目黒区美術館で「高島野十郎展 光と闇、魂の軌跡」を観た! | とんとん・にっき

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目黒区美術館で「高島野十郎展 光と闇、魂の軌跡」を観てきました。観に行ったのは、会期終了日間近にせまる6月2日のことでした。さすがに会場は混んでいました。


新聞の切り抜きが手元にないので正確なことは言えないが、この展覧会のことを知ったのは、朝日新聞の小さな記事だったように思います。いま、ネットで調べてみると、[評・美術]「歿後40年 高島野十郎展」孤高の姿勢映す蝋燭の光、という美術評論家の北澤憲昭の記事でした。記事を見たのが遅かったので、大慌てで目黒区美術館へ向かったのを覚えています。何しろ僕の家からはバス一本で行けるので。僕は、高島野十郎がどんな画家なのか、まったく知りませんでした。


最終章、「光と闇 太陽 月 蝋燭」には驚きました。完全にノックアウトでした。偶然とはいえ、こんな凄い、素晴らしい画家に出合ったのは初めてのことです。東京帝国大学農学部水産学科卒業という経歴にも、絵は独学で学んだということにも、驚かされました。


目黒区美術館でまず目に入ったのが「図録」でした。図録の帯には「どうしてなのだろう、野十郎の絵からは、目を離すことができない。」という川上弘美のコメントが!これだけでもう図録を買うことを決めました。「なんでも鑑定団」の再放送で一枚の油絵が出品され、それを見た川上は「この絵、とりこになりそう」と理由もなく思ったそうだ。知らない画家だったので、その名前を手帳にメモしたという。


それから数年後、近所のスーパーマーケットに買い物に行く途中、「歿後30年高島野十郎展 三鷹市民ギャラリー」というポスターを見て、メモしたことは忘れて「あれっ、どこかで聞いたことがある名前だ」と、行ってみたという。詳細は省くが、三鷹で野十郎の絵を見た年の秋に、川上は「真鶴」という小説を上梓した。表紙には、野十郎の絵を使ってくださいと、編集者に頼んだという。表紙から裏表紙全部を使って「すもも」の絵が配された。いくつものすももは、ただそこにある。


「真鶴」を読んだとき、以下のようにブログに書きました。高島野十郎の「すもも」が出ていました。

ブックカバーは白地に深紅の明朝体で大きく「真鶴」とあり、度肝を抜かれます。中身を取り出し、本の表紙はと言うと、「すもも」の絵だけしか描いていない表紙が出てきます。ブックカバーと表紙はあまりにも対照的です。装画は高島野十郎の「すもも」、装丁は大久保明子です。

川上弘美の「真鶴」を読んだ!


宮下規久朗の「闇の美術史 カラヴァッジョの水脈」(岩波書店:2016年5月24日第1刷発行)が届いたので、ざっと読んでみました。なんと口絵には、高島野十郎の「蝋燭」と「満月」が取り上げられていました。そして最終章「日本美術の光と闇」の最後に、「ロウソクの画家・高島野十郎」として取り上げられていました。1ページ半の僅かな文章ですが…。


展覧会の構成は、以下の通りです。


第1章 初期作品

第2章 滞欧期

第3章 風景

第4章 静物

第5章 光と闇



以下、展示作品の一部


第1章 初期作品





第2章 滞欧期



第3章 風景





第4章 静物




第5章 光と闇




「高島野十郎展 光と闇、魂の奇跡」

高島野十郎(1890-1975)は「孤高の画家」「蝋燭の画家」として、NHK「日曜美術館」でも再三取り上げられるなど、近年多くの人々から注目を集めている洋画家です。

明治23(1890)年、福岡県久留米市に酒造家の四男として生まれた野十郎は、東京帝国大学農学部水産学科を首席で卒業。その後、念願であった画家への道を選び、敢然と歩み出しました。「世の画壇と全く無縁になることが小生の研究と精進です」とする野十郎は、独力で油彩技法の研究を重ね、会派や団体などには所属せず、家庭を持つことさえ望まず、自らの理想とする写実的な絵画を生涯にわたり追求し続けました。

野十郎の超俗的な画業は、生前には広く知られることはありませんでしたが、福岡県立美術館によって「再発見」され、その後は展覧会を重ねるにつれ、単なる再現的描写を越えた生命感あふれる精緻な写実表現、光と闇に込められた高い精神性が、ますます高く評価されています。

本展の巡回は高島野十郎の没後40年にあたる平成27(2015)年にスタートしました。孤高の画家・高島野十郎の到達点ともいえる「蝋燭」や「月」の連作、さらには風景画や静物画など、代表作を数多く含む140点以上を、五つの大きなトピックに沿ってご覧いただきます。また、近年新たに発見された作品、これまで紹介されたことのない作品、科学的調査による技法分析結果などもまじえ、人々の心と目を引き付けて止まない高島野十郎の深遠なる絵画世界の全貌に迫る、「決定版」ともいえる展覧会です。目黒区美術館では昭和63(1988)年に「光があるから闇がある―高島野十郎展」を開催して好評を博して以来、28年ぶり待望の開催となります。


「目黒区美術館」ホームページ


takashi1 「高島野十郎 光と闇、魂の奇跡」

2015年12月20日初版第1刷発行

2016年5月5日第2版第1刷発行

編集・執筆:

西本匡伸(福岡県立美術館)

高山百合(福岡県立美術館)

山田敦雄(目黒区美術館)

江尻潔(足利市立美術館)

企画制作:

福岡県立美術館

株式会社テレビ西日本

発行所:株式会社東京美術


taka22 「闇の美術史 カラヴァッジオの水脈」

2016年5月24日第1刷発行

著者:宮下規久朗

発行所:株式会社岩波書店









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