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~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

【CDについて】

作曲:シューベルト

曲名:ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D960 (46:04)

演奏:伊藤恵 (p)

録音:2014年12月24-26日 神戸新聞松方ホール

CD:FOCD9670/1 (レーベル:Fontec、発売:フォンテック) 1/2CD

 

【曲について】

シューベルトの最後のピアノ・ソナタ。ライナーノートによると、シューベルトはこのソナタの作曲を終えた後、「自分の弱点がわかった」と言って対位法をゼヒターに習ったとのこと。シューベルトの考える弱点が克服されていたとしたら、どんなソナタが生まれていたのでしょうか。とのことです。シューベルトの大傑作だと思いますが、向かうところはどこだったのでしょう。

 

【演奏について】

このCDは2枚組で、もう一曲は第18番が収められていますが、それを聴いたのは8月末のこと。ずいぶん時間が立ちました。この曲を聴こうという意欲が調うまで待っていたということですが、そういうつもりで先送りしているCDもたくさんあります。でも、やはり、聴くにはタイミングもありますね。さて、もうそろそろ冬が来そうです。そんな季節に、シューベルトの晩年の傑作を聴いてみます。

 

第一楽章。穏やかで理想的なテンポで始まります。一音一音に情感を込めたニュアンスがつけられています。そして、低音部の明瞭さとその美しさが、この曲を際立たせています。丁寧に一つ一つの移り変わる情感を表現していきます。音と共にその情感も展開していく。素晴らしい演奏だと思います。

 

第二楽章は、まず最初の一つの音でハッとさせられます。そして、この音の雰囲気が全体を支配していきます。第一楽章は曲自体に聴く人を惹きつける魅力がありましたが、第二楽章は演奏者がいかに聴かせるかで、魅力が大きく変わってくるような気がします。曲の場面が転換するような、最初の瞬間の音がうまく表現されいて、美しく流れ出るイメージを描くだけでも充分美しい曲なのですが、伊藤恵さんのピアノは、多彩な情感が描き分けられていました。

 

第三楽章は逆に輝いて流れるような演奏。この楽章がとても綺麗に思いました。この曲を聴くと、第二楽章までで美しい所をすべて持っていかれてしまうような気がしますので、第三楽章でこのような美しさを改めて感じるのは初めてかもしれません。第四楽章も同様に流れるような演奏ですが、細部のアクセントも効果的で、演奏の雄大さも感じるところがありました。現在のこの曲の最高の録音の一つだと思いました。

 

【録音について】

伊藤恵のピアノの音のいろいろな表情が体感できる素晴らしい録音です。

 

【まとめ】

この曲を聴く時間は、今や至福の時間ともいえるのですが、伊藤恵の演奏もその時間を満たす素晴らしいものでした。そして、その時間はあっという間に過ぎてしまいました。46分という時間を全く感じさせない演奏でした。

 

購入:不明、鑑賞:2023/11/18

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ ⑰

【CDについて】
作曲:メンデルスゾーン

曲名:交響曲第3番イ短調 op56 (41:53)

   交響曲第4番イ長調 op90 (27:18)

演奏:クレンペラー指揮 フィルハーモニア管弦楽団
録音:1960年1月22,25,27,28日(第3番)、1960年2月15,17,18日(第4番)
CD:TOCE-13346(レーベル:EMI、発売:EMIミュージックジャパン)

 

【曲について】

二つの交響曲とも、メンデルスゾーンが旅先で着想を得た作品です。交響曲第3番は、スコットランドという愛称でも呼ばれる曲で、メンデルスゾーンがエディンバラのメアリ女王ゆかりの宮殿を訪れ、この曲の序奏部分の楽想を書き留めました。その翌年イタリアを訪れたメンデルスゾーンは、新たな交響曲の着想を得て、交響曲第4番の作曲にかかります。一方で交響曲第3番の作曲の方は多忙のため進まず、最終的に完成したのは、スコットランドを訪れてから13年後のことでした。

 

【演奏について】

重厚な演奏のクレンペラーと軽快な音楽のメンデルスゾーン。この組み合わせは、にわかに想像しがたいところがあります。どんな演奏になるのだろうと、期待半分不安半分という感じでした。最初は、交響曲第3番の方からです。

