宮下規久朗の「カラヴァッジョ 聖マタイの召命」を読んだ! | とんとん・にっき

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宮下規久朗の「一枚の絵で学ぶ美術史 カラヴァッジョ『聖マタイの召命』」(ちくまプリマ―新書:2020年2月10日初版第1刷発行)を読みました。

 

僕が宮下規久朗の著作を初めて読んだのは、「刺青とヌードの美術史」というぶっ飛んだタイトルの本でした。刺青もヌードも、なかなか刺激的で、今から12年前、2008年に刊行された本でした。帯には「異才の美術史家がタブーの美に挑む!」とあります。刺青もヌードも宮下の「持ちネタ」のひとつとして、ことあるごとに講義や講演で話してきた、という。

宮下規久朗の「刺青とヌードの美術史 江戸から近代へ」を読む!

 

今回はもう一つの宮下の「持ちネタ」、というより、本業である「カラヴァッジョ」の「聖マタイの召命」についてです。

 

1599年7月、デル・モンテ邸にいたカラヴァッジョに初めて大きな公的な仕事が舞い込む。おそらくはデル・モンテ枢機卿の口ききによる、隣に建つサン・ルイジ・デイ・フランチェージ聖堂のコンタレッリ礼拝堂の壁画制作である。この礼拝堂の装飾は、ダルピーノら著名な画家たちに依頼されていたが、中断されていた。カラヴァッジョは入念に構想して渾身の力を込めて描き、1年後に「聖マタイの殉教」と「聖マタイの召命」を完成させる。これほどの大画面を描くのは初めてであり、苦労したようである。とくに前者は、一度描き上げた画面を全面的に描き直したことがX戦写真から判明している。

(「もっと知りたいカラヴァッジョ生涯と作品」より)

 

以下、関連する作品の一部の画像を、下に載せておきます。

 

カラヴァッジョ「聖マタイの召命」1600年

ローマ、サン・ルイージ・デイ・フランチェージ聖堂

 

カラヴァッジョ「聖マタイの殉教」1600年

ローマ、サン・ルイージ・デイ・フランチェージ聖堂

 

目次

はじめに

第1章 カラヴァッジョの時代と美術

第2章 「聖マタイの召命」とは

第3章 マタイはどこか

第4章 回心と復活

第5章 死と召命

「読書案内」

あとがき

 

「あとがき」を見ると、以下のようにあります。

本書は高校生レベルの読者に、カラヴァッジョ作品を読むおもしろさや魅力を伝えようと書いたものです。・・・私は30年以上カラヴァッジョ研究に携わってきましたが、「聖マタイの召命」は、美術史に興味をもった10歳のころから「聖マタイのお召し」として親しんでおり、大学時代には下宿の壁に新聞の切り抜きのカラー図版を貼り付けておりました。今も自宅の仕事机の前にこの絵の載ったカレンダーを掛けて日々眺めています。(この年、私は一人娘を亡くし、わが家の時間が止まったままなのです)。この作品は、若きカラヴァッジョにとっての召命でもあったと述べましたが、私にとっても天職(ベルーフ)に導いてくれた点でまさにそうであったようです。

 

この本の最後に「読書案内」が載せてあります。

カラヴァッジョという画家に興味をもった方は、さらなるカラヴァッジョの魅力を知ってほしいものです。いちばんよいのは、イタリアに行って実際に作品を見ることです。美術館よりも、作品が本来置かれていた教会の空間で見ることが重要です。ローマにはサン・ルイージ・フランチェージ聖堂をはじめ三つの教会でカラヴァッジョの作品が当初のままの祭壇に飾られており、ナポリやシラクーザやマルタにもそのような教会がひとつずつあります。それがかなわない人や、実際に見たことがある人にもいくつかの図書をお勧めします(この本の「読書案内」を参照してください)。私はこれまでにカラヴァッジョについて六冊の本を出しており、手前味噌で恐縮ですが、どれもお勧めです。

 

宮下規久朗:

1963年名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院修了。現在、神戸大学大学院人文学研究科教授。美術史家。2005年「カラヴァッジョ 聖性とヴィジョン」(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞などを受賞。ほかに、「モチーフで読む美術史」、「しぐさで読む美術史」(ちくま文庫)、「カラヴァッジョへの旅」(角川選書)、「刺青とヌードの美術史」(NHK選書)、「食べる西洋美術史」、「ウォーホルの芸術」、「美術の力」(光文社新書)、「闇の美術史 カラヴァッジョの水脈」、「聖と俗 分断と架構の美術史」(岩波書店)、「そのとき、西洋では」(小学館)など多数の著作がある。

 

ということで、僕自身が関連した過去の記述や、手持ちの書籍を、下に載せておきます。

 

過去の関連記事:順不同

北海道立近代美術館で「カラヴァッジョ展」を観た!

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国立西洋美術館で「カラヴァッジョ展」を観た!

宮下規久朗の「カラヴァッジョ巡礼」を読んだ!

銀座テアトルシネマで「カラヴァッジョ 天才画家の光と影」を観た!

東京都美術館で「ボルゲーゼ美術館展」を観た!

 

手元にある図録や書籍など

「カラヴァッジョ展」

図録

責任編集:小佐野重利

編集:北海道立近代美術館

        名古屋市美術館

         あべのハルカス美術館

        北海道新聞社

発行:北海道新聞社©2019

 

「カラヴァッジョ 

光と影の巨匠―バロック絵画の先駆者たち」

執筆・翻訳・監修:宮下規久朗

編集:朝日新聞社

    岡崎市美術博物館

    東京都庭園美術館

発行:朝日新聞社©2001

 

「聖と俗 分断と架橋の美術史」

2018年5月29日

著者:宮下規久朗

発行所:岩波書店

(実はまだ読んでない)

 

アート・ビギナーズ・コレクション

「もっと知りたいカラヴァッジョ生涯と作品」

2009年12月20日初版第1刷発行

2019年4月10日初版第7刷発行

著者:宮下規久朗

発行所:東京美術

 

とんぼの本

「カラヴァッジョ巡礼」

発行:2010年1月25日

著者:宮下規久朗

発行所:新潮社

 

「闇の美術史 カラヴァッジョの水脈」

2016年5月24日第1刷発行

著者:宮下規久朗

発行所:岩波書店