【CDについて】
作曲:シューベルト
曲名:ピアノ・ソナタ第18番 ト長調 D894 op78 (44:32)
演奏:伊藤恵 (p)
録音:2014年12月24-26日 神戸新聞松方ホール
CD:FOCD9670/1 (レーベル:Fontec、発売:フォンテック) 1/2CD
【曲に関して】
シューベルトの後期の完成されたピアノ・ソナタ6曲の一つ。この曲は初版出版時に、第一楽章が「幻想曲」とされていたため、幻想ソナタと呼ばれています。20分ほどの演奏時間を要する第一楽章は、まさに一つの曲として成立する、美しい幻想曲となっています。
【演奏についての感想】
伊藤恵が長らくの封印を解いて取り組んだシューベルトの最終章にあたるCD。発売当時、大変評判になりました。伊藤恵の一連のシューベルトの録音はこのCDしか持っていないのですが、これを聴けば他のCDも聴いてみたくなるというもの。シューベルトの世界に存分に浸ることができました。2枚組で、もう一方は第21番になっていますが、今回はまず1枚目の幻想ソナタから聴いてみます。
もう最初の一音から、深いシューベルトの世界へと入って行きます。暖かく包み込むようなピアノの音。丁寧に繰り返されるシューベルトのメロディ。シンプルで美しいメロディの中に、演奏する心の内から流れ出てくる音楽を、一つ一つ大切に積み重ねていくという演奏でした。この第一楽章は、もうこの時間があれば何もいらないと感じさせるような、ピュアなシューベルトの、素晴らしい時間が展開していく20分間なのでした。
第二楽章は、メロディラインが比較的はっきりしたリートを思わせる主題から、シンプルなロンドでメリハリをつけて進んでいきます。ここでも抑制的な表現を保ち、シューベルトの世界が作られていきます。第三楽章がメヌエットで躍動的な音楽の中での中間部が美しい楽章です。深い陰影が表現された演奏でした。第四楽章は快活な音楽で左手の連打が印象的。伊藤恵の演奏は、特別な誇張がある訳でなく、美しい音で包まれた正攻法な展開の中で、シューベルトの音楽の感興を浮かび上がらせていきます。そして、演奏者の心と一体となって共感できる時間を過ごすことができるのでした。
【録音に関して】
これは、SACDハイブリッドだったんですね。深みのあるピアノの音が大変美しい録音です。
【まとめ】
あらためて、第18番のピアノソナタの素晴らしさも堪能できるCDでした。思えば私は、ある時期毎日この曲を聴きながら眠りについていました。暗闇でこの曲のメロディを追いながら眠りにつくというのも、改めて贅沢なものだと感じます。さて、もう一枚の第21番。これも聴くのが楽しみなCDです。
購入:不明、鑑賞:2023/08/31(再聴)