 

ゆったりした序奏でスタート。哀愁の漂うゆったりとした音楽で始まります。これはなかなか感動的です。この曲は、メンデルスゾーンの曲の中でも哀感を漂わせる音楽ですので、さほど違和感なく入って行けます。第一主題がに入っても、重厚さと哀愁は変わりません。むしろ、クレンペラーの重厚さが、この曲にすごくマッチしていきます。全体的に暗めの色彩で、じっくりと歌われていました。第三楽章の緩徐楽章もなかなか重厚です。クレンペラーの演奏はこの曲を、堅固で壮大な交響曲の姿へと向けて追及した感じで、比較的軽めで華やかなメンデルスゾーンのイメージを払拭して、堂々とした音楽として見せてくれる素晴らしい演奏だと思いました。

 

第4番の方は、颯爽としたイメージの曲で、クレンペラーの演奏が不安でしたが、普通に颯爽と演奏されています。ただし、そこはクレンペラーですので、少々彫りの深い音楽になっている感じがしました。演奏の肌触りは第3番と同じだと思いますし、しっかりした音楽が出来上がっていると思います。そして第3番と同様、暗めの色彩を感じます。この曲は明るく感じる方が楽しいかとは思いますが、クレンペラーの演奏は、「イタリア」というイメージよりは、「交響曲第4番」という感じの演奏かもしれませんね。

 

【録音について】

全体的によくまとまっていて、いい録音だと思います。

 

【まとめ】

クレンペラーのメンデルスゾーンでした。この交響曲第3番は良かったです。私は、この曲はメンデルスゾーンの中でも苦手な曲の部類で、あまり数を聴いていないのですが、クレンペラーを聴いて見直しました。この重厚な哀感は何とも言えません。

 

購入:不明、鑑賞:2023/11/17

最近リリースされた新譜から ⑯

今回の新譜は、タローのピアノによるラヴェルのピアノ協奏曲集を聴いてみました。先週に引き続きエラートの新録音です。エラート自体はかつてのエラートとは別物と思いますが、愛着もあり、イメージも多少は受け継いでいる感じがするので、ついつい買ってしまうのですよね…。

【CDについて】

①作曲:ラヴェル

 曲名:ピアノ協奏曲ト長調 M83 (21:44)

    左手のためのピアノ協奏曲ニ長調 M82 (16:51)

②作曲:ファリャ

 曲名:スペインの庭の夜 G49 (23:36)

演奏:タロー(p) ラングレー指揮 フランス国立管弦楽団

録音:2022年7月5-8日①、2023年6月23日② パリ Auditorium de Radio Francd

CD:50 5419 766071 9(レーベル:ERATO、輸入販売:ワーナーミュージックジャパン)

 

【曲と演奏について】

ラヴェルのピアノ協奏曲集のCD。今年はユジャ・ワン(再発売)のを買ったので、2枚目ですね。今回は、タローの演奏です。タローのピアノは、じっくり聴いたことがないので、楽しみです。さっそく聴いてみます。ハネケ監督の「愛、アムール」は見たことがあります…。

 

ラヴェルのト長調のピアノ協奏曲。冒頭のオーケストラのから、陰影の濃い鋭い演奏を感じます。タローのピアノも同様にニュアンスに富んだ演奏でした。まさに両者で協働プロジェクトを行ったという感じです。緊張感があり起伏に富む音楽は、今までの私のわずかしかないこの曲の経験の中でも、最高の部類ではないかと思いました。もしかして、私にとっての新たな名盤を聞いているのかも…?

