以前の記事で、NAXOSの30周年アニバーサリーBOXを買って、おいおい聴いていこうと思っている、と書いたことがありましたが、いよいよじっくり聴き始めることにしました。
このセットを買った理由の一つは、30枚のラインアップを見て、NAXOSの30年間の変遷が非常によくわかるセットだと思ったことです。この30年の間にNAXOSは大手レーベルとなり、時代に合わせたさまざまな展開を見せてきました。80年代、CDやデジタル録音が普及し始めた頃に登場し、その流れの中で発展してきたレーベルです。その歩みを、このセットから読み取ることができるのではないかと思ったのです。
一方で音楽そのものについても、曲は変わらないながら、時代に応じて演奏スタイルや流行、聴き方や接し方など、取り巻く環境は確実に変わってきています。30年前にこれらの録音に接したときの「常識」の一部は、いまではすでに変わっている部分もあるはずです。そうした意味でも、あらためて録音の歴史を振り返ってみる意義があるように思います。
このセットはCD1からCD30まで作曲家のアルファベット順に並べられていますが、今回はあえてCD番号順で聴いていきたいと思います。録音年代と100%一致しているわけではないかもしれませんが、それでも大まかな流れはたどれるはずです。
さて、何が出てきますでしょうか。なかなか最後までたどり着かないかもしれませんが、まずは始めてみましょう。
最初は、ヤンドーによるベートーヴェンの3大ソナタです。
【CDについて】
作曲:ベートーヴェン
曲名:ピアノソナタ第8番ハ短調 op13「悲愴」(17:32)
ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 op27-2「月光」(14:33)
ピアノソナタ第23番ヘ短調 op57「熱情」(23:29)
演奏:ヤンドー(p)
録音:1987年4月21-23日 ブダペスト Italian Institute in Budapest
CD:8.503293 CD-2 【元番号:8.550045】(レーベル:NAXOS)
【演奏についての感想】
ブックレットの短い解説によると、
ヤンドーのNAXOSへの最初の録音で、フンガロトンによって製作された。NAXOSにこれだけの録音を残した演奏家は、他にはいない。(ハイマン)
ヤンドーの明快で直接的なスタイルと自然な即興性は、特に悲愴と熱情の緩徐楽章に見事に表現されている。暖かく叙情的であるが、感傷的になり過ぎることはない(ペンギン・ガイド)
まず、初見で聴いての第一印象は、硬質なキラキラした音だということ。音とテクニックは勿論安定しています。そして、芸風で掴む巨匠タイプではないということ。つまり、聴いたとたんグイっと引き込まれたりする演奏ではないということですね。そして、演奏スタイルが流麗で、ロマン派的に聴こえます。古典派的な曲でも、構築より流れ重視に感じます。
そんな印象の中で、3大ソナタ曲を聴いた感想です。悲愴はとても真摯な演奏です。シンプルに完成された曲なので、気負わずとても綺麗に聴くことができます。月光は、ちょっと芸風が必要な曲かも知れませんね。ヤンドーは第一楽章を淡々とした雰囲気で、第三楽章を激しくという感じで、これは曲想の通りですが、そこに感情や揺れが入らないと、単調になったり、荒っぽくなったりしているような気がします。表現の振れ幅が小さいので、曲のコントラストが活きないということでしょうか。熱情は、3曲の中でもロマン的な要素が大きいのではと思うので、スタイルに合っていると思います。よく雰囲気が出ています。もちろん往年の巨匠のような芸風で掴むところはありません。
とりあえず、こんな感じを持ちました。音質から軽やかなイメージを持つのと、飽きの来ない演奏ではありますね。いつまでも流して聴いていても、時々ハッとしながら、聴けるタイプです。逆にこれに慣れている時に、リヒテルとか聴いてしまうと、ぶっ飛びます(笑)。
ヤンドーの演奏はNAXOSを聴いていると、これからもたくさん聴くと思うので、今回はここまでにしたいと思います。
30周年BOXにこのCDを入れた意義とは、まさにNAXOSに最も多くの録音を残した演奏家の最初の録音ということですね。
ヤンドーの弾く熱情の第一楽章。真摯で輝かしい演奏だと思います。
対比してしまうこと自体どうかと思いましたが、激しい演奏ですね。
購入:2026/01/24、鑑賞:2026/03/29
過去記事のリンクです。




