柩の中の聖書
柩の中の聖書「限りある命」を実感するのは近しい人の旅立ちの時かもしれません。今まで何人もの親族をお見送りしましたが、忘れられない光景がありました。お葬式を済ませた後の火葬場で夫の祖母がお骨になって出てきた時のことです。胸の上に置かれた聖書が原型をとどめており、何ページかがふわりと動き、文字もくっきりと見えたのです。箸でそっと触ると純白の灰となってはらりと崩れました。それを見ていた私と親族たちは大変驚きました。彼女は敬虔なクリスチャンでした。夫の実家は禅宗でしたが、祖母だけ教会に通い、毎日讃美歌を歌っていました。祖母は人の悪口を決して言わない穏やかな女性でした。「天国に行ったのね。」と私がつぶやくと、「俺もそう思う。」隣に立っていた息子もつぶやきました。外は透き通るような蒼い空でした。明治、大正、昭和、平成力の限り 生き抜いた働き者のおばあちゃん天に召されて行きましたまばゆい光につつまれて高く 気高く どこまでも