第二楽章が淡々と進む様子はこの上なく美しく、オーケストラも雄弁にメロディを奏でていて、深い憂いを感じます。第三楽章は、とても躍動的で尖っています。作曲された戦間期のパリの憂鬱と、アヴァンギャルドな雰囲気も感じとることができる演奏で、ラヴェルのこの曲の印象を新たにしました。

 

タローのピアノによる、ラヴェルのピアノ協奏曲第3楽章(ライヴ)

 

続けて、左手のためのピアノ協奏曲です。印象派の音楽でありながらも、重厚さを持った音楽を感じます。ラングレーの指揮するオーケストラの音の広がりに圧倒されました。それに対峙するタローのピアノが、クリスタルのような透明感に輝き、変幻自在の色彩感が音楽から次々と溢れ出ています。ここには、二人の協働による世界観が構築されていると感じます。

 

ファリャのスペインの庭の夜は、三角帽子のようなスペイン色の濃い音楽ではなく、むしろ印象派に近い音楽です。ドビュッシーほどの晦渋さはないにしても、「映像」のピアノ協奏曲版というようなイメージを持ちました。従って、ラヴェルに引き続いて聴いても、それほど違和感を感じません。演奏はラヴェルと同様で、雄弁な管弦楽と輝くピアノで積み上げられた、美しい音楽を感じることができました。

 

このCDは、私としてはなかなか気に入りました。

 

購入:2023/11/10、鑑賞:2023/11/23

以前カツァリスのCDを聴いたとき、いろいろ調べると来日も近いということがわかったので、思わずチケットを買ってしまっていました。そして、その日がやってきました。実を言うと私はカツァリスにはほとんど馴染みがなく、持っているイメージとしては、トランスクリプションなのでした。

 

◆第1部
シューベルト:即興曲 op90-1 ハ短調
シューベルト:即興曲 op90-3 変ト長調
シューベルト(リスト編):セレナーデ

シューベルト:楽興の時 D780 op94-3 ヘ短調
リスト(ビューロー/カツァリス編):ハンガリー民謡の主題による幻想曲 S123/R458
◆第2部
ラフマニノフ:幻想小曲集 op3

カツァリス(即興):ラフマニノフへのオマージュ
カツァリス:さよならラフマニノフ
◆アンコール

ショパン:幻想即興曲 嬰ハ短調 op66

カツァリス:(即興)シャンソンメドレー 枯葉~シェルブールの雨傘

 

演奏:シブリアン・カツァリス

 

2023年11月30日 浜離宮朝日ホール

 

プログラムは、シューベルトの即興曲から始まりました。聞き慣れたメロディです。普段聴かれない内声を、思い切り表面に出すのがカツァリスの流儀だと思っていたのですが、シューベルトではさすがにそういった演奏はしていないようでした。表情はつけていますが、ほとんどインテンポで、重厚さすら感じます。セレナードのトランスクリプションは表情豊かに歌われていました。そして楽興の時は、颯爽と駆け抜けました。

 

前半最後は、リストのハンガリー幻想曲で、元はピアノとオーケストラの作品ですね。元をたどればピアノ曲⇒管弦楽曲⇒協奏曲という遍歴の作品ですので、一回り空いた感じです。ビューロー編、のさらにカツァリス編と言うことで、ハンガリー狂詩曲がカツァリス流にアレンジされて、即興性のある様な、なかなか面白い音楽になっていました。

 

中休みにロビーに出ると、皆さんサイン会用のCDを買い求めています。今日の目玉は、新譜の会場限定先行発売というシューベルトの即興曲集のようです。なるほど。ちなみにカツァリスは、これが38回目の来日だそうです。

 

後半はラフマニノフ。幻想小曲集は、2曲目の前奏曲はよく聴きますが、こうして5曲続けて聴くのは久しぶりです。ほとんど曲を忘れていました。次は、即興によるラフマニノフメドレーで、私は前半はどの曲のメロディだかよくわかりませんでしたが、パガニーニ狂詩曲、協奏曲第2番と続いていく後半はどんどん盛り上がります。ピアノ協奏曲は、オケのパートとピアノパートを一人で弾き切る様子は、さすがカツァリスと言わざるを得ません。御年72歳、カツァリスはいつまでも超絶技巧なのですね。歳をとってシューベルトのCDを出しても、そういう歳の取り方をしていないような雰囲気です。そして、最後は自作で抒情的な、さよならラフマニノフでプログラムは、締められました。

 

さて、アンコールは圧巻でした。最初はショパンの幻想即興曲。爽快なアンコールですが、最後に思い切りカツァリス流、内声アレンジが登場しました。出ましたね、ついに。そして、もう一曲は、即興による、枯葉からのシェルブールメドレー。これは最高でした。そうなんですよ…カツァリスってフランス人だったのですね、それもパリ音楽院出身、最後に思い出しました。この曲を聴いていれば、もちろん頭の中にはカトリーヌ・ドヌーブが浮かびます。会場は、スタンディングオベーション。今日は、意図しない方向で、大変楽しく終わりました。

