%程度だったが、その後緩やかに上昇して2000年には17%程度になっている。つまり資金ニーズのあるところには貸し出していた。従って貸出態度DIが急速に低下した1997年から数年はクレジットクランチが発生している可能性があるが、それ以外の期間では資金ニーズのある業種には十分な追い貸しがされているので、民間会社がクレジットクランチに備えて内部留保を厚くしたというのは無理がある。

 

従って事業会社の借入ニーズが低下したことの方が大きく、同期間に貸出先ウエイトが減少したのは製造業なので、製造業の借入意欲減退が貸出残高減少につながったと判断され、製造業の借入意欲が減少して内部留保が蓄積されていったということは、企業は借入返済をしてなおかつ投資余力もあるのに内部留保を蓄積させ投資に回さなかったと言える。

 

投資抑制の原因内部留保蓄積の理由は、企業へのアンケートなどによると、投資するものがないというのが最大の返答になっている。
例えば、2001年の日銀のマーケットレビューで資金需要が減少した理由を尋ねているが、その理由は大企業は設備投資減少、中小企業は設備投資減少と売上減少である。つまり、2000年時点でも依然として過剰な生産能力のストック調整をしていたのだ。そして、このストック調整をするほど過剰生産能力が続いていたので、投資が抑制され結果として内部留保が積み増されたのだ。

 

次回以降はストック調整に時間がかかった理由について考えていく。