【CDについて】
作曲:シューベルト
曲名:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960 (46:04)
演奏:伊藤恵 (p)
録音:2014年12月24-26日 神戸新聞松方ホール
CD:FOCD9670/1 (レーベル:Fontec、発売:フォンテック) 1/2CD
【曲について】
シューベルトの最後のピアノ・ソナタ。ライナーノートによると、シューベルトはこのソナタの作曲を終えた後、「自分の弱点がわかった」と言って対位法をゼヒターに習ったとのこと。シューベルトの考える弱点が克服されていたとしたら、どんなソナタが生まれていたのでしょうか。とのことです。シューベルトの大傑作だと思いますが、向かうところはどこだったのでしょう。
【演奏について】
このCDは2枚組で、もう一曲は第18番が収められていますが、それを聴いたのは8月末のこと。ずいぶん時間が立ちました。この曲を聴こうという意欲が調うまで待っていたということですが、そういうつもりで先送りしているCDもたくさんあります。でも、やはり、聴くにはタイミングもありますね。さて、もうそろそろ冬が来そうです。そんな季節に、シューベルトの晩年の傑作を聴いてみます。
第一楽章。穏やかで理想的なテンポで始まります。一音一音に情感を込めたニュアンスがつけられています。そして、低音部の明瞭さとその美しさが、この曲を際立たせています。丁寧に一つ一つの移り変わる情感を表現していきます。音と共にその情感も展開していく。素晴らしい演奏だと思います。
第二楽章は、まず最初の一つの音でハッとさせられます。そして、この音の雰囲気が全体を支配していきます。第一楽章は曲自体に聴く人を惹きつける魅力がありましたが、第二楽章は演奏者がいかに聴かせるかで、魅力が大きく変わってくるような気がします。曲の場面が転換するような、最初の瞬間の音がうまく表現されいて、美しく流れ出るイメージを描くだけでも充分美しい曲なのですが、伊藤恵さんのピアノは、多彩な情感が描き分けられていました。
第三楽章は逆に輝いて流れるような演奏。この楽章がとても綺麗に思いました。この曲を聴くと、第二楽章までで美しい所をすべて持っていかれてしまうような気がしますので、第三楽章でこのような美しさを改めて感じるのは初めてかもしれません。第四楽章も同様に流れるような演奏ですが、細部のアクセントも効果的で、演奏の雄大さも感じるところがありました。現在のこの曲の最高の録音の一つだと思いました。
【録音について】
伊藤恵のピアノの音のいろいろな表情が体感できる素晴らしい録音です。
【まとめ】
この曲を聴く時間は、今や至福の時間ともいえるのですが、伊藤恵の演奏もその時間を満たす素晴らしいものでした。そして、その時間はあっという間に過ぎてしまいました。46分という時間を全く感じさせない演奏でした。
購入:不明、鑑賞:2023/11/18