【CDについて】

作曲:ブラームス

曲名:ドイツ・レクイエム op45 (77:02)

演奏:ウィリアムス(s)、ハンプソン(br)

   バレンボイム指揮 シカゴ交響楽団・合唱団

録音:1992年9月,1993年1月 シカゴ オーケストラ・ホール

CD:WPCS-5536(レーベル:ERATO、発売:ワーナーミュージックジャパン)

 

【曲について】

ブラームスのドイツ・レクイエムは、通常の教会で演奏される典礼音楽ではなく、ルター聖書のドイツ語版からブラームスが選んだ章句を歌詞として使用した、演奏会用の作品として作曲されました。この曲はシューマンの死去をきっかけとして構想され、ブラームスの母の死によって作曲が加速したとのことです。

 

【演奏について】

長い曲なので、ちょっと落ち着いて聴き始めます。第1曲でドイツ・レクイエムの世界へ入っていきます。美しい合唱の世界へ、ゆったりしたテンポで導入されます。そして、第2曲の葬送行進曲。このCDで印象に残った部分の一つが、このティンパニーでした。シカゴ響の乾いたティンパニーの音、いつも交響曲などでも聴く音が、強く鳴り響きます。迫力があって劇的に演奏されています。第3曲でバリトン独唱が入りますが、最後の合唱のフーガがなかなか素晴らしいですね。

 

穏やかな第4曲のあと、ソプラノ独唱のある第5曲はウィリアムスの澄んだ声が印象的でした。そして、第6曲のクライマックス。バリトンの独唱のあと、オーケストラも合唱もクライマックスに達し、フーガが鳴り響きます。この部分はまさにこの曲の頂点です。そして第7曲で天国の世界となり、第1曲のような静かな世界に帰っていきます。この第7曲の最後に向かっていく静かな流れが、大変美しくて感動的でした。

 

ということで、極めて雑駁な感想ではございますが、バレンボイムの演奏は、どちらかと言えば敬虔かつ清澄にじっくりと歌い込まれた演奏で、全体的に美しく流れていきます。華々しさという面においては金管は控えめで、ティンパニーが目立つ感じがしました。ただしこれは録音のバランスにもよるのかもしれません。

 

【録音について】

どうでしょう…。バランス含め今一つクリアでは無いような気がしました。

 

【まとめ】

ドイツ・レクイエムは、現時点では私にとっては、聴く機会の少ない曲で、いざ聴くとなるとちょっと気合いがいるのですが、素晴らしい構成の名曲なので、いろいろと聴いてみるともっと気軽に楽しめる曲かな…と思いました。

 

購入:2023/08/29、鑑賞:2023/11/17

グレイト ~節目となったCDから3選~ ①

新たな特集です(笑)。フォロワーの新芽取亜さんにご提案いただきました!ありがとうございます。私はシューベルトのグレイトが好きで、いろいろな演奏を聴いたのですが、その中で、自分なりにインパクトを受けて、この曲を聴いていくうえで節目になったCDを3枚、改めて聴いてみることにはしました。決してベスト3とかではありませんが、個人的にはそれに近いウェイトと思います。第一回はまずこれです。

【CDについて】

作曲:シューベルト

曲名:交響曲第9番ハ長調 D944 (52:24)

演奏:ワルター指揮、コロンビア交響楽団

録音:1959年1月31日,2月2,4,6日 ハリウッド Legion Hall

CD:SRCR 8784(レーベル:SONY Classical、販売 Sony Records)

 

【曲について】

この曲の作曲時期などは、最近の研究で以前とは変わってきているようです。かつては、シューベルトの死の年である1828年に作曲されたとされていましたが、今では1926年に作曲されたとされています。そして作品をウィーン楽学友協会に献呈と共に送りましたが、演奏されませんでした。その後第9番の楽譜はシューベルトの兄の元にありました。そしてシューベルトの死後10年が経過してシューマンがこの曲を発見。シューマンはメンデルスゾーンにこの曲の演奏を勧め、メンデルスゾーンとゲヴァントハウス管弦楽団によって1839年に初演されたのでした。

