日銀のB/Sを見ると直ぐ判るが、紙幣は負債に計上されている。負債を増やしても差益なんぞ出ないから発行差益は出ない。では、なぜ紙幣は負債なのか?
それは金本位制の名残だからだ。もともと紙幣の位置づけは金(以下ゴールド)との引きかえ保証書だったのだ。
ニクソンショックで金本位制が廃止となり通貨の裏付けがなくなった以降、絶対的な外部基準が無いので通貨同士の相対価値で動くようになった。つまり相対価値は流動性供給で変化するのだ。
言いかえると、依然としてB/Sの負債に計上される紙幣は、「マネタリーコン
トロールで紙幣の価値を保護してくれるだろう」と言う日銀に対する信認で(相対)価値が決まっている。つまり紙幣価値の裏付けは中央銀行の政策なので、金
本位制以降の紙幣とは、中銀本位制(国債)といっても良いかもしれない。
因みにニクソンショック以降、各国が必死に通貨コントロール競争をしてきて、その結果、1ドル360円だった日本円は90円台まで上昇しているが、ニクソンショックを基準にしてゴールド以上に価値を上げた通貨は世界に存在しない。
ニクソンショック前の交換レートは1トロイオンス(31g)35ドルだった。今、ゴールド価格は1600ドル弱なので
、ドルは対ゴールドで45分の1まで下落、大幅に切りあがった気がしていた日本円ですら、対ゴールドでは10分の1以下になっている。裏付けとなる資産がなくなったので、各国の紙幣は程度の差こそあれゴールド対比では大幅に減価しているのだ。
当時の日銀券発行残高が7兆円程度だったのが今は80兆円程度。つまり10倍に紙幣が増えたので、対ゴールドの価値が10分の1になった(価値が希釈した)。需要供給を考えると当然のことだ。
ゴールドの裏付けがなくなったと言っても負債である以上、反対勘定の資産は存在する。今、日銀のB/Sの負債が紙幣なら、反対勘定のほとんどは国債である。つまり日銀が紙幣を増やすには国債(なんらかの資産)を買う必要があるのだ。
だ からと言って、円紙幣は国債の引きかえはできない。ここがドルとの決定的な違いである。US$はFederalReserveNotesと言うが、これは 要するに「小口化されたアメリカ国債」である(ノーツなので)。この差は、FRBと日銀が実は全然違う組織体だからであるが、それはまた別の機会に書くこ とにする。
以前、日銀発行量以上の国債 を保有してはいけないという日銀券ルールなるものがあったが、これは紙幣の性格を巧妙にはぐらかしているものだと思う。だって、日銀券は負債なのだから、 資産の裏付けがあって発行される。紙幣(負債)が国債(資産)より大幅に増えるのあおかしいではないか?常似同程度の量なのだ。
どこの国もそうだが、経済規模が大きくなり市中の紙幣流通量が増えるに連れて、反対勘定である資産(自国国債)が増えるのは当然の流れである。
今、インフレターゲットを設け、日銀券を大量に刷すと言っているのは、言いかえると「市中から国債を大量に買う」と言っているということだ。政府と独立した中央銀行がマネーを刷ると言うのはそういうことだ。
そうすると、次のような疑問が沸くだろう。財政健全化をして国債残高が減ったら日銀券流通量も減り金融が滞るのか?
他 国の中銀はゴールドを資産に組み入れていき、それが通貨の相対的価値の上昇に寄与してくだろう。しかし、日本は政治的にゴールドの保有を制限されてきたの だ。ゴールド保有増が認められない場合、外貨準備同様に米債を入れるのだろう。尤も、インフレターゲット設定ボルカールール適用で邦銀は国債保有を減らす 必要があるので当面は好きなだけ国債を買うことができると思うが。