宮下規久朗の「闇の美術史 カラヴァッジョの水脈」を読んだ! | とんとん・にっき

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僕が宮下規久朗の著作と出会ったのは8年前、「刺青とヌードの美術史」が最初でした。以来、カラヴァッジョの入門書である「カラヴァッジョ巡礼」(とんぼの本)を読み、「フェルメールとの光とラ・トゥールの焔」を読み、その後新刊が出るごとに買わずにはいられなくて、宮下の著作を読んできました。西洋美術館で開催された「グエルチーノとバロック美術」のときには、講演前のトイレで講師の宮下さんと鉢合わせをしました。


ま、そんなことはどうでも…。宮下規久朗の「闇の美術史 カラヴァッジョの水脈」(岩波書店:2016年5月24日第1刷発行)を読みました。「フェルメールとの光とラ・トゥールの焔―『闇』の西洋絵画史」(小学館101ビジュアル新書:2011年4月6日初版第1刷発行)が、2011年に開催された岩波市民セミナー「闇の美術史」と、今回の「闇の美術史 カラヴァッジョの水脈」の雛型にあたるとしています。

宮下規久朗の「フェルメールの光とラ・トゥールの焰」を読んだ!


さて、「闇の美術史 カラヴァッジョの水脈」、岩波書店のホームページには、以下のようにあります。

あらゆる美術は光の存在を前提としている.だが,革新性は闇によってもたらされた.17世紀イタリア,“光と闇の天才画家”カラヴァッジョの登場は,絵画に臨場感という衝撃的なドラマを生んだ.古代から近代の西洋美術,そして日本美術における光と闇の相克の歴史を,カラヴァッジョ研究の第一人者が読み明かす.闇の存在なしにドラマは生まれない.[カラー4頁]


本書の帯には、以下のようにあります。

現代人は闇の魅力を忘れているが、かつての人たちは闇を味わい、楽しむことを知っており、それが文化の一部をなしてきた。(中略) 闇の中でこそ、私たちは光の価値を感得し、光と闇を超えた永遠の世界を見ることができるのではなかろうか。カラヴァッジョに始まる豊かな闇の芸術の水脈は、その入口を示してくれるものなのだ。(本文末尾より)


国立西洋美術館で「カラヴァッジョ展」を観たときに、チラシに取り上げられた4つの画像が、今回のカラヴァッジョ展のほとんどすべてを表しているように思います、と書きました。その4つの画像とは、「果物籠を持つ少年」「バッカス」「ナルキッソス」「トカゲに噛まれる少年」でした。しかし本書で述べている光と闇とは、やや遠いものだったように思います。

国立西洋美術館で「カラヴァッジョ展」を観た!


本書で取り上げられたカラヴァッジョとラ・トゥールの作品の一部



「高野野十郎展」を観たときに、以下のようにブログに書きました。
宮下規久朗の「闇の美術史 カラヴァッジョの水脈」(岩波書店:2016年5月24日第1刷発行)が届いたので、ざっと読んでみました。なんと口絵には、高島野十郎の「蝋燭」と「満月」が取り上げられていました。そして最終章「日本美術の光と闇」の最後に、「ロウソクの画家・高島野十郎」として取り上げられていました。1ページ半の僅かな文章ですが…。

目黒区美術館で「高島野十郎展 光と闇、魂の軌跡」を観た!


本書の最終章、第6章「日本美術の光と闇」は、僅か20ページの、画家を羅列した概要篇といった感じです。第5章までの密度からいったら、どうしても無理して付け足したような印象は否めません。別に一冊にした方がよかったように思います。


目次

はじめに 光あれ

第1章 闇の芸術の誕生

第2章 光への覚醒―カラヴァッジョの革新

第3章 ドラマからスピリチュアルへ

     ―カラヴァッジェスキとラ・トゥール

第4章 バロック彫刻の陰影

第5章 闇の溶解、光のやどり

     ―レンブラントから近代美術へ

第6章 日本美術の光と闇

おわりに もっと闇を!

注 

あとがき


宮下規久朗:

1963年名古屋生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院修了。現在、神戸大学大学院人文学研究科教授。美術史家。2005年「カラヴァッジョ聖性とヴィジョン」でサントリー学芸賞、地中海学会ヘレンド賞を受賞。他の著作に、「バロック美術の成立」「イタリア・バロック―美術と建築」(以上、山川出版社)、「フェルメールの光とラ・トゥールの焔―『闇』の西洋絵画史」「カラヴァッジョ」(以上、小学館)、「食べる西洋美術史―『最後の晩餐』から読む」「ウォーホルの芸術―20世紀を映した鏡卌」「美術の誘惑」(以上、光文社新書)、「カラヴァッジョへの旅―天才画家の光と闇」(角川選書)、「刺青とヌードの美術史―江戸から近代へ」(NHKブックス)、「カラヴァッジョ巡礼」(新潮社)、「モチーフで読む美術史」「しぐさで読む美術史」(以上、ちくま文庫)など多数。


taka23 「フェルメールの光とラ・トゥールの焔

 ―「闇」の西洋絵画史」

小学館101ビジュアル新書

2011年4月6日初版第1刷発行

著者:宮下規久朗

発行所:株式会社小学館








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