 

【演奏について】
私が、この曲を好きになって、いろいろな演奏を聴くようになったきっかけは、ある時毎日の通勤の電車で、ウォークマンに普段聴かない曲をと思って入れたグレイトを2~3日続けて聴いてからだと思います。そして、その美しいメロディや躍動するリズムに虜になり、この曲が頭の中に住み着いて離れなくなってしまいました。以降、いろいろと聴き始めた結果、まず好きになったのが、このワルター盤でした。名人芸的な揺れがなんともいいがたく心地よい演奏というイメージです。その演奏を久しぶりに聴いてみたいと思います。

 

さて、いつもの冒頭の序奏部。ホルンがとてもゆったりと柔らかい演奏で入っていきます。そして、テンポはあまり変えず、ゆっくり音は盛り上がっていきます。何度も手を変え品を変えじっくりと進んで加速していく。この感じがとても良いと思います。そして主部に入っても、まだ継続して加速して、巡航速度に入っていきました。絶妙です。あとは安心して聴けます。細かなテンポの動きも素晴らしいです。ディナーミクの幅も大きくダイナミックに感じます。

 

第二楽章、第三楽章は、適度なテンポで美しく進行していきます。スケルツォは、ひとつひとつフレーズが丁寧に表現され、しっかりメリハリのある演奏で、テンポの動きも非常に自然に入ってくる感じがとてもいいです。そして第四楽章、インパクトのある導入から入って、細かなニュアンスをつけながら展開していきます。強奏部のアクセントが強く感じますが、ここでもテンポの動きが絶妙で、かつノリのいいリズムで進行してコーダに向かいます。お見事でした。時折、金管の音が大きめで華やかに感じました。

 

【録音について】

充分鑑賞できるいい録音と思いますが、さすがに音は古い感じです。でもワルターの録音がこうしてたくさんステレオで聴けることには感謝です。

 

【まとめ】

久しぶりのワルターとコロンビア響のグレイトでした。長らく聴いてきたこの曲の、自分にとっては一つの原点のようなCDなのです。いろいろと感慨深いものがあります。さて、次回は…と。

 

購入:不明、鑑賞:2023/11/23(再聴)

【CDについて】

作曲:シャブリエ

曲名:楽しい行進曲 (3:39)

   狂詩曲「スペイン」 (6:13)

   田園組曲 (18:55)

   歌劇「いやいやながらの王様」より スラヴの踊り (5:17)

   歌劇「いやいやながらの王様」より ポーランドの踊り (7:35)

   田園前奏曲 (6:57)

   ブレー・ファンタスク(モットル編) (6:25)

   10の絵画風小品より 第9曲 華やかなメヌエット(ラヴェル編) (6:26)

演奏:プラッソン指揮、トゥールズ市立管弦楽団

録音:1987年

CD:CE32-5784(レーベル:EMI、販売:東芝EMI)

 

【曲に関して】

シャブリエの作品は、活動期間が少ないので数少ないのですが、最も有名な作品は、狂詩曲「スペイン」でしょう。1882年友人で指揮者でもあるラムルーの勧めで妻とスペイン旅行に行きました。その時の印象で作曲されたこの曲は熱狂的に迎えられ、シャブリエの代表作として広く知られることとなっています。

 

【演奏についての感想】

シャブリエといえば、狂詩曲「スペイン」ですが、逆わたしはそれしか聴いたことがありませんでした。ただ、この曲は一度聴いたら忘れられないような強烈な印象を植え付ける曲だと思います。そんなシャブリエの管弦楽曲集をヤフオクで買って見たので、聴いてみたいと思います。演奏はプラッソンとトゥールズ。このあたりの曲ですと定番ですね。

 

どれどれ、聴いてみましょうか…。まずは、「楽しい行進曲」賑やかな曲ですねぇ。この曲は、酩酊して機嫌よく朝帰りする様子らしいです。朝帰りにしてははじけてますね。きっと集団で帰っているのでしょう。一人だと、どよ~んとしてしまいますから…。次は狂詩曲「スペイン」

