松田聖子「螢の草原」を2枚のCDで収録音量・周波数解析 | 俳句銀河/岩橋 潤/太宰府から

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同じ音楽家のソフトでも、レコード会社(制作に携わるエンジニア)が替わると音作りが変わる。

 

また、同じ曲でもリマスター版では収録音量や音質が変わる。

 

リスニング機器の主流がかつての本格オーディオシステム・スピーカーから携帯音楽プレーヤー(スマートフォンを含む)・ヘッドセットへ変化して出力が格段に小さくなったことで、収録音量・平均音量の高い(すなわちダイナミックレンジが狭い)音作りが蔓延し、音圧競争(ラウドネス・ウォー)が起きた。

 

また、携帯音楽プレーヤー向けに、小音量でも聴き取りやすくあるいは迫力あるサウンドにするために低音の過剰ブーストが施されることもしばしば。

 

 

前記事では松田聖子のアルバム『Pineapple』「渚のバルコニー」を例に2枚の CD で比較したが、今回はアルバム『SUPREME』「螢の草原」を取り上げる。

 

用いた CD は以下。

・CD 選書盤(1995年、SRCL 3179)

・Blu-spec CD2 盤(2013年、MHCL 30119)

 

CD 選書盤は初回盤 CD(1986年、32DH 440)と同じマスタリングで収録されている。

 

Blu-spec CD2 盤はリマスター。

 

 

 

まずは、それぞれの CD の「螢の草原」を SoundEngine で収録音量・平均音量解析。

 

CD 選書盤

平均音量: -23.56 dB (Lch: -23.82 dB、Rch: -23.32 dB)

Blu-spec CD2 盤
平均音量: -17.70 dB (Lch: -17.76 dB、Rch: -17.63 dB)

 

『Pineapple』で解析した2曲の平均音量は CD 選書盤に比べて Blu-spec CD2 盤は 12 dB 高かったが、「螢の草原」は 6 dB と差が半分になっている。

 

CD 選書盤の収録音量波形は、本格オーディオシステム・スピーカーで聴くのに理想的。

 

 

次に、スペクトラムアナライザ解析結果を掲載。

 

解析箇所は、演奏時間 3 分 38 秒台に波形が大きくなる、歌詞の♪二人をそっと運んでの「と」が始まる瞬間。

 

CD 選書盤

 

Blu-spec CD2 盤

 

2枚の CD で波形の差は低音域から中音域にかけて見られ、高音域はよく似ている。

 

250 Hz ~ 1 kHz は CD 選書盤ではほぼ同じレベル(- 48 dB)だが、Blu-spec CD2 盤では 1 kHz(-48 dB 付近)から 250 Hz(-36 dB 付近)にかけて徐々にブーストされていき、250 Hz におけるブースト量(約 12 dB)が最低音域の 30 Hz まで続いている。

 

このブーストは、シェルビング・イコライザー(トーンコントロールの BASS)を使っているように見える。

 

一方、1 kHz 以上の高音域全体のレベルは両盤でよく似ている。

 

 

以上の結果、Blu-spec CD2 盤のリマスタリングでは低音域から中音域でブーストされ、それが両盤での平均音量の差である 6 dB に反映していることが分かった。

 

 

 

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