松田聖子『Pineapple』の収録音量波形比較 | 俳句銀河/岩橋 潤/太宰府から

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以前の記事と重複する記述から始める。


中学2年~高校2年の4年間、当時トップアイドルだった松田聖子のファンで、LP を持っていた。


2nd アルバム『North Wind』から 7th アルバム『ユートピア』の頃にあたる。


高校卒業前に、アイドルを聴くのを卒業し (といっても、アイドルで聴いていたのは松田聖子だけだったが)、20代になって LP を手放した。


しかし、若い頃聴いた歌で印象深いのは何歳になっても心に残っているもので、50歳になろうかという時になって、また聴きたくなり、2nd アルバムから 7th アルバムまでの LP およびリマスタリング版の Blu-spec CD2 盤を買った。


ところが、Blu-spec CD2 盤の音質には満足できず、LP ばかりを聴くことになった。


その後知ったのは、限定数販売の SACD/CD ハイブリッド盤があったということ。

 

中古市場ではかなり高値で取引されていたが、好きな曲が多かった5枚のアルバム『North Wind』『Silhouette』『風立ちぬ』『Candy』『ユートピア』のハイブリッド盤を入手した。


ハイブリッド盤は、マスターテープの記録信号のダイナミックレンジを出来る限り損なわないように収録してあり、満足の音質だった (ごく一部に、マスターテープの経年劣化によると考えられる箇所があるが)。

 

SACD 層で聴く聖子のヴォーカルやプレゼンスの生々しさだけでなく、サウンドイメージ・音の響き・余韻の美しさにおいても Blu-spec CD2 盤より一段どころか二段も三段も上。

 

 

既に5枚アルバムで、Blu-spec CD2 盤とハイブリッド盤の CD 記録層の収録音量波形を比較して記事にしているが、今回はアルバム『Pineapple』を取り上げる。

 

ただし、今回 Blu-spec CD2 盤(2013年、MHCL 30111)と比較するのは、初回盤 CD (1982年、35DH 3)と同じマスタリングで収録されている “CD 選書盤”(1990年、CSCL 1269)。

 

<所有する LP、Blu-spec CD2 盤、CD 選書盤>

 

波形解析に選んだ曲は、平均収録音量が大きめの「渚のバルコニー」と小さめの「赤いスイートピー」

 

 

「渚のバルコニー」の収録音量波形解析>

 

Blu-spec CD2 盤

最大音量:-0.31 dB(L: -0.31 dB、R: -0.31 dB)

平均音量: -12.65 dB(L: -13.05 dB、R: -12.28 dB)

 

CD 選書盤

最大音量: -5.19 dB(L: -5.19 dB、R: -5.52 dB)
平均音量: -25.11 dB(L: -25.18 dB、R: -25.03 dB)

 

Blu-spec CD2 盤では、曲のほぼ全体にわたって波形がフルスケール(0 dB)のすぐ下(-0.31 dB)でバッサリ削られたような形になっており、ダイナミックレンジがかなり失われている。

 

対して CD 選書盤では、両チャンネルともに 5 dB 余りのマージンがあり、波形の大小の変化が完全に収められている。

 

参考までに、 CD 選書盤の波形をノーマライズ(音質やダイナミックレンジが変化しない範囲で音量レベルを最大にする処理)した結果を掲載。

 

CD 選書盤(ノーマライズ後)

最大音量: 0.00 dB(L: 0.00 dB、R: -0.33 dB)
平均音量: -19.92 dB(L: -19.99 dB、R: -19.84 dB)

 

 

「赤いスイートピー」の収録音量波形解析>

 

Blu-spec CD2 盤

最大音量:-0.11 dB(L: -0.11 dB、R: -0.11 dB)

平均音量: -15.42 dB(L: -16.02 dB、R: -14.89 dB)

 

CD 選書盤

最大音量: -3.62 dB(L: -5.54 dB、R: -3.62 dB)
平均音量: -26.99 dB(L: -27.25 dB、R: -26.75 dB)

 

Blu-spec CD2 盤では、「渚のバルコニー」に比べればマシだが、収録音量レベルがまだまだ高過ぎる。

 

対して CD 選書盤では、両チャンネルともに 3~5 dB 以上のマージンがあり、波形の大小の変化が完全に収められている。

 

 

2曲ともに、Blu-spec CD2 盤での平均収録音量は CD 選書盤でのそれよりも 12 dB ほど高くなっている。

 

12 dB の差は聴感での音の大きさで 4 倍になり、Blu-spec CD2 盤の再生時には機器のボリューム位置が低くなって、音質上不利になることが多い。

 

さらに、最大音量と平均音量の差を見ると、Blu-spec CD2 盤では 12 dB(渚の~)と 15 dB(赤い~)、CD 選書盤では 20 dB(渚の~)と 23 dB(赤い~)で、2曲ともに CD 選書盤の方が 8 dB 大きい。

 

8 dB は聴感での音の大きさで 2.5 倍になり、それだけ CD 選書盤の方が原音がもつ音量の上下変動(抑揚・メリハリ)を保持しているということ。

 

平均収録音量を上げるにはコンプレッサーが使われるが、コンプレッサーを効かせ過ぎるほど曲中の音量レベルの変動が小さくなってダイナミックレンジが失われる。

 

本来は、左右の広がりとともに奥行きがあるサウンドイメージとして聴こえなければならないところが、コンプレッサーを過剰使用した曲では、ヴォーカルにしても各楽器にしてもすべてがサウンドイメージの前面に出てしまい、奥行きのない音の塊となって押し寄せて、喧しくなる。

 

 

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