これはもう定番です。この曲を聴いていると、いかにもフランスの曲だなぁと思ってラヴェルとか思い起こすのですが、作曲年代は断然こっちが早いですね。ラロのスペイン交響曲よりはスペイン的だと思います(笑)。

 

田園組曲。これは、ピアノ曲からの管弦楽編曲です。静かな曲も入っています。この曲を聴きながら、作曲年代がサン=サーンスやフォーレが活躍した年代であることを考える時、その次の時代のドビュッシーやラヴェル、プーランクなどの後に続いた作曲家たちは、誰よりもシャブリエの音楽の血を受け継いでいるのではないかと思いました。同時代のサン=サーンスやフランクはフランスとはいいつつドイツロマン派を感じる部分がありますが、シャブリエは純フランスな感じがします。パステルカラーのような色彩感や、雲のような管弦楽の響きは、多分に印象派の音楽を感じます。原曲となったピアノ曲の「10の絵画風小品」も是非聴いてみたいです。

いやいやながらの王様よりの2曲の舞曲。オペレッタの舞曲を聴いている感じです。この曲はオペラではありますが。大変楽しい曲でした。田園前奏曲は、田園組曲のような穏やかな曲。フランスの管弦楽曲という感じです。マスネとか頭をよぎりました。ブレー・ファンタスクは、主部と中間部の対比が面白い曲。そして、最後に華やかなメヌエットは、ラヴェル編の管弦楽曲です。元は田園組曲と同じ曲集からからですね。ラヴェル的かと思いましたが、シャブリエの管弦楽もラヴェルと同じように華やかな部分があるので、続けて聴いても違和感は感じませんでした。

 

思わず楽しいCDでした。正直ここまでとは思いませんでした。シャブリエは偉大です。

 

【録音に関して】

音は大きめだと思いますが、色彩感豊かに音が捉えられています。

 

【まとめ】

かつてEMIから出ていた「フランス音楽のエスプリシリーズ」の1枚。いくつか聴いたことがありますが、なかなかいいシリーズでした。プラッソン=トゥールズが活躍したシリーズですね。また、見つけたら聴いてみたいと思いました。シャブリエを聴いて、ちょっとフランス音楽の歴史のピースが埋まった気がしました。

 

購入:2023/08/09、鑑賞:2023/11/16

ショスタコーヴィチの時代 ⑱

映画音楽「僧侶と下男バルダの物語」は、アニメーションの音楽として作曲されましたが、アニメーション自体は最終的に完成されませんでした。ショスタコーヴィチ自身も1936年までこの作品に取り組んでいましたが、プラウダ批判により中断してしまいました。そんな作品が2006年の生誕100年にあたって復元されたのでした。

【CDについて】

作曲:ショスタコーヴィチ

曲名:①映画音楽「僧侶と下男バルダの物語」 op36 (53:40)

   ②組曲「ムツェンスク郡のマクベス夫人」 op29a (6:41)

演奏:トーマス・ザンデルリング指揮 ロシア・フィルハーモニー管弦楽団

録音:2005年5-6月①、2005年5月②

   モスクワ Russian State TV & Radio Company Kultura, studio 5

CD:00289 477 6112(レーベル:DG)

 

【曲と演奏について】

映画音楽「僧侶と下男バルダの物語」については、このブログのシリーズの第2回(以下にリンク)の時に一度コメントしたことがありましたが、その時は組曲版の鑑賞でした。当時は「この曲は2006年に世界初録音で全曲盤がDGから出ているのですね!聴いてみたいです…。」とコメントしていたのがこのCDです。手に入れました(笑)。

 

 

さて、この曲について改めてネットで調べてみました。だいたい以下のような感じのようです。

「司祭と下男バルダの物語」は、プーシキンの童話を元にしたアニメとして、ミハイル・ツェハノフスキーによって製作が開始されました。このアニメは完成することはありませんでしたが、現在、唯一冒頭のバザールのシーンが現存しています。

 

