宮下規久朗の「カラヴァッジョ巡礼」を読んだ! | とんとん・にっき

宮下規久朗の「カラヴァッジョ巡礼」を読んだ!

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宮下規久朗のとんぼの本「カラヴァッジョ巡礼」(著者:宮下規久朗 発行:2010年1月25日 発行所:新潮社 定価:1400円税別)を読みました、というより、見たと言った方がいいのか、とにかく、ザッと一通り目を通しました。


「17世紀初頭のローマで、一世を風靡したバロック絵画の巨匠カラヴァッジョ。斬新な明暗法を駆使した写実的かつ幻視的な作品は常に賛否両論を巻き起こし、さらには生来の激しい気性から殺人を犯し、逃亡生活を余儀なくされる。聖なる画家にして非道な犯罪者。その光と闇に包まれた生涯をたどりつつ、現地に遺された作品を追って旅する!」と、本のカバー裏にあります。


宮下規久朗の著作は、僕が読んだのは「刺青とヌードの美術史・江戸から近代へ」(日本放送出版協会)、1冊のみです。人を見かけで判断してはいけないと思いながらも、奥付に載っているその風貌は、「その筋」の人かと思わせるほど、特異な風貌をしています。著作の中で刺青について詳しく調べ上げていて、宮下自らも刺青を入れることを真剣に考えた、と書いてあるのですから、ちょっと驚きます。その人が東京大学文学部美術史科卒業、神戸大学大学院人文学研究科准教授、「崇高なる」美術史家だというから、このギャップは凄い。まあ、「崇高」なんてあがめ立てて言う方がおかしいのかも知れない、というこもあり、僕は芸術に関しては南伸坊に倣って「ゲージュツ」と分類しているわけですけど。


宮下の著作を見てみると、サントリー学芸賞や地中海学会ヘレンド賞を受賞した「カラヴァッジョ 聖性とヴィジョン」(名古屋大学出版会)、「カラヴァッジョ(西洋絵画の巨匠11)」(小学館)、「カラヴァッジョへの旅」(角川選書)、「もっと知りたいカラヴァッジョ」(東京美術)など、カラヴァッジョの著作が多く、カラヴァッジョやバロック美術の専門家のようです。「刺青とヌードの美術史」が「江戸から近代へ」と副題にある通り、たまたま日本を扱っているので、僕が宮下のことをよく知らなかっただけのことですが。そういえば最近「食べる西洋美術史」(光文社新書)が、つとに話題になっていました。


さて「カラヴァッジョ巡礼」、とんぼの本の通例で、写真が主で、それに解説がついたという、カラヴァッジョのいわゆる「入門書」で、非常にわかりやすい。「生誕の地ロンバルディア」「豊穣のローマ」「南への逃亡」「シチリア放浪から、死出の旅へ」と、カラヴァッジョの足跡を辿りながら書かれています。カラヴァッジョの作品を場所別に、つまり美術館ごとにまとめ上げたイタリア旅行案内書となっています。「はじめに」で宮下は「少年時代にこの画家の魅力にとりつかれた私は、20歳を超えた頃から幾度となくイタリアを訪れ、カラヴァッジョの絵を求めてさまよい歩き、時には一日中呆然と絵の前でしゃがみ込んでいた。彼の絵は今や私の人生の一部となっており・・・」と書いています。


驚いたことにカラヴァッジョは38歳で亡くなったという。まさに夭折の画家でもあります。カラヴァッジョは、好評であれば同じテーマの作品を躊躇なく描いたという。日本に今までカラヴァッジョの作品がいくつ来たのかは定かでありませんが、そう多くはないはずです。実は僕の記憶にははっきりとは残っていません。丹念に調べてみないとその辺はわかりません。しかし、何度か訪れたフィレンツェのウフィッツィ美術館での記憶ははっきり残っています。「メドゥーサ」「イサコの生贄」「バッカス」です。


現在、東京都美術館で「ボルゲーゼ美術館展」が開催されています。第3章は「17世紀・新たな表現に向けて・カラヴァッジョの時代」となっていて、カラヴァッジョの日本初公開の作品「洗礼者ヨハネ」が出ているようです。また、映画も銀座テアトルシネマで「カラヴァッジョ 天才画家の光と影」が「没後400年記念公開」として、2月半ばから公開されます。イントロには「16世紀イタリアを代表するバロック絵画最大の巨匠カラヴァッジョ。彼が存在しなければレンブラントもベラスケスも誕生しなかった!」とあります。



*追記:本棚を見ていたら、東京都庭園美術館で2001年9月29日から12月16日まで開催された、「カラヴァッジョ 光と影の巨匠・バロック絵画の先駆者たち」という展覧会の、図録がありました。展覧会には39作品が出品され、そのうちカラヴァッジョの作品は帰属も含めて8作品が出品されていました。図録には、宮下規久朗も「カラヴァッジョの闇・展覧会によせて」と題して、寄稿されていました。下にその出品作品を載せておきます。

1 メランゴロをむく少年(果物をむく少年)

2 果物かごを持つ少年

3 ナルキッソス

4 執筆する聖ヒエロニムス

5 祈る聖フランチェスコ

6 マグダラのマリアの法悦

7 瞑想の聖フランチェスコ

特別出品:エマオの晩餐


「東京都美術館」ホームページ

「ボルゲーゼ美術館展」公式ホームページ

映画「カラヴァッジョ 天才画家の光と影」公式サイト


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