ショスタコーヴィチ:交響曲第3番「メーデー」第6番 ロジェストヴェンスキー(1983/4) | クラシックCD 感想をひとこと

クラシックCD 感想をひとこと

学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。
一言二言で印象を書き留めておきたい。
長い文章だと、書くことが主になってしまう。
その時の印象を大切に。

ショスタコーヴィチの時代 ⑧

今回は、交響曲第3番、第6番の組み合わせのCDです。op10番代は、もう持っていなかったので、20番代に突入しました。op15の「鼻」は押さえておきたかったなぁ…というところですが、まぁ仕方がないので、いずれということで、先に進みます。

【CDについて】

作曲:ショスタコーヴィチ

曲名:交響曲第3番変ホ長調「メーデー」 op20 (33:20)

   交響曲第6番ロ短調 op54 (31:11)

演奏:ロジェストヴェンスキー指揮 ソビエト国立文化省交響楽団 ロシア・アカデミー合唱団

録音:1983年/1984年 モスクワ

CD:258 484(レーベル:MERODIA/Eurodisc、販売:BMG Ariola)

 

【曲と演奏について】

交響曲第3番は、1929年の作曲です。現代音楽協会の活動が難しくなっていく時代。音楽はプロレタリアートの教育に役立ち、単純で万人に理解できるものでなければならないという、ロシア・プロレタリア音楽家同盟の力が強くなっていく頃です。社会主義リアリズムに向けての傾斜が強まっていきます。この曲は、第2番と同様の単一楽章の曲ですが、労働歌など親しみ易い旋律を引用し、一方で前衛的要素は少なくなっています。労働者の連帯するメーデーの雰囲気を表現し、ソ連の闘争と熱意を表現したものという事です。

 

この曲は第2番と比較して、2倍ほどの長さとなっていて、確かに親しみやすい旋律も登場し、前衛度は低くはなっていますが、それはむしろ前衛的な表現がショスタコーヴィチの音楽と融合したような感じで、一貫して後年の作品へと繋がっていく、斬新な響きを聴くことができます。また中間部の緩徐部分の、静寂の涼やかさや美しさは、この曲ならではのような感じがします。最後の合唱の前に何度も繰り返して低弦のつぶやきが入るのは、第九を意識したものでしょうか。一つの交響詩という印象の作品でした。

 

第3番は、題名や趣旨から、西側で演奏されることは稀で、ソ連でもその斬新さから形式主義と認定され、しばらくして演奏されることはなくなりました。近年は徐々に演奏されるようにはなっているようですが、機会はかなり少ないのではないかと思います。聴いていて大変面白い曲なので、音楽としては好きです。果たしてショスタコーヴィチはどういう意図を込めてこの曲を作ったのかは推測の域を出ませんが、局所に現れる暗さに、シニカルなものも感じられるような気もします。

 

 

交響曲第6番は、1939年の作品です。1936年のプラウダ批判の翌年に交響曲第5番で名誉を回復した後、その2年後に作曲された交響曲。6番目の交響曲としてショスタコーヴィチはレーニン交響曲に取り組む予定でしたが、第二次大戦の勃発によって計画はとん挫し、この曲が作曲されました。緩徐楽章=スケルツォ=フィナーレの三楽章構成で、第一楽章が全体の半分以上を占める、あたかも苦悩を体現したような音楽になっています。時間配分的には、最初の2楽章を、一つの緩徐楽章にまとめた感じですね。そして、明るい二つの楽章へと続きます。この音楽を演奏家は様々な解釈で表現するようですが、ここは、大変充実した時代のショスタコーヴィチが表題の無い音楽に込めた思いにじっくり耳を傾けたいところです。

 

実際聴いてみると、この長い緩徐楽章は素晴らしい音楽なのですが、この雰囲気は他の交響曲でも時折差しはさまれる、ショスタコーヴィチの定番の音楽と思います。そして、いつ聴いても印象的なのは、ラストの軽妙な明るい音楽なのでした。第9番の諧謔的な雰囲気にも似ていると思います。ショスタコーヴィチの交響曲の中でも、この終楽章は大好きな楽章の一つです。ショスタコーヴィチがこんな雰囲気の曲を書くときは、何か裏があるのかなぁと勘ぐってしまうのですが…(笑)。

 

ロジェストヴェンスキーの演奏については、個々のパートがクリアにクローズアップされて、面白く聴ける演奏でした。そして、高音もガンガン響きますが、別の場所では低音もドンドン響くという、音響効果抜群のものでした。弦の音もハッとするほど美しい部分が出現したりします。メリハリのあるリズムもあって、面白く聴けました。というのが第3番で、その効果が存分に発揮されていると思いました。第6番はというと、これは、他にもいい演奏がいっぱいあるよね…。というのが第一印象で、傾向は第3番と同様ですが、丁寧かつ、あっさりした感じもするので、もっと叙情的に歌って欲しいなという感じを受けました。

 

【録音】

高音から重低音まで、大音量でも音割れせずに鳴り響くいい録音です。パート毎の音を非常にクリアに聴くことができます。

 

【まとめ】

交響曲第6番は、短いながらもショスタコーヴィチのエッセンスが詰まっている曲なので、気軽に聴けていい曲と思います。第3番は久しぶりに聴きましたが、中間のアンダンテがなかなか面白かったと思いました。新たな発見です。

 

購入:不明、鑑賞:2023/09/11(再聴)