1932年にツェハノフスキーは妻と共にプロジェクトを開始。ショスタコーヴィチに映画に付随する音楽を依頼します。彼らはまた、逮捕から戻った直後にの詩人ヴヴェデンスキーに台本の補筆を依頼しました。ショスタコーヴィチは、抽象的なキャラクターによる風刺作品の作曲には大いに得意とするところで、音楽は一気に仕上がっていきます。しかし、財政的な問題に直面したツェハノフスキーは、ショスタコーヴィチに音楽を小編成のオーケストラ用に再編成を依頼します。しかし、ショスタコーヴィチはその時プラウダ批判の標的となり、それ以降製作が進むことはありませんでした。

ツェハノフスキーは完成していた約40分の部分と、残りの素材を集めて完全なムービーにまとめましたが、それはレンフィルムのアーカイブに保管され、レニングラードの爆撃による火災でほとんど失われてしまいました。そして、現在です4分間のバザールの部分のみが残されており、ロシアアニメの古典とされています。

ショスタコーヴィチは、この映画のスコアを大変気にいっていたようです。ショスタコーヴィチの死後に未亡人は、弟子でもあったバディム・ビーベルガンに完成させるよう依頼しました。そして完成したこの作品が生誕100年の時にリリースされたのでした。

 

ということです…。

 

音楽は、こういった風刺アニメの曲だけに、コミカルな部分が多いものでした。冒頭からコミカルな音楽で、それもショスタコーヴィチらしい諧謔性がでています。そして、「僧侶の娘の夢」は、この曲一番の名曲?下に動画をリンクをつけておきます。いずれにしても、この楽しい音楽が復元され、最新録音で聴けるのは素晴らしいことです。ロシア・フィルの演奏も輝かしいものでした。

僧侶の娘の夢

 

これは、残された「バザール(マーケットプレイス)」になります。

 

このCDにはもう一つ、「ムツェンスク郡のマクベス夫人」の1932年版の組曲がついているのがなかなか嬉しいところです。これは新しく発見されたスコアで、一般的な「カテリーナ・イズマイロヴァ」からの編曲ではないですね。バルダのあとに聴いてもなかなか新鮮で、こちらは厚みを感じるオーケストレーションが素晴らしいと思いました。

 

購入:2023/08/10、鑑賞:2023/11/22

【CDについて】

①作曲:チャイコフスキー

 曲名:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op35 (34:59)

②作曲:ショスタコーヴィチ

 曲名:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 op77 (37:28)

演奏:グリンゴルツ(vn)、パールマン指揮 イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

録音:2001年12月、テルアビブ Frederic R. Mann Auditorium

CD:471 616-2(レーベル:DG)

 

【曲について】

三大ヴァイオリン協奏曲とは、ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームスということらしいのですが、チャイコフスキーのこの曲を加えて「四大ヴァイオリン協奏曲」ということもあるとのことです。いずれにしても、演奏され続けて名曲でもあり、親しみ易いどうしで、メンデルスゾーンと組み合わせたLPやCDとして発売されることも多く、それは「メンチャイ」と呼ばれていたりもします。

 

【演奏について】

グリンゴルツ。聴くのは初めてです。パールマンの指揮も初めて…。事前情報は?と、仕入れたところによると、グリンゴルツはパールマンの指導を受けたようですね。ということは、師弟関係の競演でもあります。チャイコフスキーとショスタコーヴィチという、かつてソ連の巨匠たちがよく演奏した2曲。レニングラード出身のグリンゴルツがどういう演奏を見せてくれるのでしょうか。

 

チャイコフスキーの協奏曲です。パールマンの前奏は、ちょっと緩い感じで始まります。そこに入ってくるグリンゴルツのヴァイオリンは、どうもかつてのソ連の巨匠たちと比べると、随分趣が違いますね。繊細な音ですが、きつい音にはならず、旋律を優美に歌っていきます。緩急のニュアンス付けを各所で行い、美しく歌う事を主に演奏しているようです。今までの巨匠たちの演奏とは違って、これも新時代の演奏ということでしょうか。頭にあるこの曲とは、かなり雰囲気が違って聴こえます。パールマンの指揮はこの演奏の表情にうまく合わせている感じです。オーケストラ主導で盛り上げるという形にはならず、あくまでグリンゴルツのヴァイオリンが主に音楽を作っているように感じます。

 

