以前、松田聖子のアルバム『Pineapple』の収録音量比較を
・CD 選書盤(1990年、CSCL 1269)
・Blu-spec CD2 盤(2013年、MHCL 30111)
とで行った。
CD 選書盤は初回盤 CD (1982年、35DH 3)と同じマスタリングで収録されている。
一方、リマスタリングされた Blu-spec CD2 盤では収録音量レベルがかなり上げられ、楽曲のダイナミックレンジが減少している。
収録音量・平均音量の上昇は音圧競争の弊害だが、その原因はリスニング機器の主流が本格オーディオシステム・スピーカーではなくなり携帯音楽プレーヤー(スマートフォンを含む)・ヘッドセットへと移行したことにある。
出力が格段に小さくなったことで、収録音量・平均音量の高い(すなわちダイナミックレンジが狭い)音作りが蔓延し、音圧競争(ラウドネス・ウォー)が起きた。
また、携帯音楽プレーヤー向けに、小音量でも聴き取りやすくあるいは迫力あるサウンドにするために低音の過剰ブーストが施されることもしばしば。
そこで、今回は上記2枚の『Pineapple』に収録されている「渚のバルコニー」のスペクトラムアナライザ解析結果を掲載(使用ソフトは SoundEngine)。
どちらも収録時間は 3 分 46 秒、記録容量 38.1 MB。
以前の記事に記したように、2枚の CD では収録音量に大きな差があるので、CD 選書盤の方はノーマライズ(音質やダイナミックレンジを変化させずに音量レベルを最大にする処理)している。
解析1:1番の歌詞の最後、♪あなたを愛してるの「た」を伸ばす部分
CD 選書盤(演奏時間 1 分 19.397 秒の箇所)
Blu-spec CD2 盤(演奏時間 1 分 19.396 秒の箇所)
Blu-spec CD2 盤では 500 Hz から 60 Hz にかけて低音側にいくほどブーストされ(上昇の傾きは CD 選書盤の約2倍)、1 kHz 以上の広い帯域もブーストされている。
解析2:2番の歌詞の♪そして秘密 I love you so love you の「I」のあの部分
CD 選書盤(演奏時間 2 分 21.524 秒の箇所)
Blu-spec CD2 盤(演奏時間 2 分 21.523 秒の箇所)
ここでも、Blu-spec CD2 盤では 500 Hz から 60 Hz にかけて低音側にいくほどブーストされ
(上昇の傾きは CD 選書盤の約2倍)、1 kHz 以上の広い帯域もブーストされている。
以上のように、Blu-spec CD2 盤におけるリマスタリングでは低音域と高音域の両方でブーストされていることが分かった。
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