ショスタコーヴィチの時代 ⑱
映画音楽「僧侶と下男バルダの物語」は、アニメーションの音楽として作曲されましたが、アニメーション自体は最終的に完成されませんでした。ショスタコーヴィチ自身も1936年までこの作品に取り組んでいましたが、プラウダ批判により中断してしまいました。そんな作品が2006年の生誕100年にあたって復元されたのでした。
【CDについて】
作曲:ショスタコーヴィチ
曲名:①映画音楽「僧侶と下男バルダの物語」 op36 (53:40)
②組曲「ムツェンスク郡のマクベス夫人」 op29a (6:41)
演奏:トーマス・ザンデルリング指揮 ロシア・フィルハーモニー管弦楽団
録音:2005年5-6月①、2005年5月②
モスクワ Russian State TV & Radio Company Kultura, studio 5
CD:00289 477 6112(レーベル:DG)
【曲と演奏について】
映画音楽「僧侶と下男バルダの物語」については、このブログのシリーズの第2回(以下にリンク)の時に一度コメントしたことがありましたが、その時は組曲版の鑑賞でした。当時は「この曲は2006年に世界初録音で全曲盤がDGから出ているのですね!聴いてみたいです…。」とコメントしていたのがこのCDです。手に入れました(笑)。
さて、この曲について改めてネットで調べてみました。だいたい以下のような感じのようです。
「司祭と下男バルダの物語」は、プーシキンの童話を元にしたアニメとして、ミハイル・ツェハノフスキーによって製作が開始されました。このアニメは完成することはありませんでしたが、現在、唯一冒頭のバザールのシーンが現存しています。
1932年にツェハノフスキーは妻と共にプロジェクトを開始。ショスタコーヴィチに映画に付随する音楽を依頼します。彼らはまた、逮捕から戻った直後にの詩人ヴヴェデンスキーに台本の補筆を依頼しました。ショスタコーヴィチは、抽象的なキャラクターによる風刺作品の作曲には大いに得意とするところで、音楽は一気に仕上がっていきます。しかし、財政的な問題に直面したツェハノフスキーは、ショスタコーヴィチに音楽を小編成のオーケストラ用に再編成を依頼します。しかし、ショスタコーヴィチはその時プラウダ批判の標的となり、それ以降製作が進むことはありませんでした。
ツェハノフスキーは完成していた約40分の部分と、残りの素材を集めて完全なムービーにまとめましたが、それはレンフィルムのアーカイブに保管され、レニングラードの爆撃による火災でほとんど失われてしまいました。そして、現在です4分間のバザールの部分のみが残されており、ロシアアニメの古典とされています。
ショスタコーヴィチは、この映画のスコアを大変気にいっていたようです。ショスタコーヴィチの死後に未亡人は、弟子でもあったバディム・ビーベルガンに完成させるよう依頼しました。そして完成したこの作品が生誕100年の時にリリースされたのでした。
ということです…。
音楽は、こういった風刺アニメの曲だけに、コミカルな部分が多いものでした。冒頭からコミカルな音楽で、それもショスタコーヴィチらしい諧謔性がでています。そして、「僧侶の娘の夢」は、この曲一番の名曲?下に動画をリンクをつけておきます。いずれにしても、この楽しい音楽が復元され、最新録音で聴けるのは素晴らしいことです。ロシア・フィルの演奏も輝かしいものでした。
僧侶の娘の夢
これは、残された「バザール(マーケットプレイス)」になります。
このCDにはもう一つ、「ムツェンスク郡のマクベス夫人」の1932年版の組曲がついているのがなかなか嬉しいところです。これは新しく発見されたスコアで、一般的な「カテリーナ・イズマイロヴァ」からの編曲ではないですね。バルダのあとに聴いてもなかなか新鮮で、こちらは厚みを感じるオーケストレーションが素晴らしいと思いました。
購入:2023/08/10、鑑賞:2023/11/22