もう一曲はショスタコーヴィチの第1番。グリンゴルツとパールマンの演奏は、この曲によく馴染んでいると思いました。ヴァイオリンの旋律は、明快に美しくこの曲を表現していきます。オーケストラも集中力を増した感じがしました。グリンゴルツはパガニーニ・コンクールの覇者でもあり、技術的には確かなもの。その裏付けのあるこの演奏はこの曲の性格を、純音楽的にストレートに表現していると言えるのではないかと思いました。

 

【録音について】

2001年の録音で、適度な残響もあり、問題ありません。

 

【まとめ】

グリンゴルツは、現代曲も多く演奏しており、また室内楽についても、自らカルテットを編成して、精力的に活動しているようです。1982年生まれなので、このCDの頃には20歳だったのですね。いろいろなことに取り組まれており、これからも注目していきたい音楽家と思いました。

 

購入:2023/07/29、鑑賞:2023/11/09

買ったCDはちゃんと聴こうシリーズ ⑯

【CDについて】
作曲:ブラームス

曲名:交響曲第3番ヘ長調 op90 (35:45)

   交響曲第4番ホ短調 op98 (38:06)

演奏:ハーディング指揮 ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団
録音:2000年11月28-29日(第4番)、2001年6月20-22日(第3番)

   ケルン Studio Stollberger Strasse
CD:0946 391330 2 4(レーベル:Virgin Classics)

 

【曲について】

ブラームスの交響曲第4番は、今日では名曲として数々の名演奏で親しまれていますが、作曲当時はそうでもなかったようです。論点はその擬古的な手法に関してのもので、ブラームスは退化したなどという批評もあったとか。初演に先立って友人たちを招き、2台のピアノ編曲版で披露したときには、気まずい沈黙がその場を覆ったというエピソードもあるようで、当時としては独創的な手法がなかなか受け入れられなかったのですね。

 

【演奏について】

ブラームスの後期の2曲の交響曲が収められたCD。しばらくずっと棚にあって気になっていましたが、やっと取り出してみました(笑)。そんなに頻繁に聴く曲でもないのですが、ハーディングはそれなりに愛着もあって、楽しみに聴いてみます。なにしろ昔サインをしてもらったので…(笑)。

 

さて、まずは第3番から。重厚な厚みのある開始と、波のようなニュアンス付けで始まります。これは少々ハーディングの印象が変わりました。小編成のカンマーフィルですよね…。堂々とした重量感のある音楽になっています。第二楽章は、ゆったりとした感じで、ちょっとまったりした感じです。第三楽章も同様にゆったりして、独特の美しいニュアンスを感じます。第四楽章、わさわさと始まりますが、強奏部分に入ると迫力を出してきます。小編成を大きく見せつつ、小編成ならではの特徴はそれほど出さずに、大きな音楽を演奏していて、ハーディング流にニュアンスをつけているような感じでした。うまく言えないですが…。

 

続いて第4番です。もにゃもにゃといろいろ音が絡みあって聴こえてきます。クライバーの歯切れの良さとは別の世界です。これも同様に小編成のオケで厚みを持たせて、という様にも思えますが、それほど厚くはならないような感じもしました。コーダに向かって早くなるところは面白いと思いました。第二楽章は美しい演奏で、テンポの動きも大きく、第三楽章は、キビキビとしたリズムが良くて、輪郭もはっきりして、HIP的イメージも出てきました。第四楽章も緩急のアクセントをつけて演奏されて、最後はテンポが上がり盛り上がって行きます。細部ではいろいろな音が聞こえてきます。コーダも盛り上がりますが、最後は比較的あっさりしているのかもしれません。

 

全体として、いろんな要素が混じっていて、これだ!という印象に至らないのですが、ハーディングらしい演奏ということなのでしょうか。

 

【録音について】

しっかり音が捉えられたクリアな録音だと思います。

 

【まとめ】

ハーディングの演奏は、今風の標準的なものと言えるのでしょうか?HIP的指向もあったり、テンポを動かしながらロマンティックに演奏したり、澄み切った演奏をしたりと、まだまだ私はハーディングの演奏の全体像が捉えられないような気がします。

 

購入:不明、鑑賞:2023/11/06