ベートーヴェン:三大ソナタ「悲愴・月光・熱情」フランソワ(p) (1963) | ~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

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学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

【CDについて】

作曲:ベートーヴェン

曲名:ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 op13「悲愴」 (16:51)

   ピアノ・ソナタ第14番 嬰ハ短調 op27-2「月光」 (13:46)

   ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調 op57「熱情」 (25:19)

演奏:フランソワ (p)

録音:1963年2月19,25,26日、3月8日、4月8,12,29,30日、パリ Salle Wagram

CD:TOCE-7174 (レーベル:セラフィム、原盤:EMI、販売:東芝EMI)

 

【曲に関して】

ベートーヴェンの「三大ソナタ」と言えば、こういう組み合わせなのですが、あたかもこの三曲が、ベートーヴェンのピアノソナタの最高峰みたいな印象がつきまとってしまいます。ただ、wikiによれば、「レコード会社の販売戦略によって、LP1枚に収録可能で、人目を引きやすい表題付の曲から選ばれた。」ということです。バラエティの多彩なベートーヴェンのピアノ・ソナタですから、表題などに捉われず聴くのが良し、ということですね。

 

【演奏についての感想】

このブログに時折登場するセラフィムスーパーベストのジャケット。昔、俵孝太郎氏のクラシックCDに関する本が面白くて愛読していましたが、その中で各社の廉価版CDシリーズを揃えると面白いといった記事がありました。それで中古ショップなどで見つけたら買い足しながら揃えたのが、このシリーズなのです。TOCE71XXの番号のもので揃えたので、その後追加発売されたTOCE15XXのものまでは、さすがにフォローしきれないと思って集めませんでした。そんなシリーズなのですが、このCDだけどこかに行ってしまって、もう十数年前から1枚欠けた状態になっていました。たまぁに中古ショップで探してみたりしていたのですが、なんとなく機会がなく、最近ヤフオクで見つけてついに再び買ってしまったというわけです。そんないわれのこのCD久しぶりに聴いてみます。

 

私か、クラシックに慣れ親しんでいた頃は、ポリーニとか、楽譜を完璧に演奏するスタイルが幅を効かせていた時代で、フランソワは自在にニュアンスをつける演奏らしいので、「聴くべき演奏ではない」とまで思っていました。しかし、その後そういった演奏も好きになり、時代も進んでHIPなど多彩な演奏が出てくるようになって、逆にこういった演奏も貴重と思う様になってきます。そんな意識のなかでの鑑賞です。実際聴いていると、単なるニュアンスというより、かなり先鋭的な演奏とまで思えるような感じすらしました。音楽の流れが、急に動いたり停滞したり、本来のベートーヴェンの曲はさらさらと流れていくはずなのに、あえて流れを遮ってまでの表現にしていると。

 

そんなこんなで一度聞き終え、良い所も疑問に思うところもあるな…という感じでしたが、その後何回か聴くうちになぜか、なぜかよく馴染んできます。そして、これはフランソワが単に感情を込めてつけたような情緒的なものではなく、まったくベートーヴェンのソナタを詳細に吟味して、フランソワ流に再構築したものだということに思い当たります。録音に8日間を要しているのも、かなり作り込んだのではと勝手に想像します。ベートーヴェンは生理的に嫌で受け付けないという言葉も残しているフランソワですから、受け入れられるまでに練り直したという感じでしょうか。フランソワの芸が楽しめるCDでした。

 

【録音について】

60年代の優秀な録音で、ピアノのニュアンスが良く伝わります。

 

【まとめ】

フランソワの芸術を楽しむCDでした。しかし、こういった看板の廉価版シリーズは、入門的な意味合いも持つと思うので、この演奏を入れるという選択は、ずいぶん思い切ったものだと思います、

 

購入:2023/09/04(再)、鑑賞:2023/09/05(再聴)